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先月、厚生労働省は「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和7年)」を公表しました。これは2025年1月から2025年12月までに、全国の労働基準監督署が、賃金不払が疑われる事業場に対して実施した監督指導の結果を取りまとめたものです。以下ではその結果と実際の監督指導の事例をとり上げます。

[1]監督指導状況
 2025年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額は以下のとおりです。

 件数      22,605 件 (前年比 251件増)
 対象労働者数 173,016 人(同 12,181人減)
 金額      128億5,782万円 (同 43億5,331万円減)

 件数を業種別にみてみると、商業の4,701件がもっとも多く全体の20.8%を占め、製造業4,370件、保健衛生業3,620件、接客娯楽業2,813件、建設業2,290件と続いています。一方、対象労働者数を業種別にみてみると、保健衛生業の47,033人がもっとも多く全体の27.2%を占め、製造業43,028人、商業20,568人と続いています。

[2]監督指導の対象となった事案
 本結果の中では「監督指導による是正事例」が紹介されています。自社の労働時間管理の在り方を見直す際の参考となりますので、ここでは割増賃金の適正な支払と労働時間の適正な把握に関する指導事例をとり上げます。

[概要]
 始業直前・終業直後の15分間について、一律に切り捨てており、その分の賃金が支払われていないとの情報を受け、労働基準監督署が立入調査を実施したところ、以下の実態が認められた。

  • ICカードで労働時間を管理しているが、始業直前・終業直後の15分間について、業務に従事していたか否かにかかわらず、一律に切り捨てる処理を行っていた。
  • 当該処理は慣例となっており、労働者によっては、当該15分間に業務に従事していた可能性は否定できないものであった。

[労働基準監督署の指導]
 過去に遡って各労働者から事実関係の聞き取りを行うなどの実態調査を実施の上、実際の支払額との差額の割増賃金の支払が必要となる場合には追加で支払うこと。また、労働時間を適正に把握するための具体的方策を検討・実施すること。

[事業場の対応]
 過去に遡って実態調査を実施したところ、始業開始・終業直後の15分間に業務に従事していた労働者が複数おり、割増賃金の不払が認められたため、追加で差額の割増賃金を支払うとともに、これまで行ってきた一律の切捨て処理を廃止し、始業直前・終業直後であっても、業務に従事していた時間については割増賃金を支払うこととした。

 始業直前・終業直後であったとしても従業員が業務に従事している場合、それは労働時間となり、賃金の支払いが必要になります。特に始業前はこうした不払いが発生しやすいので、早出勤務の申請ルールの整備など、対策を検討しましょう。

■参考リンク
厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和7年)を公表します」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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文書作成日:2026/09/10

試用期間を延長する際の注意点

4月に入社した従業員の試用期間が9月30日で終了するが、営業部長から、営業に向いていないようで困っているという相談があった。そこでどのように対応したらよいか、社労士に相談することにした。

 今日は、4月に入社した従業員のことで、相談があります。

 どうされましたか。

 先日、営業部長から、営業に配属したある従業員について、「営業に向いていないようで、困っている」という相談がありました。

 なるほど。4月に入社した従業員というお話でしたが、確か試用期間は6ヶ月間でしたね。

 はい。9月30日までです。

 まだ試用期間中ですね。会社としては、この従業員にどのように対応するか、何か考えはありますか?

 営業部長が本人と話をした際、本人も営業は向いていないのではないかと思ったようで、事務職としてやってみたいという希望があったと聞いています。会社としても、事務職の適性の有無を確認したいと思っています。

 なるほど、雇用の継続を考えることは、望ましい対応ですね。今回ですが、できれば試用期間の延長を検討しておきたいですね。たしか就業規則には、試用期間を延長することができる旨の定めがありましたね。

 はい、あります。

 試用期間を延長する意味は何ですか?

