簡単!残業代ゼロ法が成果主義賃金とは無関係である理由
嶋崎量 | 弁護士(日本労働弁護団常任幹事)2015/1/8(木) 23:52
1 「新しい労働時間制度」
今朝から、「新たな成果主義賃金制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)」に関して、大きく報道されました。
たとえばこういった記事やニュースです。
断言しますが、「新たな成果主義賃金制度」「働いた時間でなく成果に応じて報酬を支払う新しい労働時間制度」「働いた時間ではなく成果で給与を決める」といった制度の説明は、法的には全くの間違いです。
この制度は、単純に「残業代ゼロ法」(別名、「過労死促進法」「ブラック企業合法化法」)と呼ぶのが正解。
少なくとも成果主義とは全く無関係です。
2 なぜ成果主義と無関係なのか
簡単に説明します。
今の制度でも成果主義賃金は、世の中で多数採用されています。
珍しくもなんともありません。
例えば、タクシーの運転手さん。
基本給が全くない完全歩合制の賃金体系が増えています。これは、完全な成果主義の賃金体系です。
トラックの運転手さんや、営業職にもいらっしゃいます。
別に、完全成果主義賃金だからといって、違法ではありません(是非はさておき)。
今でも、成果主義賃金は、可能だし、実際に採用されているのです。
これだけで、簡単に、成果主義賃金体系と残業代ゼロ法が無関係である事が分かるはずです。
*注追記:完全歩合制度でも、残業代支払い義務は免れませんし、最低賃金法の規制もかかります。ですから、仮に労働時間と賃金が例えば最低賃金以下であれば、その分だけ賃金支払い義務は発生します。だからといって、成果主義賃金という「制度」自体が違法になるわけではなく、現行法でも認められています。
3 残業代ゼロ法→成果主義賃金ではない
逆に、残業代ゼロ法が成立しても、成果主義を取り入れない制度も可能です。
仮に年収1200万で残業代ゼロ法の適用を受ける労働者でも、成果主義を一切取り入れない賃金体系は可能です。
全社員が年収1200万、成果は問わず賃金同じ。この制度は、残業代ゼロ法が成立しても可能なのです。
例えば、全員年功賃金。成果に関わりなく一律に賃金が上がる会社。残業代ゼロ法が成立したからといって、成果主義賃金には変更なんてしません。
やっぱり、残業代ゼロ法と成果主義賃金は無関係です。
4 成果をだすため長時間労働をした場合
成果を出すため長時間労働をした場合を考えてみましょう。
現行法:成果を出すために長時間労働したら、残業代を払わなければならない
残業代ゼロ法:成果をだすため長時間労働しても、使用者は残業代払わなくて良い
違いは、残業代が払われるかどうかです。
だからこそ、「新しい労働時間制度」は、残業代ゼロ法と呼ばれるのです。
5 なぜ、「成果主義賃金」と言いたがるのか?
この制度は、2007年に「残業代ゼロ法案」「過労死促進法案」として世論の批判を浴び葬り去られたホワイトカラーエグゼンプションの再来なのです。
だから、
「残業代ゼロ」は隠したい → そうだ、成果主義ってことにして騙そう。国民は馬鹿だからな!(グヘヘへ)
こんな発想で、政府のデマゴギーが作られました(確信ある推測)。
これをそのまま報道しているメディアが、政府のデマに加担している訳です。
これは、政府はもとより、この程度のデマを見抜けず報道を続けるメディアも、あまりに罪深いとしか言いようがありません。
繰り返し言いますが、今の労働法は、成果主義賃金を一切否定していません(最低賃金は守らなければならないし、長時間労働したら残業代を払わなければならないだけ)。
労使合意があれば、今すぐ採用すればいいのです。
「お好きにどうぞ」としか言いようがありません。
6 労働時間の長さと賃金がリンクした制度?
良くある誤解ですが、現行制度は、労働時間の長さと賃金がリンクした制度ではないのです。
現行法でリンクするのは、法外残業分の残業代のみ。これによって、長時間労働を抑止しようとしているのです。
労働時間が長くなる→使用者に金を払わせる→長時間労働を抑止
残業代は、要するに長時間労働の歯止め役なのです。その歯止めを取っ払って、残業代を払わずに長時間働かせようというのが、この法律を推進している皆さんの考えです。
ちなみに、経団連の意見がこれ。経団連 「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」。年収400万での導入を求めています。
*以前私の記事で、残業代の存在意義を詳しく解説しています。
7 成果主義なら長時間労働は抑止される?
