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天災地変により従業員を休業させる場合の休業手当の取扱い!!

 

今年は地震や豪雨などの災害が頻発していますが、こうした天災地変により会社を休業せざるを得ないケースがあります。このような天災地変により事業を休業するときには、休業手当の取扱いが問題になります。今回は休業手当の基本的な考え方と天災地変の場合の取扱いについて確認しましょう。

1.休業手当とは
 そもそも労働基準法において、使用者の責に帰すべき事由、つまり会社の責任で従業員を休業させる場合、休業手当を支払う義務が課されています。これは、会社の一方的な休業によって従業員の生活が脅かされることを防止することを目的とし、会社は平均賃金の100分の60以上で計算した額を支払う必要があります。
 この使用者の責に帰すべき事由とは、会社の故意・過失による場合はもちろん、資金難や原材料不足による経営上の障害による場合も含まれています。

2.天災地変の場合の取扱い
 1.のとおり、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合は、休業手当の支払いが必要となりますが、地震や台風などの天災地変については不可抗力によるもので会社の責任で休業させたものではないため、休業手当の支払いは必要ありません。ここでいう不可抗力とは、東日本大震災や今回の平成30年7月豪雨などで示されたQ&Aによると、以下の2つの要件を満たすものでなければならないと解釈されています。

(1)その原因が事業の外部より発生した事故であること
(2)事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

 そのときに問題になるケースとして、取引先が天災地変により被害を受け、会社が原材料の仕入れや製品の納入などが不可能となったことにより、従業員を休業させる場合の取り扱いがあります。このケースについては、会社が直接的な被害を受けていない場合、原則として使用者の責に帰すべき事由に該当するとされ、会社は休業手当の支払いが必要になります。ただし、このケースであっても上記の2つの要件を満たす場合には、会社の責任による休業に該当しないとされています。具体的には、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力などを総合的に勘案し、判断する必要があるとの考え方が示されています。会社としてはこれらの状況を踏まえて、休業手当の支払いが必要か否かを個別で判断することになります。

 また、会社が休業手当を支払った場合に、それを支援する制度として雇用調整助成金が設けられています。支給要件として、直近3ヶ月の生産量、売上高などの生産指標が前年同期と比べ10%以上減少していることなどの要件がありますが、状況によっては特例が設けられ支給要件が緩和されることがあります。そのため、最新情報を最寄りの労働局またはハローワークへ確認しましょう。

■参考リンク
厚生労働省「平成30年7月豪雨について」


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同一労働同一賃金とは何か!!

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こんにちは。

 

同一労働同一賃金とは何か!!

 

 同一労働同一賃金に関する2つの注目される最高裁判所の判決(長澤運輸事件、ハマキョウレックス事件)が、6月1日に言い渡された。これらの判決を受け、会社としてどのような対応が必要なのか、社労士に相談することにした。

 こんにちは。猛暑が続き、熱中症対策が必要不可欠ですね。

 そうですね。体調管理を万全に行っておきたいところです。今日は、6月1日に同一労働同一賃金に関する2つの最高裁判決(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)が出たことから、この情報提供をしたいと思って伺いました。

 新聞などでもとり上げられていましたね。社内でも同一労働同一賃金について、どのように対応していくのか話が出ていたところです。

 同一労働同一賃金に関しては、6月29日に働き方改革関連法が成立し、大企業は2020年4月1日から、中小企業は2021年4月1日から改正法が施行されます。また「同一労働同一賃金ガイドライン案」が2016年12月に出されていますが、働き方改革関連法の成立に伴い、今後、年内を目処にガイドラインとして確定する予定になっています。

 なるほど。ガイドラインが出てくるとなると、これも踏まえて対応していく必要がありますね。

 はい。そこで今日は2つの最高裁判決を受けて、会社としてどのような対応が必要となるのかを解説しましょう。まず押さえておくべきポイントとしては、「同一労働同一賃金」とは何かという点です。

 同一労働同一賃金とは、同じ業務をしていれば賃金も同じにしなければならないという意味ではないのでしょうか?

