テンダネス:アル・ジャロウ | かえるの音楽堂

かえるの音楽堂

70年~80年のCROSSOVER(FUSION)とJAZZを中心にAORか
らSOULまで、かえるのお勧めのGood Music Albumや音楽情報な
どを紹介いたします。

107-Tenderness













TENDERNESS : AL JARREAU
(1993年)
 驚異のヴォーカル・パフォーマー、歌手アル・ジャロウのスタジオ・ライヴ・アルバムです。ロサンゼルスのスタジオにファンや友人達を招き入れライヴ形式で録音したものです。(1曲のみニューヨークで録音)バックのメンバーはマーカス・ミラー(b、keyb、produce)、スティーヴ・ガッド(ds)、ジョー・サンプル(p、el-P)、ニール・ラーセン(hammond B3 org、el-P)、エリック・ゲイル(g)、フィリップ・セス(synth)、パウリーニョ・ダ・コスタ(perc)、マイケル・パッチズ・スチュワート(tp)、デイヴィッド・サンボーン(as)、ケニー・ギャレット(as)、ポール・ジャクソンJr.(g)、マイケル・ブレッカー(ts)、ジェイソン・マイルス(synth)、バシリ・ジョンソン(perc)、ドン・アライアス(perc)、キャスリン・バトル(vo)、ステイシー・キャンベル、ジェフリー・ラムゼイ、シャロン・ヤング(back vo)と当時のフュージョン・シーンのオール・スター・キャストです。ニューヨーク録音の4曲目ではキャスリン・バトルをゲストに招いています。驚異のヴォイス・アーティストふたりのパフォーマンスに注目です。またエリック・ゲイル、ジョー・サンプルと言った名手達がまさに歌伴のお手本のようなパフォーマンスを聴かせてくれます。バックの演奏がヴォーカルと対等の立場でパフォーマンスを繰り広げます。曲はこれまでのアル・ジャロウのアルバム収録曲やカバー曲の全12曲です。

01.Mas Que Nada(マシュ・ケ・ナダ)
02.Try A Little Tenderness(トライ・ア・リトル・テンダネス)
03.Your Song(ユア・ソング)
04.My Favorite Things(マイ・フェイヴァリット・シングズ)
05.She's Leaving Home(シーズ・リーヴィング・ホーム)
06.Summertime - from "Porgy and Bess"(サマータイム)
07.We Got By(ウィ・ガット・バイ)
08.Save Your Love For Me(セイヴ・ユア・ラヴ・フォー・ミー)
09.You Don't See Me(ユー・ドント・シー・ミー)
10.Wait for the Magic(ウェイト・フォー・ザ・マジック)
11.Dinosaur(ダイナソー)
12.Go Away Little Girl(ゴー・アウェイ・リトル・ガール)

 1曲目「Mas Que Nada」はセルジオ・メンデス&ブラジル’66の1966年のヒット曲です。人間パーカッションとも言われるアルのパフォーマンスが繰り広げられます。スティーヴ・ガッドとマーカス・ミラーの強力なリズム・セクション、ジョー・サンプルのピアノ・ソロがまた素晴らしいです。躍動的なリズムとゴージャスなコーラスに乗ってパーカッシブにアル・ジャロウが歌いまくります。2曲目「Try A Little Tenderness」はオーティス・レディングの歌唱でも知られる、ジャズやR&Bのスタンダード・ナンバーです。こういったバラードでの抑え気味の歌唱でも素晴らしいパフォーマンスを演じます。バックのジョー・サンプルのエレピ、ブルージーなエリック・ゲイルのギターが素晴らしいです。3曲目「Your Song」はエルトン・ジョンの大ヒット曲です。アル・ジャロウは1976年にアルバム“GLOW”でこの曲をカバーしています。アル・ジャロウは感情豊かに歌い上げます。ジョー・サンプルのピアノ、ガッドのドラムも素晴らしいです。欲を言えばアル・ジャロウがちょっとやりすぎと思うくらい歌いすぎな所かな、まあそれがアル・ジャロウの個性といってしまえばそれまでですが、もう少し抑えて歌えばもっと感動的だったと思います。4曲目「My Favorite Things」はミュージカル“SOUND OF MUSIC”の挿入歌で、ジョン・コルトレーンの演奏が有名です。この曲のみニューヨークで録音されたものです。女性オペラ歌手キャスリン・バトルとのデュエット曲です。二人の歌唱が素晴らしいのですが、それに続くマイケル・ブレッカーのテナー・ソロがまた素晴らしく、この曲の聴き所となっています。このアルバムの中でも一番のお勧めと言えます。5曲目「She's Leaving Home」はレノン&マッカートニー作のビートルズのカバーです。アルはゆったりとしたワルツ・バラードを淡々と歌います。ニール・ラーセンのハモンド・オルガンがよいバッキングをしています。マイケル・パッチズ・スチュワートのミュート・トランペットもよい味付けをしています。6曲目「Summertime」はジョージ・ガーシュイン作のスタンダード・ナンバーをラテン・タッチにアレンジしています。パウリーニョ・ダ・コスタのパーカッションとガッドのドラムが流石の活躍です。ただ個人的にはこの曲のアレンジとしてはちょっとやりすぎかなと思います。7曲目「We Got By」はアル・ジャロウのオリジナルで彼のデビュー・アルバムのタイトル曲です。イントロからすぐに分かるデヴィッド・サンボーンのアルトをフィーチャーしたバラード・ナンバーです。除々に盛りあがるヴォーカルとそれに絡むアルトのパフォーマンスが素晴らしいです。8曲目「Save Your Love For Me」バディ・ジョンソンのバラード曲で、ここではケニー・ギャレットのアルトとマイケル・パッチズ・スチュワートのミュート・トランペットがフィーチャーされます。9曲目「You Don't See Me」もアル・ジャロウのオリジナル曲です。アル・ジャロウのヴォーカル・パーカッションが炸裂です。それに絡むマーカスのスラップ・ベース!いや本当に格好いい!10曲目「Wait for the Magic」はこのアルバムのための書き下ろし曲です。素晴らしいメロディのバラード曲です。情感込めて歌うアル・ジャロウのヴォーカルが素晴らしいです。11曲目「Dinosaur」はアル・ジャロウ、マーカス・ミラーらの共作でやはり書き下ろしの曲です。ヴォーカルにエフェクターをかけています。アル・ジャロウのヴォーカルにエフェクターは必要ないと思います。ちょっとやりすぎかなと思いますね。12曲目「Go Away Little Girl」はキャロル・キング&ジェリー・ゴフィン作のポップ・スタンダードです。アルがバラード・ナンバーをじっくりと聴かせてくれます。アル・ジャロウのヴォーカル・パフォーマンスを充分に引き出し、またバックのミュージシャンのサポートも素晴らしいベスト・ライブ・アルバムです。ライブとは言えスタジオなので音も悪くないし買って損しない作品です。