料理の記憶 19 「大手スーパー鮮魚部」編 後編
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仕事に慣れて、人にもなれて来た頃。
そしてついにあの日がやって来る。
それは、一年でもっとも忙しい時期「年末&お正月」だ。
この日は特に、私の担当している刺し場は大忙しだ。年末の恒例行事とも言うべきか、お刺身盛り合わせや手巻き寿司セットが売れる!半端じゃなく売れる。普段の10倍は売れるだろう。
さらに凄いのは値段が高級であればあるほど売れるのだ。
お寿司屋さんで買うよりは安いし、とか買い物はここで済ませちゃおうなんて人達に「高級刺身」は喜ばれる。
普段の390円とか590円なんていう設定は無い。
1980円、3980円、5000円とかそんな設定だ。それでも売れるのが日本のいいところだ。
さすがにこの日は私一人では賄いきれない。というより全員総出で取り掛からないと間に合わないくらいだ。
なんとこの日は泊りがけ、徹夜の作業となる。
通常のパートさんは徹夜の仕事は無いが、私は一人、社員さんに混じって夜な夜な仕事をした。
普段と違った空気感に新鮮さを感じる。
他の部署の社員も泊まり込みで働いていたので、よく話して仲良くなった。
当日、物凄いお客の数に目が回ったが、それでもなんとかこなした。楽しかった。
お正月を明けて、会社の新年会にも参加する。
当時でもかなり大きな会社だったがそれでも、一つのホテルのフロアに従業員が入れるくらいだ。
多分、今では入りきらないくらい大きく会社が成長している。
あの時・・って思ってみたら今の状況とは180度くらい違った人生を歩んでいただろう。
それは、ある日
支店長から事務所に呼ばれた時の事
「近藤君、社員にならないか?」って言われた。
とても嬉しかった。仕事を買われた気がしたし。会社にとって必要な人材だと感じてくれた事が何よりも嬉しかった。
しかし。「少し考えさせて下さい。」私は思いとどまった。
お正月の泊り込みのとき、ある社員に給料の話を聞いていたのが、心に残る。
「約13万円」
20代半ばの社員がそう言っていた。私は当時17歳で安易な考えとして、「このまま10年間近くも給料が13万なのか?」って思っていた。
それは嫌だな。
これも私の安易な考え。というより思い込み。
もう、こんな事ばかりだ。
「どうかね?近藤君。」
「・・・はい。」
「悪い話じゃないよ。というよりパートから社員なんて今までに例が無いんだよ。」
「・・・はい。」
「保険も付くし、会社もこれからもっと大きくなるよ。」
「・・・・はい。」
「・・・すみません。辞めさせてください。」
「は?」
「今日限りで、辞めさせてください。」
「え?」
「失礼しました・。私を買ってくれてありがとうございました。とても嬉しかったです。」
「おい・・。いったい・・?」
「ありがとうございました。」
この時、
どう思っていたんだろう。今、16年も経った今、ブログを書きながら考えている。
お金に飢えていたのではないだろうか。
お寿司屋で9万
スーパーで13万
着実にステップアップはしているが、もっともっとという感情が強かった。
ひもじい思いをして生活した記憶、学校を辞めてまで働いてもっと俺はビックになる。って思っていた。
こんな一会社の社員になって埋もれたくないって、もがいていた。
私なりに10代の反抗期だったのかもしれない。
結局、このままこのスーパーを辞めてしまい、私はしばらく飲食から離れる事になる。
そして18歳になったばかりで結婚もした。
パンチコ屋で働きながら生計を立てていた。
その反面、パチンコに遊びに酒に明け暮れていた時代でもあった。
一般的に見ると「おい、18歳でそれって早くね?」って感じだが、なんせ私は何でも早く経験するのが人生らしい。
料理の記憶「大手スーパー鮮魚部」編 了
次回から「焼鳥編」がスタート!
私の青春がここに詰まっています。
お楽しみに。