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現在、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる従業員については、雇用保険の被保険者となります。2024年の通常国会で改正雇用保険法が成立し、この被保険者となる従業員の範囲が拡大することになりました。施行日は2028年10月1日とまだ先ですが、どのように変わるのかを確認しておきましょう。

[1]雇用保険の適用拡大
 雇用保険の被保険者でなければ、基本手当(いわゆる失業手当)や、育児休業取得時の育児休業給付等は受給できません。働き方や生計維持のあり方の多様化が進展している中で、週の所定労働時間が短い労働者が増えています。そのような背景から、雇用保険の被保険者の範囲を拡大する必要があると判断され、「1週間の所定労働時間が20時間以上」という要件が「1週間の所定労働時間が10時間以上」に変更されることになりました。

[2]被保険者期間の算定基準
 基本手当を受給するには、退職日前2年間に、雇用保険の被保険者であった期間が12ヶ月以上(倒産・解雇等の理由により退職した場合は退職日前1年間に6ヶ月以上)必要になります。ここでの「1ヶ月」とは、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある月または賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上である月を指します。
 適用拡大に伴い、被保険者の賃金の支払の基礎となった日数が6日以上ある月または賃金の支払の基礎となった時間数が40時間以上である月を「1ヶ月」とすることに変わります。

[3]給付制限の見直し
 現在は、自己都合で退職した者が基本手当を受給しようとすると、原則として2ヶ月間の給付制限期間(基本手当が支給されない期間)が設けられています。
 今回の改正で、退職した後や、退職日前1年以内に、一定の教育訓練を受講した場合には、この給付制限が解除されることになりました。また、2ヶ月間の給付制限期間を1ヶ月に短縮する通達改正が行われる予定です。なお、現状、5年間で3回以上、自己都合で離職した場合には給付制限期間が3ヶ月となりますが、この点は改正されない予定です。
 この給付制限の見直しは、適用拡大に先立ち、2025年4月1日に施行されます。

 今回の適用拡大により、被保険者となる従業員が増えることで、雇用保険料の会社負担の増加、そして、各種手続き数の増加による事務負担が生じます。適用拡大が施行されるまでにはまだ時間がありますが、特に短時間のパートタイマー・アルバイトが多い企業では、施行後の影響を事前に確認しておきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要

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文書作成日:2024/06/13

 

坂本工業は従業員数40名以上のため、6月1日現在の障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)をハローワークに報告する義務があり、7月15日までに提出することになっている。そこで、報告に当たって障害者の把握・確認するときにどのような確認方法を採ればよいか、社労士に相談することにした。

 障害者雇用状況報告を7月15日までに提出する必要があるので、そろそろ書類の作成にとりかかろうと思っています。従業員の中から、障害者を把握・確認する際には、当然、プライバシーに配慮する必要があるかとは思いますが、具体的にどのようなことに注意すべきなのでしょうか。

 ご質問については、厚生労働省から「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」が出ていますので、この内容を解説しましょう。障害者を把握・確認する方法としては、原則として雇用している従業員全員に対して申告を呼びかけることとされており、例外的に個人を特定して照会を行うことができる場合が定められています。

 原則、従業員全員に向けて呼びかけることが必要なのですね。具体的にはどのような方法があるのでしょうか?

 メールや書類の配布など、画一的な手段で従業員からの申告を呼びかけることになります。適切な事例としては、例えば以下のものがあります。

  • 従業員全員が社内LANを使用できる環境を整備し、社内LANの掲示板に掲載する、または従業員全員に対して一斉にメールを配信する。
  • 従業員全員に対して、チラシ、社内報等を配布する。
  • 従業員全員に対する回覧板に記載する。

 不適切な事例としては、休憩室にのみチラシを置いておくことや障害者と思われる従業員のいる部署に対してのみチラシを配布すること等があります。

 なるほど。意図せず偏った呼びかけにならないように注意が必要ですね。

 そのほか、例外はあるのですが、会社が他の目的で入手した情報を根拠に照会を行うことも不適切になります。例えば、所得税の障害者控除を行うために提出された書類を根拠にしたり、病欠・休職の際に提出された医師の診断書を根拠にしたりすることです。