 そのように理解している人が多くいますが、この意味での同一労働同一賃金を定めた法律はありません。働き方改革関連法が成立しましたがこの中にも規定されていません。法律で定められているのは、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保であり、「均等待遇」と「均衡待遇」になります。
 「均等待遇」とは、前提となる状況が同一であれば同一の待遇にすることを求めるものであり、「均衡待遇」とは、前提となる状況に違いがあればその違いに応じた待遇をすることを求めるものになります。

 均等待遇が求められているのか、それとも均衡待遇が求められているのか、状況を確認した上で検討しなければならないということですね。この前提となる状況とはどのように考えるのでしょうか?

 基本的には職務内容、職務内容・配置の変更範囲に違いがあるのかという状況を見ていくことになります。この職務内容とは業務内容、責任の程度のことであり、いわゆる非正規社員(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の職務が正社員と比べてどのようになっているのかを確認していきます。

 なるほど。責任の程度というのは、権限や役割の範囲に違いがあるのかという点をみていけばよいのでしょうか?

 そうですね。そのほか、トラブル発生時や緊急時の対応、成果への期待の程度なども考えられます。
 次に、職務内容・配置の変更範囲について、まず職務内容の変更範囲は職務が限定されているか、役割の変更があるかということであり、配置の変更範囲は、転勤や昇進、出向等が考えられます。

 いろいろな要素から違いがあるのかをみていく必要がありそうですね。
 当社では正社員、契約社員、パートタイマーの3つの雇用形態があり、それぞれで求める職務内容が異なり、また正社員には配置転換を行う可能性があります。均等待遇の方は問題がなさそうですが、均衡待遇の方が気がかりです。

 確かに少なからず何らかの差はあるけれども、その差の程度が待遇の差とバランスが取れているかを判断するのは難しいですよね。実は、今回の最高裁判決では均衡待遇を争っており、この中で賃金項目の各手当を個別にみて、その手当の趣旨から不合理な点がないか判断がなされています。

 なるほど。当社では、正社員に資格手当、家族手当、住居手当、通勤手当の4つの手当を支給していますが、契約社員とパートには通勤手当のみを支給しています。今後は、契約社員やパートタイマーにも資格手当、家族手当、住居手当を支給しなければならないということでしょうか?

 必ずすべての手当について支給しなければならないということではなく、各手当の支給目的を明確にし、不合理とならないようにしていくことが求められます。例えばハマキョウレックス事件では、住宅手当を正社員のみに支給していることについて、正社員には転居を伴う配転が予定されていることから不合理ではないとしています。
 会社としては、人材活用の仕組みの違いがあることから、住宅手当は正社員のみを対象としているなどの説明ができるのか、その他の手当についても説明ができるのか、説明ができなければ今後どのような対応をしていくか検討していく必要があります。

 まずは全体を整理していくところからはじめる必要がありますね。

 そうですね。進めていただく中で疑問点等がでてきましたら、お声がけください。

 

>>次回に続く

 



 今回は、同一労働同一賃金とは何かについて解説しましたが、これに関する働き方改革関連法について補足しておきましょう。現在、均等待遇、均衡待遇はパートタイム労働法と労働契約法の中で定められていますが、今後、労働契約法の中で定められていたものが、パートタイム労働法に組み込まれ、パートタイム労働法の対象に有期雇用労働者も含まれます。そして、法律も「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」になり、「パート・有期法」と呼ばれたりすることになるでしょう。
 また、この同一労働同一賃金は、企業が直接雇用している人だけでなく、派遣労働者についても派遣法の中で求められ、派遣先の労働者との均等・均衡待遇か、一定の要件を満たす労使協定による待遇のいずれかの対応が必要となります。この対応について、派遣元は企業規模に関わらず2020年4月より施行となります。そのため、派遣先(中小企業)では、自社の検討よりも先行して派遣元から派遣社員に関して相談される可能性があります。

■参考リンク
厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」

 

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働き方改革関連法の成立により予想される監督指導の強化と労働基準監督官の役割!!

