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休暇の取りやすさは、働きやすさという点で従業員が企業に期待する大きな要素の一つに数えられます。年次有給休暇(以下、「年休」という)については、働き方改革関連法の中で1年に10日以上の年休が付与される従業員について、少なくとも1年に5日を取得させなければならないというルールが設けられました。
 今回は厚生労働省の「令和4年度 仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書」(以下、「調査」という)の中から、年休の平均取得率について取り上げます。

[1]従業員規模別の年休の平均取得率
 この調査は、従業員数50人以上の企業等を対象としたもので、2022年12月から2023年1月にかけて行われました。それによれば、正社員・職員の年休の平均取得率(令和3年度実績)は、「50%以上~75%未満」が 41.3%でもっとも回答割合が高く、次いで「25%以上~50%未満」が33.3%、「75%以上」が16.8%となっています。これを従業員規模別に見てみると、従業員規模が大きくなるにつれて、「50%以上~75%未満」と「75%以上」の占める割合が高くなっています(図1参照)。 ※図はクリックで拡大されます。

[2]業種別の年休の平均取得率
 業種別の年休の平均取得率を見ると、業種によって大きな開きがあることが分かります。中でも、宿泊業、飲食サービス業では年休の平均取得率が他の業種よりも低くなっており、「0%超~25%未満」が42.0%、「25%以上~50%未満」が31.3%、「50%以上~75%未満」が8.5%、「75%以上」が18.4%となっています。 ※図はクリックで拡大されます。

 深刻な人手不足が続いており、年休の取得が進まないという企業も少なくありませんが、人材の採用・定着を考えた場合、年休取得率の引き上げは重要なテーマとなります。働きやすい職場環境の整備にあたり、お困りごとがございましたら、当事務所までお問い合わせください。

■参考リンク
厚生労働省「仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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文書作成日:2023/05/25

 助成金制度は年度単位で予算が立てられているものが多く、年度初めに助成金の創設・改廃が行われるものが多くあります。今回は、今年度に中小企業が比較的活用しやすい注目の助成金をいくつかご紹介します。

 人材開発支援助成金は、従業員に対して計画に沿って実施した職業訓練等の経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。この助成金には複数のコースが設けられていますが、「人材育成支援コース」の「人材育成訓練」は、職務に関連した知識や技能を習得させるためにOFF-JT を10 時間以上行った場合に、助成金が支給されます。

  1. 主な要件
     対象となる事業主の主な要件は以下の通りです。
    • 職業能力開発推進者を選任していること。
    • 事業内職業能力開発計画を作成し、周知していること。
    • 事業内職業能力開発計画に基づき職業訓練実施計画届を作成し、周知していること。
     支給対象となる労働者は、職業訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」に記載されている雇用保険の被保険者であり、訓練を受講した時間数が実訓練時間数の8割以上であることなどの要件が設けられています。

     対象となる訓練については、事業内訓練の場合、職業訓練の科目・職種等の内容について専門的な知識もしくは技能を有する指導員または講師とされ、その分野の職務にかかる指導員・講師経験が3年以上の者、その分野の職務にかかる実務経験(講師経験は含まない)が10年以上の者などの要件が設けられています。
     事業外訓練の場合、公共職業能力開発施設、職業能力開発総合大学校など、社外の教育訓練機関に受講料を支払い受講する訓練が対象になります。

     また、eラーニング・通信制による訓練も助成金の対象になりますが、対面により実施される訓練とは支給要件上、取扱いが異なります。例えば、訓練時間については、実際の訓練時間ではなく、受講案内等に記載されている「標準学習時間」や「標準学習期間」で判断されます。
     
  2. 対象となる経費等
     支給対象となる経費は以下のとおりです。支給申請までに対象経費の全額を会社が負担していることがわかる書類が必要です。

    [事業内訓練]
     部外の講師への謝金・手当
     部外の講師の旅費
     施設・設備の借上費
     学科や実技の訓練等を行う場合に必要な教科書・教材の購入費 など
    [事業外訓練]
     受講に際して必要となる入学料・受講料・教科書代等、あらかじめ受講案内等で定めているもの

