イラクで拘束された、安田純平さんに聞く | アジアご飯、とくにマレーシアご飯、時々つぶやき

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2005年から2009年までの4年間、常夏のマレーシアで暮らしていました。2年過ぎた今でも、日本食は「ハレ」の料理でちょっぴりよそよそしく、アジア飯のほうが「ケ=日常」のご飯で、ホッとします。私にとっての食とは、味わいながら、みんなとつながることです。


自宅から徒歩7分の市民館で講演会があったので行ってみた。

安田さんは、フリーのジャーナリストとしてイラクを取材。
高遠さんら3人が人質となった数日後に拘束され、4日後に解放された。
一緒に拘束された市民運動家の渡辺さんが、
帰国後、成田空港でなだめる両親に向かって
「今言わなきゃダメなんだよ」
と叫んでいた様子が、今もまだ記憶に新しい。

安田さん。1974年生まれ。30歳。
今日の講演を聞いた感想は、正直にいうと、ちょっと驚いてしまった。
なんというか、すごく軽いのだ。ノリというか、口調が。

「つかまっちゃったわけですよね」
「言っちゃうわけですよ」
と、照れ隠しなのか、クセなのか、
シリアスさを感じさせない口調で語る。
時にはシュールな冗談をきかせ、世論をズバリと切り、
でも、僕には分かりませんとあっさりと断言。
また、難しいですね…と口ごもったりと、とても素直な感じ。

これは、まったくの私見だけれども、
使命感をずっしり背負ったジャーナリストの匂いがあまりしないのだ。
新人類というべきか、達観した精神状態というべきか……。

もちろん考え方はしっかりしてるし、
いろんな有益な情報もたくさん知っている。

たとえば、イラクが混乱しているほうが、
イラン、シリアにとっては都合がいいので、
自爆テロや武装勢力の攻撃などを行っているのは、
シリアなどの外部勢力ではないか、
という陰謀説が現地ではささやかれている。
とか、
ベトナム戦争と違って、
米軍への抵抗勢力が1つではないことが、
混乱をより大きくしているのではないか。
イスラム教の宗派の違い、パレスチナ問題、外国人勢力など、
さまざまな抵抗勢力が乱立し、
逆にいえば、そうさせている何らかの力が働いているということ。
また、
安田さんが拘束された頃は、
アメリカ軍のスパイではないかという容疑のもと
「地元の人」が誘拐をしていたが、
香田さんの頃は、地元の人ではなく「外国人集団」が事件を
ひき起こしていて、事情が異なってきたこと。

そういうことを分かりやすく語ってくれた。

でも最後は、
イラク人にとって日本の「空手」はとてもメジャーなスポーツで、
日本人というと「お前は空手をやるか」と必ずと言っていいほど
聞かれるのだそう。だから自衛隊も、音楽隊などのイベントではなく
空手の型を披露すれば、もっとウケたと思いますよ、
と笑いも交えて締めくくった。

***

テレビのなかで見るだけではなく
ちょっとでも同じ空間、同じ時間を過ごしてみると、
安田さんも橋田幸子さんも、
わたしたちとなんら変わりない人間であることを実感する。
マスコミの報道から勝手に作り上げていたイメージとは
明らか違っていて、
はじめはすこし違和感があるけれども、
時間が経てば、空気が馴染み、彼らの心を等しく受け取ることができる。

今日の講演会に参加して、
安田さんという人を、同じひとりの人間として感じることができたことが
良かったと思った。
好き、嫌いではなく、まずは同じ人間として感じることができれば
世界はずいぶん変わるような気がした。

情報化社会がどんなに進んでも、
ブラウン管のなかでいくら顔を見ても、
同じ人間として感じることはできない。
大事なのは、匂いであり、声であり、空気の流れであり、
心の電波であり、そういう体感することなんだなと思った。