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文書作成日:2024/08/08

健康保険証の廃止とマイナ保険証の利用

2024年12月から健康保険証が廃止されて、マイナンバーカードを健康保険証として使用することになると聞いたため、木戸部長は社労士に確認することとした。

 12月から健康保険証がマイナ保険証に切り替わると聞きました。当社は従業員全員分のマイナンバーを確認していますが、マイナンバーカードを持っているかということは確認できていません。今から何か対応しておく必要がありますか。

 まずは健康保険証の廃止について、協会けんぽが公表している情報をもとに、少し整理しておきましょう。ご認識いただいているように、2024年12月2日以降、現在の健康保険証は新規の発行が行われなくなります。ただし、経過措置として1年間、現在の健康保険証が使用できることになっています。

 現在の健康保険証がすぐに使えなくなるわけではないのですね。ほっとしました。そうなると、マイナ保険証と現在の健康保険証の両方が使用できるようになるということですか?

 はい、そうです。さらに、マイナンバーカードを持っていない人や、マイナンバーカードを持っていてもマイナ保険証の利用登録を行っていない人は、マイナ保険証を使用できないため、「資格確認書」が発行されます。協会けんぽの資格確認書は、従来の健康保険証と同じプラスチックカード型で、色は黄色の形状になるようです。

 なるほど。マイナンバーカードを持っていない人等は、その資格確認書の発行を申請するということですね。

 いいえ、マイナンバーカードを持っていない人等には、申請によらずに資格確認書が発行されることになっています。現在の健康保険証が2024年12月2日以降も使用できるため、発行自体は、まだ先になるようですが。

 そうなのですね、承知しました。いずれにしても、しばらくは現在の健康保険証を使えばいいということですね。

 そうですね。ただし、2024年12月2日以降に入社した方には、健康保険証の発行がないため、社会保険の資格取得の手続きの際に、申請をすることになります。本来は申請しなくても発行されるものですが、資格確認書の発行に時間がかかるため、資格取得の手続きのときに申請したほうがスムースですね。

 では、入社の際に、マイナンバーカードの保有と、マイナ保険証の登録について、確実に聞くようにします。

 ふと気になったのですが、来年12月1日まで現在の健康保険証を使った場合、その健康保険証はどうすればいいのですか?

 はい。来年の12月1日までに退職等で使用できなくなった健康保険証は、従業員から会社に返してもらうことになります。不正使用の防止の観点なのでしょうね。ただし、来年12月2日以降は、健康保険証自体が使えないことになるので、従業員自身で破棄することも可能になります。

 個人で破棄してよいのであれば、会社としての回収の手間がないので、少し楽ですね。

 そうだと思います。従業員の皆さんにはできるだけマイナンバーカードを保有してもらい、マイナ保険証の利用登録を行ってもらうと、会社は資格確認書の配布等の手続きがなくなるため、負担が減りますね。

 確かにそうですね。従業員にはマイナ保険証への切り替えについて、周知しようと思います。

 ちなみに今回の切り替えに際して、今年9月以降、「資格情報のお知らせ」が会社に届きます。これは、従業員の被保険者資格等の基本情報が記載されているものです。協会けんぽにマイナンバーが届出してあれば、マイナンバーの下4桁も表示されているので、マイナ保険証の利用登録をしているかの確認も可能です。

 それでは、従業員への周知はその時期に行うとよいかもしれませんね。

 タイミングとしてはとても良いと思います。

>>次回に続く

 



 「資格情報のお知らせ」には、切り取って持ち歩くことができる紙製カード型の「資格情報のお知らせ」もついています。これは、医療機関を受診するときにカードリーダーが使えない場合に使用するもので、マイナ保険証と資格情報のお知らせの両方を医療機関に提示することで、健康保険証の代わりとして使用できるものです。現在の健康保険証とは違い、マイナンバーカードには、資格情報の記載がないため、このような紙製カードが用いられることになっています。

