ザ・ウェイ・アイ・フィール:ソニー・ロリンズ | かえるの音楽堂

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70年~80年のCROSSOVER(FUSION)とJAZZを中心にAORか
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どを紹介いたします。

064-ザ・ウェイ・アイ・フィール











THE WAY I FEEL : SONNY ROLLINS
(1976年)
 1970年代になるとジャズという枠に入りきらない、ロック、ソウル、ポップスといったあらゆるジャンルを吸収した音楽をクロスオーヴァーと称するようになりました。72年にはデオダートが大ヒット・アルバム“PRELUDE(ツァラトゥストラはかく語りき)”を発表しました。クロスオーヴァーはやがてフュージョンと言われるようになりました。フュージョンではそれまでスタジオ・シーンで活躍していたり、ジャズやソウルなどでバック・ミュージシャンとして活動してきた人達が、自分達の音楽の表現として作品を製作し多くの名盤を生みました。またマイルス・デイビス、ドナルド・バード、フレディ・ハバードといったバップ・シーンで活躍してきたベテラン達もフュージョンの作品を製作するようになりました。そしてサックス界の巨人“ソニー・ロリンズ”が76年に製作した作品がこのTHE WAY I FEEL(ザ・ウェイ・アイ・フィール)であり、彼がフュージョンに挑んだアルバムです。このアルバムが発表された時、当然のように根っからの硬派ジャズ・ファンから不評を買いました。しかしどうでしょうか、こうやって聴いてみると確かにバックのメンバーはフュージョン・シーンのミュージシャン達だし、サウンドも硬派ファンの大嫌いなLA風味のフュージョン・サウンドです。そんな中でロリンズはそういった若手達をバックにいつもどおり、時におおらかにあるいはバリバリと吹きまくっています。彼にとってはジャズだろうがフュージョンだろうが関係ないって感じです。その時代に流行っているサウンドを取り込んで誰がバックだろうがロリンズはロリンズです。周りの騒ぎなんてどこ吹く風ですね。そのバックのメンバーは当時まだ若手であったリー・リトナー(g)、パトリース・ラッシェン(key)やアレックス・ブレイク、チャールス・ミークス(b)、ビリー・コブハム(ds)、ビル・サマーズ(perc)、オスカー・フラッシャー、チャック・フィンドレイ、ジーン・コウ(tp)他といった人達です。曲は全7曲でソニー・ロリンズの作品が4曲、ジョージ・デュークの作品2曲、パトリース・ラッシェン1曲です。

1. ISLAND LADY(アイランド・レイディ)
2. ASFRANTATION WOOGIE(アスフランテイション・ウーギィー)
3. ラヴ・リボーン(LOVE REBORN)
4. ハッピー・フィール(HAPPY FEEL)
5. シャウト・イット・アウト(SHOUT IT OUT)
6. ザ・ウェイ・アイ・フィール・アバウト・ユー(THE WAY I FEEL ABOUT YOU)
7. チャーム・ベイビー(CHARM BABY)

 1曲目「ISLAND LADY(アイランド・レイディ)」はロリンズ作です。バックはいかにもフュージョン・サウンドですが、ソニー・ロリンズはいつもどおりバリバリと気持ちよさそうに吹いています。中盤ではリトナーのロング・ソロも聴けます。2曲目「ASFRANTATION WOOGIE(アスフランテイション・ウーギィー)」もロリンズの作品です。ここでもフュージョン・サウンドをバックに大らかに吹いています。バックのビリー・コブハムの控えめながら手数の多いドラムにも注目です。3曲目「ラヴ・リボーン(LOVE REBORN)」はジョージ・デューク作で、バックはちょっとアップテンポなラテンタッチの曲です。ロリンズのスロー気味のソロとの対比が面白いです。4曲目「ハッピー・フィール(HAPPY FEEL)」はロリンズ作です。タイトルどおりハッピーなフィーリングの曲です。ハンコック・フォロワーのパトリース・ラッシェンのエレピ・ソロに注目。そしてビリー・コブハムのドラムに煽られるようにロリンズがソロを吹きます。5曲目「シャウト・イット・アウト(SHOUT IT OUT)」はパトリース・ラッシェンの作品です。まるでブレッカー・ブラザースかと思わせるような曲です。6曲目「ザ・ウェイ・アイ・フィール・アバウト・ユー(THE WAY I FEEL ABOUT YOU)」はジョージ・デュークの作品です。まるでスムース・ジャズか!って感じで吹いています。この曲好きです。今でも通用しそうな曲ですね。ロリンズの新境地って感じですね。7曲目「チャーム・ベイビー(CHARM BABY)」はロリンズ作です。バックは当時のLAフュージョンそのままです。パトリース・ラッシェンの若々しいエレピ・ソロ~ロリンズ、そしてリトナーのソロと続きます。このアルバムで聴けるサウンドは今聴くと古くささを感じる部分もありますが、ロリンズは決して流行を追ったものでなく、若手達の溌剌とした演奏をバックに思う存分吹きまくっています。ロリンズの代表作ではないし、あまり語られることのない作品ですが改めて聴いてみると楽しいアルバムです。