思い出の夏:アート・ファーマー | かえるの音楽堂

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70年~80年のCROSSOVER(FUSION)とJAZZを中心にAORか
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どを紹介いたします。

THE SUMMER KNOWS : ART FARMER

(1976年)

 1970年台にあいミュージックと日本フォノグラムにより立ち上げられたジャズ・レーベルがEastwindです。Eastwindからリリースされた人は菊地雅章、渡辺貞夫、日野皓正、益田幹夫、本田竹曠、大野俊三、峰厚介、川崎燎ら日本のジャズミュージシャンや、シダー・ウォルトン、サム・ジョーンズ、グレイト・ジャズ・トリオ、ジョー・サンプルらアメリカで活躍するミュージシャンのアルバムを制作しました。またジャズのみならずレインボー名義で画期的なフュージョンの作品“クリスタル・グリーン”等もリリースしました。演奏や曲のクオリティは素晴らしいものでしたが、さらにトップ・デザイナー、トップ・フォトグラファーを起用したアート・ワークも特筆すべきものでした。ハードバップのトランぺッター、アート・ファーマーもこの時期3枚のアルバムをEastwindからリリースしました。今回紹介するアルバムではフリューゲル・ホーン1本に絞って演奏されており、リリカルで情性あふれるサウンドが美しい作品です。アートをサポートするメンバーはシダー・ウォルトン(P)、サム・ジョーンズ(b)、ビリー・ヒギンズ(ds)の3人です。録音はニューヨークのヴァンガード・スタジオにて行われました。

 

1.THE SUMMER KNOWS(思い出の夏)     

2.MANHA DO CARNAVAL(カーニヴァルの朝~「黒いオルフェ」から)

3.ALIE(アルフィー)

4.WHEN FALL IN LOVE(ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ)

5.DITTY(ディティ)

6. I SHOULD CARE(アイ・シュッド・ケア)

 

 1曲目「思い出の夏」はミッシェル・ルグラン作で同名の映画のために書かれた美しいバラードです。アートはフリューゲルホーンで、とてもリリカルに切々と歌い上げます。バックの3人のサポートも見事なお仕事です。2曲目「カーニヴァルの朝」L・ボンファ作のかっ映画“黒いオルフェ”の主題歌です。アートはミディアム・テンポのリラックスしたムードで吹いています。3曲目「アルフィー」はバート・バカラック作のバラード曲です。アートの美しいソロと、それに寄り添うようなシダーのピアノが素晴らしいです。4曲目「ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ」は、ヴィクター・ヤングの作曲、エドワード・ヘイマンの作詞のバラードで1952年の映画“One Minute Zero(邦題:零号作戦)”のために書かれたものです。映画では主演のロバート・ミッチャムとアン・ブライスが歌いました。アートがファースト・コーラスを吹き、それにシダーが続きます。5曲目「ディティ」はこのアルバム唯一のアートのオリジナルのブルース曲です。6曲目「アイ・シュッド・ケア」はA・ストーダルの作です。この曲ではアートに続くサムのベース・ソロが圧巻です。こういったアルバムは映画音楽やスタンダード中心で、ともすると安っぽいイージーリスニングな作りになってしまいますがそういったことなく芸術的とも言える美しくも素晴らしい作品となっています。アートのフリューゲルはもちろんのこと3人のサイドメン達の演奏も素晴らしいです。