ささやきと叫び:エスター・フィリップス | かえるの音楽堂

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70年~80年のCROSSOVER(FUSION)とJAZZを中心にAORか
らSOULまで、かえるのお勧めのGood Music Albumや音楽情報な
どを紹介いたします。

FROM A WHISPER TO A SCREAMESTHER PHILLIPS

(1972年)

 クリード・テイラーの創設したジャズ・レーベルCTI傘下のKUDUは、ソウルやR&B寄りのブラック・フィーリング溢れる作品を製作していました。KUDUではグローヴァー・ワシントンJr.やハンク・クロフォードなどがソウルやR&Bをベースとしたクロスオーバー作品を製作しています。珍しいところではジャズ・ベースのロン・カーターがKUDUからディスコ、ソウルっぽい作品を発表しています。CTIKUDUでの多くの作品にフィーチャーされているシンガーのひとりにエスター・フィリップスがいます。エスターは194914歳の時にデビューを果たし天才少女と言われました。彼女はデビュー以後、R&B・ポップス・カントリー・ジャズ等様々なジャンルをの音楽を表現しました。またKUDUでは後期になるとよりディスコっぽい作品を製作していました。今回紹介するアルバムは、彼女の持つソウルフルな面が最も出た一枚です。エスターはKUDUから、本作品「FROM A WHISPER TO A SCREAM(ささやきと叫び)」以下5枚のアルバムを発表しています。本作品のアレンジは、ジェームス・ブラウン・バンドのサックス奏者にして、後にJBホーンズで活躍したピー・ウィー・エリスが担当しています。ストリングス・アレンジではドン・セベスキーも参加しています。バックのメンバーはリチャード・ティー(keyb)、コーネル・デュプリー、エリック・ゲイル(g)、ゴードン・エドワーズ(ds)、バーナード・“プリティ”パーディー(ds)、ハンク・クロフォード(as)、デイブ・リーブマン(bsfl)、アイアート(perc)他です。なんとSTUFFのメンバーが4人参加しているのですね。ドラムのバーナード・“プリティ”パーディーもSTUFFの前身であるゴードン・エドワーズのバンドに参加していましたし、本当にこのメンバーを見ただけで私はこのアルバムを買いました。

 

01.ME IS WHERE THE HARTED IS(家へは帰れない)

02.FROM A WHISPER TO A SCREAM(ささやきと叫び)

03.TO LAY DOWN BESIDE YOU(あなたのそばに)

04.THAT'S ALL RIGHT WITH ME(ザッツ・オールライト・ウィズ・ミー)

05.'TILL MY BACK AIN'T GOT NO BONE(ティル・マイ・バック・エイント・ゴット・ノー・ボーン)

06.SWEET TOUCH OF LOVE(恋のスイート・タッチ)

07.BABY, I'M FOR REAL(ベイビー・アイム・フォー・リアル)

08.YOUR LOVE IS SO DOGGONE GOOD(くやしいけれども)

09.SCARRED KNEES(スケアード・ニー)

 

 曲は全9曲です。、ピー・ウィー・エリスのアレンジによりソウルフルでアーシーなサウンドをバックにエスターの独特な歌声はブラック・フィーリング溢れています。1曲目「ME IS WHERE THE HARTED IS(家へは帰れない)」は黒人の吟遊詩人” ギル・スコット・ヘロン”の作です。表題曲の2曲目「FROM A WHISPER TO A SCREAM(ささやきと叫び)」と6曲目「SWEET TOUCH OF LOVE(恋のスイート・タッチ)」はアラン・トゥーサンの作品です。3曲目「TO LAY DOWN BESIDE YOU(あなたのそばに)」はニール・ヤングやボブ・ディランをはじめ数多くのアーティストの作品にセッション・ベーシストとして参加していたティム・ドラモンドの作品です。4曲目「THAT'S ALL RIGHT WITH ME(ザッツ・オールライト・ウィズ・ミー)」は、ブルース歌手アーサー・クルーダップが書き、最初に演奏した曲です。5曲目「'TILL MY BACK AIN'T GOT NO BONE(ティル・マイ・バック・エイント・ゴット・ノー・ボーン)」はサザン・ソウルのエディ・フロイドの作品です。7曲目「BABY, I'M FOR REAL(ベイビー・アイム・フォー・リアル)」はマーヴィン・ゲイの作のカバーです。8曲「YOUR LOVE IS SO DOGGONE GOOD(くやしいけれども)」はレイ・チャールズのナンバーですが、私はこの曲とラスト9曲目「SCARRED KNEES(スケアード・ニー)」が一番好きですね。バックの演奏もSTUFFらしくて良いです。決して派手ではありませんが、ブルージーでソウルフルなクロスオーバー作品です。このアルバムでエスター・フィリップスはグラミー賞のベスト女性R&Bヴォーカル・パフォーマンス部門でノミネートされましたが惜しくも受賞は逃しました。