ちなみに、私は(少なくとも行き過ぎた)成果主義賃金体系は、長時間労働を促進して、過労死を蔓延させると断言します。
成果を出せば直ぐ家に帰れるから、労働時間は減る
こういった考えは、少なくとも多くの労働者の労働実態とは乖離しています。
長時間労働による労災事故(うつ病や過労死等)で、過度な成果目標が設定されていたり、労働者間の競争をあおることで過重労働が引き起こされているのを私は目の当たりにしています。
会社から、成果を出すためにノルマは課されます。そのノルマを達成しないと昇給はできないどころか、減給の可能性があるの成果主義賃金体系。
ですから、労働者は、成果を出すために、否が応でも長時間労働に結びつきやすいのです。
数多くの職場の実態からは、成果で賃金を決めるなら、より一層厳格な労働時間規制をとらないと、長時間労働が広がるのは明らかです。
8 まとめ
「新しい労働時間制度」は、残業代ゼロ法・過労死促進法・ブラック企業合法化法と呼ぶのが正解です。
成果主義を実現する制度だなんて、騙されないで下さい。
成立しても、単に残業代が払われなくなるだけで、成果主義賃金になるわけではありません。
(追記)2015年1月16日、深夜まで働く方でも相談できるよう、ブラック企業被害対策弁護団は、真夜中の電話相談を開催します。お住まいの地域に近いところへお電話ください。
詳しくはこちら
「残業代ゼロ法」を「時間では無く成果に応じて賃金を支払う制度」と報じる罪深さ
嶋崎量 | 弁護士(日本労働弁護団常任幹事)2015/4/7(火) 0:03
より転記。
繰り返される誤報
このような誤報に対しては、このYahoo!ニュースでも、数多くの記事で警告が発せられてきました。
法案に即した解説はこちらの佐々木亮弁護士の記事をご覧下さい。直ぐに納得していただけます。
また、私も以前こんな記事で、成果主義賃金と無関係であることを書きました。
そもそも、この制度は成果主義賃金とは無関係です!
重要なことなので繰り返し書きますが
この制度は成果主義賃金とは無関係です!
しかし、誤報は止まりません!!
この「残業代ゼロ法」(「定額¥使い放題法」)を、「時間では無く成果に応じて賃金を支払う制度」と誤報が繰り返され、政府のデマ報道をそのまま報じています。
この問題について、深く知る(「深知り」)以前に、間違った知識を視聴者に植え付ける誤報は止めて欲しいものです。
しかも、誤報と分かっていながらの誤報ですから、罪深いことこの上ないです。
NHK NEWS WEB さんは、私自身も出演させていただいた事がある思い入れのある番組ですから、残念でなりません。
この記事では、なぜこの「成果に応じて賃金を支払う制度」という誤報が罪深いのか、何を狙って政府がこの様な明らかなデマを繰り返し垂れ流しているのか、その理由を説明します。
罪深いのは何故か?
端的に言えば、
成果主義って良いよね
と騙されて、制度に反対する世論を潰す(少なくとも反対する世論の盛り上がりを防ぐ)意味があるからです。
例えば、こういった誤解。
成果を出せば早く帰れるという誤解
成果をだせば、早く帰れる
→ 間違いです。
そもそも、この制度は成果主義賃金とは無関係で、残業代をゼロにするだけです。
ですから、成果を出したら、短時間で帰れるわけではありません(ここ、重要です)。
また、使用者は、成果を出した労働者に対してはさらに業務を増やす命令を出すこともできます(労働者は基本的に拒否できません)。
普通の企業では、成果を出せば出すほど仕事が増える。これが常識です(残念ですが)。
結果としては、成果を出すと、かえって仕事が増え、帰宅時間も早くならない可能性が高いのです。
つぎは、その発展バージョン。
成果さえ出せば早く帰れるから、育児・介護などと両立ができる
→ 無理です。早く帰れません。
大事なので繰り返しますが、成果を出しても、早く帰れません。
長時間労働が蔓延する日本の社会では、長時間働けなかった家庭責任を負わされた女性労働者や病気を抱えた労働者が、事実上離職を強いられるケースは数多あります。
そんな経験がある方は、この報道をみて、自分もキャリアアップの可能性が増えると考える、これが政府のデマ拡散の理由でしょう。
この法律ができても、長時間労働が今より蔓延して、長時間労働できない労働者は、より排除されていくでしょう。
皆さん、冷静に考えてみてください。
残業代不払いを合法化しようとしてこんな制度を導入しようとする企業が早く帰らせるなんて、甘い見込みだなぁと思いませんか?
