大野和士さんと都響がジャン・フルネ没後10年記念と銘打ったコンサートを敢行したので、聴きに行きました。リーズ・ドゥ・ラ・サールさんのピアノも楽しみです!

 

 

東京都交響楽団第862回定期演奏会Cser.

ジャン・フルネ没後10年記念

ドビュッシー没後100年記念

(東京芸術劇場コンサートホール)

 

指揮:大野和士

ピアノ:リーズ・ドゥ・ラ・サール

 

ベルリオーズ/序曲《ローマの謝肉祭》

ラヴェル/ピアノ協奏曲ト長調

ドビュッシー/管弦楽のための《映像》より「イベリア」

ラヴェル/バレエ音楽《ダフニスとクロエ》第2組曲

 

 

 

このコンサートは魅力的なフランス・プロということもありますが、都響と数々の素晴らしいコンサートを繰り広げた名指揮者、ジャン・フルネさんを偲ぶコンサート、ということでチケットを取りました。

 

ジャン・フルネさんと都響のコンサートは何度も聴きましたが、やはりフランスものが素晴らしく、1989年のサン=サーンス/オルガン付、1992年のドビュッシー/海、1997年のベルリオーズ/ファウストの劫罰などが非常に良かったことを覚えています。

 

2003年4月の90歳のバースデー・コンサートでは、終演後に一般客も参加できるパーティが東京文化会館のロビーで開かれました。マエストロに直接”Bon anniversaire”と伝えたら、にこやかに”Merci”と応えていただいた老紳士の笑顔をよく覚えています。

 

 

まず、東京芸術劇場に行ったら、何と!フルネさんの使用された、書き込みの入ったスコアが、フルネ夫人ミリアムさんから大野和士さんに贈呈された、ということで、その楽譜の展示がありました!

 

ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲&海、ラヴェル/ダフニスとクロエ&スペイン狂詩曲のスコアにフルネさんの書き込みが入っていて、貴重な資料を直接目にすることができ、もうクラクラしました…。

 

ドビュッシー/海のチェロのコラールでは、都響は伝統的に16人のチェロではなく、8人(または10人)のチェロに8人のヴィオラを重ねて演奏してきているそうですが、その発端となったフルネさんの指示である楽譜への書き込みもありました!

 

オーケストラは常任指揮者などの指示をずっと守って演奏する場合があると聞きますが、その具体的な事例を、元になった楽譜への書き込みで見ることができ、非常に感激しました!

 

そして、フルネさんの書き込み自体が、1つの美しい芸術作品のよう。特に「J」と「S」が味のある綴りでとても魅了されました。

 


さて、コンサートです。

 

 

1曲目はベルリオーズ、ローマの謝肉祭。大野さんはメリハリや弱音を利かせたり、ニュアンスに溢れる指揮。途中、イタリアのハロルド、ファウストの劫罰を思わせる旋律や和声が聴こえてきて、ああベルリオーズだなあ、と。この曲はオペラ「ベンヴェヌート・チェッリーニ」から音楽を取って作られていますが、まだ観たことのないオペラ。いつか観てみたいものです。

 

 

2曲目はラヴェルのピアノ協奏曲。リーズ・ドゥ・ラ・サールさんのピアノは初めて聴きますが、キレキレのピアノ!この曲の場合、もたもたしていると曲の魅力が損なわれてしますが、非常にリズミカルに進んで行って、何と言うか堂に入ったピアノです。

 

高速のパッセージでの見事なフェザータッチでの弱音や、随所でニュアンスをつけた味わいのあるピアノ。オケとの息もピッタリで非常に魅了されました!

 

アンコールはドビュッシー/パックの踊り。これもまた、ニュアンスに満ちた素晴らしいドビュッシー!タッチが本当に見事で、ドビュッシーの繊細な音の世界をものの見事に表現します。この演奏を聴けば、どうして私がこんなにドビュッシーに熱狂しているのか、よく分ると思います。素晴らしいアンコールでした!
 