     これらの経費のほか、訓練期間中の所定労働時間内の賃金についても、助成の対象となります。なお、所定労働時間外・所定休日(予め別日に所定休日を振り替えた場合は除く)に実施した訓練は、賃金助成の対象外になります。
     
  3. 助成額・助成率
     助成額・助成率は以下のとおりです。

    [経費助成率] ( ) 内は大企業
     雇用保険被保険者(有期契約労働者等を除く。)の場合:45% (30%)
     有期契約労働者等の場合:60%
     有期契約労働者等を正規雇用労働者等へ転換した場合※:70%
     ※有期契約労働者等について「正規雇用労働者、勤務地限定正社員、職務限定正社員または短時間正社員への転換措置」または「有期契約労働者の無期契約労働者への転換措置」を講じた場合。
    [賃金助成] ( ) 内は大企業
     1人1 時間当たり760(380) 円

     なお、経費助成については実訓練時間数の区分に応じて限度額が設定され、賃金助成についても1人1訓練あたり1,200時間が限度時間となるなど、様々な制限が設けられています。

 また、今年度より「生産性要件」が廃止され、「賃金要件」と「資格等手当要件」が新設されました。そのため、「賃金要件」または「資格等手当要件」のいずれかを満たした場合は、別途申請を行うことで、経費についてはプラス15%等の加算分が追加で支給されます。
 

 両立支援等助成金は、職業生活と家庭生活が両立できる職場環境づくりを行う企業を支援するものです。こちらも様々なコースがありますが、2022年10月より改正育児・介護休業法により新設された出生時育児休業の取得に労働者が関心が寄せられている現状もあることから、以下では出生時両立支援コースをとり上げます。

 この出生時両立支援コースは、中小企業のみを対象とし、男性労働者が育児休業を取得しやすいように雇用環境整備や業務体制整備を行った上で、男性労働者が育児休業を取得した場合に助成金が支給されるものです。「男性労働者が出生時育児休業を取得した場合(第1種)」と「男性従業員の育児休業取得率が上昇した場合(第2種)」の2段階に分かれ、それぞれの主な支給要件と支給額は以下のとおりです。

  1. 第1種(男性労働者の出生時育児休業取得)
    (1)主な要件
    • 育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数行っていること。
    • 育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定等を策定し、その規定に基づいて業務体制の整備をしていること。
    • 男性労働者が子どもの出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得すること。
      ※所定労働日が4日以上含まれていることが必要。

    [代替要員加算]
     男性労働者の育児休業期間中の代替要員を新たに確保した場合に加算して支給されます。要件として、代替要員を確保した時期が、対象労働者の配偶者の妊娠の事実等を、会社が知った以降であることなどの要件があります。
    [育児休業等に関する情報公表加算]
     情報公表加算は今年度より新設されたもので、男性の育児休業等取得率、女性の育児休業取得率、男女別の育児休業取得日数の3点を「両立支援のひろば」サイト上で公表することが必要です。

    (2)支給額
     20万円
     代替要員加算 20万円(代替要員を3人以上確保した場合には45万円))
     育児休業等に関する情報公表加算 2万円
     1事業主1回のみ支給となります。
     
  2. 第2種(男性労働者の育児休業取得率上昇)
    (1)主な要件
    • 第1種の助成金を受給していること。
    • 育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数行っていること。
    • 育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定等を策定し、その規定に基づいて業務体制の整備をしていること。
    • 第1種の申請をしてから3事業年度以内に、男性労働者の育児休業取得率が30%以上上昇していること。または、第1種の申請年度に子どもが出生した男性労働者が5人未満かつ育児休業取得率が70%以上の場合に、その後の3事業年度の中で2年連続70%以上となったこと。
    • 育児休業を取得した男性労働者が、第1種申請の対象となる労働者の他に2名以上いること。

     上記の下線部については、今年度より拡充されました。男性労働者の育児休業取得者が少ない場合、従来からの要件(30%以上上昇していること)を満たすことが難しいケースがありましたが、拡充された要件(2年連続70%以上)に該当すると助成金の支給対象となります。

