ストローキン:リチャード・ティー | かえるの音楽堂

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STROKIN’:RICHARD TEE

(1978年)

 ワン・アンド・オンリーなピアニスト、リチャード・ティーのファースト・アルバムです。ボブ・ジェームスのレーベルTappan Zee Recordsの作品で、プロデュースもボブです。ジャケットの一面にゴルフボールが写っていて、”RICHARD TEE1” と文字が書かれています。ティーのファースト・アルバムということですね。ゴルフのティーとリチャード・ティーを引っかけた写真はなかなか洒落ています。Tappan Zeeのアルバムはどれもがデザイン的に優れたセンスの良いジャケットでした。本作品は当時STUFFや他のミュージシャンのアルバムなどで活躍していた時に録音したものです。リチャード・ティーと言えば、ファンキーなオクターブ奏法のバッキングや、繊細なエレピ、オルガンなどその音を聴いただけですぐに彼と分かります。またFUSIONやジャズだけでなくポール・サイモンなどのバックやソウル系アーティストのライブやレコーディングの数多くに参加していました。そんな忙しい合間に初のリーダー・アルバムとして発表したものです。曲は、リチャードのオリジナルや、スティービー・ワンダーの曲などカバー含め全7曲です。またキーボードだけでなく渋い声も聴かせています。リチャードはスティービーの曲をよくカバーしていました。参加メンバーは、マイケル・ブレッカー(ts)、ランディ・ブレッカー(tp)、バリー・ロジャース(tb)、トム・スコット(sax,Lyricon)、エリック・ゲイル(g)、ラルフ・マクドマルド(perc)、スティーブ・ガッド(ds)、チャック・レイニー(b)、ヒュー・マクラッケン(harmonica)他です。全員がいつも、どこかで一緒に仕事をしている仲間達です。

 

1. FIRST LOVE(ファースト・ラヴ)

2. EVERY DAY(エヴリ・デイ)

3. STROKIN'(ストローキン)

4. WANTED IT TOO(アイ・ウォンテッド・イット・トゥー)

5. VIRGINIA SUNDAY(ヴァージニア・サンデイ)

6. JESUS CHILDREN OF AMERICA(神の子供達)

7. TAKE THE A TRAIN(A列車で行こう)

 

 1曲目「FIRST LOVE(ファースト・ラヴ)」はベースで参加しているチャック・レイニーの作です。この曲はチャック・レイニーの1969年のリーダー作” COALITION(コーリション)”がオリジナルでした。オリジナルにもリチャード・ティーが参加しており、この時にはオルガンを弾いていました。シンプルなメロディ・ラインの曲をスピード感溢れるビートでファンキーに演奏しています。やはりファンキーなテナー・ソロはトム・スコットです。2曲目「EVERY DAY(エヴリ・デイ)」はリチャードとビル・ウィザースの共作です。ここではリチャードのヴォーカルがフィーチャーされます。エリック・ゲイルのソロ、スティーヴ・ガッドの刻むリズムと最高です。3曲目「STROKIN'(ストローキン)」もリチャードの作です。スティーヴ・ガッドとリチャードのコンビネーションが決まっています。テナー・ソロはマイケル・ブレッカーです。4曲目「WANTED IT TOO(アイ・ウォンテッド・イット・トゥー)」は名コンビ、ラルフ・マクドナルドとウィリアム・ソルターの作品です。ハーモニカ・ソロはヒュー・マクラッケンです。チャック・レイニーの職人のようなベース・プレイもさすがです。5曲目「VIRGINIA SUNDAY(ヴァージニア・サンデイ)」はリチャードの作品です。スローでメロウなリチャードのフェンダー・ローズ・ソロが聴けます。リリコンの演奏はトム・スコットです。6曲目「JESUS CHILDREN OF AMERICA(神の子供達)」はスティーヴィー・ワンダーの曲です。ランディ&マイケル・ブレッカー、バリー・ロジャースのブレッカー・ブラザースとジョン・ファデス、セルダン・パウエルの分厚いホーン・セクションをバックにリチャードが演奏します。ギター・ソロはエリック・ゲイルです。7曲目「TAKE THE A TRAIN(A列車で行こう)」はビリー・ストレイホーン作のデューク・エリントン楽団のオリジナル曲です。この曲は今回紹介するアルバムの最も聴きどころと言えます。まずスローなリチャードのピアノ演奏で始まります。そして中盤からスティーヴのドラムが入り、リチャードとのデュオ演奏になりアップテンポに演奏されます。とても2人だけの演奏とは思わせない激しい演奏が続き、終盤は再びスローなリチャードのソロになります。曲の構成も素晴らしいのですが、たったふたりでこれだけの演奏をしてしまうのですから凄いです。この曲はよくライヴでもふたりで演奏していました。ライヴでの演奏は2012年に発売されたリチャード・ティーの幻のライブ・アルバム”REAL TIME LIVE IN CONCERT 1992(リアル・タイム・ライブ・イン・コンサート1992)”に収録されており、こちらもぜひ聴いて頂きたい素晴らしい演奏です。リチャードは当時、ジョー・サンプルと人気を2分しておりフュージョン・キーボード奏者の東西の横綱と言われていました。リチャードは膨大な数のレコーディングに参加していますが、多忙な故に彼自身のリーダー作は5枚と少なかったです。その中でもこのファースト・アルバムは完成度の高さといい最高傑作と言ってもよいでしょう。CDを聴くと、リチャードのあの笑顔を思い出します。彼の残した演奏は永遠ですね。