 会社としては、会社に報告した情報として扱ってしまいそうですが、やはり問題なのですね。

 そうですね。さて、申告を呼びかけるに話を戻すと、呼びかけの際に明示する事項として以下の8つがあります。

  1. 業務命令として、この呼びかけに対する回答を求めているものではないこと
  2. 障害者雇用状況の報告、障害者雇用納付金の申告、障害者雇用調整金または報奨金の申請のために用いるという利用目的
  3. 2の報告等に必要な個人情報の内容
  4. 取得した個人情報は、原則として毎年度利用するものであること
  5. 利用目的の達成に必要な範囲内で、障害等級の変更や精神障害者保健福祉手帳の有効期限等について確認を行う場合があること
  6. 障害者手帳を返却した場合や、障害等級の変更があった場合は、その旨会社に申し出てほしいこと
  7. 特例子会社又は関係会社の場合、取得した情報を親事業主に提供すること
  8. 障害者本人に対する公的支援策や企業の支援策についても、あわせて伝えることが望ましい

 1の「業務命令として、この呼びかけに対する回答を求めているものではないこと」はどのような意味ですか?

 業務命令となると、呼びかけに必ず対応しなければならないと感じる従業員も出てくるかと思います。自らの障害に関する情報が、障害者雇用状況の報告、障害者雇用納付金の申告、障害者雇用調整金または報奨金の申請のために用いるという利用目的に同意する場合だけ、呼びかけに対して回答すればよいということを、しっかりと伝える必要があります。

 従業員が知られたくない障害の情報を、会社が強制して出させることはできないということですね。

 そうですね。4について補足すると、障害者雇用状況の報告、障害者雇用納付金の申告、障害者雇用調整金・報奨金の申請は、毎年度1回行うことから、把握・確認した情報を毎年度用いることを、あらかじめ本人の同意を得ておくと、個人情報の利用について確認作業の負担が減ります。注意点として、精神障害者保健福祉手帳の場合は、有効期限が2年間となっていますので、更新されたか否かの確認が必要です。

 なるほど。情報に変更がないか確認し、会社側で把握している情報を更新しておく必要があるということですね。

 この把握している情報の更新については、必要最小限に行うことが求められています。例えば、さきほどの精神障害者保健福祉手帳については、前回確認した有効期限を過ぎた最初の障害者雇用状況の報告、障害者雇用納付金の申告、障害者雇用調整金・報奨金の申請のいずれかを行う際に、手帳の更新の有無や更新後の手帳の有効期限について確認を行うこととされています。

 障害者の把握・確認、そして情報の更新の際には、注意すべき点がたくさんありますね。また分からないことが出てきましたら、質問したいと思います。

>>次回に続く

 



 ここでは、上記の障害者を把握・確認する方法としてとり上げた、例外的に個人を特定して照会を行うことができる場合について補足しましょう。これは、障害者である従業員本人が、職場において障害者の雇用を支援するための公的制度や社内制度の活用を求めて、会社に対し自発的に提供した情報を根拠とする場合は、その個人を特定して障害者手帳等の所持を照会することができるとしているものです。参考リンクにあるリーフレット「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの概要」に、個人を特定して照会を行う根拠として適切な例や照会を行う際の注意点等もとり上げられています。併せて確認しておくとよいでしょう。

■参考リンク
厚生労働省「事業主の方へ
厚生労働省「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの概要

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今年は歴史に残る賃上げの春となりました。中小企業では、賃上げの原資となる業績の改善が見られない中でも、人材の確保・採用、物価上昇への対応などから賃上げを実施したところもあれば、今後、賃上げを検討しているところもあるでしょう。賃上げを行う企業に対しては、いくつかの公的支援が設けられていることから、今回はその内容をとり上げます。