ちなみに、今の労働法でも、成果を挙げたら短時間で帰れる制度は導入できます。
だから、本当に政府のデマどおりの制度を作りたいなら、法律を変えなくても、今すぐ企業が導入できるのです。
成果さえ出せば、自由な働き方が出来る
→そんなことは法案に書いていません。
自由な出退勤を認める制度ではありませんし、そもそも成果を出しても早くは帰れません(使用者は、さらに仕事を追加で命じられる)。
成果で評価されれば、公平に賃金を支払ってもらえる
成果を出せば、公平に賃金を支払ってもらえる
→ この制度が導入されたことで、公平な賃金が実現するわけではありません。
例えば、正社員と同じ仕事をしていても、非正規という理由で賃金が安い労働者
また、先輩社員より成果を挙げていても、後輩という理由で少ない賃金しか支払われない方
成果を挙げても、男性より賃金が低い女性労働者
そんな方が、成果を出せばきちんと公平に賃金を払ってもらえるのでは無いかと、この制度を期待しているのでしょう。
残念ですが、この制度で公平な賃金支払が実現することはありません。
正社員と非正規労働者との賃金格差、女性労働者と男性労働者との賃金格差、崩壊しつつある年功賃金制度(昔のように年齢を重ねても給料が上がらない)の矛盾。
こういった、多くの労働者の不満を解消するかのように誤解させようと、意図的に拡散されているのが、「成果に応じて賃金を支払う制度」というデマです。
政府のデマを確信犯的に報じるメディアの責任
重要なのは、報道機関のほとんどは、「時間では無く成果に応じて賃金を支払う制度」という政府の説明がデマであることを理解した上でこのような報道を続けていることです。
いわば、確信犯です。
例えば、私の所属する日本労働弁護団とブラック企業対策プロジェクトでは、厚生労働省担当の記者の皆さんと懇談会を行い、「時間では無く成果に応じて賃金を支払う制度」という政府の説明がデマであることは、みっちりとお伝えしました。
主要メディアの記者の皆さんは、参加されていました。
ですが、デマは、一向にとまりません。
メディアの良心はどこにいったのか?
この報道は、偏った報道だというだけではありません。
明らかに誤った報道を、誤っていると知りながら、続けていることがはるかに問題なのです。
そして、その結果として、デマを信じて世論形成がなされていくことも、十分にメディア関係者は分かっているはずです。
心あるメディアの皆さん。速やかに、訂正報道!!をお願いします。
皆さんに出来ることは?
こんな署名活動をやっています。
簡単なネット署名で、3分で署名できます。
ぜひ、署名と拡散にご協力ください<(_ _)>
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エグゼンプションを「成果に応じた賃金制度」と喧伝することに抗議する声明
2015/4/16
エグゼンプションを「成果に応じた賃金制度」と喧伝することに抗議する声明
2015年4月16日
日本労働弁護団会長 鵜飼良昭
より転記。
1 法律案に関する喧伝
政府は、2015年4月3日、労働時間規制の適用除外制度(エグゼンプション)の創設を含む労働基準法等の改正法案を閣議決定し国会に上程したが、政府は新たに創設する適用除外制度を「時間ではなく成果に応じて賃金を支払うもの」だと説明している。この政府の誤った説明を受けて、少なくない報道機関が法律案を「時間ではなく成果に応じて賃金を決める制度」であるかのごとく連日報道している。
2 実際は「時間ではなく成果に応じて賃金を決める制度」ではないこと
しかしながら、この法律案は、「時間ではなく成果に応じて賃金を決める制度」など何一つ含んでいない。制度が新たに設けられた労基法第41条の2は、「労働時間等に関する規定の適用除外」との表題が付され、その名のとおり、制度内容も労働時間規制の適用除外が設けられているだけである。使用者に対して何らかの成果型賃金を義務付ける規定もなければ、それを促すような規定すら含まれていない。法律案に先立ち労政審でまとめられた「今後の労働時間法制等の在り方について(報告)」では、「特定高度専門業務・成果型労働制」との表題が付されていたが、法律案ではもはやその文言さえも消えている。
