国立新美術館で7月12日から始まったテート美術館展を観に行きました。

 

 

 

このテート美術館展は「光」をテーマにロンドンのテート美術館のコレクションを楽しめる企画展です。まちなかではターナーやウィリアム・ブレイクのポスターを見かけましたが、実際に観に行ってみると、コンテンポラリーの作品も多く、とても幅広い展示内容でした。特に印象に残った作品は以下の通りです。

 

 

 

(写真)ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー/陽光の中に立つ天使

※テート美術館展で購入した絵葉書より

 

本展の目玉とも言えるターナーの絵ですが、出し惜しみをせず、何と最初の部屋から登場します!ターナーの4作品がずらっと並んで壮観!その一番手がこの眩いばかりの光の中に君臨する天使の絵で、天使の神々しさが非常に印象的です。

 

しかし、左下の人間たちは逃げているようにも見えます?この後に出てくる大洪水とモーセの絵とセットで観ると、私にはまるで「最後の審判」が主題の絵のように見えてきましたが、果たしてどのような趣旨の絵なのでしょうか?

 

 

 

(写真)ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー/湖に沈む夕日

 

この絵を観た瞬間、私はクロード・モネ/印象・日の出を思い浮かべました。そう、あの「印象派」の言葉のきっかけとなった絵です。太陽と空と湖が太陽の光によって渾然一体となった極めて印象的な絵。

 

 

 

(写真)ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー/光と色彩(ゲーテの理論)-大洪水の翌朝-創世記を書くモーセ

 

先ほど言及した、大洪水とモーセの絵画です。この絵もまばゆい光に包まれた絵で、中央のモーセは神々しい。しかし、人間が堕落したために起きたという大洪水がタイトルに含まれており、中央の光と周囲の暗い影のコントラストこそ、この絵が伝えたいことなのではないか?と感じました。

 

 

 

ちなみに、ターナーと来れば、お次はコンスタブル。本展にはジョン・コンスタブルの絵画もありました。絵葉書がなかったので掲載しませんが、1作品はロンドンのハムステッド・ヒースを題材とした絵でした。

 

ハムステッド・ヒースはほとんど自然のままの広大な公園。その中にあるケンウッド・ハウスのフェルメールを観たくて2019年に行きましたが、広大な公園の中の複雑な道を、迷いに迷ったことを懐かしく思い出しました、笑。

 

(参考)2019.4.29 ロンドン観光(ハムステッド・ヒース&ケンウッド・ハウス)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12462719723.html

 

 

 

(写真)ジョン・ブレット/ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡

 

「光」がテーマということで海の絵もいくつかありましたが、この絵の広がり感、スケールの大きさには驚きました!(実物はかなり横に長い絵)極めて印象的な絵で、ブレットは「画家であると同時に天文学者でもある」という解説には、なるほど!と唸りました。

 

この絵を観た瞬間、私が思い浮かべたのはドビュッシー/交響詩「海」の第3楽章。「風と海との対話」という副題を持つ第3楽章途中の、荒れ狂うオーケストラが静まる神秘的な場面です。これまでその場面では月夜に輝く海の神秘的な光景を思い浮かべていましたが、この絵のどこか超然とした雰囲気が、その音楽とピッタリ合うと感じました。

 

 

 

(写真)ヴィルヘルム・ハマスホイ/室内

 

うわ~!ハマスホイも来ているんだ!と、狂喜乱舞したのがこの絵。北欧のフェルメールとの異名を持つハマスホイならではの美しい絵です。

 

室内を描いた光の淡い質感が独特で本当に素晴らしい!そして、お馴染みハマスホイの愛妻イーダの美しい後ろ姿。2020年に東京都美術館でハマスホイ展を観た時に、ハマスホイと愛妻イーダについての非常に感動的な絵画と解説がありましたが、この絵にもハマスホイの愛情が沢山込められているのが感じ取れます。

 

ロンドンのテート美術館の企画展ということで、どうしてもターナーに注目が集まりますが、このハマスホイの「室内」。この作品を観に行くだけでも、本展を観に行く価値がある。それくらい、素晴らしく大いに感動を覚えた絵でした!

 

(参考)2020.1.21 ハマスホイとデンマーク絵画展(東京都美術館)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12568767513.html

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12596428874.html

 

 

 

(写真)マーク・ロスコ/黒の上の薄い赤

 

最後にコンテンポラリーから1作品。マーク・ロスコです。1940年代にニューヨークで誕生した抽象表現主義の重要な画家の一人ですが、私はコンテンポラリーの絵画では、特にマーク・ロスコが好きなんです!

 

どれも長方形の中に長方形を重ねて描いた絵。抽象絵画の中には幾何学的な形や輪郭をクッキリ描いたものも多いですが、私は淡い輪郭により温かみを感じるロスコの絵が好きです。まるで細胞のように生きているかのよう。

 

この「黒の上の薄い赤」(1957年)の隣には、ロスコのもう1点「無題」(1969年)という作品がありましたが、「黒の上の薄い赤」と異なり、暗い色で輪郭がはっきりしています。まるで終わりを迎える細胞あるいは星のよう。1995年に千葉県の川村記念美術館にロスコ展を観に行った時のことを思い出しました。

 

(なお、確認したら、川村記念美術館には今もロスコ・ルームがあるそうです。久しぶりに観に行きたくなりました!)

 

 

 

 

 

テート美術館展、ターナーやコンスタブルなどイギリスの画家に加えて、ハマスホイや印象派の画家、コンテンポラリーまで展示されていて、大いに楽しんできました!

 

東京展は10月2日(月)まで、その後の大阪展(大阪中之島美術館)は10月26日(木)~来年1月14日(日)です。なお、美術館の中は作品保護のためにかなり寒かったので、1枚羽織るものを持っていった方が良いと思います。

 

 

 

 

 

(写真)そして、ロンドンの素晴らしい美術館による企画展を楽しんだ後は、お約束でブリティッシュパブに繰り出しました、笑。たっぷり1パイントのビールが小さく見えてしまう巨大なフィッシュ&チップスとホブゴブリンIPA。めっちゃ美味い!やっぱりこれですね~。テンション爆上がりです!

 

 

 

 

 

さて、私は来週から夏休みをいただき、旅に出かけてきます。次のブログの更新は8月下旬となります。みなさま、暑さにお気を付けて、素敵な夏をお過ごしください!