    (2)支給額
      1事業年度以内に30%以上上昇した場合:60万円
      2事業年度以内に30%以上上昇した(または連続70%以上)場合:40万円
      3事業年度以内に30%以上上昇した(または連続70%以上)場合:20万円
      
     改正育児・介護休業法における雇用環境整備の措置では、4つの選択肢のうち少なくとも1つ(労使協定を締結する場合は2つ)を講じることが義務とされていますが、この助成金を受給するためには2つ(労使協定を締結する場合は3つ)以上の措置を講じる必要があり、法令を上回る取組みが求められます。

  

 助成金には予算額が設けられているため、いざ活用しようと考えたときに、受付が終了している可能性があります。活用にあたっては、最新情報を確認しましょう。

■参考リンク
厚生労働省「人材開発支援助成金
厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内

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「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)を年度単位で締結されている企業が多くあるかと思います。新年度がスタートしていることから、以下では36協定を遵守するための実務上の注意点をとり上げます。

[1]日々のチェックポイント
 36協定に定めた内容を遵守するための日々のチェックポイントとして、以下の2点が挙げられます。

  1. 「1日」「1ヶ月」「1年」のそれぞれの時間外労働が、36協定で定めた時間を超えないこと。
  2. 休日労働の回数・時間が、36協定で定めた回数・時間を超えないこと。

 まず1については、「1日」「1ヶ月」「1年」のそれぞれの時間外労働の時間数を管理していく必要があり、特に「1年」は、例えば9ヶ月目に年間の時間外労働の上限を超えているといった事態にならないように、起算日からトータルで集計し、管理しましょう。2については、36協定で定めた内容を確認し、その内容の範囲で行う必要があります。

[2]特別条項を適用した場合のチェックポイント
 特別条項を適用した場合の36協定に定めた内容を遵守するためのチェックポイントとして、以下の3点が挙げられます。

  1. 36協定に記載した限度時間を超えて労働をさせる場合における手続に基づいて、手続きを行っていること。
  2. 特別条項の回数が36協定で定めた回数を超えないこと。
  3. 月の時間外労働と休日の合計が、その2~6ヶ月の平均をとって1月当たり80時間を超えないこと。

 1については、特別条項に該当する月ごとに36協定に記載した手続きを行う必要があります。例えば、「過半数代表者に対する事前申し入れ」とした場合、会社が従業員の過半数代表者へ事前に書面等で申し入れることが求められます。
 2については、特別条項の回数は最大6回までとされているため、例えば36協定において「6回」と定めた場合、従業員ごとに6回を超えないように管理することが求められます。実務上はこの点がもっとも重要なポイントであると言えるでしょう。
 そして、3については、例えば特別条項を1ヶ月90時間と締結しており、当月は90時間の範囲に収まっていたとしても、2~6ヶ月平均で時間外・休日労働を月80時間以内に収めなければならない絶対的な上限の規制が存在します。たとえば当月に90時間の時間外労働があった場合には、その翌月は70時間以内に収めるように業務を調整することが求められます。また、この2~6ヶ月の平均は、36協定の期間にしばられることなく、前後の36協定の期間をまたいだ期間も適用されます。36協定を2023年4月1日から2024年3月31日までの1年間で締結していたとしても、3ヶ月平均は2023年4月~6月のみならず、2023年3月~5月でも確認する必要があります。

 上記のほか、特別条項を適用した従業員に対して、会社は36協定に定めたいわゆる「健康福祉確保措置」を実施し、この実施状況に関する記録を36協定の有効期間中および有効期間の満了後3年間保存する必要があります。対象になったときは必ず実施するとともに、記録を残しておきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

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近年、最低賃金は大幅な引上げが行われており、企業経営に大きな影響を与えています。今年10月の最低賃金引き上げはどうなるのか、更にはその後も現在のような高水準での引上げが継続されるのかについて強い関心をお持ちの方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、2023年4月12日に、内閣官房新しい資本主義実現本部事務局が公表した「三位一体労働市場改革の論点案」の中から最低賃金に関する今後の論点について見ていきましょう。

