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年次有給休暇(以下、「年休」という)については、実務上、取扱いに迷うことが多くあります。そこで、以下では、年休の付与に関して、よく問題となる事例をとり上げて内容を整理します。

[1]年休付与の原則
 そもそも年休は、法令で雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して付与することになっています。そして、以後、継続勤務年数が1年長くなるごとに、全労働日の8割以上出勤した場合、継続勤務年数に応じた年休が付与されます。この「全労働日」とは労働義務が課せられている日のことで休日を除いた日を指し、「出勤」とは実際に出勤した日(年休を取得した日等を含む)となります。そのため、たとえ遅刻した日があった場合であっても、その日は出勤した日として取扱います。

[2]定年後再雇用者に対する年休付与
 定年退職後に日を空けずに再雇用した人に対して、年休を付与する場合、勤続年数は定年前の入社日から計算します。これは通達で、定年後再雇用者は、実態として定年前から継続して勤務していることから、継続勤務の要件を満たしているとされているためです。また、定年前に取得しなかった年休の残日数についても、繰り越しとなることに留意が必要です。

[3]育児休業者に対する年休付与
 育児休業者は育児休業期間中、一時的に労働義務はなくなります。ただし、継続勤務をしていることに変わりはなく、全労働日の8割以上出勤しているかの判断において、業務災害による負傷や疾病により療養のために休業した期間、産前産後のために休業した期間、育児休業や介護休業をした期間については出勤したものとみなすことになっているため、育児休業期間中であっても新たに付与されます。

[4]所定労働日数が変更となった際の年休の付与日数
 パートタイマーの年休の付与日数は、週所定労働時間、週所定労働日数および継続勤務年数に応じて、決まります(比例付与)。この比例付与による年休の付与日数は、付与する基準日時点の労働契約の内容に基づき決定されます。そのため、例えば、入社時は週所定労働日数が2日であった契約を、6ヶ月後の契約更新の際に4日にするような場合には、過去6ヶ月の週所定労働日数に関わらず、週所定労働日数4日として付与日数が決まります。

 年休については、半日単位や時間単位での取得もあり、さまざまな問題が生じやすくなっています。年休に関してお困りごとがございましたら、当事務所までご連絡ください。

■参考リンク
厚生労働省「年次有給休暇取得促進特設サイト

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文書作成日:2026/2/12

36協定を締結する際の注意点

木戸部長は、「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)の締結に向けて書類の準備をしている。例年、前年の書類を見ながら作成しているが、記載する項目が何を意味しているのか疑問に思い、社労士に確認することにした。

 今、来年度の36協定の締結に向けて、書類を作成しています。例年、前年のものを参考に作成しているのですが、ふと、いくつかの項目について何を記載するのか疑問に思ったので、それについて教えてください。

 わかりました。

 一つ目は、36協定の協定事項とされている「労働者数」についてです。これは、時間外労働・休日労働を行わせることが想定される人数だと理解していますが、いつの時点の人数を記載すればよいのでしょうか。

 貴社の場合、36協定の起算日が2026年4月1日となっていますので、4月1日時点の人数を記載することになります。入退社があると思いますので、それも加味した人数になりますね。

 なるほど。3月で退職する人や4月1日付で入社してくる人がいますので、それを加味した人数で記載したいと思います。

 次に、「延長することができる時間」について確認させてください。「1日」、「1箇月」、「1年」という区分があり、当社ではこの1日のところは、以前から4時間と記載しています。通常ではこの4時間の範囲内に収まっていますが、機械の突発な故障などが発生した場合には、残って対応する従業員も出ることになり、4時間を超える可能性があると思います。

 確かに、突発的なことが発生した場合は、4時間を超えるということも考えられますね。

 もし4時間を超えて労働させてしまった場合はどのようになるのでしょうか?

 この場合、36協定違反になりますね。

 月45時間、年間360時間は遵守するように意識していますが、1日のところに記載する時間数も、当然ながら遵守が必要ということですね。

 その通りです。書類に記載した内容は、全部守らなければならないことを理解した上で、実態に合うように中身を検討してもらう必要があります。

 なるほど。確認したかった項目はこの2点ですが、これ以外によく誤解されている項目等がありますか?