当弁護団は、この制度を「時間ではなく成果に応じて賃金を決める制度」と評価することが完全な誤導である旨、労働政策審議会での審議段階から繰り返し意見を述べ、制度内容の正しい理解を説明してきた。現時点でも、政府がこのような誤った説明を繰り返し、国民の間に間違った理解を広げていることに、強く抗議する。
3 法改正の影響に関する誤った喧伝
報道の中には、法改正が労働者に与える具体的影響に関して、①「成果が適切に評価されて、賃金が上がる」とか、②「成果給になれば、仕事を早く終わらせて家に帰れる」③「成果をあげればよいのだから、時間に縛られず自由な働き方ができる」などと解説し、あたかもこの制度が労働時間短縮、ワーク・ライフ・バランスの実現や女性の活躍促進に資するかのような誤った印象、幻想を与えるものも目立っている。
4 成果の評価は義務づけられていないこと
しかし、上記のとおり、この制度には「成果に応じて賃金を決める制度」は含まれておらず、この制度によって成果給が導入されるわけではないから、①「成果が適切に評価されて、賃金が上がる」ことにはならないし、その保障もない。さらに言えば、成果型賃金制度の導入は、現行法のもとでも自由に導入でき、現に多くの企業で導入されているので、この制度により成果型賃金制度が可能となるかのような説明は、現行法の理解としても誤っている。
5 無定量な残業命令を拒否できないこと
また、使用者から命じられる業務を拒否する権利はないから、この制度により時間規制の適用除外となった対象労働者は、無定量な残業命令を拒否することはできなくなる。さらに所定労働時間を自由に設定することすら可能である。
例えば、使用者が、成果を上げた労働者に対し、新たな業務を命じて更なる成果を求めることは自由であるし、そうした事態が横行することは容易に想像される。さらに、所定労働時間を例えば1日13時間とすることも規制されなくなる。
したがって、②「成果給になれば、仕事を早く終わらせて家に帰れるようになる」という理解も、③「成果をあげれば良いのだから、時間に縛られず自由な働き方ができる」という理解も、全く事態を見誤ったものというほかない。
上記の通り、この制度は、長時間労働を助長し、無定量な残業命令を拒否できない以上今よりも対象労働者に時間に縛られる不自由な働き方を強いることになり、ワーク・ライフ・バランスの実現や女性の活躍を阻害する制度である事は明らかである。
5 結論
このように、新たな労働時間制度は、単なるエグゼンプションにすぎず、成果型賃金制度とは全く無関係なのである。にもかかわらず、政府がこの制度を「時間ではなく成果で評価される働き方」であると説明することは、完全なる誤りであり、国民を欺く誤導である。そして、一部の報道機関が、その誤りを見過ごし、国民に制度内容について誤解を与える報道を続けていることは極めて遺憾である。
日本労働弁護団は、エグゼンプションについて「時間ではなく成果で評価される働き方」であるとの誤った喧伝を続ける政府の姿勢に強く抗議するとともに、報道機関に対して、制度内容の正確な報道を行うよう、強く要望する。
以上
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嶋﨑量(弁護士) @shima_chikara 2017年7月18日
「脱時間給」「時間で無く成果で賃金」と喧伝され法案の中身が正しく報道されません。 高度プロ制度は、労基法の残業代に関する規定を免除する(exempt)枠組ですから、正に「ホワイトカラー・エグゼンプション」です。 日経が用いる「脱時間給」は意味不明。日経は恥ずかしくのか?
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【法案版】「定額働かせ放題」制度・全文チェック!~「成果に応じた新たな賃金制度」との誤報も列挙!
佐々木亮 | 弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表2015/4/6(月) 21:27
前回、法案要綱で全文チェックしました。
・「定額働かせ放題」制度・全文チェック!~繰り返される「成果に応じて賃金を支払う新たな制度」という誤報
反対の電子署名運動もやってるのでそちらもよろしく。
さて、今回は法案で全文チェックやります!
まず、その前提にメディアの報道を調べると、たくさんありました。
適当に列挙します。
「誤報」の数々を見てみよう!
