素晴らしかった聖トーマス教会の祝祭ミサ、バッハやブクステフーデを始めとした音楽。晴れやかな気持ちの中、ランチの代わりに、教会のそばのカンドラーというカフェに寄りました。ここはバッハにちなんだスイーツを楽しむことができます。

 

席に着いて、さっそく名物のバッハトルテを注文しました。そしたら、イメージしたものより、小さなものが出てきました?

 

私 あの~、バッハトルテを頼んだのですが?

給仕の方 あれっ?バッハトルテをご注文でしたか?バッハターラーを出してしまいました。すぐに替えます。

 

どうやら私のドイツ語の発音がイマイチで、トルテがターラーで伝わってしまったようです。でも、ここはむしろチャンスです!

 

私 いえいえ、発音が不明瞭でごめんなさい…。せっかく出していただいたので、バッハトルテとバッハターラーと両方いただきます。

給仕の方 そうですか!バッハトルテもお持ちしますね!

 

そして2つ揃ったのが以下の写真です。

 

 

(写真)カフェ・カンドラーのバッハトルテ(手前)とバッハターラー(奥)

 

バッハトルテはコーヒーを使った美味しいトルテ。バッハターラーもコーヒーの味、モーツァルトクーゲルンより一回り大きくて平たいお菓子でした。コーヒーが好きでコーヒー・カンタータまで作曲したバッハにちなんで、コーヒー味なんでしょうね。両方とも味わい深かったです!

 

両方食べられて、イマイチな発音で逆に良かったな(笑)、とコーヒーを飲みながらひたっていたら、隣の席の髭を生やして恰幅が良く立派な身なりの60代くらいの紳士の方が、同じくバッハターラーを注文されていました。大きなお皿に小さなバッハターラー1つが出てきましたが、その包み紙を剥くのにやや難儀し、格闘されていました。それがとてもお茶目で微笑ましい光景(笑)。

 

そして遂に無事包み紙を剥いて、バッハターラーを幸せそうに楽しまれていました。とてもいい雰囲気だったので、眺めていたら、目が合いました!その方も私が追加でトルテとターラーの両方を頼んだことをご存知です。お互いバッハターラーを楽しんだ者同士、ここはもうどちらともなく、阿吽の呼吸で、にこやかに握手(笑)。

 

バッハターラー美味しかったですね、引き続き旅行をお楽しみに!、と話してお別れしました。こういう旅行の中でのちょっとした交流は楽しいものです。

 

 

(写真)楽しい交流のあったカフェ・カンドラー。シューマンのダヴィッド同盟ならぬ、バッハターラー同盟結成?(笑)。

 

 

さて、お腹も落ち着いたので、造形博物館に行きました。造形博物館と聞くと、何を展示しているの?と思われるかも知れませんが、ドイツの絵画、17世紀フランドル、ネーデルラント絵画などのコレクションのある、れっきとした美術館です。そして、ここの目玉は、またしてもアーノルト・ベックリン/死の島です!

 

 

(写真)ライプツィヒの造形博物館。2004年に完成した、モダンな外観の博物館です。

 

 

(写真)Caspar David FriedrichLebensstufen

購入した絵葉書より

ハンブルクとベルリンで魅了されたカスパー・ダーヴィット・フリードリヒの絵。ここライプツィヒでも出逢えました!もうどうしてこんなに惹かれるのでしょう?子供、両親、おじいさんの3世代、人生のステージを描いた絵。背景には海と船が見えます。カスパー・ダーフィット・フリードリヒの前向きな印象を持つ絵で観ると、荒波の航海への不安というよりは、可能性を秘めたワクワクする人生の航海への旅立ち、という印象を持ちました。

 

 

(写真)Wilhelm von SchadowMignonnach Goethe, Wilhelm Meister

これはパッと観でとても惹かれた絵でした。構図、バランスが完璧な絵、という印象です。ミニョンというタイトルもいい。「可愛らしい女性」という意味かな?と思ったら、タイトルに続けて、ゲーテ/ヴィルヘルム・マイスターとありました。あのゲーテの作品のミニョンなんですね!以前にアンブロワーズ・トマのオペラ「ミニョン」を観たことを思い出します。ミニョンの悲しい運命と相まって、天使の羽根とリュートが想像力を掻き立てますね。

 

 

(写真)Arnold BöcklinDie ToteninselFünfte Version, 1886

そして目玉のアーノルト・ベックリン/死の島です。死の島は全部で5作品あり、この絵は最後の第5形態です。より死の島を大きく感じる構図で、筆致はより繊細、写実的、絵の表面は光沢があります。岩はより具象的、岩場が墓所であることがよく分かります。草やコケは一番上の緑のみでした。糸杉は幹が見えていて、時が立っている印象です。中央奥に何かが見えますが、よく分かりません。小舟にはかがむ白い衣裳の女性、櫂を漕ぐのは黒人の方でしょうか?より島に近づいた位置でした。

