MULTIPLICATION : ERIC GALE
（１９７７年）
1970年代後半から1980年代前半にかけて活動した、アメリカのフュージョン・バンド”STUFF”。メンバーは、リーダーのゴードン・エドワーズ、コーネル・デュプリー、エリック・ゲイル、リチャード・ティー、スティーヴ・ガッド、クリストファー・パーカーと、ツイン・ドラム、ツイン・ギターが特色でした。メンバー全員がニューヨークを中心に活動していた有能なスタジオ・ミュージシャンで、彼らの生み出すグルーブは唯一無二なサウンドでした。ツイン・ギターのひとりエリック・ゲイルの演奏は聴けばすぐにエリックと分かる強烈な個性を持っていました。彼の愛器”ギブソンSuper400”から生み出される音色は本当に独自の世界を持っていました。エリックはその生涯で12枚ほどのオリジナル作品を発表しています。1971年からジャマイカに移り住んでいた時期にファースト・アルバム”ネグリル”を制作しました。このアルバムはモノラル盤で長らく日本でも発売されず幻のアルバムでした。そしてメジャー・デビューとなる”フォアキャスト”をクリード・テイラーのKUDUレーベルから発表し、その後CBSに移籍して”ジンセン・ウーマン”を発表しました。続くCBS移籍第２弾のリーダー・アルバムが、今回紹介する”マルチプリケイション”です。プロデュースは前作同様にボブ・ジェームスが担当しました。参加ミュージシャンはSTUFFの同僚リチャード・ティー(keyb)、スティーヴ・ガッド(ds)の他ボブ・ジェイムス (keyb)、ラルフ・マクドナルド(perc)、アルフォンソ・ジョンソン、ウィリー・ウィークス(b)、アンドリュー・スミス(ds)、ジョン・ファディス、ルー・ソロフ、マーヴィン・スタン、ランディー・ブレッカー(tp)、デヴィッド・テイラー、ウェイン・アンドレ(tb)、 グローヴァー・ワシントン、Jr.、エディ・ダニエルズ(ts)、ハンク・クロフォード、ジェリー・ドジオン(as)といったお馴染みの旧知のミュージシャン達です。
1.OH! MARY DON'T YOU WEEP（オー！マリー・ドンチュー・ウィープ）
2.THUMPER（サンパー）
3.MULTIPLICATION（マルチプリケイション）
4.MORNING GLORY（モーニング・グローリー）
5.GYPSY JELLO（ジプシー・ジェロ）
6.SOMETHING I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD（時には母のない子のように）
曲は全６曲です。１曲目の「OH! MARY DON'T YOU WEEP（オー！マリー・ドンチュー・ウィープ）」は黒人霊歌でビル・イートンがアレンジを担当しています。ゴスペル調のバックコーラスから始まります。そしてエモーショナルなエリックのギターを聴くことができます。最初からエリックの世界ですね。2曲目「THUMPER（サンパー）」はエリックのオリジナルです。エリックにリチャード・ティー、スティーヴ・ガッドの3人が揃ってSTUFFを彷彿されるサウンドです。これまた渋いテナー・ソロはグローヴァー・ワシントン、Jr.です。アルバム・タイトル3曲目「MULTIPLICATION（マルチプリケイション）」もゲイルの作です。ベースはアルフォンソ・ジョンソンです。4曲目「MORNING GLORY（モーニング・グローリー）」は、リー・リトナー作です。オリジナルはリー・リトナー＆ジェントル・ソウツのダイレクト・カッティング・アルバム「シュガー・ローフ・エクスプレス」に収録されており、オリジナルではリトナーとエリック・ゲイルのツイン・ギターでした。またリー・リトナーは78年のアルバム”キャプテンズ・ジャーニー”ではヴォーカル・バージョンで演奏していました。5曲目「GYPSY JELLO（ジプシー・ジェロ）」はリチャード・ティーの作です。エリックのエモーショナルな演奏が聴けます。中間部のテナー・ソロはグローヴァー・ワシントン、Jr.です。6曲目「SOMETHING I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD（時には母のない子のように）」も黒人霊歌です。ゲイルはクリーンな音色で演奏しています。サックスはハンク・クロフォードです。エリック・ゲイルは数え切れないほど多くのフュージョンやポップス、ソウルのアルバムに参加していますが、そういったアルバムに比べ、当然ながらソウルフルでワン・アンド・オンリーな彼のギターをより多く堪能できます。