 休日労働に関する項目に注意が必要です。協定事項には「労働させることができる休日の日数」があり、36協定届には「労働させることができる法定休日の日数」があります。
 「労働させることができる法定休日の日数」とは、法定休日に労働させる可能性のある日数をいいます。厚生労働省が公開しているリーフレット「36協定の適正な締結」にある36協定届の記載例では、「1か月に1日」という内容になっていますが、この場合、法定休日に労働させることができるのは1ヶ月に1日のみとなります。

 そのような意味になるのですね。繁忙期に法定休日のうち、2日は出勤してもらう可能性がある場合は、「1か月に2日」と記載するということですね。

 そうです。併せて、この法定休日に関連して、「労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻」を記載することになっていますが、これは法定休日に労働させる場合の始業時刻と終業時刻をいいます。
 この時刻について、会社の通常の始業時刻と終業時刻を記載しているケースを見かけますが、この時刻が法定休日に労働させることのできる始業時刻と終業時刻となります。

 そのような意味だったのですね。

 通常の始業時刻よりも早く出勤させる可能性がある場合などは、会社が想定する時刻を記載することになりますね。

 今日の話をもとに、書類を作成してみます。

>>次回に続く

 



 36協定に特別条項を盛り込む際に、特に気をつけたい項目としては「限度時間を超えて労働させる場合における手続き」があります。この手続きの方法は任意ですが、例えば「過半数代表者への申し入れ」と記載した場合は、実際に特別条項を適用する際、会社は従業員の過半数代表者へ事前に書面等で申し入れを行う必要があります。さらには、申し入れを行ったことの記録を残す必要があります。どのような方法を用いることが適当かは検討の上、記載するようにしましょう。

■参考リンク
厚生労働省「36協定の適正な締結

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パートタイマー、アルバイト、契約社員等、いわゆる非正規で働く人の割合が全労働者の35%を超える状況が続いています。非正規で働く人材を活用している企業では、同一労働同一賃金をはじめとしたパートタイム・有期雇用労働法の遵守が大きな課題となっています。以下では、パートタイム・有期雇用労働法で規定されている正社員転換推進措置について確認します。

[1]非正規雇用労働者の定義
 非正規雇用労働者とは、正社員(通常の労働者)と比較して1週間の所定労働時間が短い労働者と、期間の定めがある労働契約(有期契約)で働く労働者のことを指します。これらの労働者は、パートタイム・有期雇用労働法が適用され、正社員とは異なる対応が求められています。

[2]正社員転換推進措置
 労働者と企業が結ぶ雇用契約の内容は、原則として、労働者と企業に委ねられています。ただし、企業は、非正規労働者を雇用する場合には、正社員への転換を推進する措置を講じることが求められており、その内容は、次のいずれかとされています。

  1. 正社員を募集する場合、その募集内容を既に雇っている非正規雇用労働者に周知する。
  2. 正社員のポストを社内公募する場合、既に雇っている非正規雇用労働者にも応募する機会を与える。
  3. 非正規雇用労働者が正社員へ転換するための試験制度を設ける。
  4. その他正社員への転換を推進するための措置を講ずる。

[3]制度運用時の留意点
 正社員への転換には、転換の要件として、勤続年数などの一定の要件を課すこともできるとされています。この要件については、企業の実態に応じたものであれば問題ないものの、必要以上に厳しい要件を課している場合には、正社員への転換を推進する措置を講じたとは判断されないこともあります。なお、企業に求められていることは正社員への転換を推進する措置を講じることであって、正社員に転換することまでを求めるものではありません。

 若年層の人口が減少する中、正社員を中心とした事業活動の運営では、十分に人材確保ができず、働く日数や時間に制限のある非正規雇用労働者を活用する場面が多くなっている企業もあるかと思います。その際には法令で求められている対応が適切にできるように進める必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「非正規雇用労働者(有期・パート)の雇用