 

2018年6月29日に成立した働き方改革関連法において、時間外労働の上限規制等が設けられ、2019年4月以降に順次施行されることになりました。これに伴い、労働基準監督官による事業場に対する監督指導等の強化が予想されます。そこで今回は、労働基準監督官の役割と、実際に行われる監督指導の流れについて解説します。

1.労働基準監督官の役割と調査等の実施
 労働基準監督官は、労働者の安全や健康確保を図るため、各事業場に立ち入り、労働基準関係法令に基づく調査や指導等を行う役割を担っています。そして適正な調査を行うため、予告なく事業場へ立ち入ることができる権限を持っており、原則として調査を拒否することはできません。ただし、責任者や担当者が不在であるなど、調査や指導等に対応ができない場合は、日程の変更に応じる場合があります。
 なお、正当な理由なく事業場への立ち入りや調査を拒んだり、妨げたりしたときには、労働基準法により30万円以下の罰金が科せられることもあります。

2.労働基準監督官による監督指導の流れ
 労働基準監督官は、定期的あるいは労働者からの申告や、労働災害が発生した事業場を中心に調査を実施します。調査では、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等の確認や、労働災害が発生した現場の実況見分等が行われます。その結果、法令違反が認められた場合には是正勧告書が、法令違反ではないものの改善する必要があるとされた場合には指導票が交付されます。是正勧告書には法令違反を正すまでの期日、指導票には指導内容を正すまでの期日が設定されるため、それまでに是正・改善等を行い、労働基準監督署へ是正報告書または改善報告書を提出します。
 労働基準監督官が実施する監督指導(定期監督)は、平成28年は約13万5千件とされ、定期的に実施される監督指導では、約67%の事業場において何らかの法令違反が認められています。

 最近では、労働基準監督官の人手不足のため、事業場に対する十分な監督指導が困難な状況にあり、監督指導の一部に対し、民間を活用する動きが進められています。今年度は、36協定の未届事業場に対する相談指導事業の民間委託が開始されました。労働時間をはじめとした労務管理の重要性が増していますので、日頃から事業場の自主点検を行うなど、適切な運用を心がけるようにしましょう。

■参考リンク
厚生労働省「確かめよう労働条件 労働基準監督官の仕事」

厚生労働省「平成28年労働基準監督年報(第69回)」


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外国人労働者が出国時に受け取ることのできる公的年金の脱退一時金!!

 

日本に住む外国人労働者は、原則として国民年金や厚生年金に加入する義務がありますが、短期間でその資格を喪失して日本から出国する場合、日本の年金を受給できないケースが少なくありません。そのような外国人労働者の年金保険料が掛け捨てになることを防ぐため、一定の要件を満たす場合、加入期間に応じて一時金を請求することができます。この仕組みを脱退一時金といいます。

1.脱退一時金の支給要件
 脱退一時金は、以下の4つの条件すべてに該当する人が、国民年金や厚生年金の被保険者資格を喪失し、日本を出国後2年以内に請求したときに支給されます。

(1)日本国籍を有していないこと
(2)国民年金または厚生年金の被保険者期間の月数が6ヶ月以上あること
(3)日本に住所を有していないこと
(4)年金(障害手当金を含む)を受ける権利を有したことがないこと

 (4)について、老齢年金の受給資格期間である10年以上にわたって日本の年金制度に加入したことがある人は、脱退一時金を請求することができません。この場合、将来、日本の老齢年金を受け取ることができるため、忘れずに請求するようにしなくてはなりません。

2.出国前に請求が可能となった脱退一時金の手続き
 脱退一時金の請求手続きは、出国後に外国から行う必要があり、やり取りが煩雑でしたが、2017年3月より転出届を市町村に提出することにより、住民票転出(予定)日以降に日本国内で行うことが可能になりました。この場合、日本国外に転出予定である旨が記載された住民票の写しや住民票の除票等、市区町村に転出届を提出したことが確認できる書類の添付が必要です。

 脱退一時金を請求するという方法も一つですが、外国人労働者が、年金加入期間を通算することのできる社会保障協定を締結している相手国の人であれば、一定の要件のもと、日本での年金加入期間を、相手国の年金加入期間と通算して将来の年金を受け取ることができる場合があります。脱退一時金を受け取ると、その該当する期間は年金加入期間でなかったことになるため、将来の年金として受給するかを検討したうえで手続きを行うことが必要になります。なお、中国、フィリピンとの社会保障協定が8月1日に効力が生じることになり、これにより日本は21カ国と協定の署名が済み、うち18カ国が発効しています。具体的な国名や取扱い等は下記の参考リンクをご参照ください。

■参考リンク
日本年金機構「短期在留外国人の脱退一時金」

厚生労働省「日・中社会保障協定の署名が行われました」

日本年金機構「社会保障協定」


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過去最多を更新した精神障害による労災請求件数!!