 このままであれば、試用期間は9月30日で終了することになりますが、試用期間を延長することで、今度は事務職としての適性を見極める期間を設けることができます。あくまでも比較論になりますが、本採用後に解雇することは、試用期間中に解雇することよりも一般的にハードルが高いと言われていますので、試用期間を延長し、適性についての判断を行った方が良いように思います。

 なるほど。もし事務職としての適性がなく、解雇を検討せざるを得ない場合も考えるとすれば、試用期間を延長した方がよいということですね。この場合、会社としてやっておくべきことはありますか?

 試用期間を延長する場合は、就業規則に延長する旨の根拠があることに加え、従業員本人に対して、試用期間が延長になることと、延長する期間を伝える必要があります。

 いつまでが試用期間なのかを伝えるということですね。

 はい。今回のように配置転換をして別の業務で見極めを行う場合や、勤怠不良等の理由で試用期間では本採用の可否が判断できない場合は、その課題と対応を伝えた上で、試用期間の延長を行い、しっかり見極めを行っておきたいものですね。

 今回は、試用期間中に相談があったので、試用期間を延長して事務職の適性を見極めることができますが、試用期間が終わった後で、もし事務職の適性がなかったとしても、解雇のハードルは高いということですね。

 試用期間中であれば簡単に解雇できるということではありませんが、まずは試用期間を延長しておくことがよいと思います。また、試用期間については、気づかないうちに終わっていたということがありますので、例えば試用期間が終了する1ヶ月前に配属先の管理職等に従業員の勤務態度等の確認をするといった流れを作っておくとよいですね。

 そうですね。1ヶ月前に確認するという流れにしていきます。

>>次回に続く

 



 試用期間が満了し、本採用を行わない場合も解雇に該当し、解雇予告や解雇予告手当の支払いが必要です。なお、雇い入れから14日以内のときは不要とされています。

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多くの企業で、メンタルヘルス疾患を発症し、欠勤や休職をする従業員が増加していますが、その最新の状況を調査した「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」(以下、「調査結果」という)が厚生労働省から公表されました。以下では、この調査結果から、メンタルヘルス不調により休業した労働者の状況と企業としてのメンタルヘルス対策の取組みをとり上げます。

[1]メンタルヘルス不調により休業した労働者の状況
 今回の調査結果をみると、過去1年間(2024年11月1日から2025年10月31日までの期間)にメンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%でした。このうち、連続1ヶ月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.8%で、10社に1社の割合となっています。
 また、メンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業した労働者の割合は0.6%で、企業規模別にみると下表のように、企業規模が大きいほど多くなっています。

企業規模 メンタルヘルス不調による
連続1ヶ月以上の休業者数
10~29人 0.3%
30~49人 0.4%
50~99人 0.5%
100~299人 0.7%
300~499人 0.8%
500~999人 1.1%
1,000人以上 1.1%

[2]メンタルヘルス対策の取組み
 メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は、63.0%でした。これを300人未満の企業規模でみると、労働者数10~29人の事業所で54.6%、労働者数30~49人の事業所で72.0%、労働者数50~99人の事業所で90.3%、労働者数100~299人の事業所で98.5%で、企業規模が大きくなるにつれて、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合が高くなっています。
 このメンタルヘルス対策について、取組内容(複数回答)の上位5つをみてみると以下のようになっています。

  • ストレスチェックの実施 64.0%
  • 職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック結果の集団(部、課など)ごとの分析を含む) 52.8%
  • メンタルヘルス不調の労働者に対する必要な配慮の実施 52.5%
  • メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備 48.3%
  • メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備 48.3%

 取組内容のうち、「メンタルヘルス対策に関する労働者への教育研修・情報提供」については、厚生労働省が「こころの耳」というサイトを開設しており、この中に従業員向けのページ「働く方へ」があります。セルフケアに気軽に用いることができる5分研修シリーズの動画コンテンツなどがあり、従業員への情報提供として活用したいものです。以下の参考リンクより確認できます。

