(NY旅行記の続き)ニューヨーク旅行もいよいよ終わりが近くなった8日目。この日はメトロポリタン美術館に行きました。10年くらい前のニューヨーク旅行でも行きましたが、その時にはあまりの広さに全然見切れず(笑)。今度こそは!とオープンの10:00から夕方までたっぷり時間を取って、観に行きました。
しか~し、結局、今回も全然見切れませんでした!(笑) というより、前回よりも観てないかも?原因は一つ一つの絵画に反応し過ぎたから。もう、「あ~!この絵がある!」「この画家はこんな絵も描いていたんだ!」とか、一々反応するので、全然先に進みませんでした。そんな中、特に印象に残った絵は以下の通りです。
(写真)Johannes Vermeer/Young Woman with a Water Pitcher
メトロポリタン美術館には、フェルメールの絵が何と5作品もあります!その内、今回4作品を観ることができました。上の作品は色合い自体はカラフルですが、落ち着いた色調の印象。赤いテーブルクロス、青地に黄色の服、背景のぼんやり描かれている世界地図の黄色が印象的。地図の黄色に対して、服の黄色は金色に近く目を惹き付けます。
窓の装飾も繊細。女性は水差しを持って窓を開け、躊躇っているような、思い悩んでいるような、何とも言えない表情。外に恋人や気になる男性がいるのでしょうか?
(写真)Johannes Vermeer/A Maid Asleep
暗めの色調と明るい色調の対比が見事な作品。手前のテーブルクロスは青地にさまざまな色が見られて見事。果物、水差し、買物かごに野菜と豊かな印象の一方、上部は影が差して薄暗い雰囲気です。メイドも疲れ切った表情。
よくある仕事中にちょっと油断して、とかではなく、仕事が忙しくて居眠りせずには持たない、そんな表情に見えました。背景の絵画に仮面が描かれているように見えましたが、何かの寓意でしょうか?
その他、絵葉書はありませんでしたが、ウィーンの「絵画芸術」に雰囲気が似ている“Allegory of the Catholic Faith”、構図は有名な耳飾りの少女に似ていますがもっと質素な“Study of Young Woman”にも魅了されました。やはりフェルメールは何を観ても惹き付けられます。
(写真)Pieter Bruegel the Elder/The Harvesters
ブリューゲルによる、農作業の中の昼ご飯のシーンの絵です。黄色の麦畑、奥に広がる緑の木々、手前で昼ご飯を食べたり、昼寝をしたり、農民への愛情に溢れた絵です。
(写真)Claude Monet/Gardeo at Sainte-Adresse
モネにしては具象的な雰囲気の絵。海辺の庭は赤と白の花々が咲き、対照的に海はエメラルドブルー。国旗が強い風に煽られ、海も波立っています。遠くに沢山の船、一艘だけ手前に配してコントラストが印象的。
(写真)Pierre-Auguste Renoir/Madame Charpentier and Her Children
夫人と可愛い2人の女の子と大きなワンちゃんの素晴らしい絵!ルノワールらしい柔らかい雰囲気の絵です。フリック・コレクションで“La Promenade”という素晴らしい2人の女の子の絵がありましたが、その前段の絵のようにも思います。
この絵の近くには、“The Daughters of Catulle Mendes, Huguette, Claudine, and Helyonne“という長女と次女がピアノとヴァイオリン、三女はこれから楽器を習うところ、という印象の素敵な絵もありました。音楽のある、楽器と共にある人生って本当に豊かだと思います。
(写真)Francisco de Goya/Manuel Osorio Manrique de Zuñiga
赤い服の子供が鳥を紐に繋いでいて、3匹の猫が目を見開いて鳥を食べたそうにしている、とても印象的な絵。猫の反対側にはカゴの中に小鳥が沢山。残酷な印象をも思わせる絵ですが、権力者のわびしさを表わしているのでしょうか?
(写真)Henri Regnault/Salome
サロメの絵はこれまで幾度となく観て来ましたが、おそらく最も魅力的な絵。白い肌、黒い髪、頰を赤く染めて美しい。きらびやかなスカート、お盆と剣を持って微笑んでいます。背景の金色はR.シュトラウスの高音のきらめきの音楽にぴったりです。
その他、絵葉書はありませんでしたが、以下の絵にも惹かれました。あまりにも多過ぎて書き切れないので(笑)、一部のみご紹介します。
◯Hans Memling/The Annunciation
個人的にテーマの絵としている受胎告知の絵です。マリア様とミカエルを縦に大きく取った構図、部屋や奥の庭など非常に奥行きを感じます。赤系の色があざやか。マリア様は静かに受け入れている印象です。
◯Lucas Cranach/The Judgement of Paris
また個人的なテーマの絵きた~!パリスの審判です。パリスは馬を従えた鎧姿で、もういやいや付き合っている印象(笑)。3人の女性はクラーナハ特有の痩せた女性たち。キューピッドが上空から矢を放つ仕草。奥に広がる風景。いろいろな捻りを感じる絵。
◯Jean-Auguste-Dominique Ingres/Odalisque in Grisaille
アングルの白と黒だけの絵。女性がベッドに向こう側向きに寝そべって、顔はこちらを見ている印象的な絵。アングルのヴァイオリンを思い出しました。
◯Pierre Bonnard/The Green Blouse
緑のブラウスを着た女性がテーブルで編み物をしている絵。テーブルの上には沢山の果物のお皿、背景に黄色のカーテンと窓の外に生い茂った木々、海か湖も見えます。もはやプレートを見るまでもなくボナールの作品、女性はマルトと分かります(笑)。マルトは無表情ですが、明るい色調の豊かさを感じる絵。別のコーナーには水浴の後のヌード?のマルトの絵もありました。
◯Gustave Courbet/Woman with a Parrot
クールベによるヌードの絵。女性が寝室で寝具の上に白い全裸で寝ていて、一羽のあざやかな鳩を手に乗せて恍惚の表情を浮かべています。とても印象的な絵。別の部屋にはクールベの風景画がありましたが、この部屋はクールベのヌードの絵が複数。対比が見事、美術館のGJ!