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年次有給休暇(以下、「年休」という)の取りやすさは、従業員の関心事のひとつで、採用にも影響が出てくるものです。この年休の取得率ですが、先日、厚生労働省から公表された「令和7年就労条件総合調査 結果の概況」によると、年休の平均取得率は66.9%で過去最高となりました。以下では、その詳細や計画的付与制度の状況を見てみましょう。

[1]年休の取得状況
 年休の取得状況について、2024年の1年間に企業が付与した年休の日数(繰越日数は除く)は、労働者1人平均18.1日(前年調査16.9日)となりました。そのうち労働者が取得した日数は12.1日(同11.0日)であり、取得率は66.9%となり、1984年以降、過去最高となりました。この取得率は、産業別に集計されており、主な産業をみると以下のようになっています。

  • 建設業 60.7%
  • 製造業 72.8%
  • 電気・ガス・熱供給・水道業 75.2%
  • 卸売業、小売業 59.9%
  • 宿泊業、飲食サービス業 50.7%
  • 医療、福祉 68.4%

[2]計画的付与制度
 計画的付与制度とは、労使協定を締結することで、1年に5日を超える年休について計画的に取得日を指定することができる制度です。具体的な方法は、企業全体等で一斉に付与する方法、班・グループ別に交替制で付与する方法、計画表を作成し従業員ごとに付与する方法があります。
 この計画的付与制度を利用している企業の割合は40.8%(同40.1%)となっています。計画的付与日数を階級別に見てみると、「5~6日」が71.6%ともっとも多く、年休の1年に5日の取得義務を確実に実施するために活用されていると考えられます。

[3]特別休暇
 多くの企業では、年休や子の看護等休暇等の法定休暇以外の休暇として、特別休暇を設けていることがあります。今回の調査では、特別休暇制度がある企業割合は60.3%(同59.9%)で、設けている休暇とその割合は以下の通りです(複数回答)。

  • 夏季休暇 41.5%
  • 病気休暇 28.4%
  • リフレッシュ休暇 15.4%
  • ボランティア休暇 7.3%
  • 教育訓練休暇 5.4%
  • 上記以外の1週間以上の長期休暇 16.7%

 年休の年5日の取得義務については、管理監督者も対象です。取得すべき1年の終了間際になって、5日の取得ができていないというケースが見られることから、早めに取得されているかのチェックを行い、確実に取得できているようにしましょう。

■参考リンク
厚生労働省「令和7年就労条件総合調査 結果の概況

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2026年7月より、民間企業の障害者に係る法定雇用率が2.5%から2.7%に引上げられ、今後は従業員数37.5人以上規模の企業において障害者を1人以上雇用することが義務となります。そこで今回は、先月、厚生労働省から公表された「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」(以下、「集計結果」という)の中から、最新の障害者の雇用状況について確認しましょう。

[1]障害者雇用数と種別
  障害者の雇用義務のある40.0人以上規模の民間企業で雇用されている障害者の数は704,610.0人で、前年より27,148.5人増加し、22年連続で過去最高を更新しました。障害種別にみると、以下のようにいずれの種別でも増加していますが、精神障害者の雇用数が大幅に伸びており、知的障害者の雇用数を上回りました。

  • 身体障害者 373,914.5人(対前年比1.3%増)
  • 知的障害者 162,153.5人(同2.8%増)
  • 精神障害者 168,542.0人(同11.8%増)

[2]実雇用率
 実雇用率を企業規模別にみると、40.0人~100人未満については1.94%(前年は1.96%)、100人~300人未満が2.18%(同2.19%)、300人~500人未満が2.27%(同2.29%)、500人~1,000人未満が2.41%(同2.48%)、1,000人以上が2.69%(同2.64%)となっており、1,000人未満の企業において前年より実雇用率が低下しています。

