テンダリー:ジョージ・ベンソン | かえるの音楽堂

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70年~80年のCROSSOVER(FUSION)とJAZZを中心にAORか
らSOULまで、かえるのお勧めのGood Music Albumや音楽情報な
どを紹介いたします。

TENDERLY : GEORGE BENSON

(1989年)

 ジョージ・ベンソンは、1964年にファーストアルバム発表後、68年にはクリード・テイラーのプロデュースのもとでA&M/CTIよりアルバムを製作しました。クリード・テイラーがCTIレコードを設立して独立してからは、同レーベルに移籍しリーダー作を発表しました。この当時はどちらかというと第二のウェス・モンゴメリーといったイメージで、ライトなジャズとかクロスオーバーのはしりのような作品でした。そして1976年にワーナーに移籍しトミー・リピューマのプロデュースにより“BREEZIN(ブリージン)”の大ヒットで、ジョージ・ベンソンを知らないポップスファンの間でもアルバムが売れました。ジョージはこのアルバムの中の曲“THIS MASQUERADE(マスカレード)”で見事なヴォーカルを披露し、一躍シンガーとして売れっ子になりました。CTI時代やそれ以前も歌は歌っていましたが、“歌の上手いジャズ・ギタリスト”くらいにしか見られていませんでした。“THIS MASQUERADE(マスカレード)”の大ヒットによりシンガーとしての地位を確立し、その後のアルバムでも歌の比率が高くなっていきました。そして1980年にクインシー・ジョーンズをプロデューサーにアルバム“GIVE ME THE NIGHT(ギブ・ミー・ザ・ナイト)”を発表し、“ソウル・シンガー”としてブラコン・チャートを賑わしました。そんな色々な顔を持つジョージ・ベンソンが、80年代最後の年に再びトミー・リピューマ・プロデュースのもと、ジャス・シンガー/ジャズ・ギタリストとしてのジョージ・ベンソンに焦点を絞った作品を発表しました。参加メンバーもマッコイ・タイナー(P)、ロン・カーター(B)、アル・フォスター(DS)といったジャズ界の重鎮が顔を揃えています。ストリングやホーンアレンジはマーティー・ペイチが担当してます。アルバムの選曲にあたったのは、ジョージとトミー・リピューマ、そして3人です。エンジェル・ラングロブはジョージとは10年来の音楽仲間であり、以前からベンエンジェル・ラングロブのソンの編曲を行ってきた人です。

 

1. YOU DON’T KNOW WHAT LOVE IS(恋を知らないあなた)

2. STELLA BY STARLIGHT(星影のステラ)

3. STRADUST(スターダスト)

4. AT THE MAMBO INN(マンボ・イン)

5. HERE,THERE AND EVERWHERE(ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア)

6. THIS IS ALL I ASK(オール・アイ・アスク)

7. TENDERLY(テンダリー)

8. I COULD WRITE A BOOK(アイ・クッド・ライト・ア・ブック)

 

 ジョージはスタンダード曲8曲のうち4曲で歌っています。そして残り4曲ではジャズ・ギタリストとしての実力を100%発揮しています。1曲目「YOU DON’T KNOW WHAT LOVE IS(恋を知らないあなた)」はジャズのスタンダード・ナンバーでドン・レイとジーン・ドポールが作ったものです。 1941年のミュージカル映画「Keep 'em flying」に使われました。2曲目「STELLA BY STARLIGHT(星影のステラ)」は1944年ヴィクター・ヤング作曲で、映画『呪いの家(The Uninvited)』のテーマ曲です。原曲はインストゥルメンタルでしたが、1946年にネッド・ワシントンが歌詞をつけました。この曲も多くのジャズ・ミュージシャンが演奏しておりジャズ・スタンダード・ナンバーとなりました。3曲目「STRADUST(スターダスト)」はホーギー・カーマイケルが1927年に発表したジャズのスタンダード・ナンバーです。ここでもジョージの歌が聴けます。4曲目「AT THE MAMBO INN(マンボ・イン)」はマリオ・ボーザが作曲したアフロ・キューバン・ジャズの名曲です。5曲目「HERE,THERE AND EVERWHERE(ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア)」はレノン&マッカートニーの曲ですが、ジョージが歌うこの曲は完全にジャズ・スタンダードと化しています。ジョージは1969AM/CTI時代にはビートルズ曲集「THE OTHER SIDE OF ABBEY ROAD」を製作しました。6曲目「THIS IS ALL I ASK(オール・アイ・アスク)」はゴードン・ジェンキンス作曲で、ここでもジョージの歌が聴けます。7曲目「TENDERLY(テンダリー)」はアルバムタイトル曲で、作曲ウォルター・グロス、作詞ジャック・ローレンスです。初演したのが22歳の若きサラ・ヴォーンで、この歌が彼女の初ヒットとなりました。他にナット・キング・コールなど多くのミュージシャンが演奏しています。8曲目「I COULD WRITE A BOOK(アイ・クッド・ライト・ア・ブック)」は、1940年のジーン・ケリー主演のミュージカル ”Pal Joey(パル・ジョイ)”の曲でリチャード・ロジャース作曲です。ジョージは歌えばナット・キング・コールばりの美声を聴かせてくれますし、ギターを弾けば最高のジャズ・ギタリストとして開放感あふれる演奏を聴かせてくれます。バックのマッコイ・タイナーのリリカルなバッキングも素晴らしいですね。この作品はジョージ・ベンソンが久々にジャズを演奏したアルバムであり、彼の原点に帰ってきた作品と言えます。

 

George Benson & McCoy Tyner Trio - Stella by Starlight