■参考リンク
協会けんぽ「今から使おう!マイナ保険証

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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先月、厚生労働省より「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」の集計結果(以下、「集計結果」という)が公表されました。個別労働紛争解決制度とは、個々の労働者と事業主との間の労働に関する紛争について実情に即した迅速かつ適正な解決を図るためのものであり、具体的には、(1)都道府県労働局内や労働基準監督署内に設置された総合労働相談コーナーでの総合労働相談、(2)都道府県労働局長の助言・指導制度、(3)紛争調整委員会のあっせん制度の3つの仕組みがあります。

[1]集計結果の内容
 今回の集計結果をみると、令和5年度に寄せられた総合労働相談件数は1,210,400件と4年連続で120万件を超え、高止まりの状態となっています。
 また、労働基準法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げ等のいわゆる民事上の個別労働紛争に関する相談件数の推移をグラフ化したのが下図※になります。内容別で見ると、トップは「いじめ・嫌がらせ」に関する相談の122,976件で、不動の首位となっています(図はクリックで拡大されます)。
※2022年4月の改正労働施策総合推進法の全面施行に伴い、これまで「いじめ・嫌がらせ」に含まれていた同法上のパワーハラスメントに関する相談は全て別途集計することとなされたため、労働施策総合推進法に関するパワーハラスメントの相談件数(2022年は50,840件、2023年は62,863件)を加えています。

[2]パワーハラスメントの実態と防止措置
 「いじめ・嫌がらせ」は、パワーハラスメントの一類型となりますが、2024年5月に公表された令和5年度厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書によると、過去3年間に勤務先で受けたハラスメントとしては、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為の中では、パワーハラスメントが19.3%ともっとも多く、次いで顧客等からの著しい迷惑行為が10.8%、セクシュアルハラスメントが6.3%となっています。
 受けたパワーハラスメントの内容については、「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)」が48.5%ともっとも多くなっています。パワーハラスメントの防止対策のため、社内で研修を実施することがありますが、例えば「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)」との指摘を受けることなくコミュニケーションを図るため、どのように注意すべきかを具体的に解説して、受講する従業員に理解してもらうとよいでしょう。

 そもそも労働トラブルに発展させないための、予防的な労務管理が重要になってきます。取り組む際に何かお困りごとがございましたら早めに当事務所までご連絡ください。

■参考リンク
厚生労働省「「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します
厚生労働省「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況について
厚生労働省「「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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育児休業の延長・再延長時には、一定の要件を満たした場合、雇用保険の育児休業給付金についても支給が延長されることになっています。2025年4月1日より、この育児休業給付金の延長・再延長時の手続きが厳格化されます。以下では、この内容をとり上げます。

[1]手続き変更の背景
 今回、延長・再延長時の育児休業給付金の手続きの変更に関しては、令和5年の地方分権改革に関する提案募集において、自治体から「保育所等への入所意思がなく、給付延長のために申し込みを行う者への対応に時間が割かれる」、「意に反して保育所等への入所が内定となった方の苦情対応に時間を要している」として、見直しの要望があったという背景があります。これを受けて、「令和5年の地方からの提案等に関する対応方針」(2023年12月22日閣議決定)において、ハローワークで延長可否を判断することを明確化する方向で検討が行われ、検討の結果に基づいて必要な措置を講ずるとされていました。今回、これを受けて、雇用保険法施行規則が改正され、手続きの見直しが行われました。

[2]2025年4月以降の手続き
 2025年4月以降の延長時には、市区町村の発行する入所保留通知書などの確認に加え、保育所等の利用申し込みが、速やかな職場復帰のために行われたものであると認められることが必要になります。具体的には、次の書類を、延長時・再延長時の「育児休業給付金支給申請書」に必ず添付する必要があります。

  • 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
  • 市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し
  • 市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)

 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書については、既に厚生労働省のホームページにおいて様式が公開されています。様式には保育所等の申込みの状況を記載することになります。裏面には記入する上での注意事項があり、従業員本人から会社に記載について質問が入る可能性があるため、先に目を通しておくとよいでしょう。