■参考リンク
厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」
こころの耳「働く方へ」

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会社は1年以内に1回、定期健康診断を実施する義務があり、また雇入れ時の健康診断の実施義務もあります。この定期健康診断等の診断項目の取扱いが2027年4月より変更となります。以下では、変更内容と健康診断にまつわるよくある質問を取り上げます。

[1]2027年4月からの変更点
 定期健康診断等の診断項目については、労働安全衛生規則で定められていますが、2027年4月から以下の3点について変更が行われます。

  1. 喀痰検査の削除
  2. 肝機能検査の酵素名の変更
  3. 血清クレアチニン検査の追加

 これらの改正は、長時間労働と長時間労働と慢性腎臓病発症リスク等との関係や、血清クレアチニン検査で既存項目では把握できない腎機能低下者を把握できること等を踏まえて変更されたものです。 定期健康診断の診断項目の中には医師の判断により省略が可能となっているものがありますが、この省略に関しては、個々の従業員について、健康状態の経時的な変化や自覚症状・他覚症状等を勘案しながら判断することになっています。

[2]健康診断にまつわるよくある質問
 以下では、健康診断にまつわるよくある質問を2つ取り上げます。

(1)雇入れ時の健康診断

 入社後すぐに定期健康診断の実施があるため、雇入れ時の健康診断を実施せず、定期健康診断を実施してよいかという質問を受けることがあります。これについては、実施目的に違いがあるため、入社後すぐに定期健康診断を実施するからということで、雇入れ時の健康診断の実施を省略することはできません。なお、雇入れ時の健康診断を受けた従業員については、健康診断の実施日から1年間は定期健康診断の実施項目に相当するものを省略することが可能です。

(2)再検査・精密検査の実施義務

 定期健康診断を実施した後、再検査・精密検査となった従業員について、再検査・精密検査の実施義務が会社にあるのかという質問もよく受けます。定期健康診断は会社に実施義務が課されていますが、この再検査・精密検査については会社に実施義務はなく、厚生労働省が公示する「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」の中で、会社に対して再検査・精密検査の受診を勧奨する努力義務が課されています。

 

 労働基準監督署の調査では、定期健康診断に関して、有所見とされた後に医師等からの意見を聴取していないという是正勧告を受ける事例が多く見られます。健康診断結果が届いた際には、有所見とされた従業員について、医師等から意見を聴取するなど、必要な対応を進めましょう。

■参考リンク
厚生労働省「職場における労働衛生対策」

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近年、国は男性の育児休業の取得を促進しており、実際に多くの企業で育児休業を取得する男性従業員が増加しています。今回は、厚生労働省が先日公表した「令和7年度雇用均等基本調査」(以下、「調査」という)の中から、男性の育児休業取得率の最新データについて確認します。

[1]上昇する男性の育児休業取得率
 男性の育児休業の取得率は長年低迷していましたが、社会の変化や政策の後押しもあり、ここ数年、急速に上昇しており、2025年度は50.9%となりました(下図参照)。前年度(40.5%)から10.4ポイントの大幅上昇となり、調査以来、過去最高となっています。また、育児休業を開始した従業員のうち、出生時育児休業(産後パパ育休)を取得した割合は56.8%でした。
 政府は、男性の育児休業の取得率を、2025年度に50%、2030年度に85%という目標を掲げていたことから、2025年度の目標を達成した形となります。※図はクリックで拡大されます。

[2]男性の育児休業期間
 男性の育児休業の取得期間に関して、2024年4月1日から2025年3月31日までの1年間に育児休業を終了し、復職した男性の育児休業期間をみると、下図のような割合となっています。育児期間としては、「1ヶ月~3ヶ月未満」が 30.3%と最も高く、「2週間~1ヶ月未満」が 28.0%、「5日~2週間未満」14.1%と続いています。※図はクリックで拡大されます。