[1]業務改善助成金
 業務改善助成金とは、事業場内で最も低い賃金を30円以上引き上げ、設備投資等を行った中小企業・小規模事業者等に、設備投資等の費用の一部を助成する制度です。
 本制度は、事業場内の最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内の事業場が対象となります。例えば地域別最低賃金が950円で、事業場内の最低賃金が985円の場合、差額が50円以内であることから対象となります。
 賃金引上げの際の注意点としては、地域別最低賃金の発効に対応して事業場内の最低賃金を引き上げる場合、発効日の前日までに引き上げる必要があります。また、今年度より、複数回に分けての事業場内の最低賃金引上げが認められなくなり、同一事業場の申請は年1回までとなりました。
 費用の助成率は、下表のとおりです。なお、引き上げる労働者の数と引上げ額の区分に応じて、助成上限額が設けられています。

表 費用の助成率

事業場内最低賃金 助成率
900円未満 9/10
900円以上950円未満 4/5(9/10)
950円以上 3/4(4/5)

※( )は生産性要件を満たした事業場の場合

[2]キャリアアップ助成金
 キャリアアップ助成金に設けられている「賃金規定等改定コース」は、有期雇用労働者等の基本給を定める賃金規定等を3%以上増額する形で改定し、その規定を適用させた場合に助成されるものです。要件としては、以下のすべてに当てはまる必要があります。

  1. キャリアアップ計画の作成・提出
    賃金規定等を増額改定する前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局へ提出していること。
  2. 賃金規定等の適用
    有期雇用労働者等の基本給を賃金規定等に定めていること。
  3. 賃金アップ
    2.の賃金規定等を3%以上増額改定し、改定後の規定に基づき6ヶ月分の賃金を支給していること。

 3%以上5%未満増額改定した場合に、1人当たり5万円(大企業3.3万円)、5%以上増額改定した場合に6.5万円(大企業4.3万円)が助成されます。なお、1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は100人までです。

[3]事業再構築補助金
 事業再構築補助金には、成長分野進出枠(通常類型)、成長分野進出枠(GX進出類型)、コロナ回復加速化枠(通常類型)、コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)、サプライチェーン強靱化枠の5つがあります。この中で、短期的に大規模な賃上げを行う場合に補助率が引き上げられているものや、継続的な賃金引上げと従業員の増加に取り組む場合に補助上限の上乗せが設けられているものがあります。
 なお、この補助金は、期間を区切って公募されているため、最新情報を確認ください。

 上記の他、賃上げ促進税制という、中小企業の場合、全雇用者の給与等支給額の増加額の最大45%、大・中堅企業の場合、全雇用者の給与等支給額の増加額の最大35%を税額控除するものがあります。活用を検討される場合は、参考リンク先より詳細をご確認ください。

■参考リンク
厚生労働省「業務改善助成金
厚生労働省「キャリアアップ助成金
経済産業省「事業再構築補助金
経済産業省「賃上げ促進税制

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労働者災害補償保険(労災保険)は、労働者の業務中や通勤途上の災害等に対して保険給付を行うものであり、労働者ではない事業主や法人の役員等は保険給付の対象になりません。ただし、中小企業の事業主等で、労働者でなくとも、業務の実態や災害の発生状況から見て、労働者に準じて保護することがふさわしいと認められる場合には、一定の手続きを経ることで、労災保険に任意で加入することができます。この仕組みを労災保険の特別加入といいます。以下では、特別加入における給付基礎日額の決定方法、変更方法と変更時の留意点をとり上げます。

[1]特別加入者の給付基礎日額の決定方法
 通常の労働者が業務中に発生した災害により、労災保険から休業したときの給付を受け取る場合等では、災害が発生したときの平均賃金をもとに給付基礎日額を計算します。これに対し、特別加入者の給付基礎日額は、事前に16に分かれた給付基礎日額(3,500円~25,000円)から一つを選択し、申請を行うことで決定されます。そして、一旦、決定された給付基礎日額は、年度の途中では変更できません。

[2]特別加入者の給付基礎日額の変更方法
 特別加入者の給付基礎日額は、年度単位(4月から翌年3月)で変更することができ、変更のタイミングは2つあります。1つ目が事前申請といわれ、3月2日から3月31日までに申請をすることで翌年度の給付基礎日額を変更することができます。2つ目が年度更新期間中である6月1日から7月10日までに行うことにより年度の初日に遡って変更することができます。この際、給付基礎日額の変更申請前に災害が発生している場合は、当年度の給付基礎日額変更は認められません。可能な限り、給付基礎日額の変更は、事前申請での対応としたいものです。