[1]「三位一体労働市場改革の論点案」
 最低賃金に関して「三位一体労働市場改革の論点案」の中に記載されている内容をまとめると、以下のとおりとなります。

  1. 今年は、全国加重平均1,000円を達成することを含めて、公労使三者構成の最低賃金審議会で、しっかりと議論してもらう。
  2. 地域間格差の是正を図るため、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げることも必要。
  3. 今夏以降は、1,000円達成後の最低賃金引上げの方針についても(新しい資本主義実現会議で)議論を行う。

 これはあくまでも今後の議論の方向性ということで、実際には今後の議論が待たれるところではありますが、今年も例年相当、もしくはそれ以上の最低賃金引上げの可能性が出てきています。

[2]最低賃金の地域間格差縮小への動き
 [1]の2.でも最低賃金の地域間格差是正が論点となっていますが、この点については既に具体的な動きが見られます。最低賃金は、中央最低賃金審議会から示される引上げ額の目安を参考にしながら、各都道府県の地方最低賃金審議会で地域の実情を踏まえた審議・答申を得た後、異議申出に関する手続きを経て、都道府県労働局長により決定される仕組みとなっています。

 この目安については、従来A~Dの4区分が設けられており、東京・大阪などの都市部と地方では目安額に差が設けられることが通例となっていました。今回、この区分がA~Cの3区分へ再編されることとなり、最低賃金の地域間格差の縮小が図られることとなっています。※図はクリックで拡大されます。

 諸外国との賃金格差の縮小が大きな課題となる中、最低賃金に関しても、今後、大きな動きが予想されます。人手不足による採用難もあり、賃金は上昇傾向にありますので、今後の賃上げに備えた生産性の向上がまずは求められます。


■参考リンク
内閣官房新しい資本主義実現本部事務局「三位一体労働市場改革の論点案
厚生労働省「第65回中央最低賃金審議会 資料

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文書作成日:2023/05/11

 2023年4月1日にこども家庭庁が創設され、その前日にはこども政策担当大臣から「こども・子育て政策の強化について(試案)~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」が公表された。そこで、社労士はこの内容を顧客に説明することにした。

 今日は、2023年3月31日に政府から公表された「こども・子育て政策の強化について(試案)~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」の中から、今後、企業の実務に影響が出る可能性が高い内容についてお伝えしたいと思います。

 マスコミの報道を見ましたが、今後いろいろな動きがありそうですね。

 はい。ただ、現時点では試案であり財源も決まっていませんので、あくまでも今後の方向性のような内容になります。さて、様々な内容のうち、企業の実務に影響が大きいと予想されるものが3点あります。(1)男性育休の取得促進、(2)育児期を通じた柔軟な働き方の推進、(3)多様な働き方と子育ての両立支援、これらの内容は押さえておいた方がよさそうです。
 まず、(1)男性育休の取得促進では、「男性育休は当たり前」になる社会の実現に向けて、官民一体となって取り組むとしています。制度面と給付面からの内容が検討されていますが、まず制度面についてです。これまで男性の育休取得率を2025年までに30%という政府目標が掲げられていましたが、これを50%に引上げ、さらに2030年の目標を85%としています。

 大幅な引き上げですね。確か、直近の取得率は約14%くらいでしたね。

 そうですね。これに関連して、現在、従業員101人以上の企業は、次世代育成支援対策推進法の事業主行動計画の策定・届出等が義務付けられていますが、この事業主行動計画に以下のような内容を義務付けるとしています。
 ・男性の育休取得を含めた育児参加や育休からの円滑な職場復帰支援
 ・育児のための時間帯や勤務地への配慮等に関する目標・行動を義務付ける
 また、2023年4月より従業員数1,000人を超える企業に義務付けられた、年1回の男性労働者の育児休業等の取得状況の公表について、対象企業の拡充も検討するようです。

 なるほど。公表対象になって集計するとなるとたいへんそうですね。

 確かにそれはありますね。続いて、給付面についてお話しましょう。2022年10月より出生時育児休業(産後パパ育休)がスタートしましたが、出生後一定期間内において両親ともに育児休業を取得することを促進するため、育児休業給付の給付率を現行の67%(手取りで 80%相当)から、80%程度(手取りで 100%相当)へと引き上げることが検討されています。

 女性の育児休業給付については、どのようになるのでしょうか?