 今回の変更となる手続きの対象は、子が1歳に達する日または1歳6ヶ月に達する日が2025年4月1日以後となる従業員で、育児休業給付金の支給対象期間の延長を行う場合となります。円滑な手続きの実施のためには、書類を揃えておくように事前に従業員に案内しておくことが重要になります。厚生労働省から公開されているリーフレットを活用するなどして、早めに対象となる従業員に周知しておきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「育児休業給付金の支給対象期間延長手続き
厚生労働省「2025年4月から保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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文書作成日:2024/07/25

進む高年齢者雇用と求められる企業の対応

人手不足解消の観点から定年の引き上げや定年再雇用時の賃金水準の見直しなど、企業において高年齢者の積極活用を進める動きがみられます。今回の旬の特集では、こうした動きに対応し、高年齢雇用に関する動きについてとり上げます。

[ 1 ]

継続雇用にかかる経過措置の廃止

 定年年齢を65歳未満としている企業は、65歳まで希望者全員を雇用する高年齢者雇用確保措置を講じる義務があります。ただし、一定の要件を満たした企業は、2025年3月31日まで、労使協定において継続雇用の対象者を限定する基準を設け、一定の年齢以上の人に対して、その基準を適用することができるとされてきました。
 この経過措置を適用している企業では、労使協定を締結した上で、就業規則において、以下のように経過措置の対象となる年齢を段階的に定めています。

2013年4月1日から2016年3月31日まで 61歳
2016年4月1日から2019年3月31日まで 62歳
2019年4月1日から2022年3月31日まで 63歳
2022年4月1日から2025年3月31日まで 64歳

 

 この経過措置は、2025年3月31日で終了するため、2025年4月1日以降は原則どおり、定年退職となる本人が希望し、解雇事由または退職事由に該当しない限り、65歳までの継続雇用が求められることになります。

[ 2 ]

70歳までの就業機会確保

 企業が従業員の定年を定めるときは、60歳を下回ってはならないとされており、65歳未満の定年年齢を定めたときは、原則希望者全員を65歳まで雇用することが必要です(高年齢者雇用確保措置)。これに加え、2021年4月からは70歳までの就業機会の確保が努力義務となりました。
 これは、個々の従業員の多様な特性やニーズを踏まえ、多様な選択肢から、事業主としていずれかの措置を制度化する努力義務を設けたものです。そのため、65歳までの高年齢者雇用確保措置が雇用によるものであるところ、70歳までの高年齢者雇用確保措置では、「継続的に業務委託契約を締結する制度の導入」や、「事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業への従事」も選択肢として挙げられています。
 今後は、企業における65歳以降の高年齢者の活用も本格化してくるため、企業としてどのように働いてもらうか、努力義務ではあるものの、制度構築が重要な場面になってきます。

[ 3 ]

高年齢雇用継続給付の見直し

 高年齢雇用継続給付は、原則として60歳以上の従業員の給与が、60歳時点よりも一定割合を超えて低下したときに支給されるものです。現在の給付率の上限は15%ですが、2025年4月1日以降は、給付率の上限が10%に引き下げられます。
 この変更の対象は、2025年4月1日以降に60歳となる従業員とされていることから、高年齢雇用継続給付の受給対象者が複数人いるような場合、同じ会社の中に給付率の上限が15%になる人と10%になる人が混在する可能性があります。
 また、定年再雇用時の賃金を決定する際、高年齢雇用継続給付の支給額を考慮するようなケースがありますが、その際には今回の給付率の引き下げを勘案する必要があります。これを機に、定年再雇用時の賃金の決定方法に、雇用保険から受けられる給付額を加味することが妥当なのかの議論も必要となるのかも知れません。

[ 4 ]

高年齢者を対象とした助成金

 60歳以上の労働者の雇用状況について、令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果(21人以上の規模企業)をみてみると、常用労働者数(約3,525万人)のうち、60歳以上の常用労働者数は約486万人で、全体の13.8%を占めています。つまり、8人に1人以上の割合で60歳以上の従業員がいるという状況になります。
 今後も、企業において60歳以上の従業員が増加することが予想されます。その際に活用できる助成金として、65歳以上への定年引上げや定年の定めの廃止等を行った場合に対象となる「65歳超雇用推進助成金」や、高年齢者を含む労働者が安心して安全に働くことができるよう高年齢者の労働災害防止対策等を行った場合に対象となる「エイジフレンドリー補助金」があります。高年齢者の雇用の取組みを行う中で、活用できる助成金・補助金があれば、機会損失がないようにしたいものです。

