「織姫さまと彦星さま、年に一度しか逢えないなんてロマンチックだと思わない?」
「じゃあ俺らもそうするか?毎日会うのやめて、七夕スタイルのカップルでも始める?」
高校生3年生の7月。
サッカー部の地区大会が終わり、同級生は皆受験モードに突入しようとしていた頃のことだった。
「・・・・。」
「あ…ごめんごめん!冗談だよ!」
「冗談じゃないよ…」
「いや、ホントだって!コンビニアイス奢るから許して!ベルギーのチョコレートのやつ、メイ、あれ好きじゃん!ね!」
「ちがうの!」
明子は瞳を潤ませながら、僕に東京の私大を受験する予定であることを教えてくれた。
ちょうど明子のお父さんの転勤先が東京になったから、中学の時から憧れていた大学にチャレンジするそうだ。
「メイ、ごめん。俺、なんも知らないであんなこと言ったりして…」
「ううん、いいの。今までヒロくんになにも言ってなかったあたしがいけないの。でも、ちょっと嬉しかった!ヒロくん、地元の公立受けるって言ってたから、ああ、離ればなれになるんだ、って。別れなきゃいけないのかなって。ずっと悩んでたの。でも、七夕スタイルのカップル!いいなって思って。それって、あたしのことをずうっと好きでいてくれるってことでしょ?」
「うん。当たり前じゃんか!」
「うふふ♪あたし、絶対夏休みに帰ってくるから!ヒロくん、浮気なんかしちゃダメだよ!」
「気が早いなあ、メイは。まだ大学も決まってないのに。」
「うふふ♪いいの、いいの♪ありのぉーままのぉー ♪」
「またその歌かよ。よく飽きないなあ。」
「ねえねえ、もう一回観に行こうよ!」
「ええー、こんどは違うの観ようぜ。仮面ライダーとか!あっはは。」
「んもー!あたし仮面ライダーとかわかんないよー!」
この日が、明子と笑い合える最後の日になった。