 女性についても、28 日間(産後パパ育休期間と同じ期間)を限度に給付率を引き上げることが検討されています。

 実際に決定すると、育児休業の期間によって、給付率が下がってくるイメージになりそうですね。

 はい、80%→67%→50%となる可能性もありますね。従業員への説明も複雑になりそうです。
 次に、(2)育児期を通じた柔軟な働き方の推進では、育児期を通じて多様な働き方を組み合わせることで、男女で育児・家事を分担しつつ、育児期の男女がともに希望に応じてキャリア形成との両立を可能とする仕組みを構築していくとしています
 現在は、育児・介護休業法上で義務となっている3歳未満のこどもを養育する従業員が利用できる育児短時間勤務について、こどもが3歳以降小学校就学前までの場合において、短時間勤務、テレワーク、出社・退社時刻の調整、休暇など柔軟な働き方を職場に導入するための制度を検討することにしていますね。

 なるほど。当社でも育児と仕事の両立を支援するために、対応を検討しようとしていたところでしたが、国も同じ方向で検討しているということですね。

 そうですね。この短時間勤務に関して、男女ともに短時間勤務をしても手取りが変わることなく育児・家事を分担できるよう、こどもが2歳未満の期間に、短時間勤務を選択した場合の給付を創設するとしています。
 最後に、(3)多様な働き方と子育ての両立支援では、雇用保険が適用されない週所定労働時間 20 時間未満の労働者についても失業手当や育児休業給付等を受給できるよう、雇用保険の適用拡大に向けた検討を進めるようです。

 これは影響が大きいですね。今後の動きに注目ですね。

 今後、この試案をベースに議論、検討を進め、2023年6月の「骨太の方針2023」までに大枠を提示するとしています。また情報が出てきましたら、お知らせします。

>>次回に続く

 



 上記でとり上げた(2)育児期を通じた柔軟な働き方の推進については、こどもが病気の際などに休みにくい等の問題を踏まえ、病児保育の拡充とあわせて、こどもが就学前の場合に年5日間取得が認められる「子の看護休暇」について、こどもの世話を適切に行えるようにする観点から、対象となるこどもの年齢や休暇取得事由の範囲などについて検討される予定となっています。

■参考リンク
こども家庭庁「こども・子育て政策の強化について(試案)- 次元の異なる少子化対策の実現に向けて -

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労働契約を締結するときには、労働基準法に定められた労働条件を従業員に明示する必要があります。この労働条件の明示のルールが2024年4月に変更になります。以下ではその内容をとり上げます。

[1] 就業場所・業務の変更の範囲の明示
 労働契約を締結する際や有期労働契約者の更新のタイミングごとに、すべての労働者に対し労働条件を明示する必要があります。明示事項の一つである「就業場所」と「業務の内容」は、現在は雇入れ直後のもので足りるとされていますが、来年4月以降は、これらに加えて「就業場所・業務の変更の範囲」の明示も必要になります。この変更の範囲は、将来の配置転換などによって、変わり得る就業場所・業務の範囲のことを指します。そのため、将来の可能性も含めたうえで、明示していくことになります。

[2]更新上限・更新上限等の明示
 有期契約労働者については、更新上限と無期転換申込機会、そして転換後の労働条件の明示をすることになります。

  1. 更新上限の明示
     有期労働契約者に関しては、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」に従った対応が求められています。今回、この基準の改正により、有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、有期労働契約の通算契約期間や更新回数の上限(以下、「更新上限」という)があるか否か、ある場合にはその内容を明示することが必要になります。
     また、更新上限を新たに設けたり、短縮したりするときは、あらかじめ、その理由を労働者に説明することが必要になります。例えば、従来は通算契約期間を定めていなかったものを5 年までと定める場合や、更新回数を4 回までとしていたものを2 回までにする場合が該当します。
     