[3]障害者雇用率達成の指導状況
 実雇用率が低い企業に対しては、障害者雇用率の達成に向けたハローワークによる指導が、以下の流れで行われます。

障害者雇用状況報告(毎年6月1日の状況)
障害者雇入れ計画作成命令(2年計画)
障害者雇入れ計画の適正実施勧告
特別指導
企業名の公表


 この指導について、2024年度の実績は以下のとおりです。

  • 障害者雇入れ計画作成命令の発出 446社
  • 障害者雇入れ計画の適正実施勧告 62社
  • 特別指導の実施 37社

 また、障害者雇入れ計画を実施中の企業は、338社となっています。
 

 障害者雇用人数が不足している企業や今後不足することが予想される企業においては、法定雇用率の達成に向け、継続的に採用と定着の取り組みを進める必要があります。

■参考リンク
厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果
厚生労働省「障害者を雇い入れた場合などの助成

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文書作成日:2026/01/22

改めて確認しておきたい労働条件通知書の項目

従業員採用の際、労働条件通知書のひな形を用いて労働条件を明示することが多くありますが、その内容が近年の法改正に対応できていなかったり、パートタイマー用の労働条件通知書において項目が漏れていたりすることがあります。以下では、労働条件通知書において求められる明示事項と漏れがちな項目について確認します。

[ 1 ]

労働条件の明示事項

 そもそも労働契約は口頭でも成立しますが、認識の違いによりトラブルに発展することもあるため、労働基準法において労働条件を書面により明示することが義務付けられています。具体的な項目については、労働基準法施行規則に定められており、以下のとおりです。このうち、4の2から11の事項については、会社がこれらに関する定めをしていない場合は、明示は不要です。

1. 労働契約の期間に関する事項
1の2. 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間または有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む。)
1の3. 就業の場所および従事すべき業務に関する事項(就業の場所および従事すべき業務の変更の範囲を含む。)
2. 始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
3. 賃金(退職手当および臨時に支払われる賃金を除く。)の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切りおよび支払いの時期ならびに昇給に関する事項
4. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
4の2. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払いの方法ならびに退職手当の支払いの時期に関する事項
5. 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与および第八条各号に掲げる賃金ならびに最低賃金額に関する事項
6. 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
7. 安全および衛生に関する事項
8. 職業訓練に関する事項
9. 災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
10. 表彰および制裁に関する事項
11. 休職に関する事項

 

[ 2 ]

近年の法改正

 [1]で挙げた項目の1の2と1の3には、2024年4月に施行された法改正において内容の見直しがされた項目です。法改正が行われた都度、労働条件通知書のひな形を見直していれば問題ありませんが、従業員の入社がなく、しばらくひな形を見直していない場合は、法改正への対応ができていないこともあります。具体的な項目としては以下の3点です。

  1. 更新上限の明示
    • 対象
       有期労働契約の締結時と契約更新のタイミング
    • 明示事項
       更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)があるか否か、ある場合にはその内容
  2. 無期転換申込機会・転換後の労働条件の明示
    • 対象
       有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたとき
    • 明示事項
       無期転換を申し込むことができる旨、有期労働契約のときとは異なる労働条件を無期転換後に設定する場合はその内容
  3. 就業場所・業務の変更の範囲
    • 対象
       すべての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミング
    • 明示事項
       就業場所・業務の内容の変更の範囲

 

[ 3 ]

漏れがちな項目

パートタイマーやアルバイト等、パートタイム・有期雇用労働法が適用される労働者(以下、「パート等」という)については、パートタイム・有期雇用労働法で明示が求められている項目を、[1]で挙げた項目に追加する必要があります。その項目は、以下の4点です。

  1. 昇給の有無
  2. 退職手当の有無
  3. 賞与の有無
  4. パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

 この中で特に4の項目の明示が漏れているケースが多く見られます。この相談窓口は、パート等の雇用管理の改善や苦情等に関する相談に応じる窓口です。

 労働条件を明示する対象者が正社員なのかパート等なのか、パート等であっても有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えているのか否か等によって、必要となる明示事項が異なります。そのため、パターンに分けてひな形を準備するなどして、項目の漏れがないようにすることが求められます。