 

 今回とり上げた動きを押さえつつ、60歳以降の雇用のあり方や賃金の設定、65歳以降の人材の活用などを検討される際に、お困りごと等ございましたら、当事務所までお気軽にご連絡ください。

■参考リンク
厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止~
厚生労働省「高年齢雇用継続給付の見直し(雇用保険法関係)
厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~
厚生労働省「令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します
厚生労働省「65歳超雇用推進助成金
厚生労働省「エイジフレンドリー補助金について

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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多くの企業で、従業員がメンタルヘルス疾患を発症し、欠勤や休職をするケースが増加しています。その中には、仕事による強いストレスがその原因となっている事例もあるようです。2024年6月に発表された厚生労働省の資料によると、精神障害を理由とした労災の請求件数、そして支給決定件数が大幅に増加しています。そこで以下では発表された資料の内容を確認した上で、企業に求められる対策について見ていきます。

[1]精神障害の労災補償状況
 精神障害の労災補償状況は図のとおりとなっています。2023年度の請求件数は3,575件で、前年度の2,683件から892件の大幅増加となりました。請求件数は過去最多となり、今回、3,000件を初めて超えています。
 また、支給決定件数については883件となり、前年の710件から173件の増加となり、こちらも過去最多となっています。そして、支給決定件数の中で、多い業種(中分類)の上位4つをみてみると、社会保険・社会福祉・介護事業112件、医療業105件、総合工事業57件、道路貨物運送業56件で、医療・福祉の業種で多いことが分かります。認定率については34.2%で、申請の3件に1件の割合で労災として認定されています。
※図はクリックで拡大されます。

[2]具体的な出来事
 支給の決定は、その傷病に繋がる具体的な出来事があったかを確認して判断されますが、支給決定の内容を具体的な出来事別に分類すると、その上位は以下の通りとなっています。

  1. 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(157件)
  2. 業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(111件)
  3. セクシュアルハラスメントを受けた(103件)
  4. 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった(100件)
  5. 特別な事情(71件)
  6. 同僚等から、暴行又はひどいいじめ・嫌がらせを受けた(59件)

 支給決定件数(883件)のうち、上司等からのパワーハラスメント(157件)がトップとなっています。近年は多くの企業でパワーハラスメント防止対策が進められていますが、この問題はまだまだ解決には至っていません。定期的に研修を開催したり、管理職同士で注意しあえる関係を作ったりするなど、継続的な防止対策が求められます。

■参考リンク
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

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昨年12月25日に閣議決定された「こども未来戦略」では、共働き・共育ての推進として、「男性育休の取得促進」、「育児期を通じた柔軟な働き方の推進」および「多様な働き方と子育ての両立支援」の3つの方針が掲げられました。そこで今回は、これらの具体的な対応策として、2025年4月1日から始まる雇用保険の給付金をとり上げます。

[1]出生後休業支援給付金の創設
 育児休業を取得すると、従業員(雇用保険の被保険者)は所得の補てんとして育児休業給付を受け取ることができますが、育児休業を取得せずに給与を受け取ることと比較し、手取額が低くなります。このように手取額が低くなることが、男性の育児休業の取得が進まない理由の一つと言われています。
 その解消を目的として、子どもの出生直後の一定期間以内に、両親ともに14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額が「出生後休業支援給付金」として支給されることになります。この給付金に、出生時育児休業給付金または育児休業給付金をあわせると、給付率が80%となり、手取りとしては10割相当が支給される仕組みとなっています。なお、一定期間とは、男性が子どもの出生後8週間以内、女性が産後休業後8週間以内です。
 従業員の中には、配偶者が専業主婦(夫)であったり、ひとり親として育児をしていたりすることもあるため、配偶者が育児休業を取得していない場合であっても、出生後休業支援給付金が支給されます。