 給付基礎日額の変更によって、給付の額が変わります。まもなく年度更新の期間になることから、一度、給付基礎日額が適当な額になっているか確認しておくとよいでしょう。なお、特別加入をするときには、労働保険事務組合に労働保険の事務処理を委託している必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「労災保険 特別加入制度のしおり(中小事業主用)

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文書作成日:2024/05/23

2024年度に注目したい雇用関連助成金

助成金制度は年度単位で予算が立てられているものが多く、年度初めに多くの助成金の創設・改廃が行われます。今回は、企業が比較的活用しやすい助成金をいくつかご紹介します。

※文中の表は全てクリックで拡大されます。

[ 1 ]

両立支援等助成金「柔軟な働き方選択制度等支援コース」

 両立支援等助成金は、職業生活と家庭生活が両立できる職場環境づくりを行う企業を支援するものです。様々なコースがありますが、2024年4月より、「柔軟な働き方選択制度等支援コース」が新設されました。なお、この「柔軟な働き方選択制度等支援コース」は中小企業のみが対象です。

(1)概要
 柔軟な働き方選択制度等支援コースは、育児を行う労働者の柔軟な働き方を可能とする制度(柔軟な働き方選択制度等)を複数導入し、制度を利用した労働者に対して支援を行った場合に助成金が支給されるものです。
 主な支給要件は、以下の通りです。

  • 柔軟な働き方選択制度等を2つ以上導入する。
  • 柔軟な働き方選択制度等の利用について、「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」(プラン)を作成することにより支援を実施する方針を社内周知する。
  • 労働者との面談を実施し、本人の希望等を確認・結果記録の上、業務体制の検討や制度利用後のキャリア形成円滑化のための措置を盛り込んだプランを作成する。
  • 制度利用開始から6ヶ月の間に、対象となる労働者が柔軟な働き方選択制度等を一定基準以上利用する。

 上記の支給要件にある「柔軟な働き方選択制度等」とは、以下の5つの制度であり、このうちの2つ以上の制度を導入する必要があります。なお、これら制度等は、子どもが3歳以降小学校就学前までの労働者が利用できる制度として設ける必要があります。

  1. フレックスタイム制/時差出勤制度
  2. 育児のためのテレワーク等
  3. 短時間勤務制度
  4. 保育サービスの手配・費用補助制度
  5. 子の養育を容易にするための休暇制度/育児・介護休業法を上回る子の看護休暇制度

 助成金を受給するためには、制度利用開始から6ヶ月の間に、対象労働者が、5つの制度ごとに定められた利用実績の基準を満たすことが必要です(下表参照)。

(2)支給額
 導入した制度の数に応じ、下表の助成額が支給されます。

 国会で審議が進み、来春の施行が予定される改正育児・介護休業法には、この助成金にある「柔軟な働き方選択制度等」の導入を求める内容が盛り込まれています。法改正に先行して、労働者の育児と仕事の両立の支援策を検討する場合には、このような助成金も活用していきたいものです。

[ 2 ]

エイジフレンドリー補助金「転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース」

 エイジフレンドリー補助金は、高年齢労働者の労働災害防止対策、労働者の転倒や腰痛を防止するための専門家による運動指導等、労働者の健康保持増進のために設けられています。2024年4月より、「転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース」が新設されました。なお、このエイジフレンドリー補助金は中小企業が対象です。

(1)概要
 このコースは、労働者の転倒防止や腰痛予防を目的としたもので、専門家等による運動指導プログラムに基づいた身体機能のチェック、専門家等の運動指導等に要した費用が補助対象となります。なお、運動器具など物品の購入は対象にならないことに注意が必要です。
 以前からある「高年齢労働者の労働災害防止対策コース」は、高年齢労働者(60歳以上)を常時1人以上雇用していることが必要ですが、このコースはすべての労働者が対象で、年齢制限はありません。

