今月13日(土)&19日(金)のフランスもののコンサートが素晴らしかった大野和士さんと都響。充実のプログラムが続く10月のコンサートの中でも、一番楽しみにしていたコンサートを聴きに行きました。

 

 

東京都交響楽団第864回定期演奏会Aser.

(東京文化会館大ホール)

 

指揮:大野和士

ソプラノ:アウシュリネ・ストゥンディーテ

バリトン:アルマス・スヴィルパ

 

シュレーカー/室内交響曲

ツェムリンスキー/抒情交響曲~ラビンドラナート・タゴールの詩による7つの歌

 

 

(参考)2018.10.13 大野和士/リーズ・ドゥ・ラ・サール/都響のジャン・フルネ没後10年記念コンサート

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12411817852.html

 

(参考)2018.10.19 大野和士/ツィンマーマン/タメスティ/都響のマントヴァーニ&サン=サーンス

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12413168611.html

 

 

 

このコンサートは後期ロマン派、ブルックナーやマーラーよりも少し後の世代の作曲家の作品を取り上げたコンサートです。シュレーカーにツェムリンスキー、私のめちゃめちゃ好み、どストライクな作曲家です!

 

 

前半はシュレーカー。‘フランツ’・シュレーカー(1878-1934)は、マーラーよりも後、シェーンベルク・ベルク・ウェーベルンの新ウィーン楽派の辺りの世代。「はるかなる響き」と「烙印を押された人々」の2つの傑作オペラが有名な作曲家です。

 

私は特に「烙印を押された人々」の大ファンで、その音楽は、オペラの中で一番に挙げたいくらいに大好き。ようやく2013年にケルンで生のオペラの舞台を観ることができ、感無量でした。「はるかなる響き」は2000年に大野和士さんのオペラ・コンチェルタンテで聴いたことがあり、こちらも大変魅了されました。

 

シュレーカーの音楽は陶酔感のある響きが特徴です。その魅力を知るには、「烙印を押された人々」の音楽をコンパクトにまとめた「あるドラマへの前奏曲」を聴くのが一番だと思います。めくるめく陶酔の響きの魔法の音楽。ご興味のある方は、ぜひ聴かれてみてください。

 

(参考)フランツ・シュレーカー/あるドラマへの前奏曲

https://www.youtube.com/watch?v=qVb-WZVBvUQ (19分)

※American Youth Symphonyの公式動画より。若いアーティストたちによる活き活きとした演奏!

 

 

さて、そのシュレーカー/室内交響曲。作曲年代は「あるドラマへの前奏曲」に近いです。冒頭からシュレーカーらしい神秘的で陶酔的なフルート!室内楽団の規模ということもありますが、「ナクソス島のアリアドネ」や「カプリッチョ」などR.シュトラウスの室内楽的な音楽の雰囲気も感じます。

 

ライヴで聴くと弦の音色の印影、チェレスタ、ハープなどが非常に利いていることを実感します。途中のオーボエの軽やかで可愛い旋律が小鳥のようで楽しい!夢の中から幻想的な世界に入り、また夢の中に戻るかのような、捉えどころのない神秘的な世界。透明な響きの都響の演奏で存分に堪能できました!

 

 

 

後半はツェムリンスキー。アレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー(1871-1942)は、よりマーラーに近い世代。シュレーカーよりコンサートで登場する頻度が高く、アルマ・シンドラーが作曲を習っていたことでも知られています。

 

ツェムリンスキーでは特に、有名な交響詩「人魚姫」と交響曲第2番を愛聴しています。「人魚姫」はコンサートでもたまに取り上げられますが(今年1月の大野さんと都響の公演)、交響曲第2番が全く演奏されないのは、東京のクラシック界の7大不思議に挙げてもいいのでは?と思うほどに素晴らしい曲。

 

 

さて、そのツェムリンスキー/抒情交響曲。簡単に言ってしまうと、マーラー/大地の歌を、インドを舞台に、2人のすれ違う男女がお互い愛を歌う内容に移し替えたもの、という感じです。以前に実演を何度か聴きましたが、本当に久しぶりに聴きます。今日はどうでしょうか?

 

冒頭からオケの迫力の演奏がビンビン来ます!大野さん、シュレーカーよりも雄弁な指揮、という印象です。第1楽章はバリトンのアルマス・スヴィルパさんによる男性の切ない歌。切ない心境、女性への憧れの気持ちを見事に歌っていました。「陽光のような霧の中に」の歌詞のバックで、ハルモニウムが利いていたのがいい!

 

偶数楽章はソプラノのアウシュリネ・ステュンディーテさんが、男性への思慕や別れの気持ちを歌います。高音の難しい曲ですが、よく歌声を響かせていました。高音の弦にフルートやグロッケンシュピールが踊ってR.シュトラウスを思わせる音楽も感じますが、厳しい場面ではググッとアルバン・ベルクに接近したり、とても複雑な音楽、非常に聴き応えがあります!

 

第7楽章はバリトンによる別れの心を鎮める歌。「傷心は歌の中に溶かしてしまおう」での弦のグリッサンド!最後は得心した穏やかな弦の中、美しい思い出を名残惜しむようにパーカッション群がこだまして終わりました。コルンゴルトを思わせる、美しいラスト!

 

 

 

大野さんと都響のシュレーカー&ツェムリンスキーのコンサート、素晴らしい演奏で、非常に魅了されました!マーラーの後の世代の作曲家による珍しい意欲的なプログラムというだけでなく、それをこんなにもハイレベルで演奏していただいて、これ以上、一体何を望むのでしょうか?特にシュレーカーでのクリアで透明な響き、ツェムリンスキーでのオケのニュアンスと美しいトゥッティ、見事な演奏でした!

 

 

 

なお、大野和士さんがこのコンサートに向けて語られた内容が都響のウェブサイトに出ていました。大野さんの見識が伺える充実の内容、とても読み応えがありました。ご参考まで。

 

(参考)【特別寄稿】大野和士が語る(10/24定期A)

http://www.tmso.or.jp/20181024/

 

 

大野さんが芸術監督を務められる新国立劇場では、来年4月にツェムリンスキー/フィレンツェの悲劇を上演することが既に決まっています。今日はツェムリンスキーと交響曲の韻を踏んで、シュレーカーを紹介。ということは…?

 

これは今後、新国立劇場でシュレーカーを観られそうな予感がヒシヒシとします!大野さん、「はるかなる響き」「烙印を押された人々」「宝を探す人」ほか、何でもいいので(笑)、シュレーカーのオペラの上演、ぜひぜひよろしくお願いします!!!

 

 

 

 

(写真)フランツ・シュレーカー/烙印を押された人々の愛聴盤、ローター・ツァグロゼク/ベルリン・ドイツ交響楽団。デッカから一連の退廃音楽シリーズが出された時に購入しました。もう何度聴いたか分りません。