  2. 無期転換申込機会・転換後の労働条件の明示
     有期労働契約が反復更新されて通算5 年を超えたときは、労働者の申込により、無期労働契約に転換できるルールがあります。来年4月以降は、この無期転換の申込ができるようになる(無期転換申込権が発生する)契約更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨を明示する必要があります。
     併せて、有期労働契約のときとは異なる労働条件を無期転換後に設定することがありますが、その内容についても、無期転換申込権が発生する契約更新のタイミングごとに明示が必要になります。

 今後、厚生労働省のホームページでQ&Aなどの詳細情報が出てくる予定ですので、その内容を踏まえて、実務上の対応を決定していきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和4年度労働政策審議会労働条件分科会報告を踏まえた労働契約法制の見直しについて(無期転換ルール及び労働契約関係の明確化)

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2024年4月より障害者の法定雇用率が2.5%、2026年7月より2.7%と段階的に引き上げられます。これに関連して障害者雇用納付金制度の変更などを含む障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則が改正され、2025年4月より施行される予定です。以下では、その内容をとり上げます。

[1]実雇用率算定の特例
 障害者の実雇用率の算定では、週所定労働時間が20時間以上の労働者をカウントの対象としていますが、2024年4月より、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者および重度知的障害者についても0.5人としてカウントするという改正が施行されます。
 この改正の背景には、障害特性で長時間の勤務が難しいこと等により、週所定労働時間20時間未満で雇用されることを希望する人がいずれの障害種別でも一定数存在し、特に精神障害者で多いという実状があります。このようなニーズを踏まえ、週所定労働時間が20時間未満であれば働くことができる人の雇用機会の拡大を図っていく狙いがあります。

[2]障害者雇用納付金制度
 常時雇用労働者数が101人以上の事業主を対象として、法定雇用率が未達成の事業主から納付金(不足人数1 人当たり月額50,000円)を徴収する障害者雇用納付金制度があります。
 また、常時雇用労働者数が101人以上の事業主で、法定雇用率を達成しているときには超過1人当たり月額27,000円の障害者雇用調整金が支給されます。この障害者雇用調整金の見直しが行われ、今後、支給対象人数が年間120人(単純換算で1ヶ月10人)までは月額29,000円、年間120人を超える場合は120人を超える人数分への支給額が23,000円となる予定です。
 また、常時雇用労働者数が100人以下の事業主で、法定雇用率を達成している場合には障害者雇用報償金が支給されていますが、こちらも支給額が変更される予定です。

 加齢により職場適応が困難となった障害者の雇用継続を図るための助成金(中高年齢等職場適応助成金(仮称))、障害者の新たな雇入れや雇用継続を図るために必要な一連の雇用管理に関する相談援助の事業を行うための助成金(障害者雇用相談援助助成金(仮称))が創設される予定です。このような助成金の活用も検討しながら、法定雇用率未達成の企業を中心に雇用の確保に向けた取り組みを進めましょう。

■参考リンク
厚生労働省「事業主の方へ

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新年度になり、新しくアルバイトを始める学生も多いことから、厚生労働省では例年開催している「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを今年も実施しています。今回はこのキャンペーンの内容について確認をしましょう。

[1]主な取組内容
 今回のキャンペーンでは、4月1日から7月31日にかけて都道府県労働局による大学等への出張相談や大学等でのリーフレットの配布等による周知・啓発等を実施されることになっています。具体的にはアルバイトを始める前に労働条件の確認を促すことなどが呼びかけられます。特に重点的に呼びかけが行われる項目として、以下の5点が挙げられています。

  1. 労働条件の明示
  2. シフト制労働者の適切な雇用管理
  3. 労働時間の適正な把握
  4. 商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止
  5. 労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止

