「カルメン」"花の歌"の"B音" | 小野弘晴のブログ

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オペラ彩「カルメン」オケ合わせも終わり、残すところG.Pと本番です。

少ない練習回数で、合唱も動きを覚えて身体に取り込む事は大変ですが、皆さんエネルギッシュに取り組まれています!
でもきっとこの短時間で取り入れた決め事は、最大の集中力で乗り切れる。大丈夫だと思います!

歌も演技も「今歌ってる(芝居してる)のは、次の「音/芝居」の準備だと思って集中力を高めることができれば、あるいは。



以前ホセを歌った時のブログにも書いてあったので一部抜粋で引用しますが、

第二幕、ホセのアリア「花の歌」で最後に歌われる高いシ(B音)は大きく歌われるものではないし、ファルセットでもない、頭声と胸声の混合のアクートが求められます。まるでファルセットーネのような柔らかく響きのある声。難しいですね。


役どころとしては、ホセの感じる愛、つまり彼の母やミカエラへの愛は温かく心地よいものだった、そこにカルメンという直接的で官能を動かす存在が現れる。

ホセの中にいる悪魔的な心情を揺さぶるというようにと僕は考えています。


このアリア「花の歌」は単純な愛のアリアではなくて、ホセ自身の心理救済と「僕がこんな風になったのは君のせいだ」と心をさらけ出して、心の言い訳を話すのと同時に、正直な心情を露呈することによって「この場面をどうにかしようとしている」という事ではないかと感じています。


牢屋の中で反芻した想いを伝えて、二人きりのこの場で気持ちを告白するホセのこのアリアでは、やはり大きなB音は適切ではないと思います。

同時に、聴衆の皆さんの中でこれを評価してくれる方もいらっしゃると思いますし、逆に不服に思われる方もいらっしゃると思います。


でも、僕はやはりホセのこの心情に沿って歌いたいと思っています。


テクニカル的にはfやffよりも、この音域でp,pp(dolce)で歌うことはかなり難しい事になりますが、やや失敗気味に入るリスクがあってもそのまま歌います。



このセンテンスの前にある以下の部分↓

Puis je m’accusais de blasphème,
et je ne sentais en moi-même,
je ne sentais qu’un seul désir,
un seul désir, un seul espoir:
te revoir, ô Carmen, oui, te revoir!
Car tu n’avais eu qu’à paraître,
qu’à jeter un regard sur moi,
pour t’emparer de tout mon être,



ここの音楽の持つ情熱に負ける事なく、歌手の知性でバランス良く捌ければこの先も上手く歌うことができると思っています。難しいですね。


カルメンのことを心底恋い焦がれるやるせない思いをB音で歌うには、やはりPP e dolceしかないという考え方を選択します。


ここまで書いたらもう心が揺らぐことはないでしょう。苦笑


12/19 和光市民文化センター サンアゼリアにて、

14:00開演 / 13:15開場 でお待ちしております!