ウィッシュフル・シンキング:アール・クルー | かえるの音楽堂

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WISHFUL THINKING : EARL KLUGH

(1984年)

 アコースティック・ギター・フュージョンの第一人者アール・クルーの1984年の作品です。アール・クルーは、10代の頃からプロとしてレコーディングに参加していました。73年には「リターン・トゥ・フォー・エヴァー」に短期間ですが参加していたこともあります。そんな彼が大ヒットし世に知られるようになったのは、デイブ・グルーシンのアレンジとプロデュースによる作品です。70年代当時のフュージョン・シーンは、エリック・ゲイルやコーネル・デュプリー、ラリー・カールトン、リー・リトナー、ジョン・トロペイといった、主にエレクトリック・ギターをプレイする人達が活躍していました。そんな中で、ナイロン弦によるアコースティック・ギターの柔らかな音色のフュージョン・アルバムはすごく新鮮でした。またデイブ・グルーシンの素晴らしいアレンジにより、作る出すアルバムは大ヒットしました。デイブと並ぶ名アレンジャー・ボブ・ジェームスは、79年にアール・クルーとのコラボ作「ONE ON ONE(ワン・オン・ワン)」を製作し、このアルバムは1980年のグラミー賞で「ベスト・ポップス・インストゥルメンタル・パフォーマンス」を受賞しています。ボブ・ジェームスはアール・クルーと組んで「Two of a Kind(トゥ・オブ・ア・カインド)」「Cool(クール)」と続く作品を製作しています。それだけ二人のアレンジャーに高く評価されていたということです。そして今回紹介のアール・クルー10作目のオリジナル・アルバムでは、ジョニー・マンデル、ドン・セベスキー、デイブ・マシューズとジャズ界を代表するアレンジャーを使い分けており、それぞれ聴き比べてみるのも面白いと思います。このアルバムのプロデュースはアール・クルー自身が行っています。参加メンバーは、アール・クルー(g)、デヴィッド・サンボーン(as)、エリック・ゲイル、カルロス・リオス、フィル・アップチャーチ、ドナルド・グリフィン、ジョー・ベック(el-g)、バリー・イーストモンド、ロニー・フォスター(keyb)、ロン・カーター(b)、パウリーニョ・ダ・コスタ(perc)他と豪華メンバーとなっています。何と言っても注目はギタリストの多さです。アールをサポートするサイド・ギタリスト達はエレクトリック・ギターで、こういった名手達を効果的に上手く使っています。

 

.WISHFUL THINKING(ウィッシュフル・シンキング)

.TROPICAL LEGS(トロピカル・レッグス)

.ALL THE TIME(オール・ザ・タイム)

.A NATURAL THING(ア・ナチュラル・シング)

.ONCE AGAIN(ワンス・アゲイン)

.TAKE IT FROM THE TOP(テイク・イット・フロム・ザ・トップ)

.THE ONLY ONE FOR ME(ザ・オンリー・ワン・フォー・ミー)

.RIGHT FROM THE START(ライト・フロム・ザ・スタート)

 

 アルバム・タイトルの1曲目WISHFUL THINKING(ウィッシュフル・シンキング)」はそのまま歌詞を付けてもいいような、美しく何か懐かしい感じの曲です。ここでは、エリック・ゲイルがサイド・ギターを弾いています。2曲目「TROPICAL LEGS(トロピカル・レッグス)」ではカルロス・リオスが参加しています。中盤からの短いソロに注目。3曲目「ALL THE TIME(オール・ザ・タイム)」ロニー・フォスターのオルガンに乗って、アコースティック・ギターでメロディを弾きます。ここではフィル・アップチャーチとドナルド・グリフィンが参加しています。アレンジはジョニー・マンデルです。4曲目A NATURAL THING(ア・ナチュラル・シング)」はデイブ・マシューズのアレンジです。ストリングスに乗って、クルーのアコースティック・ソロが美しいです。5曲目「ONCE AGAIN(ワンス・アゲイン)」はドン・セベスキーのアレンジです。ここでもオーケストラをバックに美しいソロを聴かせてくれます。6曲目「TAKE IT FROM THE TOP(テイク・イット・フロム・ザ・トップ)」は再びデイブ・マシューズの編曲です。ビッグ・バンド風なオープニングに続き、オーケストラをバックにクルーのソロです。7曲目「THE ONLY ONE FOR ME(ザ・オンリー・ワン・フォー・ミー)」中盤で聴けるデヴィッド・サンボーンのアルト・ソロに注目です。ラスト8曲目「RIGHT FROM THE START(ライト・フロム・ザ・スタート)」もデイブ・マシューズのアレンジです。スローなテンポから途中でアップ・テンポになります。アコースティック・ギターというと単調になりがちですが、豪華メンバーをうまく使い分け最後まで飽きさせません。アール・クルーの80年代の大ヒット作品です。