■参考リンク
厚生労働省「採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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少子化により若年労働者の採用が困難になる中、人材確保の観点から、定年の引上げなどを行う動きが見られます。先月、厚生労働省から公表された2025年の「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果(以下、「集計結果」という)では、定年制の状況と70歳までの就業確保措置(努力義務)に対応した企業の状況等を確認することができます。以下ではこの内容をとり上げます。

[1]定年制の状況
 企業における定年制の状況については、65歳以上定年企業(定年制の廃止企業を含む)は全体の34.9%(前年32.6%)となりました。これを年齢区分でみると以下のようになっています。前年からの変化としては、定年「60歳」の割合が減少し、「65歳」の割合が増加しています。

年齢区分 割合
 60歳 62.2%(前年64.4%)
 61~64歳 2.9%(変動なし)
 65歳 27.2%(前年25.2%)
66~69歳 1.2%(前年1.1%)
70歳以上 2.5%(前年2.4%)
定年制の廃止 3.9%(変動なし)

 また、65歳定年の割合を企業規模別にみてみると、中小企業では全体の27.7%(前年25.7%)、大企業では全体の21.5%(前年18.9%)となっています。
※この集計では従業員21人以上300人以下の規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としています。

[2]70歳までの就業確保措置の実施状況

 70歳までの就業確保措置として、以下の1~5のいずれかの措置を講ずることが企業の努力義務とされています。65歳までの雇用確保措置と異なり、雇用だけでなく、業務委託契約など直接雇用をしない形で、70歳まで就業できる機会を与えることも措置に含まれています。

  1. 70歳までの定年引上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
     ※特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む
  4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 70歳まで継続的に以下の社会貢献事業に従事できる制度の導入
    1. 事業主が自ら実施する社会貢献事業
    2. 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

 今回の集計結果では、報告した全企業の中で就業確保措置が実施済みである企業が全体の34.8%(前年31.9%)となり、この割合は年々増えています。企業規模別では、中小企業では35.2%、大企業では29.5%となっています。また、就業確保措置の内訳を全体でみると、70歳までの定年引上げが2.5%、定年制の廃止が3.9%、継続雇用制度の導入が28.3%、創業支援等措置の導入が0.1%となっています。
 高齢者の活用について、検討がまだの企業は、今後、どのように対応していくのか、具体的な検討を進めていくことが求められています。

■参考リンク
厚生労働省「令和7年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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子どもの誕生をきっかけに、仕事と育児の両立がしやすい企業へ転職する従業員がいたり、また、会社が育児休業中に出向を命じたり、転籍を求めたりすることもあります。そこで今回は、育児休業中に従業員を雇用する会社が変更となる場合の、出生時育児休業給付金や育児休業給付金(以下、まとめて「育児休業給付」という)の取扱いを確認します。

[1]育児休業給付の支給
 育児休業を取得し、一定の要件を満たしたときには、手続きをすることで雇用保険から従業員に育児休業給付が支給されます。
 支給対象となるのは、原則、子どもが1歳になるまでの育児休業であり、取得する育児休業にあわせる形で出生時育児休業給付金か、育児休業給付金、またはその両方が支給されます。さらに、子どもが1歳時点や1歳6ヶ月時点で保育所に入所できないといった一定の延長事由があるときには、最長2歳になるまで育児休業給付金が支給されます。

[2]育児休業中の出向・転籍
 育児休業中であっても、転職することはでき、転職後の会社でも要件を満たせば育児休業を取得することができます。ただし、育児休業給付が支給される回数は、転職前後の育児休業それぞれで数えることになっており、実質的に転職前後で引き続き育児休業を取得しているような場合であっても、転職前後の会社では異なる育児休業として扱われます。そのため、例えば、すでに転職前の会社で育児休業給付金を2回に分けて受給していたような場合には、転職後の会社では3回目の育児休業給付金の受給となり、原則として、育児休業給付金は支給されません。