 このように育児休業の取得が増加に伴い、従業員から、育児休業に係る給付金の質問が会社に寄せられることも増えていますが、出生後休業支援給付金の創設など、制度が複雑になっていることから、対応に困っている方も少なくないでしょう。このような場面で活用できるものとして、厚生労働省が公開している「産休・育休中の経済的支援 かんたん試算ツール」があります。このようなツールを紹介するなどして、相談のあった従業員の対応をしていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」
厚生労働省「産休・育休中の経済的支援 かんたん試算ツール」


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労働基準法では、雇入れ後6ヶ月間継続して勤務し、全労働日の8割以上に出勤した従業員に対し、所定労働日数に応じた年次有給休暇(以下、「年休」という)を付与することが義務付けられています。今回、シフト制で働く従業員の年休の付与日数の算出方法について、実務上の見直しが行われたため、その内容を確認します。

[1]年休の付与日数
 年休は雇入れ後6ヶ月間の継続勤務で10日が付与されますが、1週間の所定労働日数が4日以下または1年間の所定労働日数が216日以下で、かつ1週間の所定労働時間が30時間未満のパートタイマー等には、所定労働日数に応じた日数分の年休が比例付与されます。

[2]新たに認められた方法
 この所定労働日数について、現実には労働契約を締結する時点では労働日や労働時間を明確に定めず、一定期間ごとに作成する勤務シフトなどにより、初めて具体的な労働日や労働時間が確定するようないわゆる「シフト制」の勤務形態で働く従業員もいます。
 このシフト制で働く従業員については、所定労働日数を算出しがたいことが多いため、今回、以下の日数を基準日における1年間の所定労働日数とみなして年休の付与日数を算出して差し支えないとされました。

  1. 雇入れ6ヶ月経過後に年休を付与するときには、雇入れから6ヶ月間の労働日数の実績を2倍した日数
  2. 雇入れ1年6ヶ月経過後以降の年休を付与するときには、前年の労働日数の実績

 

[3]労働日数の目安がある場合
 シフト制の勤務形態でも、労働契約を締結する時点で「1ヶ月○日程度勤務」といった目安となる労働日数等を定めることがあります。この場合には、基準日における所定労働日数とみなして算出した年休の付与日数が、新たに認められた方法で算出した付与日数を上回る場合に限り、「1ヶ月○日程度勤務」といった目安となる労働日数等を用いて年休の付与日数を算出しても差し支えないとされています。

 シフト制の場合、従業員の事情に合わせて、勤務する日数を柔軟に調整している企業も多くあることでしょう。今回、新たに認められた方法は、こうした実態に即した対応になるかと思われます。現状、シフト制で働く従業員がいる企業では、これまでの運用状況を踏まえつつ、今後の年休の付与日数や管理をどのようにするか、検討を行うとよいでしょう。

■参考リンク
厚生労働省「いわゆる「シフト制」について」

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従業員がメンタルヘルス疾患を発症し、欠勤や休職をするケースがありますが、その中には、仕事による強いストレスがその原因となっている事例もあるようです。2026年7月に公表された厚生労働省の資料によると、精神障害を理由とした労災の請求件数が大幅に増加しています。以下では、公表された資料の内容を確認した上で、企業に求められる対策について見ていきます。

[1]精神障害の労災補償状況
 精神障害の労災補償状況は下図のとおりとなっています。2025年度の請求件数は4,958件で、前年度の3,780件から1,178件の大幅増加となりました。また、支給決定件数については1,082件となり、前年の1,055件から26件の増加となり、2年連続で1,000件を超えました。
 支給決定件数の中で多い業種(中分類)の上位5つをみてみると、社会保険・社会福祉・介護事業151件、医療業139件、道路貨物運送業68件、総合工事業51件、飲食店45件となっており、医療・福祉の業種(大分類)で多いことが分かります。決定件数における支給決定件数の割合である認定率については2025年度で28.2%となり、ここ数年、30% を超えていたものが、今回は30%を下回りました。
※図はクリックで拡大されます。

