バッド・ベンソン:ジョージ・ベンソン | かえるの音楽堂

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BAD BENSON : GEORGE BENSON

(1974年)

ジョージ・ベンソンはまさしくフュージョンの歴史を変えたミュージシャンと言えます。彼のヒット作“Bleezin‘(ブリージン)”がなかったなら、フュージョンやスムース・ジャズの流れは大きく変わっていたかもしれません。ジョージはこのアルバムで“歌うギタリスト”から“ヴォーカリスト”としての地位を獲得しました。ジョージは1943年にペンシルヴァニア州ピッツバーグで生まれ、すでに4歳の時から歌い始め地元のコンテストで優勝しました。だから彼は決して突然歌を始めたわけでなくヴォーカリストとしてのキャリアは充分あったわけです。そして父親の手ほどきでウクレレを始め、11歳の時にはギターを始めました。高校で自己のバンドを結成しましたが、その頃聴いたウェス・モンゴメリーに刺激を受けジャズにのめり込みました。62年にオルガン奏者ジャック・マクダフのグループに参加し、64年にプレステッジから初リーダー・アルバムを発表しました。67年にヴァーブと契約しアルバムを発表しましたが、プロデューサーのクリード・テイラーが彼に目を付け契約しました。68年のウェス・モンゴメリーの急死によりポスト・モンゴメリーの筆頭として注目を集めました。70年にクリード・テイラーが独立してCTIレコードを創設すると、ベンソンもCTIの専属として契約しアルバム“BEYOND THE BLUE BENSON(ブルー・ベンソン)”を発表しました。CTIではヴォーカルではなくギタリストとして活躍しました。今回紹介するアルバム“BAD BENSON(バッド・ベンソン)”はCTI移籍4作目となる作品で、アレンジャーにドン・セベスキーを迎えバックにはフィル・アップチャーチ(g、b、perc)、ケニー・バレル(p)、ロン・カーター(b)、スティーヴ・ガッド(ds)が参加しています。

 

1.TAKE FIVE(テイク・ファイヴ)

2.SUMMER WISHES,WINTER DREAMS(サマー・ウィッシング、ウィンター・ドリームズ)

3.MAY LATIN BROTHER(マイ・ラテン・ブラザー)

4.NO SOONER SAID THAN DONE(ノー・スーナー・セッド・ザン・ドーン)

5.FULL COMPASS(フル・コンパス)

6.THE CHANGING WORLD(チェンジング・ワールド)

 

1曲目「TAKE FIVE(テイク・ファイヴ)」はデイブ・ブルーベックとポール・デスモンドの代表作にしてジャズのスタンダード・ナンバーです。お馴染みのメロディと変拍子の曲をドン・セベスキーが素晴らしいアレンジを施しています。フィル・アップチャーチの強力なリズム・ギターとスティーヴ・ガッドのドラムスをバックにベンソンがハードに弾きまくります。途中のケニーバレルのピアノのアドリブも鯖らしい演奏で曲を引き立ててします。2曲目「SUMMER WISHES,WINTER DREAMS(サマー・ウィッシング、ウィンター・ドリームズ)」はストリングスのイントロに続いてベンソンのメロウなギターが聴けるCTIらしいイージー・リスニング・ジャズの世界です。3曲目「MAY LATIN BROTHER(マイ・ラテン・ブラザー)」はジョージ・ベンソン作のラテンタッチのジャズ・フュージョンです。ラテン・パーカッションはフィル・アップチャーチです。ベンソンのテクニックを堪能きます。スティーヴ・ガッドのへヴィーなドラムも素晴らしいし、ケニー・バレルのエレピも最高ですね。4曲目「NO SOONER SAID THAN DONE(ノー・スーナー・セッド・ザン・ドーン)」はフィル・アップチャーチの作品です。フィルらしいソウルフルなグルーヴが心地良い曲です。フィルのワウワウを使ったリズム・ギターとガッドのコンビネーション、ケニー・バレルのエレピをバックにベンソンのギターが歌いまくっています。5曲目「FULL COMPASS(フル・コンパス)」もフィル・アップチャーチの曲です。アグレッシブでハードなフィル・アップチャーチのベースとスティーヴ・ガッドのドラムをバックにベンソンもハードに攻めます。名手達の熱い演奏が全編に渡り繰り広げられます。6曲目「THE CHANGING WORLD(チェンジング・ワールド)」はジョージ・ベンソンのオリジナルです。フワフワと浮遊感のあるドン・セベスキーのアレンジの中でベンソンが泣きのギターを聴かせてくれます。ロン・カーターのベースとケニー・バロンのエレピがバックでベンソンを支えます。このアルバムはタイトル通り“BAD=いかす”ベンソンが思う存分ギタリストとして表現しています。自分の名前をアルバム・タイトルにしているだけあって力作と言えます。ヴォーカリストとしてクローズ・アップされることの多いベンソンのギタリストとしての演奏を堪能できるアルバムです。