 

長時間労働や仕事のストレスによって過重な負荷がかかり、従業員が脳・心臓疾患や精神障害を発症するケースが多くの企業で起こり、問題となっています。こうした問題が発生した際には、労災請求が行われる場合がありますが、先日、平成29年度の労災請求状況に関する集計結果が厚生労働省より発表されました。今回は、この内容についてとり上げましょう。

1.脳・心臓疾患の労災補償状況
 脳・心臓疾患の労災請求件数は840件となり、前年度の825件から15件増加しました。そして支給決定件数は253件で、認定率は38.1%となっています。
 医学的に、脳・心臓疾患の発症と時間外労働時間の長さとの関連性は強いと言われていることから、労災として認定された事案における時間外労働の長さには注目をしておく必要があります。今年度の支給決定事案(「異常な出来事への遭遇」または「短期間の過重業務」を除く)の内容を見ると、評価期間1ヶ月間の時間外労働時間はすべて80時間以上ですが、評価期間2~6ヶ月間の1ヶ月平均の時間外労働時間では、45時間以上60時間未満であっても労災として認定された事案が見られます。他にも労災の認定がされた理由はあるかと思いますが、単月での長時間労働のみならず、慢性的な長時間労働にも注目し、できるだけ時間外労働時間数が45時間に収まるように、業務内容や業務分担を見直すなどして対策していくことが求められます。

2.精神障害の労災補償状況
 精神障害の労災請求件数は1,732件となり、前年の1,586件から146件増加し、過去最多となりました(下図参照)。支給決定件数は506件で、認定率は32.8%となっています。認定率は過去5年間の中で最低となっていますが、申請の3件に1件の割合で労災として認定されていることが分かります。

 精神障害の集計では、精神障害が発症した理由と考えられる支給決定事案における具体的な出来事別が分類されていますが、上位項目は次のとおりとなっています(「特別な出来事」を除く)。

1)(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた 88件
2)仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった 64件
3)悲惨な事故や災害の体験、目撃をした 63件
4)2週間以上にわたって連続勤務を行った 48件
5)1か月に80時間以上の時間外労働を行った 41件

 精神障害の具体的な出来事として上位項目となった「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」という内容はいわゆるパワーハラスメントに該当し、その予防が重要になります。そのため、企業としては、管理職や一般職向けの労働時間やハラスメントに関する研修を定期的に実施したり、従業員が相談しやすいようにハラスメント相談窓口を設置するなどして対策を行っていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「平成29年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」


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休憩を交替制にするときに締結が必要な労使協定!!

 

労働基準法に定められている休憩は、同じ時間に全労働者が一斉に取ることが原則となっています。しかし、お昼の休憩時間にも電話番が必要なことなどから、交替制を取っている会社も多いかと思います。そこで、交替制で休憩時間を運用するときに必要な手続について確認してみましょう。

1.休憩時間の原則
 労働基準法では、休憩時間について以下の3点を規定しています。

(1)労働時間の途中に一定の休憩時間を与えること
(2)休憩時間は一斉に与えること
(3)休憩時間には業務から離れて自由に利用できる時間である必要があること

 なお、以下の8つの業種では、休憩を一斉付与することが事業活動にとって不都合となる可能性があるため、この(2)に関する原則は適用除外されています。

[一斉付与の適用が当然に除外される事業]
運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署

2.休憩の一斉付与の原則を除外する手続
 1.の通り、休憩時間は原則として労働者に対して一斉に与える必要がありますが、過半数労働組合あるいは労働者代表と事業場ごとに以下の2点を定めた労使協定を締結することで、その適用を除外することができます。なお、この労使協定は労働基準監督署への届出までは不要です。

[労使協定で締結する内容]
(1)一斉に休憩を与えない対象となる労働者の範囲を定める
(2)具体的な休憩の与え方を定める

 

 休憩時間を一斉に付与すること以外に時折問題となることが、休憩時間における外出の許可制です。これについては、食堂や休憩室を設置しているなど事業場内で自由に休憩できる環境を用意している場合は、許可制とすることも差し支えないとしています。
 休憩時間に関する労使協定は、その存在があまり知られていないこともあり、実質的な運用が行われていても締結されていないことがあります。そのため、休憩時間を交替制にしている会社は一度、労使協定の締結の有無を確認するとよいでしょう。


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パートタイマーの定着率向上を目指す正社員転換制度!!