◯Gustave Moreau/Oedipus and the Sphinx
オイディプスとスフィンクスが見つめ合う絵。手前にはスフィンクスにやられた人の死体。背景に切り立った山。非常にロマンティックな絵ですが、ライオンが胴体のスフィンクスなので、何か見てはいけないものを見てしまった印象も(笑)。ギュスターヴ・モローの絵は本当に好き。
◯Arnold Böcklin/Island of the Dead
もはや個人的なテーマ主題の感もしてきた死の島。この絵は死の島の第2形態です。一番暗い色調、岩はそこまで高くなく、暗くて糸杉が判別しにくいくらい。白い女性が白い棺桶を前に祈っています。船はゆっくりですが進んでいます。岩は茶色で、ここだけ夕焼けの日が当たっているかのよう。波はほとんど平らで超常現象のよう。この作品が一番死の島のイメージに近いかも知れません。
(参考)2018.1.4 ベルリン観光(旧ナショナルギャラリーのベックリン/死の島(第3形態))
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12354202972.html
(参考)2018.1.6 ライプツィヒ観光(造形博物館のベックリン/死の島(第5形態))
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12357106820.html
◯Edvard Munch/Cypresses in Moonlight
何かあると惹き付けられたら、ムンクの絵でした。ムンクらしい筆遣いの暗い青が支配する絵。暗闇の中、窓に灯り、高い一本の木の、何の変哲もない絵なのに、どうしてこんなに惹かれるのか?
◯Giorgio de Chirico/Ariadone
一発でキリコと分かる白昼夢のような絵。ギリシャ風の建造物の影の差す広場に、白い彫刻のアリアドネが寝ています。中央奥の塔はミダス王の洞窟のメタファー?背景に船や汽車が見えるので、バッカスが迎えに来ることを指しているようです。非常に象徴的な絵。
◯Paul Delvaux/Small Train Station at Night
デルヴォーの夜の駅の絵。白い幻想的なヌードの女性がトレードマークのデルヴォーですが、この絵は純粋な駅の絵。月が意図的に木に隠れていたり、灯りを極力小さく描いていたり、やはりシュールレアリスムの不思議な印象の絵です。
◯Yves Tanguy/The Satin Turning Fork
灰色の深海のような地平に、仮面の男女のような物体、グランドピアノが解体されたような物体、怪しげな物体など、タンギー・ワールドに溢れた素晴らしい作品!
◯Mark Rothko/Untitled 1944-46
珍しいロスコのカンディンスキーやミロを思わせる絵。抽象的なので定かではないですが、カクテルのような形の女性を、楽器のような形の男性が口説いているように見えます。豊かさと男女のコミカルさを感じる絵。この絵の他にも、沢山のロスコらしい細胞のような絵があって魅了されました。
◯Jennifer Bartlett/Air: 24 Hours, Five A.M.
この絵は一瞬で惹かれました。格子状のタイルの上で白墨で書かれたユーモラスな男女が踊りを踊り、下にダンスの楽譜が書かれています。午前5時なのできっと夜な夜な踊り明かしたのでしょう。赤の色彩が素晴らしい。5時を示す時計も描かれています。
◯Anselm Kiefer/Bohemia Lies by the Sea
アンゼルム・キーファーらしい非常に力強い作品。中央に白い道のようなもの、両脇は黒地にピンクと白の花が一面に咲いているかのように見えます。厳しさの中に春の温かさも感じる作品。
どうですか!さすがはメトロポリタン美術館、名作の宝庫でした!ここでは書き切れませんでしたが、特に気になった作品はこの倍以上の数あります。こりゃ一日ではとても見切れませんね…。結局、西洋絵画のみで、彫刻とかアジアの美術とか、一切観ることができずに終わりました。メトロポリタン美術館、恐るべし!(笑)
(写真)メトロポリタン美術館
さて、時間は前後しますが、この日の朝食はまたパンケーキを食べに行きました。表参道にもお店のある、クリントン・ストリート・ベーキング・カンパニー&レストランです!
(写真)クリントン・ストリート・ベーキング・カンパニー&レストラン。マンハッタンの南、リトル・イタリーの東のロウアー・イースト・サイドにあります。
(写真)ブルーベリーパンケーキ。堪えられない美味さ!
結局、メトロポリタン美術館ではお昼を食べる時間がなく、10:00~16:30の6時間半、ずっと立ちっぱなしで絵画を観て歩きました(笑)。美術鑑賞も体力が要りますね。でも、お腹は空きませんでした。パンケーキはNYでの美術鑑賞の大きな力となります。(続く)