[2]具体的な出来事
 支給決定は、その傷病に繋がる具体的な出来事があったかを確認して判断されますが、支給決定の内容を具体的な出来事別に分類すると、その上位5つは以下の通りとなっています。

  1. 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(222件)
  2. 顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた(127件)
  3. セクシュアルハラスメントを受けた(127件)
  4. 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった(113件)
  5. 業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(110件)

 支給決定件数(1,082件)のうち、上位3つ(パワーハラスメント、カスタマーハラスメントに関連する項目、セクシュアルハラスメント)はハラスメントに関するもので、全体の4割超を占めています。10月よりカスタマーハラスメント等の防止対策が企業に義務づけられることと合わせて、より一層ハラスメント防止の取組みが重要になります。

■参考リンク
厚生労働省「令和7年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」

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先週、2026年度の地域別最低賃金額改定の目安について、答申の取りまとめが行われ、その内容が公表されましたが、厚生労働省では賃金の引上げを行う中小企業を支援するために、業務改善助成金を設けています。2026年度の業務改善助成金の交付申請の受付が9月1日から始まることから、この助成金の概要を取り上げます。

[1]業務改善助成金とは
 業務改善助成金は、生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行い、事業場内最低賃金(※)を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部が助成されるものです。
※事業場内最低賃金とは、事業場でもっとも低い時給のことをいい、地域別最低賃金と同じように計算します。

[2]対象となる設備投資等
 設備投資等の例としては、以下のものが挙げられます。助成対象経費の下限は10 万円(税抜き)です。なお、1つの価格が 10 万円未満の設備投資等であっても、他の生産性向上に資する設備投資等と合わせた合計金額が 10 万円以上となる場合は、助成の対象となります。

  • POS レジシステム導入による在庫管理の短縮
  • リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
  • 国家資格者による、顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直し
  • 顧客管理情報のシステム化

[3]助成上限額等と申請の流れ
 賃金の引上げにより分かれる「コース区分」によって、下表のように助成上限額が設定されています。具体的な助成上限額は、引き上げる労働者(雇用保険被保険者)の数によって異なります。

コース区分 助成上限額
右記以外の事業者 事業場規模30人未満の事業場
50円コース 30~130万円 40~130万円
70円コース 40~300万円 50~300万円
90円コース 90~600万円 100~600万円

 助成金額は、生産性向上に資する設備投資等にかかった費用に一定の助成率をかけた金額と助成上限額とを比較し、いずれか安い方の金額となります。
 この助成率は、事業場内最低賃金が1,050円未満の場合は5分の4、事業場内最低賃金が1,050 円以上の場合は4 分の3です。
 申請の流れは、事業場内最低賃金の引上げ計画と設備投資等の計画を立てて申請し、交付決定後に計画どおりに事業を進め、事業の結果を報告することにより、設備投資等にかかった費用の一部が助成金として支給されます。交付決定前に助成対象設備の導入を行った場合は、助成の対象とならないことに注意が必要です。

  助成金については、上記で取り上げた他にも細かい要件等があります。厚生労働省ホームページには、申請マニュアルやQ&Aなどが公開されていますので、活用を検討される場合は情報を確認してください。

■参考リンク
厚生労働省「業務改善助成金」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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文書作成日:2026/07/23

カスハラ・求職者等セクハラ対策義務化に向けた対応

2026年10月1日より、職場におけるカスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」という)対策と求職者等に対するセクシュアルハラスメント(以下、「求職者等セクハラ」という)対策が義務化されます。そこで今回は、企業に求められる対応を確認します。

[ 1 ]

