卓抜な表現力と即興で魅せるピアノ、シプリアン・カツァリスさんのリサイタルを聴きに行きました。オール・フランス・プロ、とても楽しみです!

 

 

シプリアン・カツァリス ピアノ・リサイタル

(浜離宮朝日ホール)

 

アントワーヌ・フォルクレ/クラヴサン組曲第4番ト短調より第1番「ラ・マレッラ」・第2番「ラ・クレモン」

リュリ/コメディ=バレ「町人貴族」より《トルコの儀式のための行進曲》

リュリ/バレ「村の結婚」より《パヴァーヌ》

ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ

フォーレ/パヴァーヌ

フォーレ/付随音楽「ペレアスとメリザンド」より《シシリエンヌ》

プーランク/フランス組曲より第6番《シシリエンヌ》

メル・ボニ/言葉なき恋歌

フォーレ/月の光

ドビュッシー/ベルガマスク組曲第3曲「月の光」

ドビュッシー/ピアノのために第1番「プレリュード」

ドビュッシー/バレエ音楽「聖セバスチャンの殉教」より《ユリの庭》

ドビュッシー/アラベスク第1番

ドビュッシー/レントより遅く

 

ビゼー/恍惚

ビゼー/オペラ「カルメン」より抜粋

サン=サーンス/動物の謝肉祭

 

 

前半は正直、カツァリスさん、今ひとつ乗っていないのかな?と思われた演奏でした。以前に聴いたエキサイティングな演奏を覚えているので、もちろん立派なピアノですが、全ての曲で楽譜を見ながらで、何となく大人しい(笑)印象。

 

ただし、ドビュシー/聖セバスチャンの殉教「ユリの庭」は、ピアノ版を初めて聴くこともあり、とても魅了されました。ドビュッシーは管弦楽曲もいいですが、それをピアノに編曲すると、ドビュッシーの和声の妙をより生の形で体感することができ、ほとんど最強のような気がします。

 

そして、最後のドビュッシー/レントより遅くは魅せました!冒頭からスタッカートで切ったり、かなり個性的な演奏。昨年聴いたメナヘム・プレスラーさんが老紳士のときめきを感じさせる演奏だとすれば、カツァリスさんは何と言うか、酔っ払った中年がやさぐれているような(笑)、不条理さすら感じさせる演奏。非常に面白かったです。

 

(参考)2017.10.16 メナヘム・プレスラーさんのピアノ・リサイタル(ドビュッシー&ショパンほか)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12320435836.html

 

 

 

後半は一切、楽譜なし。1曲目のビゼー/恍惚は、こんなにいい曲があるんですね。とても魅了されました。カルメンはカツァリスさん編曲によるオリジナル。第3幕の最後の合唱の場面を入れたり、オペラの編集の仕方がとても面白い。

 

第2幕のエスカミーリョの歌は、聴きどころなのでもちろん入りますが、感心したのは、エスカミーリョの歌の主旋律を抑えてまでも、フラスキータとメルセデスが合いの手を入れる副旋律をしっかり強調していたところ。

 

カツァリスさん、分かってらっしゃる!(笑)

 

 

最後はサン=サーンス/動物たちの謝肉祭。冒頭は記憶していた音楽と違って、「あれれ?」と戸惑い。テ~テ~テ、レッテッテ~テ♪では?と思っていたら、よくよく考えたら、それはピーターと狼でした(笑)。しかもサン=サーンスでなくプロコフィエフだし(笑)。あなた!何十年クラシックを聴いているんですか!

 

しかもこの動物の謝肉祭は聴いたことのない曲ばかり?つまり、どうやら、私は今日がこの曲を初めて聴く機会のようです。お子さまに人気の曲のようで、今日も可愛い子供たちを会場でちらほら見かけましたが、子供たちに先を超された感がありあり(笑)。

 

そうは言っても、さすがに第3曲「騾馬」と第13曲「白鳥」と第14曲「終曲」は聴き覚えがありました。白鳥に至っては以前にピアノで弾いたことすらあります。本当にいい加減(笑)。

 

カツァリスさんはカルメンに引き続き、この曲も活き活きと弾いて魅せました。第12曲「化石」では、ロッシーニ/セビリアの理髪師のロジーナのアリアも聴かれて、ロッシーニ・イヤーに何だか得した気分。とても楽しめた演奏でした!

 

 

 

拍手が続いてアンコールかな?と思ったら、カツァリスさん、まず会場に来られていた駐日フランス大使を紹介。そして、なぜかさらにお話(フランス語と英語の両方)が続きます。

 

◯50年前にパリのコンセルヴァトワールで勉強していた時、非常に美しいピアノを弾く女性がいた。

◯マダガスカル出身の女性だった。彼女はその後、祖国に帰り、文化大臣にもなった。

◯長い年月が経ったが、何と50年ぶりに、ここ東京で彼女に再会した!彼女は駐日マダガスカル大使になっていたのだ。

◯今日みなさんに彼女をご紹介するとともに、2人で連弾を披露したいと思います。

 

何と!こんな劇的な再会があるんですね!そして連弾まで!カツァリスさんとその駐日マダガスカル大使ミレイユ・ラクトゥマララさんによる連弾は、奇しくも先日のラトルさんとロンドン交響楽団でも取り上げられた、ドヴォルザーク/スラブ舞曲op.72-2!非常に感動的な演奏でした!

 

 

シプリアン・カツァリスさんのピアノ・リサイタル、最後の最後に大きな感動が待っていました!正直、前半はあまり乗っていないようにも見えたので、もしかすると調子が今ひとつだったのかな?とも思いましたが、それでも大いに魅せていただきました。

 

 

 

ところで、少し前にアメブロの画面表示が変わり、マイページの中に「◯年前の今日あなたが書いた記事があります」という表示が出るようになりました。たまに読み返して懐かしく思っていますが、今日はたまたま1年前にチェコ・フィルのスメタナ/わが祖国を聴いた時の記事でした。

 

チェコ・フィルのわが祖国!ということで、ハイテンションで書きましたが、演奏の感想をとても具体的に書いているので、1年経って読み返しても、その時の演奏をよく思い出せます。休憩中の光景まで思い出し、さらには終演後に飲みに行ったチェコ・ビールのことも(笑)。アメブロ、なかなか粋な試みですね。

 

(参考)2017.10.1 ペトル・アルトリヒテル/チェコ・フィルのスメタナ/わが祖国

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12316370040.html

 

(参考)2017.10.1 チェコのお酒(チェコビール&ベヘロフカ)とチェコ料理

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12316680536.html