 

昨今の人材不足の中、優秀な人材の定着を図るために、パートタイマーから正社員へ雇用形態を変更する正社員転換制度の導入を行う企業が増加しています。そこで今回は、正社員転換制度を導入する際のポイントについて解説します。

1.法律上の義務としての正社員転換制度
 パートタイム労働法では、パートタイム労働者を対象として、通常の労働者(正社員)への転換を推進するため、以下のいずれかの措置を講じなければならないとされています。

(1)正社員を募集する場合、その募集内容を周知する
(2)正社員のポストを社内公募する場合、応募する機会を与える
(3)正社員へ転換するための試験制度を設ける
(4)その他正社員への転換を推進するための措置を講ずる

 正社員転換制度は(3)に該当するものと判断できますが、実際に応募したパートタイム労働者全員を正社員に転換することまでは求めていません。

2.正社員転換制度を導入する際のポイント
 正社員転換制度を導入するにあたり、勤続期間や資格などを転換の要件として設けることは問題ありません。ただし、正社員の勤続年数が比較的短い企業において、パートタイム労働者から正社員へ転換する際に、極端に長い勤続年数を求めるなど必要以上に厳しい要件を求めることは、措置を講じたとはいえないとの指摘を受ける可能性があります。
 また、企業の状況にもよりますが、正社員転換制度を導入してから長期間にわたって正社員に転換した実績がないような場合には、企業において制度が形骸化していないかという確認が必要になります。
 その他、パートタイム労働者から説明を求められた際には、正社員への転換推進措置の決定にあたって何を考慮したか説明する義務があります。正社員転換制度を規定化することで、パートタイム労働者にあらかじめ分かるようにしておきたいものです。

 労働契約法による無期転換ルールや同一労働同一賃金への対応に伴い、パートタイム労働者から正社員等へ転換する動きはますます加速することが予想されます。優秀な人材の安定的な確保のためにも、制度の整備および周知を進めておきたいものです。なお、正社員転換等を行った場合には、キャリアアップ助成金が活用できるケースもあります。キャリアアップ助成金の詳細については、以下の参考リンクをご参照ください。

■参考リンク
厚生労働省「パートタイム労働法の概要」

厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内」


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従業員の個人情報を取扱う際の注意点!!

 

文書作成日:2018/07/12

 今年3月より社会保険の手続きにおいて、マイナンバーの利用が開始され、会社は従業員の個人情報を取り扱う際に、より一層注意を払うことが求められるようになっている。そこで、従業員の個人情報(以下、「情報」という)を取り扱う際の注意点ついて社労士に確認することにした。

 こんにちは。社会保険や雇用保険の手続きを行う際に、マイナンバーを記載することとなり、情報の取扱いに、より一層注意が必要になりましたね。

 そうですね。届出の内容によっては、従業員本人だけでなく、その家族のマイナンバーも記載することになり、広範囲の情報について会社は取り扱うことになります。その管理の重要性も増してきました。

 ちょうど先日、中途入社してきた従業員から、会社の情報管理がどのようになっているか、漏えいするリスクはないのかといった質問がありました。注意して取り扱っているつもりですが、リスクをゼロにすることは難しいため、説明に苦慮しました。今日は改めて、情報管理においてどのような点に注意が必要なのかを教えてください。

 わかりました。情報の取扱いは、(1)収集から利用、(2)保存、(3)破棄まで分けて考えることになりますので、順を追って説明しましょう。まず(1)の収集から利用にあたっては、その利用目的をできる限り特定しておく必要があります。

 確か就業規則に記載している届出に関しては、人事労務管理上の手続きのために使用すると記載してあったように思います。

 なるほど。日常的な人事労務管理全般という規定ですので、かなり広範囲で利用できるように記載されているのですね。ここでの注意点としては、あらかじめ特定していない利用目的で、情報を収集する場合には、届出様式に目的を記載するか、通知案内文等にその目的を記載することなどにより、対応する必要があります。例えば、以前、各種メディアを騒がせたものとして、てんかんの持病を持った方が社有車を運転し、てんかんの発作が運転中に出てしまい、事故を引き起こしたということがありました。このとき、社有車を業務で利用する企業では、てんかんのような運転をする際に注意が求められる持病を持った従業員が自社にもいないかを把握するために、社有車を運転する従業員に対して持病の確認を行ったケースがありました。このような確認を行う場合には、利用目的を特定してから行う必要があります。

