先週に引き続き、リッカルド・ムーティさんとウィーン・フィルの来日公演を聴きに行きました。今日はモーツァルトにシューベルト、楽しみなウィーン尽くしのコンサートです!

 

 

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

(サントリーホール)

 

指揮:リッカルド・ムーティ

 

モーツァルト/交響曲第35番ニ長調「ハフナー」

シューベルト/交響曲第8番ハ長調「グレイト」

 

 

(参考)2021.11.3 リッカルド・ムーティ/ウィーン・フィルのシューベルト&メンデルスゾーン

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12708206800.html

 

 

 

前半はモーツァルト。ムーティさんとウィーン・フィルのモーツァルトは、芳醇で円やか、極上のモーツァルト!まるで30年もののウイスキーを飲んでいるような気分になりました。何と言うか、大人のモーツァルト、ですね~。

 

祝祭的なハフナー交響曲ですが、壮大な、というよりは弱音を駆使してエレガントな印象。輝かしい長調というよりは短調の方をより多く感じ、まるで物事の陰陽や栄枯盛衰を描いているかのようにも聴こえました。

 

 

私はハイドンの交響曲とともに、モーツァルトの交響曲も大好きなので、せっせと聴きに行っていますが、その中心は東響のモーツァルト・マチネの溌溂としたモーツァルト、そしてザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の刺激的なモーツァルトです。

 

ウィーン・フィルのモーツァルトはアーノンクール節が炸裂して何度ものけぞった(笑)、ニコラウス・アーノンクールさんとの2006年の来日公演の39番・40番・41番が強く印象に残っていますが、今日の極上な35番も一生忘れることはないでしょう。

 

 

 

後半はシューベルト。グレイトは2017年に聴いたヘルベルト・ブロムシュテットさんとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の来日公演の名演が強く印象に残っています。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2017.11.9 ヘルベルト・ブロムシュテット/レオニダス・カヴァコス/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のブラームス&シューベルト

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12327066706.html

 

 

先週に聴いた4番と似て、ゆっくり目のテンポで、悠然と進むシューベルトです。第4楽章こそ、いよいよ、きた~!という感じで走りましたが、全般的な印象はじっくりと進む中、各楽器をしっかり浮き立たせて、密度の濃い、充実の響きの演奏です。

 

ウィーン・フィルの木管や弦楽は美しいな~、ここでこの楽器がこんな音を出していたのか!と、いちいち反応しながら聴き進めましたが、まるで、ゆっくりできるオーストリアの旅の道すがら、庭先の綺麗な花や素敵な景色を見つけながらの道中のようで本当に楽しい。

 

 

そんなウィーン・フィルの各楽器がよく聴こえる、ゆったり目の演奏に大いに唸りながら意識したのが、今日の曲目にはないベートーベンとブルックナー。頻繁に出てくる「テテテテテテ」「タッタッタッタッ」と言ったリズムがより印象付けられ、単純なリズムの動機を展開させ素晴らしい交響曲を作ったベートーベンを思わせます。

 

そして、悠然としたテンポ、大きなスケールで演奏される長大な交響曲は、後のブルックナーを連想します。モーツァルト → ベートーベン → シューベルト → ブルックナーという、ウィーンの交響曲の偉大な系譜を大いに実感しました。

 

 

そして、この悠然としたテンポのシューベルトを聴きながら、さらに頭をよぎったのが、先月に静岡で観たグランマ・モーゼス展。グランマ・モーゼスは便利になったり、生活のスピードが速くなったりした近代社会で、人間は果たして幸せなんだろうか?と問いかけました。

 

(参考)2021.10.23 グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生(静岡市美術館)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12706325337.html

 

短いスパンで面白いことがないと、すぐに飽きてしまうような今のネット社会に対して、今日のウィーン・フィルの悠然とした演奏からは、「そんなに急いだり、焦る必要はないんだよ」というメッセージが聴こえてきそう。私にはムーティさんとウィーン・フィルからの金言のように感じました。

 

 

そのほか、昔ウィーン・フィルから教わったことを、今はウィーン・フィルに伝える立場になった、というムーティさんの言葉や、レニーのワーグナー/トリスタンとイゾルデのゆっくりたっぷりの演奏を、カール・ベームが驚きつつもその造形を評価したことなど、このグレイトを聴きながら、本当にいろいろなことを感じました。

 

 

今は速めのテンポで進めるグレイトの演奏が主流のように思います。そんな中、悠然と進めて大いに感銘を受けたムーティさんとウィーン・フィルの演奏!恐ろしいことに、この長大な演奏を聴いている時の私の感想は「ずっと聴いていたい」、そして終わった後の感想は「また始めから聴きたい!」でした!

 

多分、他のオーケストラには、今日のウィーン・フィルのような演奏は怖くてできないように思います。正に唯一無二、圧倒的な感銘を受けた、素晴らしいグレイトでした!

 

 

 

そして、嵐のような拍手が降り注ぐ中、始まったアンコールは、嬉しいことにヨハン・シュトラウスⅡ/皇帝円舞曲!何と、ムーティさんの登場した今年元旦のウィーン・フィルのニューイヤーコンサートの締めのワルツです!ホルンにチェロ、フルートが何と美しいことか!ウィーン・フィルの十八番中の十八番。極上としか言いようのないワルツ!!!

 

 

ハッキリ言って、これを聴くために生きている!!!

 

 

そのカリスマ性から、「皇帝(カイザー)」とも称されるムーティさん。カイザー・コンダクツ・カイザーワルツ!涙涙の感動のアンコール!最高のコンサートでした!

 

 

(参考)ヨハン・シュトラウスⅡ/皇帝円舞曲

https://www.youtube.com/watch?v=5bkLMYzvMzk (12分)

※Wiener Johann Strauss Orchesterの公式動画より

 

 

 

 

 

(写真)素晴らしいコンサートの後は、緊急事態宣言も明けたので、久しぶりにバーに繰り出しました。金曜の夜ですからね。

 

1杯目はリッカルド・ムーティさんの80歳を祝ってゴッドファーザー。スコッチウイスキーをベースに、ムーティさんの故郷イタリアのリキュール、アマレットを合わせたカクテルです。

 

あっ、いやっ!決してムーティさんをマフィアのボスに見立てたとかではなく(笑)、そのカリスマ性と統率力に敬意を表して。アマレットが入ったことで、スコッチに透明感が加わり、素晴らしい飲み物!マエストロ・ムーティ、80歳、おめでとうございます!

 

 

(写真)2杯目は何を頼もうか?と思案しましたが、ゴッドファーザーとベースを合わせつつ、ムーティさんに更なる敬意を表し、イタリア縛りでスイートベルモットを選んで、ロブ・ロイにしました。

 

ロブ・ロイは私がこよなく愛するマンハッタン(ライウイスキー&スイートベルモット)の、ベースをスコッチウイスキーにしたヴァリエーションです。ライウイスキー特有のコクや苦味を感じるマンハッタンよりもスッキリした味わい。素晴らしかったコンサートの後の締めとして、とても心地良かったです。

 

 

マエストロ・ムーティ、ウィーン・フィルのみなさま、最高の演奏を本当にありがとうございました!