(2)補助金額
 補助率は上記の経費の4分の3で、上限額は100万円です。なお、このエイジフレンドリー補助金には3つのコースがあり、複数コース併せての上限額は100万円となっています。また複数コースで申請する場合は、希望コースをまとめて申請することが必要です。

 このエイジフレンドリー補助金の申請期間は、2024年5月7日から10月31日までとなっています。

[ 3 ]

キャリアアップ助成金「正社員化コース」

 キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組みを実施した事業主に対して助成する制度です。このキャリアアップ助成金には6つのコースがありますが、この中で「正社員化コース」は、2023年11月29日に拡充が行われています。2024年4月の変更はありませんが、活用を検討される企業が多いことから確認します。

(1)概要
 「正社員化コース」とは、就業規則等で規定した制度に基づき、有期雇用労働者等を正社員化した場合に助成されるものです。有期雇用労働者以外にも、無期雇用労働者を正社員に転換した場合、また、正社員への転換だけでなく、多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)に転換した場合等も「正社員化コース」の対象となります。
 対象となる主な労働者は、以下のいずれかに該当する労働者です。

  • 賃金の額または計算方法が正社員と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6ヶ月以上受けて雇用される有期雇用労働者または無期雇用労働者
  • 6ヶ月以上の期間継続して派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している有期派遣労働者または無期派遣労働者

(2)支給額

 上記の支給額の他に様々な加算額が設けられており、例えば、派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合は1人当たり285,000円、対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父で、正社員化前の雇用形態が有期雇用労働者の場合1人当たり95,000円、無期雇用労働者の場合1人当たり47,500円となっています。

 2024年4月1日にキャリアアップ助成金Q&Aが改訂されています。活用を検討される場合は、事前に目を通しておくとよいでしょう。

 

 助成金・補助金には予算額が設けられているため、いざ活用しようと考えたときに、受付が終了している可能性があります。活用にあたっては、最新情報を確認しましょう。

■参考リンク
厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内
厚生労働省「エイジフレンドリー補助金について
厚生労働省「キャリアアップ助成金

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新型コロナウイルス感染症の感染防止のために、在宅勤務を導入する企業が増加しましたが、5類移行後は、在宅勤務を廃止し、従業員に出社を求める企業もあるようです。今後、仕事と育児・介護との両立の観点から在宅勤務の活用が求められています。そこで今回は、在宅勤務者へ支給する「在宅勤務手当」の割増賃金に関する取扱いが整理されたため、関連事項も含めまとめます。

[1]社会保険の取扱い
 在宅勤務手当は、日本年金機構の「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の中で、社会保険の報酬や賞与(以下、「報酬等」という)に該当するか否かは、在宅勤務手当が実費弁償に当たるか否かによって、基本的に以下の判断基準で考えることになります。なお、支給要件や支給実態などを踏まえて個別に判断する必要があります。

  • 在宅勤務者に毎月5,000円を渡し切りで支給するように、従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を会社に返還する必要がないものであれば、労働の対償として支払われる性質があるとして報酬等に含まれる。
  • 業務に使用するパソコンの購入や通信に要する費用を会社が従業員に支払うような場合、その手当が業務遂行に必要な費用にかかる実費分に対応するものと認められるのであれば、実費弁償に当たるものとして、報酬等に含まれない。

[2]割増賃金の取扱い
 割増賃金の基礎となる賃金(以下、「割増算定基礎賃金」という)には、家族手当、通勤手当、別居手当等の7つの除外賃金が定められており、除外賃金以外の賃金は割増算定基礎賃金に算入する必要があります。
 在宅勤務手当はこれまで除外賃金に含まれていませんでしたが、厚生労働省は「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて」(令和6年4月5日基発0405第6号)を発出し、在宅勤務手当が事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理される場合には、労働基準法上の「賃金」には該当せず、割増算定基礎賃金への算入は不要と示しました。

[3]所得税の取扱い
 所得税については、国税庁から「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」が公開されており、その中で「在宅勤務に通常必要な費用について、その費用の実費相当額を精算する方法により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はありません」と示されています。