 なるほど。新たに情報を収集する必要性が出てきた場合は、利用目的を特定し伝えた上で、収集を行うということですね。

 そうですね。利用目的を伝え、その目的に応じた情報のみ収集することがポイントとなります。さらに利用目的に応じて、利用する人を限定しておいた方がよいですね。例えば、マイナンバーについては、誰がどのような目的で利用したのか、その履歴をなんらかの形で残しておく必要があります。不用意に誰かが情報を見てしまうことがあれば、マイナンバーの漏えいにもつながりやすくなります。そのため、利用者を限定し、利用者に対して利用目的の範囲で利用するよう定期的に教育しておくことも重要です。

 確かに、実際にマイナンバーを取り扱う者への教育は不可欠ですね。もうひとつ、少し気になっていることとして、健康診断結果の取扱いがあるのですが、どのように考えたらよいでしょうか。

 健康診断結果は、機微な情報として管理すべきもので、マイナンバーと同様、漏えいリスクを最小限に留めるため、利用目的に応じて利用者を限定しておくことが必要になります。

 利用目的と併せて、利用者についても特定した方がよいですね。

 そうですね。つぎに、(2)の保存については、漏えいが起きないようにセキュリティ対策がなされた環境で保存しておく必要があります。例えば鍵つきのキャビネットに保管するといった対応が必要になります。電子データで保管するときにも、ファイルにパスワードを付けるといったことも必要になるでしょう。

 パスワード付きですね。仮に漏えいしても見ることができないようにすることは重要ですね。

 はい、おっしゃるとおりです。そして、重要なポイントは、利用目的が終わり保存期限の来たものについては速やかに、そして適切な方法で破棄(マイナンバーの部分については破棄または削除)することが漏えいリスクを減らすことにもなります。

 これが(3)の破棄ですね。実は、何かあったときに記録がないことを心配して書類を長く保存していますが、これでは問題があるということでしょうか。

 心配されるお気持ちは分かるのですが、情報を持っていることがリスクになることを理解していただく必要があります。いつまで保存するかは、法令により保存期間が設けられています。例えば、労働基準法第109条では、「労働者名簿、賃金台帳、雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類」は退職日等から3年間保存することになっています。このような法律に従って破棄をするべきであり、法令で定められていないものについては、会社で必要性の判断をし、保存期限を決めておくべきなのでしょう。

 了解しました。保存期限に従い、破棄していくようにします。

 

>>次回に続く

 



 今回は、従業員の個人情報を取扱う際の注意点を解説しましたが、応募時の書類を取扱う際の注意点について補足しましょう。
 この応募時の書類に関して、過去に、不採用者から返却して欲しいという問い合わせを受けたケースもあるかも知れません。この応募時の書類の取扱いについては、法令で返却しなければならないと定められている訳ではありません。そのため、返却するか否かは会社でルールを定めればよいこととなり、応募書類を出してもらう段階で、返却するのか、会社で破棄するのかその取扱いを伝えておくことが重要になります。また、ハローワークでも求人申込書を提出する段階で、応募書類の返戻について記載する欄があり、「返戻あり」か「求人者の責任にて廃棄」となっています。

■参考リンク
厚生労働省「厚生労働分野における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン等」

内閣府「マイナンバー(社会保障・税番号制度)」

 

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派遣労働者受入企業で対応が迫られる派遣期間制限の延長手続き!!

 

改正労働者派遣法施行から平成30年9月30日で3年となることにより、派遣労働者の受入期間の期限を迎えるケースが発生します。そのため、派遣労働者を受け入れている企業ではその対応が求められます。そこで、今回は、改正労働者派遣法による派遣労働者の受入期間の制限(以下、「派遣の期間制限」という)の仕組みと、期間を延長する場合の手続きについて確認しましょう。

1.労働者派遣の期間制限の仕組み
 改正労働者派遣法が施行される前までは、研究開発や通訳、事務用機器操作など政令で定めた26業務(専門26業務)に該当するときは、派遣期間に制限がなく、それ以外の派遣業務には原則1年、最長3年という期間制限が設定されていました。改正労働者派遣法でこの仕組みが見直され、施行日である平成27年9月30日以降に締結・更新した労働者派遣契約では業務の内容に関わらず、原則として3年を超えて派遣労働者を受け入れることができないという、以下の2つの派遣の期間制限が設けられました。