 

 

後半はドビュッシーのイベリア。「街から道から」では、スペインの熱気がムンムンの演奏。大野さん、ファリャの三角帽子の飛翔する旋律に似たところを溜めたり、リズムを強調したり、雰囲気よく出していました。「夜の香り」では、都響のチェロを始めとした弦のニュアンスに痺れます。見事なイベリアでした。

 

 

最後はラヴェルのダフニスとクロエ。冒頭のフルートとハープと弦の繊細な出だしから惹き込まれます。「夜明け」の最後の盛り上がりは、ゆったりした流れの中からコントラバスが幽玄と現れ、息長く高まっていき、都響のトゥッティの美しさに惚れ惚れします!大野さん、最高音の手前2音を悠然と長くとって、極めて感動的!ここで涙涙でした…。

 

バッカナールはめくるめく熱狂とリズムの世界。ここでも都響が痺れるほど上手い。迫力の大音響でもうるさくならず、バランスよく1つのまとまった音として聴こえてきて、本当に凄い!先月下旬にロンドン交響楽団の3つの素晴らしいコンサートに大いに魅了されましたが、ことこのまとまり感や精緻さでは都響の方が上のように感じます。

 

 

 

大野和士さんとリーズ・ドゥ・ラ・サールさんと都響のコンサート、非常に魅了された素晴らしいコンサートでした!この非常に高いグレードの演奏であれば、ジャン・フルネさんも天国で頼もしく思われていることでしょう。

 

そして改めて強く思ったのが、今年1月のメシアン/トゥーランガリラ交響曲もめちゃめちゃ良かったですが、大野和士さんのフランスものはかなりいい、ということです。よくよく考えてみたら、この方は9年間、フランンスのリヨン歌劇場の首席指揮者でしたね。

 

 

 

ところで、都響の来シーズン、2019/2020シーズンのコンサートの曲目が発表になりました。既に東響、読響、バッハ・コレギウム・ジャパン、紀尾井ホール室内管弦楽団の発表があったので、私が普段聴きに行くオケのコンサートのスケジュールは全て出揃いました。(N響と日フィルと新日フィルはシーズンのスタートが9月なので別のタイミング)

 

東京では、いいコンサートの日程が重なることがよくあるので、全部出揃ってからチケットを買わないと、チケットが重なってしまったりして危険なのです(笑)。

 

上記5つのオケはどれも魅力的なラインナップで、来シーズンも大いにコンサートを楽しめそうですが、特に都響のラインナップは、プログラムにテーマ性があったり、曲の組み合わせが良かったり、好きな曲が多かったりするので、久しぶりに定期会員になることにしました。

 

 

私は予定が空いているからと言って、埋めるためにコンサートに行くようなマネは絶対にしません。(時間があったら家でピアノを練習したいので) 行くコンサートは心から聴いてみたいと思うコンサートのみにしています。なので、定期会員になっているのは、定期会員にならないとチケットが確保できない場合が多いN響Bプロのみ。コンサートを聴きに行く時は、常に一回券を買って行っています。

 

ですが、都響の来シーズンのラインナップは、多くのコンサートが心から聴いてみたいと思える内容だったので、思い切って久々に定期会員になろうと思いました。

 

 

都響の定期会員になるのは学生時代以来。あの頃は若杉弘音楽監督の時代で、オーソドックスな曲の中に、珍しい曲がバランス良く組み合わされていて、オーケストラを聴き始めの修行の身として非常に鍛えられました。

 

当時の珍しい曲とは、例えば、グルリット/ゴヤ交響曲、プフィッツナー/歌劇「パレストリーナ」より3つの前奏曲、ドビュッシー/カンタータ「放蕩息子」&神秘劇「聖セバスティアンの殉教」、團伊玖磨/交響曲第6番「HIROSHIMA」、黛敏郎/涅槃交響曲などなど。

 

 

学生時代にお世話になって、クラシックの楽しさやコンサートの聴き方を教えてくれた東京都交響楽団。再び定期会員となるのは、非常に感慨深いものがあります。来シーズンがとても楽しみです。