[3]育児休業中の転職
 会社の指示により育児休業中に出向したり、転籍に同意したりすることで、育児休業中に従業員の雇用される会社が変わることがあります。2025年3月31日以前までは、実質的に出向(転籍)前後で引き続き育児休業を取得しているような場合であっても、転職と同様に、育児休業給付についても異なる会社で育児休業を取得したものとして取り扱われてきました。
 これについて、2025年4月1日以降は、出向(転籍)後の継続する育児休業は分割取得回数に含まれないことになりました。また、出向(転籍)前の支給単位期間が引き継がれることとなります。そのため、すでに出向(転籍)前の会社で育児休業給付金の給付を2回に分けて受給していたとしても、引き続き2回目の育児休業として育児休業給付金が支給されます。
 また、育児休業を延長している途中で出向や転籍する場合であっても育児休業給付金は引き続き申請ができます。

 出向や転籍時の申請については、手続きの流れや必要書類が異なります。手続きが発生する際には、最寄りのハローワークで確認する等、丁寧に対応を進めましょう。

■参考リンク
厚生労働省「育児休業等給付について

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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文書作成日:2026/01/08

従業員の健康情報を取り扱う際の注意点

人事労務管理を行う中では、従業員に関する様々な個人情報を取り扱うことになる。その中でも、従業員の健康情報を取り扱う際の注意点を社労士に確認することにした。

 今日は、従業員の健康情報の取り扱いについて教えてください。

 何かありましたか?

 総務では、従業員の住所や家族の情報、給与の額をはじめ、マイナンバー、健康診断結果、欠勤時の診断書、障害に関する情報など、多くの情報を取り扱っています。内容によってその情報を扱うことができる範囲を設定(限定)していますが、個人情報の意識の高まりからか、従業員から、「この情報は誰が見ることができるのか」という質問があったり、「健康診断の内容は上司には見せないで欲しい」と要望が出ていたりするケースがあります。

 なるほど。健康診断の結果を上司には知られたくないという話は、他社でも聞いたことがありますね。

 やはりそうですか。当社では、上司に健康診断の結果そのものを見せたり、知らせたりすることはありませんが、産業医の意見を踏まえ、労務管理を行うにあたり、上司が把握しておいた方がよいと判断したことは、上司に伝えています。

 安全配慮の観点から、必要な範囲で上司に共有しているということですね。実際の労務管理は上司も行う上で重要になるので良いのですが、健康診断など、健康の情報に関する事項については、厚生労働省から「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(以下、「留意事項」という)が示されており、これを確認しておく必要があります。

 そのようなものがあるのですね。

 この留意事項で取り扱う従業員の健康に関する個人情報としては、健康診断の結果、病歴、その他の健康に関するものを指しています。例えば、以下のものがあります。

  • 健康診断の結果、医師等から聴取した意見、それに基づく事後措置、保健指導の内容
  • 長時間労働者への医師による面接指導の結果、医師から聴取した意見、事後措置の内容
  • ストレスチェックの結果、それに基づく医師による面接指導の結果、医師から聴取した意見、それに基づく事後措置の内容
  • 健康相談の結果
  • 職場復帰のための面談の結果
  • 治療と仕事の両立支援等のための医師の意見書
  • 通院状況等疾病管理のための情報

 様々な情報が含まれているのですね。

 会社が留意すべき事項としては、利用目的をできる限り具体的に特定しなければならないこと、原則として本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、健康情報を取り扱ってはならないことが示されています。

 健康情報は特に配慮が必要なため、利用目的をできる限り具体的に特定することがポイントとなるということですね。

 そうですね。健康診断に関しては、法定外の項目の取扱いが問題となることがあります。

 やはりそうですか。当社でも、過去に困ったことがありました。従業員自身で健康診断を受診し、その結果を提出してくれたのですが、法定外の項目の結果が含まれていて、どのように取り扱えばよいか困りました。

 その場合、目的外の情報を収集してしまうことになってしまいます。会社が対応に困らないように、必要とする項目を従業員に知らせて、それ以外の項目の提出は不要であることを伝えておくとよいですね。

 なるほど。今後、従業員自身で健康診断を受診する場合は事前に周知したいと思います。

 また、健康情報の中で、ストレスチェックの取り扱いが特殊であることは、押さえておきたいところです。特に、会社への提供について従業員の同意を得ていない場合は、この留意事項に示された内容を押さえておく必要があります。具体的には、ストレスチェックを受ける従業員について解雇、昇進または異動(以下、まとめて「人事」という)に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者に、ストレスチェックの結果を取り扱わせてはならないとされています。

