日本語 -句読点 番外編 後編- | 酒の友は我が友也

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酒好きで女好きとの評判な筆者が、意外と適当じゃないことを綴るブログ。
きっと何か発見がある。たぶん、本を買うより安上がり。
合い言葉は、『愛だろ?愛』

前編 からご覧下さい。
※相当長いです。心してお読み下さい。

句読点の謎を明かすには、
まずは句読点の歴史を紐解かねばならないようです。


句読点の歴史は、思いの外浅いのが現実です。
句読点が使われ出したのは、今から3~4世紀前。
最初に使われたのは、福音書などの翻訳書らしいです。
そうなのです。実は、それ以前は句読点そのものがなかったのです。
これには驚きですよね。日頃我々が普通に使っている句読点が、
昔はなかったというのですから。

その時点で“、”や“。”だったのかは不明ですが、
句読法の原点が、海外の書物であることから察するに、
“,”や“.”の代わりに“、”と“。”が生まれたのは容易に想像がつくでしょう。

句読点基準化の土台が作成されたのは、遡ること明治39年のことです。
それが改定され、句読点使用について、元となる基準が出来たのは昭和21年。
文部省教科書局調査課国語調査室が
『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕案』
を発表したのが始まりです。

そうなのです。まだ100年も経っていないのです。
その法案には句読点の基準が“縦書き”と“横書き”に分けて示されています。
肝心な部分だけ抜粋させて頂くと、縦書きは“、”と“。”で、
横書きは“,”と“.”を使用すると明記されています。

しかし、この時点では、
横書きに“、”と“。”を使用してはいけないとは書いていません。
問題はこのあとです。

句読法案もあくまでも土台。
「とりあえず、こんな感じでいいか」程度のものです。
それを改定したものが、昭和25年に発表されます。それが『国語の書き表わし方』です。
その中に『横書きの場合の書き方』という形で注釈が入れられています。

そこにはこうあります。
くぎり符号の使い方は、縦書きの場合と同じである。
ただし、横書きの場合は「、」を用いず、「,」を用いる。

そうです。
句点については、ここで“。”が認められます。
ですが、読点は“,”を用いることが明記されているのです。

では、何故“、”を使用する人が多いのかはてなマーク
“。”は定めがないので問題ないとしても、“,”はどうなのか。

『新しい国語学』の中にこう記されています。
これらは主として公用文書など公的な文章の表記法の目安であり、
一般個人の私的な文章や文学作品・学術論文などの表記を規制するものではないが、
文部省管轄下の学校教育がこれらに準じて行われる上、
新聞その他の報道機関も同調しているので、
現代社会においてはこれらの規制にのっとって表記することが、
伝達の効用の面からも必要になっている。

要するに、公用文書などの公的な文章は“,”を使用するべきだが、
他に関しては個人の自由で問題ないという見解らしいです。

しかし、この理由では説得力に欠けます。
確かに、どちらの読点を使用するかは自由ではありますが、
“、”を使用する理由にはならないですからね。

では何故なのかはてなマーク
国語の教科書を思い出して下さい。
国語の教科書は縦書きなので、“、”と“。”の使用が基本です。
それが故に、横書きでも“、”を使用するようになったのではないか。
一説によると、そういうことらしいです。
もっともな仮説ですね。

あとは、近年だけに限って言えば、
パソコンの日本語入力システム(ATOKやIME)の基本的な設定が、
“、”“。”であることも一因として挙げられるでしょう。

さてさて…。
案の定、長くなってしまっている。
実はまだ半分くらいだったりします。
なので、ここは思い切って…。

(中略)

歴史の勉強ではありませんからね。
ここから一気にまとめます。
諸説は省きます。

公用文では基本的に“,”“。”を用いる
理系文書は“,”“.”を用いている場合が多い。
出版社の基準は、雑誌の内容によって使い分ける。
が、記者ハンドブック(共同通信社発行)には、
“、”と“。”の使用を明記している。

要するに…。
機関によって基準が異なるし、
時と場合によって使い分ける必要はあるわけですが、
一般的には、どれを使用しても間違いではないのです。
慣れ親しんでいる“、”と“。”を使用しても何ら問題はありません。
“,”と“。”でも“,”と“.”でも構わないのです。

今回のテーマである、
何故“,”や“.”を使用する人がいるのかはてなマーク
その答えはもう見えましたよねにひひ

句読点ひとつにも歴史あり。
これだけでは完璧に解き明かしたとは言えませんが、
今回はこれにて擱筆とします。

※質問等あれば、気軽にコメントなりプチメ下さい。
※参考文献 『横書き句読点の謎 渡部善隆 著』