[2]育児時短就業給付金の創設
 育児休業中の支援の他に、2歳未満の子どもを養育するために、時短勤務をすることで給与額が下がる場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を上限に「育児時短就業給付金」が支給されることになります。
 この給付金は、単に時短勤務を推奨するものではなく、育児休業よりも時短勤務を、さらには時短勤務よりも従前の所定労働時間で勤務することを推進する目的で創設されており、これを前提に10%という給付率が決められています。なお、時短後に支給される賃金と給付金の合計額が時短前の賃金を超えないように給付率を調整する仕組みです。

 出生後休業支援給付金の創設により、出生後育児休業(産後8週間以内に4週間を上限として2回に分けて取得できる休業)の申出の増加が予想されます。また、これまで育児の時短勤務は女性従業員の利用が中心でしたが、今後は男性従業員の活用が増えてくることも予想されます。今後の申請方法や、それに沿った社内の手続きの流れを確認していく必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「令和6年雇用保険制度の改正内容について(子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律)
こども家庭庁「こども未来戦略(リーフレット等)

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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文書作成日:2024/07/11

最近注目が高まるカスタマーハラスメント対策

最近、カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」という)という言葉をよく耳にするようになっており、会社として対応が必要なことについて、社労士に相談することにした。

 最近、マスコミの報道でカスハラという言葉を耳にすることが増えてきました。会社としてなにか対応が必要なのでしょうか?

 法令では、セクシュアルハラスメント対策、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策、パワーハラスメント対策を行うことが義務付けられています。顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスハラ)については法令での義務付けはありませんが、カスハラを受けたという事案が増加している状況から、企業が対策を立てたり、東京都ではカスハラ防止条例を制定するような動きがあります。

 そのような動きがあるのですね。

 はい、急速に対策が進められています。今年5月、厚生労働省が令和5年度に行った「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書が公表されました。この報告書をみてみると、過去3年間に勤務先でカスハラを一度以上経験した割合は27.9%でした。各ハラスメントの相談件数の推移を見てみると、カスハラだけが「件数が増加している」の割合が「件数は減少している」より高く、それ以外(セクシュアルハラスメント・パワーハラスメント・就活等セクハラ)では「件数が減少している」の割合が「増加している」より高くなっていました。

 カスハラの事案は増加傾向にあることから、会社としても対策が求められているということですね。

 この機会に、厚生労働省から発行されているリーフレット「カスタマーハラスメント対策に取り組みましょう!」を見てみましょう。ここでは、以下のようなものをカスハラであるとしています。

「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」

 内容は理解できますが、個別の事案でカスハラに該当するかどうかの判断は難しいと感じますね。

 おっしゃるとおり、顧客等からのクレームが業務改善や新たな商品・サービス開発につながることもありますので、判断が難しいですね。リーフレットの中で「顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合」の例としては、企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合、要求の内容が、企業の提供する商品・サービスの内容とは関係がない場合が挙げられています。また、「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動」の例としては、身体的な攻撃(暴行、傷害)、精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)、土下座の要求などが挙げられています。

 当社ではいままでカスハラの問題はありませんでしたが、会社の考え方を示したり、発生したときの対応方針を決め、従業員にその内容を教育しておくことが重要ですね。

 そうですね。カスハラを想定した事前の準備としては、以下の4つが挙げられています。

1.事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
2.従業員(被害者)のための相談対応体制の整備
3.対応方法、手順の策定
4.社内対応ルールの従業員等への教育・研修

 その上で、カスハラが起こった際の対応としては以下の対応が示されています。

5.事実関係の正確な確認と事案への対応
6.従業員への配慮の措置
7.再発防止のための取組
8.1~7までの措置と併せて講ずべき措置(相談者のプライバシー保護のための必要な措置と従業員への周知、相談したこと等を理由として不利益取扱いを行ってはならない旨の定めと従業員への周知)

 なるほど。社内で考えてみたいと思います。

 会社の基本方針をホームページ等で公開しているような事例も出てきていますので、参考事例としてチェックしてもよいですね。また質問など出てきましたら、ご連絡ください。

>>次回に続く

 