 当社の場合、人事に関して直接の権限がない従業員が担当し、扱うようにしているので、現時点は問題なさそうです。

 そうですね。仮に、ストレスチェック結果を従業員の人事を担当する人(人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者を除く。)に取り扱わせるときは、従業員の健康確保に必要な範囲を超えて人事に利用されることのないようにするため、以下の事項をその担当する人に周知することが留意事項で示されています。

  • 担当する人には労働安全衛生法第105条の規定に基づき秘密の保持義務が課されること。
  • ストレスチェック結果の取扱いは、医師等のストレスチェックの実施者の指示により行うものであり、所属部署の上司等の指示を受けて、その結果を漏らしたりしてはならないこと。
  • ストレスチェック結果を、自らの所属部署の業務等のうちストレスチェックの実施の事務とは関係しない業務に利用してはならないこと。

 ストレスチェック結果を見ると、いろいろ考えることもありますが、実施の意義を押さえておく必要がありそうですね。

 そうですね。また、このストレスチェックは、従業員50人未満の事業所においても今後実施することが義務となります。施行時期は未定ですが、施行された際には、上記の内容を踏まえて実施していくことになりますね。

>>次回に続く

 



 健康情報の取り扱いについては、厚生労働省からリーフレット「事業場における従業員の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」が公開されています。この中に、取扱規程に定めるべき項目、取扱規程の運用、取扱規程の雛型が掲載されています。取扱規程の作成を考えている場合は参考になるでしょう。

■参考リンク
厚生労働省「厚生労働分野における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン等
厚生労働省「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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こんにちは。

 

厚生労働者では、企業向けに法令改正の内容や、事業主や労働者が知っておくべき労務管理や社会保険制度の内容を解説したリーフレットを作成し、公開しています。近年はリーフレットのみでなく解説動画の公開も多く見かけるようになりました。以下では、3つの動画を紹介します。

[1]育児休業等給付に関する動画
 2025年4月1日に雇用保険の育児休業等給付の中に、出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金が新設されました。これらの給付金の受給を検討するときには、支給要件や受給するための手続きが複雑になっており、事業主も労働者も制度を理解して、申請することが重要になります。
 そのような背景もあり、厚生労働省は、「給付金の紹介動画」と「給付金の制度利用ガイド(デジタルパンフレット)」を公開し、特に労働者側の理解が進むように支援しています。

[2]ハラスメントに関する動画
 ハラスメントに関しては、厚生労働省が「あかるい職場応援団」というサイトを開設し、様々なコンテンツを公開しています。この「あかるい職場応援団」では、ハラスメント対策研修の動画があり、例えば事業主向けの職場におけるハラスメント対策、相談窓口担当者向けの職場におけるハラスメント対策、カスタマーハラスメント対策、就活ハラスメント対策が公開されています。
 さらには、今後施行されることが決まっているカスタマーハラスメント対策の義務化についても、業種は絞られるものの、「スーパーマーケット業界におけるカスタマーハラスメント対策について」という動画が公開されています。

[3]メンタルヘルスに関する動画
 働く人のメンタルヘルスに関しても、厚生労働省が「こころの耳」というサイトを開設しています。サイトの中には、職場のメンタルヘルスに関する様々なテーマを短時間で学ぶことができる動画が公開されています。内容は、セルフケア、家族によるケア、同僚によるケア、職場のメンタルヘルス対策、ストレスチェックに分かれています。

 従業員にリーフレットを配布するだけでは、実際に目を通さなかったり、内容を十分に理解していなかったりすることも多くあるかもしれません。そのため、今回とり上げた動画等も活用したいものです。なお、動画は以下の参考リンクより確認できます。

■参考リンク
厚生労働省「育児休業等給付について
あかるい職場応援団「ハラスメント対策研修動画
こころの耳「こころの耳 5分研修シリーズ

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 

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