・NHK
・ライブドアニュース
・FNN
・時事通信
・テレビ東京
テレ東・・、出だしはよかったんですが・・・。おしい。
・テレビ朝日
テレ朝は、書いてないものが労働者のメリットだと・・・。
まぁ、つまり労働者のメリットはないという報道というのであれば、そのとおりですが・・・。
・産経新聞
・日本経済新聞
・読売新聞
このように、どのメディアもほとんどが「成果に応じて賃金を決める」と報じていますね。
ちゃんと報道していたのは、
・しんぶん赤旗
赤旗が一番正確ですね。まぁ、他の報道機関と違って、立場を鮮明にできる強みでしょうか。
・朝日新聞
・毎日新聞
朝日と毎日の上記記事も「成果」うんぬんは書いてませんね。
そう考えると、他の記事の異常性が浮かび上がります。
では、全文チェックだ!【法案版】
この労基法の41条の2(5頁)が新しい制度です。
なぜか「高度プロフェッショナル制度」という制度名は消えていますが、これです。
賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、
まずはこの委員会の設置が必要となる、と書いてあります。
当該委員会が委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項について決議をし、かつ、使用者が、当該決議を行政官庁に届け出た場合において、
委員会が以下に掲げる8項目について決議して、それを行政官庁=労基署に届け出る、と書いてあります。
第2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下この項において「対象労働者」という。)であって書面等の方法によりその同意を得た者を当該事業場における第1号に掲げる業務に就かせたときは、
対象労働者の同意が必要であることや対象業務のことが書いてあります。
この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。ただし、第3号及び第4号に規定する措置を使用者が講じていない場合は、この限りではない。
ここでは残業代が発生しないことや、休憩や休日の規定が適用されないということが書いてあります。
ここまで成果に応じた報酬が払われるという記載なし
ここからは委員会が決議する8項目が列挙されます。
一 高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において「対象業務」という。)
ここでは対象業務について書いてあります。
「その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない」という記載がありますが、成果に応じて報酬が支払われるとは書いていません。
二 この項の規定により労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であつて、対象業務に就かせようとするものの範囲
対象労働者について書いてあります。
これにはイとロの2つあり、両方に該当する必要があります。
イ 使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること。
仕事内容が明確であること、という意味ですね。
ロ 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまつて支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。
これがいわゆる年収要件です。
平均年収の3倍というところは法律に書かれますが、あとは省令に委ねられます。
三 対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(この項の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(次号ロ及び第五号において「健康管理時間」という。)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
時間外労働時間を「健康管理時間」と変なネーミングにした上で、それを使用者が把握すること、ということが書いてあります。
四 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。
これがいわゆる健康確保措置というやつです。
次の3つから1つを選択すればいいということになります。
イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。
ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。
ハ 一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を確保すること。
これの1つを取ればいいだけなんですが、これについては次の記事を見てください。
1日24時間働くのと、1年360日働くのと、どっちがいい?~残業代ゼロ制度の笑えない「健康確保措置」
ここまで成果に応じた報酬が払われるという記載なし
五 対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であつて、当該対象労働者に対する有給休暇の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定めるものを当該決議で定めるところにより使用者が講ずること
有給休暇を取らせましょうとか、健康診断などを受けさせましょう、というようなことが書いてあります。
六 対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
苦情処理の機関を作りましょう、と書いてあります。
七 使用者は、この項の規定による同意をしなかつた対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
同意しないからといって、不利益に扱ったらダメよ、と書いてあります。
八 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
省令で定めたことも委員会で決議するんだよ、と書いてあります。
ここまで成果に応じた報酬が払われるという記載なし
前項の規定による届出をした使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、同項第四号及び第五号に規定する措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならない。
これは2項です。
1項の第4号と第5号については労基署に実施状況を報告しなさいよ、と書いてあります。
第三十八条の四第二項、第三項及び第五項の規定は、第一項の委員会について準用する。
これは3項です。
引用されている条文は企画型裁量労働制のものです。
これらの規定を準用するよ、と書いてあります。
内容としては以上です。。。。
結局、成果に応じた報酬が払われるという記載なし
なのに、最初に書いたとおり、成果で報酬が支払われる制度が導入されるという数々の報道・・・。
一体、何のどこを見て、ああいう報道になるのでしょうか。
まさか、政府から発された情報を、ソースも見ないで、右から左へというわけじゃないですよね?
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参考↓