アビー・ロード:ジョージ・ベンソン | かえるの音楽堂

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079-THE OTHER SIDE OF ABBEY ROAD













THE OTHER SIDE OF ABBEY ROAD : GEORGE BENSON
(1969年)
 1969年9月にビートルズの“アビー・ロード”が発売されました。そして今回紹介するジョージ・ベンソンのカバー・アルバム“THE OTHER SIDE OF ABBEY ROAD (アビー・ロード)”が録音されたのが1969年10月で、ビートルズのアルバムの発売から1ヶ月後という早業でした。録音も1969年10月22,23日、11月4,5日と4日間で制作しています。カバージャケットの写真撮りやデザインも含めるとかなり異例の早い制作であったことが想像されます。ビートルズのカバーというと同じくクリード・テイラーの制作した、ウェス・モンゴメリーのアルバム“A DAY IN THE LIFE(ア・デイ・イン・ザ・ライフ)”のアルバム・タイトル曲が有名です。このアルバムもビートルズのアルバムの発売と同じ月に発売しており、やはりかなり早い制作でした。ポップスの曲のカバーを素早いタイミングでカバーするのは、こういった曲が旬のうちにカバーして話題に乗ってしまおうといったことなんでしょうか。それとジョージ・ベンソンの場合は1968年にウェス・モンゴメリーが急死したことも理由のひとつではないかと思います。クリード・テイラーとしてはウェスの大ヒットもあり、早く後釜を育てないといけない。そこで彼はジョージ・ベンソンの才能に目を付けました。そしてウェスのヒットと同じように当時大人気のビートルズのカバーを制作しました。ビートルズの“アビー・ロード”は全17曲でしたが、ジョージ・ベンソンのアルバムではこの中から10曲をピックアップしメドレー形式をメインに制作しました。参加メンバーはジョージ・ベンソン(g,vo)、フレディ・ハバード(tp),ウェイン・アンドレ(tb,euphonium)、ヒューバート・ロウズ(fl)、ソニー・フォーチュン(as)、ハービー・ハンコック、ボブ・ジェームス、アニー・ヘイズ(p,keyb)、ロン・カーター、ジェリー・ジェモット(b)、アイドリス・ムハマッド、エド・ショーネシー(ds)、レイ・バレット、アンディ・ゴンザレス(perc)、ドン・セベスキー(arr.)他です。70年代以降CTIやフュージョン・シーンで活躍した人達が参加していることも注目です。

1. Golden Slumbers/You Never Give Me Your Money(ゴールデン・スランバー/ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー)
2. Because/Come Together(ビコーズ/カム・トゥゲザー)
3. Oh! Darling(オー!ダーリン)
4. Here Comes The Sun/I Want You (She's So Heavy)(ヒア・カムズ・ザ・サン/アイ・ウォント・ユー)
5. Something/Octopus's Garden/The End(サムシング/オクトパス・ガーデン/ジ・エンド)

 1曲目「Golden Slumbers(ゴールデン・スランバー)」はバロック風ストリングスに乗ってジョージ・ベンソンのヴォーカルからスタートします。いかにもドン・セベスキーらしいセンスの良いアレンジです。メドレーで「You Never Give Me Your Money(ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー)」に続き、ストリングスをバックのベンソンの歌うようなギター・ソロが演奏されます。そして再びベンソンのヴォーカル「Golden Slumbers(ゴールデン・スランバー)」で終わります。2曲目「Because/Come Together(ビコーズ/カム・トゥゲザー)」はイントロとして「ビコーズ」が演奏され、「カム・トゥゲザー」へと続きます。1969年の録音ですがすでにサウンドはフュージョンしています。バックのフルートやキーボードもいかしています。3曲目「Oh! Darling(オー!ダーリン)」ではジョージ・ベンソンのジャジーなヴォーカルが聴き所です。もちろんベンソンのギター・ソロもたっぷり聴けます。4曲目「Here Comes The Sun/I Want You (She's So Heavy)(ヒア・カムズ・ザ・サン/アイ・ウォント・ユー)」アコピのイントロからストリングスを加えた演奏をバックにベンソンのリリカルなヴォーカルでスタートします。そしてメドレーの「アイ・ウォント・ユー」へと続きます。ここではヴォーカル、ギター、トランペット、ギターとソロが聴けます。5曲目「Something/Octopus's Garden/The End(サムシング/オクトパス・ガーデン/ジ・エンド」は再びストリングスからスタートしベンソンのギターがプレイされます。そしてエフェクターの掛かったベンソンのヴォーカルが入り、今度はベンソンのオクターブ奏法が披露されます。これはウェスへのトリビュートか。そして高速ギターとパーカッションで“ジ・エンド”は最後はそのままフェイドアウトします。超名盤ってわけではないのですが、隠れ名盤との言えるなかなかの作品です。数あるビートルズ・カバー作品の中でも1,2の出来ではないでしょうか。この作品を含むクリード・テイラーの60年代後半のA&M/CTIシリーズは、フュージョンやスムース・ジャズの原点と言えますね。そしてこの後ジョージ・ベンソンは76年にプロデューサー、トミー・リピューマにより制作された「ブリージン」で、歌の上手いジャズ・ギタリストからヴォーカリストとして大ブレイクしました。