 政府が2024年6月21日に策定した「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)の中で、カスハラを含む職場におけるハラスメントについて、法的措置も視野に入れて、対策を強化することが示されました。今後の動きを注視しておきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)
厚生労働省「カスタマーハラスメント対策に取り組みましょう!
厚生労働省「「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します
内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2024

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2023年の職場における熱中症の発生状況を見ると、4日以上休業した死傷者数は1,106人、そのうち死亡者数は31人となり、前年を上回る結果となりました。厚生労働省の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」(以下、「キャンペーン」という)も7月1日から7月31日までを重点取組期間としており、今夏についても積極的に熱中症の予防対策が求められます。

[1]熱中症の定義
 熱中症とは、高温多湿な環境下において、体内の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどしたりして発症する障害の総称で、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温などの症状が現れるとことです。それぞれの症状によって、熱失神、熱けいれん、熱疲労および熱射病といった病名がつけられています。

[2]実施期間の取り組み
 キャンペーンの実施期間は5月1日から9月30日までとされていますが、この期間、以下の3点について重点的な対策の徹底が求められています。

  1. 暑さ指数(WBGT)の把握とその値に応じた熱中症予防対策を実施すること
  2. 作業を管理する人および労働者に対してあらかじめ労働衛生教育を行うこと
  3. 糖尿病、高血圧症など熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有する人に対して、医師等の意見を踏まえた配慮を行うことなど

[3]重点取組期間の取り組み
 7月1日から7月31日までの重点取組期間中においては、実施すべき事項として、以下の内容が挙げられています。これらの項目を確実に実施しましょう。

  • 暑さ指数の低減効果を再確認し、必要に応じ対策を追加
  • 暑さ指数に応じた作業の中断等を徹底
  • 水分、塩分を積極的に取らせ、その確認を徹底
  • 作業開始前の健康状態の確認を徹底、巡視頻度を増加
  • 熱中症のリスクが高まっていることを含め教育を実施
  • 体調不良の人に異常を認めたときは、躊躇することなく救急隊を要請

 参考リンクにある厚生労働省「学ぼう!備えよう!職場の仲間を守ろう!職場における熱中症予防情報」では、「働く人の今すぐ使える熱中症ガイト」が公開され、予防法として3つの注意点や暑熱順化などの情報が掲載されています。これらの内容も活用しながら、予防対策を徹底していきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症予防対策)
厚生労働省「学ぼう!備えよう!職場の仲間を守ろう!職場における熱中症予防情報

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7月1日から7日までは全国安全週間とされており、厚生労働省・都道府県労働局から各事業場に対して、積極的な労働災害防止活動の実施が働きかけられることになっています。これに関連して、先日、厚生労働省より昨年(令和5年)の労働災害発生状況が公表されました。以下では、労働災害による死傷者数と厚生労働省の取組みについてとり上げます。

[1]労働災害による死傷者数
 2023年1月から12月までの労働災害(新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除く)による休業4日以上の死傷者数(以下、「死傷者数」という)は135,371人で、前年より3,016人の増加となり、3年連続で増加となりました。
 業種別でみてみると、製造業の27,194人(対前年比500人増)が一番多く、小売業を含む商業が21,673人(同29人減)、社会福祉施設を含む保健衛生業が18,786人(同1,549人増)、陸上貨物運送事業が16,215人(同365人減)と続いています。
 業種別に事故の型別をみると、製造業では機械等による「はさまれ・巻き込まれ」が最多で、「動作の反動・無理な動作」が続いています。小売業では「転倒」が最も多く、「動作の反動・無理な動作」「墜落・転倒」が続いています。社会福祉施設では「動作の反動・無理な動作」が最も多く、「転倒」が続いています。

[2]厚生労働省の取組
 労働災害による死傷者数における状況を受け、厚生労働省では、小売業、社会福祉施設で多発している「転倒」や「動作の反動・無理な動作」等の減少を図るため、第14次労働災害防止計画に基づき、「労働者(中高年齢の女性を中心に)の作業行動に起因する労働災害防止対策」として、以下の事項を中心に取り組むとしています。