 

明るい色調、神秘性は後退して、よりポジティヴな印象を持ちました。実際に比べて観た印象では、私はこの精緻な第5形態よりも、ベルリンで観た、より幻想的な第3形態の方が好きかも知れません。

 

(参考)2018.1.4 ベルリン観光(旧ナショナルギャラリーのベックリン/死の島(第3形態))

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12354202972.html

 

 

 

 

(写真)Lovis CorinthSalome

サロメの絵はこれまでいろいろ観てきましたが、この絵が最も生々しいかも知れません?少女であるサロメはもう毒婦と言ってもいいような表情!ほとんどエレクトラのクリテムネストラのようです。ヨカナーンの頭の入った入れ物を支える奴隷のような男性、血の付いた剣を持つ男性、ヨカナーンの足を持つ男性と、それぞれ印象的ですが、最も気になるのは、右上のクジャクの羽根の飾りを持つ女性の表情!何と言う悲しげな、やるせない表情なのでしょう!そして、こちらを見ています。昨年観た、アルフォンス・ムハのスラヴ叙事詩の絵を思い出しました。

 

 

(写真)Giovanni SegantiniDie Frucht der LiebeMutterglück

セガンティーニの絵は、大きな美術館でもあって1枚くらい、大変貴重な絵ですが、観る絵、観る絵、なぜか非常に惹かれます。母親が赤ちゃんを抱いて、赤ちゃんは赤いリンゴを持って笑っています。幸せな光景だけではない、どこか寂しさ、厳しさをも感じる絵です。

 

 

(写真)Max KlingerChristus im Olymp

キリストがオリュンポス山に出現した時の状況を描いた絵です。大変大きくて印象的な絵。キリストが来て、ギリシャの神々とどのようなやりとりをしたのでしょうか?まず悔い改めなければならないのは、やはりゼウスでしょうか?(ヒント:ダナエ、レダ、エウロペ、笑)

 

 

この他、絵葉書はありませんでしたが、以下の絵がとても印象に残りました。

 

Arnold BöcklinFlora

Arnold BöcklinSpring Anthem

Max KlingerBeethoven

Max KlingerThe New Salome

Lucas CranachAdam und Eve

Lucas CranachAllegorie der Erlösung

Lucas CranachDer Sterbende

 

Carl WagnerBy Moonlight

Elisabetta SiraniAmor und Psyche

Hans ThomaPutto cloud

Max BeckmannLarge Breakwater

Fritz WinklerStreet with church

Bernhard HeiiugLarge Breakwater The small film of a catastrophe

Petra MattheisRiding the Red Tide

 

造形美術館、非常に楽しめました!ライプツィヒはバッハやメンデルスゾーン、シューマン、クララ・ヴィーク、ワーグナーなど、作曲家にまつわる観光スポットが多いので、どうしても美術館は後回しになりがちですが、ここの美術館は非常にお勧めです。

 

 

残り時間は限られましたが、ライプツィヒのまちを軽く散歩しました。

 

 

(写真)祝祭ミサでの演奏が素晴らしかった、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の本拠地ゲヴァントハウス。昨年2017年は創立275周年でした。ここはマーラー/大地の歌から着想を得たという、ジーグハルト・ギレによる巨大なロビー天井画「命の歌声」があります。

 

 

(写真)カフェ・バウム。1720年創業、シラーやレッシング、リスト、ワーグナーが常連だったとのこと。シューマンもよく来たので、シューマン・エッケというコーナーがあります。

 

 

(写真)ゲーテ像。ゲーテはこのまちで大学生活を送りました。造形博物館のミニョンの絵、最後の写真のアウアーバッハス・ケラーなど、ドイツを旅すると至るところでゲーテの息吹を実感します。

 

 

(写真)マルクトにある旧市庁舎。美しい色合いの調和が本当に素晴らしい。よくよく見たら、巨大なバッハトルテにも見えてきました(笑)。

 

 

(写真)ブリュールという通りにある建物に描かれたカラフルな絵。これ一体何なのか分かりませんが、妙に惹かれます(笑)。

 

 

(写真)アウアーバッハス・ケラーにあるファウスト(右)とメフィストフェレスの像。アウアーバッハス・ケラーは1525年創業のワイン酒場兼レストラン。ゲーテ/ファウストの舞台、メフィストフェレスが「のみの歌」を歌った場所です。この人、今晩の観劇後はここで酒盛りでしょうか?(笑)


 

ライプツィヒはコンパクトなエリアに観光名所がギュッと詰まっているので、まち歩きが非常に楽しいです。夕方からの観劇に備えてホテルに戻り休みました。(続く)