カスハラ対策

 カスハラとは、職場において行われる(1)顧客等の言動であって、(2)その雇用する従業員が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、(3)従業員の就業環境が害されるものであり、(1)から(3)までの要素をすべて満たすものをいいます。顧客等からの苦情のすべてがカスハラに該当するわけではなく、客観的に見て、社会通念上許容される範囲で行われたものは、正当な申入れであり、カスハラには当たらないとされています。そして、カスハラ対策として企業に求められる対応としては、以下の5つです。

  1. 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
  2. 相談体制の整備
  3. 事後の迅速かつ適切な対応
  4. 対応の実効性を確保するために必要なカスハラの抑止のための措置 
    (カスハラの抑止のための措置)
  5. そのほか併せて講ずべき措置

1.事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発については、(1)カスハラには毅然とした態度で対応し、従業員を保護する旨の方針を明確化し、従業員に周知・啓発することと、(2)カスハラの内容とあらかじめ定めた対処の内容を、従業員に周知することの2つが求められています。
 (1)の対応をしていると認められる例としては、社内報、パンフレット、社内ホームページ等にカスハラには毅然とした態度で対応し、従業員を保護する旨の方針を記載し、配布等することや、研修等で従業員に周知・啓発することが挙げられます。
 (2)については、カスハラが発生し、その場で従業員から管理監督者等に報告があった場合等は、その管理監督者等が直ちに適切な対応を行うことが必要な場合もあることを踏まえ、その内容を定めることが必要です。この対応をしていると認められる例としては、カスハラへの対処の内容を定め、その規定と併せて、カスハラの内容を従業員に対して周知すること、顧客等への対応に関するマニュアル等に、カスハラの内容およびカスハラへの対処の内容を記載し、従業員に対して周知することが挙げられます。

2.相談体制の整備
 相談体制の整備としては、相談窓口をあらかじめ定めそれを従業員に周知し、相談窓口担当者が適切に対応できるようにする必要があります。

3.事後の迅速かつ適切な対応
 従業員からカスハラの相談の申出があった際に、事実関係を迅速かつ正確に確認すること、カスハラが生じた事実を確認できた場合は、すみやかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと、再発防止に向けた措置を行うことが求められています。

4.カスハラの抑止のための措置
 特に悪質と考えられるカスハラへの対処の方針をあらかじめ定め、従業員に周知し、その対処を行うことができる体制を整備することが求められています。

5.そのほか併せて講ずべき措置
 相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を行い、従業員に周知することや、相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、従業員に周知・啓発することが求められています。
 

[ 2 ]

求職者等セクハラ対策

 求職者等セクハラとは、従業員による性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害されることをいいます。この「求職活動等」とは、求職者が行う求職活動や求職者に類する者が行う職業の選択に資する活動を指し、例えば、求職活動等の例として、以下のものが含まれています。

  • 企業の採用面接への参加
  • 企業の就職説明会への参加
  • 企業の雇用する従業員への訪問
  • インターンシップへの参加
  • 教育実習、看護実習等の実習の受講

 次に、求職者等セクハラ防止の対応としては、以下の4つがあります。この求職者等セクハラに関しては、他のハラスメントの対応と異なり、求職者等向けに対応しなければならない点に注意が必要です。

  1. 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発 
  2. 相談体制の整備
  3. 事後の迅速かつ適切な対応
  4. そのほか併せて講ずべき措置

1.事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発については、(1) 求職者等セクハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業員に周知・啓発すること、(2) 求職者等セクハラを行った者については、厳正に対処する旨の方針および対処の内容を、従業員に周知・啓発すること、(3) 求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、従業員および求職者等に周知・啓発することの3つがあります。
 これらのうち、(3)については、従業員と求職者等に分けて対応を確認する必要があります。
 従業員に対しては、面談時間・場所の指定、実施体制、やり取りに用いるSNSの種類の指定その他の求職者等と面談等を行う際の規則を定め、周知・啓発するための研修、講習等を実施することが必要です。求職者等に対しては、従業員向けの規則を踏まえ、面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等の広報手段を用いて周知等することが求められています。
 なお、人員が不足した際のみ中途採用を行っているケースもあると思いますが、この場合は、施行時点ですべての措置を行っていなくても差し支えないとされています。ただし、採用活動を開始し、求職者等に対する説明会や面接を実施することとなった時点で、すべての対応をしておくことが必要です。