 これまで割増算定基礎賃金として算入してきた在宅勤務手当を、割増算定基礎賃金から除外するときは、割増賃金額の減少につながり、労働条件の不利益変更に当たると考えられます。そのため、労使で十分な議論を行った上で見直しを進めることが求められます。

■参考リンク
日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集
厚生労働省「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて
国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)

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労働基準法では、従業員に対し、1日8時間、1週40時間を超えて働かせてはならないとしています(法定労働時間)。また、休日については、毎週少なくとも1日与えなければならないとしています(法定休日)。この法定労働時間を超え、または法定休日に働かせる場合には、事前に「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)を締結し、労働基準監督署に届出する必要があります。以下では、この36協定で定める時間外労働・休日労働の時間数についてとり上げます。
※本記事では、法定休日の労働のことを「休日労働」と呼びます。

[1]36協定で定める時間
 36協定には、以下の通り一般条項と特別条項があります。

[一般条項]
 36協定では時間外労働や休日労働の時間数を定めます。時間外労働については、以下の通り、上限の時間数が決まっています。

 1ヶ月:45時間(42時間)
 1年:360時間(年320時間)
※()内は1年単位の変形労働時間制の場合

[特別条項]
 一般条項の上限を超えて、一時的または突発的に時間外労働や休日労働等を命じなければならないことがあります。このようなときを想定し、一般条項を超える時間数を、特別条項として定めることができます。なお、特別条項にも以下の通り、上限の時間数が設けられています。

 1ヶ月:100時間未満(2~6ヶ月平均で80時間以内)
 1年:720時間以内

 さらに特別条項には、この上限の時間数のほか、1年について6ヶ月(6回)以内という回数の上限も設けられています。

[2]一般条項と特別条項の違い
 一般条項の1ヶ月の時間数は、時間外労働の時間数のみをカウントすることになっています。これに対し、特別条項の1ヶ月の時間数は、時間外労働に加え、休日労働の時間数もカウントすることになっています(以下の例参照)。

[36協定における1ヶ月の時間数の考え方]

●一般条項
 時間外労働:30時間
 →この時間数のみで判断し、30時間となる
 休日労働:24時間
 →カウントの対象にならない

●特別条項
 時間外労働:50時間
 休日労働:24時間
 →両方の時間数をカウントし、74時間となる

 このため、時間外労働と同時に休日労働も命じているときは、特別条項を適用する段階になって、想定した時間数を超える1ヶ月の時間数となっていることがあります。そのため、一般条項を適用しているときも休日労働の時間数を意識する必要があります。

 各種情報から1ヶ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場に対して、労働基準監督署が指導を実施する方向となっています。特別条項の1ヶ月の時間数の上限は100時間未満となっていますが、特別条項を設けるときには、これを上限と考えるのではなく、特別条項の位置づけも念頭におき、実効性のある時間外労働等の時間数の削減も考える必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

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文書作成日:2024/05/09

企業に求められる退職者の情報漏えい対策

先日、同業者が集まる会合で、商品開発に従事していた従業員がライバルの会社に転職したことで、機密情報の漏えいを心配しているという話を聞いた。当社も商品開発に従事する従業員がいることから、どのような情報漏えいの対策をしておくべきか、社労士に相談することにした。

 先日、同業者が集まる会合で、商品開発に従事していた従業員が競合他社に転職したことで、自社の情報を漏えいしている可能性があるという話を聞きました。当社でも商品開発に関わる情報は、当然、競合他社に知られたくない内容です。

 そうですね。会社にとっては極めて重要な情報ですね。

 この話を聞いて、当社も、今後、同じようなことが起きる可能性があります。会社は、どのように退職者の情報漏えいの対策をしていけばよいのでしょうか?