[2]特に注意したいシフト制での勤務
 アルバイト学生については、学業との両立があることからシフト制で働くことが多くありますが、シフト制は、企業側も業務の状況によって、勤務を柔軟に調整できるというメリットがあります。その結果、企業が半ば一方的にシフトを変更するようなケースも見られ、アルバイト学生が予定していた勤務がなくなることで思うように収入が得られなくなったり、急なシフト変更によりの学業との両立が難しくなったりするなどのトラブルに発展することがあります。

 このシフト制に関しては、2022年1月に厚生労働省よりリーフレット「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」が公表されています。この中で、特に留意する事項として「始業・終業時刻」「休日」が挙げられ、例えば「休日」については、具体的な曜日等が確定していない場合でも、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明記することが求められています。

 企業としては、アルバイト学生だからということで、あいまいな対応を取らずに、改めてリーフレットの内容を確認し、アルバイト学生が安心して働くことができるようにしていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年度「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを全国で実施します
厚生労働省「「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項

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厚生労働省では、労働者の募集・採用における年齢制限を原則禁止していますが、例外として、就職氷河期世代に限定した特例措置を2025年3月末まで延長しました。以下では、労働者の募集・採用における年齢制限と就職氷河期世代を対象とした助成金をとり上げます。

[1]労働者の募集・採用における年齢制限
 労働者の募集・採用の際、原則として、年齢を不問としなければなりませんが、例外的に年齢制限を行うことが認められる場合があります。この例外的に認められる場合は以下のとおりです。

  1. 定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を無期労働契約の対象として募集・採用する
  2. 労働基準法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている
  3. 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を無期労働契約の対象として募集・採用する
  4. 技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、 無期労働契約の対象として募集・採用する
  5. 芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある
  6. 60歳以上の高年齢者、就職氷河期世代(昭和43年4月2日から昭和63年4月1日までに生まれた人)または特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる人に限定して募集・採用する

 このうち6.については、就職氷河期世代で正社員雇用の機会に恵まれなかった人に対する特例であり、2023年3月末までは「35歳以上55歳未満」と具体的な年齢で示していたところ、「昭和43年4月2日から昭和63年4月1日までに生まれた人」と生年月日で示され、2025年3月末まで延長されました。
 また、ハローワークにも同一内容の求人を申し込むこと等の要件を満たしたうえで、就職氷河期世代で正社員雇用の機会に恵まれなかった人を募集対象とする直接募集や求人広告、民間職業紹介事業者への求人申込み等の方法を併用することができます。
 

[2]特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)
 就職氷河期世代を正規雇用労働者(正社員)として雇用する場合には、特定求職者雇用開発助成金の「就職氷河期世代安定雇用実現コース」の利用が考えられます。この助成金は、就職氷河期世代で、以下の要件を満たす人をハローワーク・民間の職業紹介事業者などの紹介により正社員として雇い入れた場合に対象となります。

  • 雇入れの日の前日から起算して過去5年間に正社員として雇用された期間を通算した期間が1年以下である人
  • 雇入れの日の前日から起算して過去1年間に正社員等として雇用されたことがない人
  • ハローワークなどの紹介の時点で「失業している人」または「非正規雇用労働者など安定した職業に就いていない人」で、ハローワークなどにおいて、個別支援等の就労に向けた支援を受けている人

 助成金の額は合計60万円(大企業は50万円)で、対象期間を6ヶ月ごとに区分し、2回に分けて支給されます。また、対象となる労働者を雇い入れ、訓練と賃上げを実施した場合スに、この就職氷河期世代安定雇用実現コースの1.5倍の助成金を支給する「成長分野等人材確保・育成コース」が設けられています。


 就職氷河期世代安定雇用実現コースには、上記のほか様々な要件が設けられています。活用を検討する際は事前に詳細を確認しましょう。

■参考リンク
厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について
厚生労働省「就職氷河期世代を対象とする募集・採用について特例期限を令和6年度末まで延長します
厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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こんにちは。

 