  • 中高年齢の女性労働者に多い転倒災害の発生状況の周知を行うとともに、転倒災害防止のための基本的事項(チェックリスト)の周知指導を行う。
  • エイジフレンドリー補助金等により、転倒災害防止等に資する装備や設備の導入のほか、理学療法士や健康運動指導士等の専門家による労働者の身体機能の維持改善のため取組みの支援を行う。
  • アプリ、動画等を活用した効率的・効果的な安全衛生教育(転倒防止教育を含む)の手法の普及啓発を行う。
  • 事業者による自発的な転倒災害防止対策の取組みの促進のため、転倒災害等による損失額の「見える化」及びその周知啓発を進めるほか、ナッジによる転倒災害防止対策等の行動経済学的アプローチについて引き続き研究を進める。

 労働災害を防止するためには、各事業場の安全衛生管理体制を確認し、不十分な場合は早めに整えていくことが求められます。また、安全作業マニュアルの整備・見直しを実施し、労働災害の防止につなげていきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和5年の労働災害発生状況を公表
厚生労働省「令和6年度「全国安全週間」を7月に実施

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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こんにちは。

 

多くの会社では、年次有給休暇のほかにも従業員に慶弔が生じた際などに休暇を与える「特別休暇」を設けています。特別休暇は任意の制度であることから、安定的な運用を行うには、細かな取扱いのルールを決めておくことが重要です。以下では、その取扱いルールを規定する上でのポイントと最近注目を浴びる孫休暇をとり上げます。

[1]特別休暇の種類
 厚生労働省作成のパンフレット「特別休暇制度導入事例集2023」では、特別休暇を以下の3つに分けています。

  1. 年次有給休暇の取得促進に資する特別休暇
     例:病気休暇(有給)
  2. 予測できない事情に備えた特別休暇
     例:裁判員休暇・犯罪被害者等の被害回復のための休暇・災害休暇
  3. 従業員の多様な活動を支援する特別休暇
     例:ボランティア休暇・ドナー休暇・自己啓発休暇

[2]特別休暇を設ける際のポイント
 休暇は就業規則への必要記載事項になることから、特別休暇を設ける場合、就業規則等へ規定する必要があります。その際に検討するポイントとして、以下の項目が挙げられます。

  1. 特別休暇を取得できる従業員の範囲
     特別休暇はその趣旨に基づき、対象者を決定することが必要です。例えば、勤続1年以上の従業員や試用期間満了後の従業員など、対象者を限定することが可能です。
  2. 特別休暇の対象となる事由と休暇日数
     従業員の結婚や配偶者の出産、身内の不幸など、特別休暇の対象とする事由(取得目的)は様々です。会社において特別休暇を設ける事由や、そのときの休暇日数を検討します。
  3. 特別休暇取得時の賃金の取扱い
     年次有給休暇を取得したときには、その名称の通り、有給休暇として「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」等の支払いが会社に求められます。一方で、特別休暇を取得したときの賃金の取扱いについては、会社が自由に定めることができます。一般的に慶弔に関する特別休暇は、祝福やお悔やみの意味から有給とする会社が多いことを前提に取扱いを検討するとよいでしょう。

[3]注目を浴びる孫休暇
 最近、自治体等で、孫休暇を設ける動きが見られます。これは、祖父母である従業員が孫の世話や看病のために取得できる休暇です。子育て世代を支援し、子育てを社会全体で行う機運を醸成する目的として、創設を検討する動きが見られます。
 育児・介護休業法では規定されていない休暇であるものの、育児の支援策の一環として創設が期待される休暇でもあります。

 特別休暇の運用において、複数日取得できる休暇を分割して取得する申出があったり、事由が発生した日から相当程度の期間をおいて取得する申出があったりと、会社が対応に困ったというケースもあるでしょう。この機会に、過去の事例を振り返り、規定を見直してもよいかもしれません。

■参考リンク
働き方・休み方改善ポータルサイト「特別な休暇制度-資料

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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