ジンセン・ウーマン:エリック・ゲイル | かえるの音楽堂

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106-ジンセン・ウーマン













GINSENG WOMAN : ERIC GALE
(1977年) 
 伝説のバンド“STUFF”のメンバーとしてコーネル・デュプリーとともにツイン・ギターの一翼として活躍したもうひとりのギタリスト、エリック・ゲイルのサード・アルバムです。エリックは70年代初頭に一時ジャマイカに移り住み、その際に幻のファースト・アルバム“Negril”を録音しました。その後クリード・テイラーのKUDUレーベルでセカンド・アルバム“ FORECAST(フォアキャスト)”を制作しました。エリックは70年代には、CTIあるいはKUDUレーベルで多くのアルバムに参加し名演奏を残していますが、CTIでは自身のアルバムは“ FORECAST(フォアキャスト)”の1枚のみで、その後コロンビア・レーベルに移籍しました。そして移籍第一弾として発表されたのが今回紹介する作品“GINSENG WOMAN(ジンセン・ウーマン)”です。この作品のプロデューサーはCTI時代からの仲間でもあるボブ・ジェームスが担当ししており、またアレンジも前作同様にボブ・ジェームスが行っています。それだけに大がかりなアレンジと言いサウンド的にはボブ・ジェームス色が強くなっています。とは言えやはり注目はエリック・ゲイルの聴けばすぐに分かるワン・アンド・オンリーなギター・プレイにあります。エリックの歌うようなシングル・トーンのギター・プレイは彼だけの世界で、本当に素晴らしいギタリストでした。アルバム・ジャケットは東洋的なイメージの、なんとも不思議な感じのイラストで当時も目を引きました。アルバム・タイトルですが発売当時の邦題は“夢枕”でした。ジャケットのイメージから付けたものかと思います。バックの参加メンバーはエリック・ゲイル(g)以下、ボブ・ジェームス、リチャード・ティー(keyb)、グローヴァー・ワシントンJr.、マイケル・ブレッカー、ジョージ・ヤング、エディ・ダニエルズ(sax)、ランディー・ブレッカー、ジョン・ファディス、ルー・ソロフ(tp)、アンソニー・ジャクソン、ゲイリー・キング(b)、スティーヴ・ガッド、アンドリュー・スミス(ds)、ラルフ・マクドナルド(perc)、パティ・オースチン、ビル・イートン、ザック・サンダース、ラニ・グローブス、レイ・シンプソン(vo)他とボブ・ジェームス人脈とも言える豪華メンバーです。

01. GINSENG WOMAN(ジンセン・ウーマン)
02. RED GROUND(レッド・グラウンド)
03. SARA SMILE(サラ・スマイル)
04. DE RABBIT(ラビット)
05. SHE IS MY LADY(シー・イズ・マイ・レディ)
06. EAST END, WEST END(イースト・エンド,ウェスト・エンド)

 1曲目「GINSENG WOMAN(ジンセン・ウーマン)」はボブ・ジェームスの作曲のナンバーです。“GINSENG”は朝鮮人参のことで、“GINSENG WOMAN”で“朝鮮人参の女”になってしまいます。日本を意識したようなジャケットと言い、日本も朝鮮も一緒くたのいかにも白人らしいごちゃ混ぜのオリエンタリズムですね。エリックの演奏はいつもどおりのワン・アンド・オンリーです。またスティーヴ・ガッドとアンソニー・ジャクソンの渋いプレイやグローヴァー・ワシントンJr.のサックス・ソロも決まっています。2曲目「RED GROUND(レッド・グラウンド)」はエリック・ゲイル作のカリプソ・フレイヴァーの軽妙な曲です。エリック・ゲイルのブルージーな演奏が聴けます。とってもエリックらしいギター・プレイでお勧めの1曲です。ここではグローヴァー・ワシントンJr.が珍しくティン・ホイッスルという縦笛を吹いています。3曲目「SARA SMILE(サラ・スマイル)」はホール&オーツの名曲のカバーです。この曲マイク・マイニエリやその他、多くのミュージシャンがカバーしていますね。ここではちょっとレゲエのリズムにアレンジしています。スティーヴ・ガッド&アンドリュー・スミスのツイン・ドラム、リチャード・ティーのオルガン、ゲイリー・キングのベースをバックにエリックのギターが伸び伸びと歌っています。ヴォーカル・アレンジはビル・イートンです。4曲目「DE RABBIT(ラビット)」はエリック・ゲイルのオリジナルです。STUFFらしさとボブ・ジェームス風味を味わえる軽快な曲です。そう言えばこの曲はSTUFFの来日公演でも演奏していました。当時のニューヨークならではのサウンドですね。5曲目「SHE IS MY LADY(シー・イズ・マイ・レディ)」ちょっと切ないバラードです。エモーショナルなエリック・ゲイルのギターが素晴らしいです。リチャード・ティーのアコピも彼らならではです。またジョージ・ヤングのエモーショナルなサックス・ソロも聴き所です。6曲目「EAST END, WEST END(イースト・エンド,ウェスト・エンド)」もエリックのオリジナルです。ゲイリー・キングらしいうねるようなベース、リチャード・ティーのアコピ、そしてエリックのプレイ、この曲もSTUFFファンには納得の1曲です。ラルフ・マクドナルドのパーカッションも聴き所です。70年代のフュージョン・ムーブメントをいっぱい感じさせ、今でも色褪せない素晴らしい作品のひとつです。エリック・ゲイル、リチャード・ティー、ラルフ・マクドナルド、グローヴァー・ワシントンJr.、ゲイリー・キング・・・みんなもうもういなくなってしまいましたが、彼らの残した音楽は永遠です。