文書作成日:2023/04/13

 坂本工業では、1日6時間、週5日の勤務をしているアルバイトがいるが、他社でもアルバイトを始めたいという相談を受けた。そこで社会保険の取扱いがどのようになるのか、社労士に相談することにした。

 1日6時間、週5日の勤務をしているアルバイトがいます。先日、他社でもアルバイトをしたいという相談がありました。当社では、アルバイトが他社で働くこと(副業・兼業)を禁止していないので、当社でこれまで通りに働いてもらえるのであれば、問題ないと伝えました。

 今回のように事前に相談してもらえると、ありがたいですね。

 そうですね。今後、具体的に1週間の勤務時間等を報告してもらう予定ですが、このような掛け持ちで勤務した場合、社会保険の加入はどのようになるのでしょうか。

 まず雇用保険は、複数の事業所で勤務し、それぞれの事業所で加入要件を満たしていたとしても原則として1ヶ所のみで加入することになります(※65歳以上のマルチジョブホルダーを除く)。ちなみにその加入する1ヶ所とは主たる賃金を受ける事業所です。

 当社の給与の方が高い場合、雇用保険は当社のみで加入し続ければよいということですね。

 その通りです。少し話はずれますが、仮に他社でも御社と同じくらいの時間数を勤務するとなると、過重労働が心配になりますね。

 そうですね。過重労働のことは本人に伝えておきたいと思います。それでは、社会保険(健康保険・厚生年金保険)はどのように考えるのでしょうか。

 社会保険は雇用保険と異なり、複数の事業所で加入要件を満たした場合、そのすべての事業所で加入することになります。

 そうなのですか!?となると、健康保険証(健康保険被保険者証)は2枚持つことになるのですか?

 いいえ。複数の事業所で加入した場合には、主となる事業所を従業員の方が選択し、届出することになります。この手続きにより、主となる事業所に係る健康保険証のみが交付されます。具体的な手続きとしては、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する必要があります。

 そのような手続きを行う必要があるのですね。

 社会保険料については、それぞれの事業所で支払われる報酬月額を合算した月額により標準報酬月額が決定されることになっており、それぞれの事業所で支払われる報酬月額に基づいて按分されます。

 単純に当社が支払う給与だけで標準報酬月額が決まるわけではないのですね。そうなると給与から控除する社会保険料額はどのように判断すればよいのでしょうか。

 社会保険料は、管轄する事務センターからそれぞれの事業所へ通知が届きます。この通知を元に給与から控除します。

 なるほど、かなり複雑ですね。

 2022年10月より被保険者数101人以上の従業員規模について社会保険の適用拡大が行われました。そして、2024年10月には51人以上の従業員規模へとさらに拡大されます。ざっくりとお伝えすると、週30時間以上勤務する人が社会保険に加入していたものが、週20時間以上勤務する人に変わる(※)わけですので、掛け持ちで勤務をしているパートタイマー・アルバイトのうち、複数の事業所で社会保険の加入要件を満たすケースが増えてくるでしょう。

 そうなると、他社でも社会保険の加入要件を満たしているかの確認をしておく必要がありますね。

>>次回に続く

※詳細な基準は以下のページでご確認ください。
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html



 掛け持ちで勤務する際の労災給付について確認をすると、労災保険の給付のうち、賃金額が給付額に反映されるものは、勤務するすべての会社の賃金額を合算した額を基礎として、給付額等が決定されます。例えばA社で20万円、B社で5万円の賃金が支払われている場合、どちらの会社で被災したとしても合算した25万円が基礎となります。
 また、脳・心臓疾患や精神障害に関する労災認定については、会社ごとに労働時間やストレス等の負荷を個別に評価して、労災認定の判断をしますが、それぞれの評価で労災認定されない場合は、すべての会社の労働時間やストレス等の負荷を総合的に評価して労災認定の判断が行われます。


■参考リンク
厚生労働省「副業・兼業
日本年金機構「適用事業所と被保険者
厚生労働省「雇用保険制度 Q&A~事業主の皆様へ~
厚生労働省「労働者災害補償保険法の改正について~複数の会社等で働かれている方への保険給付が変わります~

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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