 一般的な対策としては、情報管理について規程を整備したり、誓約書の提出を求めたりして、会社の技術上・営業上の秘密(以下、「秘密情報」という)の漏えい防止対策を行うことが多いと思います。ただ、まずは、秘密情報を漏えいしないことを従業員に改めて伝えることが重要なのでしょうね。

 確かにそうですね。

 そのほかの対策として、情報を把握できる従業員の数を絞ることが考えられます。例えば、製造ラインを新設する場面で、設備の工夫や配置の仕方の工夫によって他社よりも優れているような場合、秘密情報の全体を把握できる人数を制限するとともに、秘密情報に接する従業員が秘密情報を持ち出しにくい対策を行ったりすることが挙げられます。

 確かに製造にかかわる従業員が、新設する製造ラインに関するすべての情報を、初めから知っておく必要はないですよね。

 そうですね。秘密情報を持ち出しにくくする対策としては、工場内にスマートフォンも含めたカメラ等の撮影ができる機器を持ち込むことを禁止したり、私物を持ち込む際は、透明バックに入れることを求めたりするといった方法が考えられます。

 できる対策はいろいろありますね。

 開発の中核者が退職するケースも考えられますが、このような場合は退職に伴う漏えいリスクを下げる対策が必要です。1つ目が、入社時・退職時だけでなく、開発プロジェクトが始まる場合は、開始時にも秘密保持の契約書を締結していくことが挙げられます。これに加え、秘密保持を徹底するため、競業避止義務契約を締結することも考えられます。

 競業避止義務契約ですか。

 開発の中核者が知っている情報が会社の生命線に関わるものであれば、競業避止義務契約を締結することも考えた方がよさそうですね。

 2つ目が、退職の申し出があった際の社内情報へのアクセス権の制限、退職時の入出カードの回収、アカウント削除などが考えられます。この点をルーズにしていると、情報漏えいがあったときの会社の責任にもなりかねません。

 なるほど、開発の情報などをできるだけ早く見られないようにすれば、情報漏えいリスクを下げることができますね。

 3つ目としては、働きやすい職場環境をつくって会社との信頼関係を保ち、秘密情報を持ち出して会社を困らせるという気持ちを起こさせないようにすることも重要ですね。

 そうですね。従業員が故意に情報を持ち出すことは絶対に避けたいところです。対策としてどこまで実施すべきか、社内で検討したいと思います。

>>次回に続く

 



 今回は退職者の情報漏えいについてとり上げましたが、転職者を受け入れる際も注意が必要です。特に競合他社の中核人材を受け入れる場合は、転職者が転職元との間で負っている秘密保持義務や競業避止義務といった義務の有無を確認すること、転職者の採用時には転職元の秘密情報を持ち込ませないようにすること、転職者の採用後もその業務内容等を定期的に管理することが、対策として考えられます。

■参考リンク
経済産業省「営業秘密~営業秘密を守り活用する~

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障害者雇用に関しては、2024年4月より法定雇用率が2.5%に引き上げられ、更に2026年7月には2.7%に引き上げられます。法定雇用率の引き上げに対応すべく、新規雇用を進めている企業も多いかと思われます。重要性を増す障害者雇用ですが、これに関連して、先日、厚生労働省から「令和5年度障害者雇用実態調査」の結果(以下、「調査結果」という)が公表されました。以下では、この調査結果から、障害者雇用の現状と障害者雇用に当たっての課題・配慮事項について確認します。

[1]障害者雇用の現状
 この調査は、2023年6日1日現在(賃金および労働時間については2023年5月中)で実施されたもので、常用労働者5人以上を雇用している民営事業所(以下、「従業員規模5人以上の事業所」という)から無作為に抽出した約9,400事務所を対象に行われたものです。
 調査結果によれば、従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障害者数は110万7,000人で、前回調査が行われた2018年度と比べて25万6,000人増加しました(2018年度は85万1,000人)。この内訳をみてみると、身体障害者が52万6,000人(同42万3,000人)、知的障害者が27万5,000人(同18万9,000人)、精神障害者が21万5,000人(同20万人)、発達障害者が9万1,000人(同3万9,000人)でした。
 一方、職業別に雇用者数の割合をみてみると、身体障害者と精神障害者では事務的職業、知的障害者と発達障害者ではサービスの職業がもっとも多くなっています。

[2]障害者雇用に当たっての課題・配慮事項
 障害者を雇用する際の課題について、すべての障害の種別において、「会社内に適当な仕事があるか」がもっとも多くなっています。また、身体障害者では、「職場の安全面の配慮が適切にできるか」という項目が続いています。
 次に、雇用している障害者への配慮事項について、割合の多いものをみてみると、以下のようになっています。障害の種別に応じて、様々な配慮が行われていることが分かります。

