※シンイのお話ではありません※
(ここは……)
裸電球のオレンジ色の仄暗い灯りの下。
簡素な丸テーブル。
壁に掛けられた軍幕。
今はもうない、新大久保のあの店の一番奥の席に私は座っていた。
テーブルの上には料理が並んでいて。
私と、もうひとりの友人と、そして。
深い意識の奥で、私は驚きをもってその人を見ていた。
(オッパ……)
忘れもしない、あの人。
私をドンセン(いもうと)と呼んで、可愛がってくれたあの人。
電話越しで喧嘩別れしてしまった、あの人。
何もかも捨てて、孤独だけを抱えて逝ってしまった、あの人。
オッパが、あの頃と変わらないキャップ姿で、笑っていた。
馴染みの緑の瓶を、チラッと掲げてみせる。
「焼酎でいい?」
私は再会を懐かしむように、ほほ笑みをたたえて頷いた。
彼はいつもみたいに瓶の底を平手でトントンとやって、スクリューのキャップをひねった。
注いでくれたのか、飲んだのか、飲んでいないのか、曖昧なところで目が覚めた。
すべては夢の中の出来事だったのだ。
しかし哀しみはなかった。
彼の屈託ない笑顔が瞼の裏に焼き付き、胸は幸せな感情で満たされていた。
別れてしまってから12年。
韓国へ帰ったことも、亡くなったことも私は5年前にようやく知った。
ミアネヨ。そう言って何度か私はひとりで泣いた。
ポゴシポヨ。そう何度泣いても、もう会えなくて。
お墓の場所も知らない。
思い出したくても、顔がうまく思い出せなくなってきて。
そんなパボなドンセンに、会いに来てくれたんでしょ?
喧嘩別れした思い出じゃなくて、最後に笑顔を遺してくれたんでしょ?
もう一度お酒を一緒に飲みたかった。
短い夢で、そんな願いまで叶えてくれた……
オッパ。
コマウォヨ。
ありがとう。
忘れないよ。
元気でね。
コマウォヨ。
チャルガヨ、オッパ。
アンニョン。
アンニョン。
originally posted on 2018-4-24
ちょっと重たくてごめんなさい。
freeの若かりし頃。
慕っていた韓国人のお兄さんがいました。
めちゃくちゃ悪い奴(笑)だったけど、とっても大好きでした。
亡くなってからずいぶん経って、そのオッパがふと夢に出てきたことがあったんです。
とても幸せな夢でした。
起きてすぐ、突き動かされるように書いた夢の記憶です。
ずっとずっと下書きのままでしたが、確かに生きていた、その証を誰かに知ってほしいなと思いました。
今日は、オッパのセンイル(誕生日)。
生きていれば…立派なアジョシだね(笑)
センイルチュッカヘ!
そして実は、freeのお話の中でオッパはこっそり転生しています(笑)
過去に転生ってできるのか…?
こんどはいい奴になって、幸せに生きてほしい。
そして、いつかまたこちらに来たときは、会いたいです。
コメントは閉じさせていただきますね。
お読みいただき本当にありがとうございました!
freeway