2.相談体制の整備
 相談体制の整備については、これは求職者等が相談できる相談窓口となります。求職者等に周知し、相談窓口担当者が適切に対応できるようにする必要があります。なお、相談窓口担当者については、人事担当者以外の従業員とすることも考えられます。

3.事後の迅速かつ適切な対応
 求職者等セクハラの相談の申出があった際、事実関係を迅速かつ正確に確認すること、求職者等セクハラが生じた事実を確認できた場合は、すみやかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと、行為者に対する措置を適正に行うこと、そして、再発防止に向けた措置を講ずることが求められています。

4.そのほか併せて講ずべき措置
 相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を行い、従業員と求職者に周知すること、従業員が事実関係の確認等に協力したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、従業員に周知・啓発することが必要です。
 

 会社方針の策定や就業規則等の整備、相談窓口の整備など、2026年10月1日施行までに対応が必要です。セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、育児・介護休業等のハラスメント等と合わせて、ハラスメント全体の対応が求められています。

■参考リンク
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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健康保険には、医療機関や薬局でマイナ保険証等を利用すること等により、診察・処置・投薬などの治療を一部の負担額(自己負担額)で受けることができます(療養の給付)。これに加え、自己負担額が大きくなりすぎることを防ぐため、高額療養費制度が設けられています。2026年8月より、この高額療養費制度が変わることから、協会けんぽにおける制度の変更点を確認しましょう。

[1]高額療養費制度とは
 高額療養費制度とは、重い病気などで病院等に長期入院したり、治療が長引いたりする場合に、一定の金額である「自己負担限度額」を超えた部分が払い戻されるものです。マイナ保険証を利用したり、限度額適用認定証を利用したりすることで、本来は自己負担限度額を超えた額を一旦立て替えて払い戻しを受ける必要があるところ、医療機関や薬局での支払いを自己負担限度額とすることができます。
 この自己負担限度額は、受診者の年齢と、従業員の健康保険の標準報酬月額に基づく所得区分によって決められており、原則として、所得が高くなるほど、自己負担限度額も高くなります。
 また、直近12ヶ月の間に3ヶ月以上の高額療養費制度を利用した場合には、4ヶ月目から「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに軽減される仕組みがあります。

[2]自己負担限度額の引上げ
 2026年8月の変更では、自己負担限度額が引き上げられます。例えば、70歳未満で標準報酬月額が28万円から50万円までの範囲に当てはまる場合には、以下のようになります。

[変更前(~2026年7月)]
 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
[変更後(2026年8月~)]
 85,800円+(総医療費-286,000円)×1%

 ただし、多数該当となった場合の自己負担限度額は据え置かれています。

[3]年間上限の新設
 自己負担限度額が引き上げられる一方で、長期療養者への配慮として、新たに「年間上限」の制度が導入されます。高額療養費は、1ヶ月単位の自己負担限度額に到達した場合に、自己負担限度額を超えたものが払い戻される仕組みですが、自己負担限度額に達しない場合であっても、年間上限額に達した場合には、その年において年間上限額を超える負担が不要となるものです。この年間とは8月から翌年7月までを指します。
 これまで多数該当に該当しなかった人や、極めて高額な医療を受けた人に対する負担が軽減されます。

 高額療養費制度は、2027年8月にも所得区分を細分化される変更が行われます。長期療養をしている従業員や、今後、大きな手術を受ける従業員等には改正内容のお知らせをしておきたいものです。

■参考リンク
協会けんぽ「【制度改正】令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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