※()は割合

[身体障害者]
休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等休養への配慮(40.2%)
通院・服薬管理等雇用管理上の配慮(38.3%)
短時間勤務等勤務時間の配慮(37.9%)

[知的障害者]
能力が発揮できる仕事への配置(51.1%)
短時間勤務等勤務時間の配慮(50.9%)
業務実施方法についてのわかりやすい指示(50.3%)

[精神障害者]
短時間勤務等勤務時間の配慮(54.3%)
休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等休養への配慮(50.9%)
通院・服薬管理等雇用管理上の配慮(49.2%)

[発達障害者]
休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等休養への配慮(61.2%)
短時間勤務等勤務時間の配慮(50.9%)

 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、障害者の雇い入れや雇用の継続などに取り組む事業主に対する助成金制度を設けています。下記の参考リンクから、取り組み内容や目的別に利用可能な助成金を探すことが可能です。このような助成金も活用しながら、障害者の雇用・定着を進めていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金関係助成金 取り組み事例で探す

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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こんにちは。

 

従業員が不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりに取り組む動きが広がりつつあります。不妊治療と仕事の両立については、2021年2月に次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定指針が改正され、一般事業主行動計画に盛り込むことが望ましい事項として追加され、2021年4月より適用されています。以下では、先月、厚生労働省から公表された「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」(以下、「調査」という)の結果から、企業の不妊治療への支援制度の導入状況を見ると同時に、関連する助成金制度についてとり上げます。

[1]不妊治療への支援制度
 この調査は、「女性の活躍推進企業データベース」においてデータ公表を行っている企業を対象として、2023年7月から8月にかけて実施されたもので、回答があった従業員規模10人以上の企業1,859社(労働者アンケート調査については男女労働者2,000人)に行い、その調査結果を集計したものが公表されています。
 調査結果によると、不妊治療のための制度がある企業は26.5%で、もっとも多く導入されている制度は、不妊治療に利用可能な休暇制度が47.8%、不妊治療に利用可能な勤務時間や場所等の柔軟性を高める制度(テレワークを含む)が19.4%、不妊治療に利用可能な通院や休息時間を認める制度が14.3%となりました。この不妊治療に利用可能な勤務時間や場所等の柔軟性を高める制度については、半日単位・時間単位の休暇制度がもっとも多く、テレワーク(在宅勤務)、短時間勤務、フレックスタイム制度と続いています。

[2]両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)
 このような企業の取組を支援する助成金として、両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)が設けられています。これは、不妊治療と仕事との両立に資する職場環境の整備に取り組み、不妊治療のために利用可能な休暇制度や両立支援制度を従業員に利用させた中小企業が対象となる助成金です。対象となる事業主の要件と支給額は以下の通りです。

[対象となる事業主]
次の1から6のいずれかまたは複数の制度を導入し、従業員に利用させた事業主です。
1.不妊治療のための休暇制度(多目的・特定目的とも可)
2.所定外労働制限制度
3.時差出勤制度
4.短時間勤務制度
5.フレックスタイム制度
6.テレワーク

[支給額]
A「環境整備、休暇の取得等」
 最初の従業員が休暇制度・両立支援制度を合計5日(回)利用 30万円
B「長期休暇の加算」
 Aを受給し、従業員が不妊治療休暇を20日以上連続して取得 30万円
※A・Bとも1事業主あたり1回限りの支給

 申請にあたっては、企業トップが制度の利用促進についての方針を全従業員に周知し、社内ニーズの調査を行い、制度の利用の手続き等を就業規則等に定めて周知することが必要です。このほか、両立支援担当者の選任、不妊治療両立支援プランの策定も必要です。

 厚生労働省のサイトには、事業主向けに「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」、本人、職場の上司、同僚向けに「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」が公開されています。今後、企業の支援制度を検討する際には、このようなマニュアル等も活用するとよいでしょう。

■参考リンク
厚生労働省「「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果について
厚生労働省「不妊治療と仕事との両立のために

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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