世界一長距離を移動する淡水魚が判明~ナショナルジオグラフィック~ | 長谷部茂人 マイノリティレポート

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数十年前、ロナウド・バーセム氏がブラジルのアマゾン川河口域で巨大ナマズの一種、ブラキプラティストマ・ルソーイ(Brachyplatystoma rouseauxii)の研究を始めたとき、困惑したことがあった。それは、おとなの魚がいなかったことだ。成長すると体長2メートルほどになる金色の魚は、いったいどこで産卵しているのだろうか

 長年にわたる調査の結果、驚くべき答えが明らかになった。この魚は、いくつかの国を越え、南米大陸の反対側であるアンデス山脈のふもとまで、はるばると旅をしていた。2023年11月に学術誌「Fish and Fisheries」に掲載された研究によると、往復1万1000キロ以上の旅は、世界の淡水魚の中でも群を抜いて最長だ。

 このような長距離移動を行うことで、若い魚は藻類から虫まで、さまざまな食べものを得ることができる。これは、成長や生存に役立っているはずだ。しかし、体重90キロ以上になるにもなる魚が、このような国境を越える長旅を行うと、乱獲や水力発電ダムなど、人間の脅威による影響を受けやすくなる。