(1)派遣先事業所単位での期間制限
 同一の派遣先の事業所で平成27年9月30日以降、最初に派遣労働者を受け入れた日から3年を超えて派遣労働者を受け入れることができない。
(2)派遣労働者(※)個人単位の期間制限
 平成27年9月30日以降に開始した労働者派遣契約は、同一の派遣労働者を同一の組織単位(いわゆる「課」など)で3年を超えて受け入れることができない。
 ※派遣元事業主で無期雇用されている派遣労働者、60歳以上の派遣労働者等を除く。

2.派遣期間延長の手続きと効果
 1のとおり、原則3年という派遣の期間制限が設けられましたが、このうち(1)の派遣先事業所単位での期間制限では一定の手続き(延長の手続き)を行うことにより、3年を超えて同じ事業所で派遣労働者を受け入れることを認めています。具体的には、派遣の期間制限に抵触する日の1ヶ月前の日までの間に、派遣先が派遣労働者を受け入れている事業所で、過半数労働組合または過半数代表者(以下、「過半数労働組合等」という)に派遣可能期間の延長に関する意見を聴取する必要があります。例えば、平成27年10月1日から新しく派遣労働者を受け入れた派遣先の事業所が受け入れ期間を延長する場合は、平成30年9月1日までに意見聴取を終えておく必要があります。
 また、この意見聴取を行う際には、異議があった場合に、異議への対応方針を説明する義務があることから、期限間際に意見聴取を行うようなケースでは、異議があり意見聴取が終えられない可能性が出てきます。実務的には早めに対応に着手することが求められます。

 なお、派遣労働者個人単位の期間制限は、組織単位ではあくまで3年が派遣の期間制限ですが、派遣先事業所単位での期間制限について、延長の手続きが行われている場合は、同一の派遣先事業所の別の組織単位で、引き続き同じ派遣労働者を受け入れることが可能です。まずは受け入れている派遣労働者の契約期間を確認し、必要な対応を進めましょう。

■参考リンク
厚生労働省「平成27年労働者派遣法の改正について」


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ハローワークを通じた障害者の就職件数が9年連続で前年を更新!!

 

平成30年4月より障害者の法定雇用率が2.2%(民間企業の場合)に引き上げられ、また平成33年4月までには2.3%に引き上げられることが決まっています。そのため、障害者の採用に積極的な取組みをしている企業が多くなっています。このような動きを反映して、ハローワークを通じた障害者の就職件数が9年連続で前年を更新しました。以下では、この詳細をみておきましょう。

1.障害者の就職件数
 先日、厚生労働省から公表された「平成29年度の障害者の職業紹介状況」によると、ハローワークへの新規求職申込件数は202,143件(前年度191,853件)となっており、前年度に比べ10,290件、5.4%増加しています。これに対し、障害者の就職件数は97,814件(前年度93,229件)となっており、前年度に比べ4,585件、4.9%増加し、その件数は9年連続で前年を更新しています。
 就職件数の推移を見てみると、下図のようになっており、特に精神障害者の就職件数が右肩あがりで増加していることがわかります。企業が障害者の雇用を確保するために、精神障害者の採用に取り組んでいる背景がうかがわれます。

2.産業別・職業別の就職状況
 産業別に就職状況を見てみると、就職件数全体(97,814件)のうち「医療、福祉」が35,566件と全体の4割近くを占めており、「製造業」13,595件、「卸売業、小売業」12,412件、「サービス業」10,288件と続いています。
 また職業別に就職状況を見てみると、「運輸・清掃・包装等の職業」が33,767件と全体の3分の1強を占めており、「事務的職業」20,282件、「生産工程の職業」12,666件、「サービスの職業」11,803件と続いています。
 その他、障害種別の就職状況では、身体障害者については「事務的職業」(7,183件、全体の26.8%)、知的障害者については「運輸・清掃・包装等の職業」(10,022件、全体の47.8%)、精神障害者についても「運輸・清掃・包装等の職業」(15,882件、全体の35.2%)の割合が、職種別では一番高い状況となっています。

 障害者の採用にあたっては、新規で採用を行なうほか、在籍中の従業員に障害者がいないかを確認することがありますが、厚生労働省より出されている「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」を確認して、適切な対応をすることが求められています。

■参考リンク
厚生労働省「ハローワークを通じた障害者の就職件数が9年連続で増加」

厚生労働省「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの概要」


※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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