ギャラとノルマ話題でのSNSの盛り上がり?について | 小野弘晴のブログ

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テノール歌手 小野弘晴のブログです!


最近X(旧Twitter)でよく流れてくる「音楽家のギャランティー話題」と「チケットノルマについての見解」について。

Xを開くと毎日のように流れてくる話題です。


どちらの話題についても少し前からかなりの盛り上がりを見せていますが、


・公演前の譜読みや暗譜、練習、準備は時間外労働だ

・チケットノルマを課すのはおかしい


という意見が目立ちますね。


意見としては間違っていないし、僕も(音楽家の端くれとしても笑)よく理解できます。


「個人的には」ということでの僕の意見は、公演前の譜読みや暗譜や個人練習なんてのは自分のレパートリーとして当たり前の事であって、それを含めてのパフォーマンス。時間外労働という表現が適切かどうかはともかく、僕個人としては「それを含めて」提示されているギャランティーと感じています。

でも、自由業・個人事業主・フリーランスだから、やはりその辺が曖昧になってしまう部分はとてもよくわかります。笑

それでも芸事、というか、そこに保証を求めようとは僕は感じていないというと少し語弊がありますが。


舞台に立って今できる最高のパフォーマンスをするということ、その舞台上で起こりうる全ての事象に対して責任を待つということ、また、そこに立つまでのプロとしての支度、その全てはもうすでにその額面に入っているものとして捉えているという事です。あくまで僕は、です。

そして、流れてくる意見、お気持ちはとてもよくわかります。

(この業界で「時間外労働」という言葉を聞いたのが初めてなので新鮮ではありますが)



チケットノルマ問題についてはもっと思うことはありますが、長くなるので割愛します。

でも、(そのノルマ数によって大きく変わりますが)「賛成してはいないが、その程度も呼べない歌手にはなりたくない」とは思います。


もちろん、このノルマ論争?は、枚数や金額だけで論議されているものではなく、「ノルマを課される人と課されない人がいることについて」や「ノルマを売り切った人が売り切ってない人の分を売ってあげることについて」「ノルマを課す側だけがノーリスク」「主催にはノルマがない」などなど、様々なセクションに渡って論議されています。


ですので、「ノルマならその公演に参加しなければよい」という言葉では結論づけられない側面もあります。

また、ある程度経験を積んだ歌手には課されない場合や、男声歌手には課されない、若手のみに課されるなどのパターンが存在している事にも注意が必要ですね。


ノルマを課す側の「少なくともこれくらいは売ってほしい/(お客様を)呼んでほしい」という意見と「出さしてやるからこれくらいは売りなさい/呼びなさい」でもまた全く違う意見。後者はもう悪です笑。


または「○○さんに出演してもらったら(ノルマなんか課さなくても)自然とお客さんが沢山来てくれる」という意見もよく耳にします。


出演する側は「この公演に沢山の方に来て頂きたい」というのは当たり前の共通意見ですが、「集客は主催ががんばれ」という丸投げもそれはそれで少し乱暴な感じもしますし、「ノルマを課さなくても集客に努力しますよ」という建設的な意見ももちろんあります。


(音楽だけでなく、芝居やイベント関係の業界の方も沢山意見されていましたが)様々な意見を見て、それぞれの意見に考えさせられます。


話は少し変わってしまいますが、例えば先輩と後輩のような関係において、後輩(若手)が「勉強させて頂くつもりですので!」というのは良いが、先輩(年上)側が「勉強にさせてあげるから」は違うとは思います。


もし明日あたりノルマを課されたとしたらどう思うのだろうか?


「ノルマを課されたこと」に対して疑問が生まれるのか?

ノルマ数に対して、これくらい期待されていると思うのだろうか?

「この主催は危ない」と直感が働くのだろうか?


また、上にも書きましたが(例外はありますが)そのノルマ枚数によって感触が変わることもありますね。


例えば「オペラのプリモ(主役)で、ノルマ10枚」


プリモ歌うのに10枚売れないとしたら、それはノルマの有無以前の問題でもある、のでは?という意見。

わかります。


「1シーン(一言二言のみ)しか出ない役でノルマ80枚」


こんな人がいた事に驚きです。


そして、そもそも「ノルマの存在自体がおかしい」という意見。


この話題においてはなかなか終わりが見えません。

オペラは商用演劇ではなく文学作品、振り切る場所を見定めないとクラシック芸術とは全く違うものになってしまいます。


現実問題と伝統。(悪き伝統もあるだろうが)

その伝統は国や地域によっても違いはあれど、どのように捉えていくかによって方向性は大きく変わると思います。

「オペラやクラシックは敷居が高い」と言われる中、敷居を「下げて裾野を広げる」のか、敷居を「そのままに、お客様に上がってきてもらうのか」という意見も分かれます。






そんなに甘くない、ですね。笑






長くなってしまいましたので今日はこの辺で。