期待でいっぱい、非常に楽しみにしていたコンサートを聴きに行きました。本命中の本命、チェコ・フィルによるスメタナ/わが祖国です!

 

 

チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

(横浜みなとみらいホール)

 

スメタナ/連作交響詩「わが祖国

 1.ヴィシェフラト

 2.ヴルタヴァ

 3.シャールカ

 4.ボヘミアの森と草原から

 5.ターボル

 6.ブラニーク

 

 

今年は「日本におけるチェコ文化年2017」のためか、スメタナ/わが祖国の当たり年。私はこれまで4つのコンサートを聴き、いずれも大いなる感動に包まれました。N響は2日連続で聴きに行ったり。この人、どんだけわが祖国が好きなんだか!、という感じですが(笑)。

 

(参考)2017.3.17 ペトル・アルトリヒテル/プラハ交響楽団のスメタナ/わが祖国

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12257055549.html

 

(参考)2017.5.13 ピンカス・スタインバーグ/N響のスメタナ/わが祖国(翌日の5.14も聴きに行きました)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12275012677.html

 

(参考)2017.7.26 ヤクブ・フルシャ/都響のスメタナ/わが祖国

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12296168097.html

 

いずれも素晴らしい演奏でしたが、そもそもの話として、私の場合、わが祖国を聴いて感動しないということはあり得ないように思います。そのくらい想いのある曲かつ超名曲だと思います。

 

でも、やはり、本命中の本命のチェコ・フィルのわが祖国、否が応でも期待が高まります!

 

このコンサートは当初はイルジー・ビエロフラーヴェクさんが振る予定でした。残念ながら、闘病の末、今年5月にお亡くなりになりました…。ビエロフラーヴェクさんの思い出は以前に拙ブログで書きましたが、改めて哀悼の意を表させていただきます。

 

(参考)追悼 イルジー・ビエロフラーヴェクさん

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12280250776.html

 

今日のコンサートはビエロフラーヴェクさんの追悼の意味合いがもちろん込められています。偉大なチェコの指揮者の追悼に、大いなるチェコ讃歌のわが祖国がプログラムされる、この感動的な偶然!そのコンサートを、3月のプラハ交響楽団のわが祖国でも素晴らしかったペトル・アルトリヒテルさんに受け継いでいただけたのは本当にありがたいことです。

 

 

さて、演奏ですが、一言で言うと、

 

本格派・正統派の堂々たる演奏、圧倒的な名演!

 

「本物は揺るぎない」「本家本元のプライド」「横綱相撲」、演奏を聴いていて、これらの言葉が繰り返し頭に浮かびました。あまりにも圧倒されて感じたことの半分くらいは飛んでしまいましたが(泣)、各交響詩ごとの感想は以下の通りです。

 

 

1.ヴィシェフラト

冒頭、ハープが力強く入ります。弱音に下がっていく場面は、吟遊詩人が前口上をした後、静かに舞台を外していくかのよう。久しぶりに聴くチェコ・フィル、管も弦も3月のプラハ交響楽団に似てとてもマイルドでメロウですが、と同時に、いい意味で土臭い雰囲気も感じます。弦はより力強く、全体的により重量感のある音。中盤の栄枯盛衰を感じさせる展開の後の激しく下降する場面の弦の凄み、最後ヴィシェフラトの主題が帰ってくる頂点に向け、ゆっくりためながら進む万感の響き、もう何もかもが素晴らしい!

 

2.ヴルタヴァ

冒頭のヴァイオリン!音量を抑え繊細に入って、3巡目の旋律から川の流れがパアーッと広がるように音量を上げる瞬間!ゾクゾクきます。月明かりの木管の幽玄なトレモロに寄り添う繊細な弦。いつまでも聴いていたい。聖ヨハネの急流の後に長調に転じ、輝かしいラストを迎える場面。オケがまるで生き物のようにスルスルッとアッチェレランドをかけました!ここは本当に痺れました!ラストのヴィシェフラトの主題はやや抑え目、ここは3月と同じでした。

 

3.シャールカ

メリハリ、切れ、迫力、最高のシャールカでした!クラリネットが始まる前のチェロの切ない吐息、夢のように美しいクラリネット、鎮まるヴァイオリンの美しく懐かしい響きのポルタメント、その後の歯切れの良い行進のリズム、とにかく表現の描き分けが非常に的確で、強い響きでグイグイ迫ってきます!最後ツィラートたちの殺害の場面の前の静寂、クラリネットの悲しい旋律の裏で忍び寄る弱音の、でも殺気だったニュアンスのヴァイオリン!ここ、殺気が座席まで伝わってきて、背中がゾゾゾ~っと凍りきました!チェコ・フィルの弦の表現力って凄い!最後の加速は冒頭からではなく、途中からやや緩やかに。慌てず騒がず王道の堂々たる演奏です。

 

 

いや~、素晴らし過ぎる前半でした!ここまで聴いて、アルトリヒテルさん、3月のプラハ交響楽団を指揮した時と印象が全然違います。正統派、本格派、骨太の堂々たる表現で、もしかして、このわが祖国は、ある程度オケに任せているのでは?とも思いました。チェコ・フィルが何度も演奏してきた、チェコ・フィルのDNAとして染みついている演奏が、正に目の前で展開されている、という印象を持ちました。

 

休憩中、周りでは「やっぱり、凄い!」「オケの質感が違う!」「迫力のある演奏だったね。」など、笑顔で喜びを語る方々で溢れていて、その中にいるだけでとても幸せな気持ちになります。髭を蓄えたいい感じのおじさまが、それこそチェコ・フィル愛全開で、お供のエレガントな女性に興奮気味に語っていて、大変微笑ましいシーンでした(笑)。

 

 

4.ボヘミアの森と草原から

繊細で神妙な弦のニュアンス。菅はメロウですが、軽さも併せ持します。ボリューム感もあるのに、切れも良い、9月にいただいたアンリ・ジローの極上のシャンパンのようです。一気に明るい踊りになる時の広がり感、そして再び雲がかかるように短調を導く哀愁の弦、何もかも素晴らしい。最後の弦のユニゾンは敢えてピッタリ合わせずに、ゴツゴツとした質感により、何か厳しさを表しているように受け取りました。フレーズは切っていなかったので、3月の演奏との違いがここに一番端的に現れていたと思います。

 

5.ターボル

冒頭のブワーンという響きの入り!この後の厳しい物語をあざやかに予告します。フス教徒の主題、ティンパニは最初からこんなに叩いて大丈夫?と思わせるくらい前のめりでアグレッシヴ。そのままの勢いで盛り上がっていき、クライマックスのフス教徒の主題が高らかに長調に転じて鳴り響く場面はたっぷりと!ここは本当にいつ聴いても痺れる瞬間です!最後、ティンパニの一発の後の低弦の深い響き。何という荘厳な音楽なんでしょう!

 

6.ブラニーク

ターボルからアタッカで入り、冒頭はあっさり目のアンチェル型でなくクーべリック型、たっぷりの響きで入りました。そして、冒頭の頂点を迎えた後も、弦が意図的に強奏していたのが印象的。伝説の勇士たち出現の最初は木管がゆっくり奏でて、それこそ可愛らしいくらい。2回目のフルートはじめ木管中心の旋律もいい意味での軽快さを感じます。深刻にというより、救世主は軽やかさを持って華麗に舞い降りてくる、そんな印象すら持ちました。いよいよ勇士たちが豪快にお目見えの場面。旋律の途中のジャンジャン♪をしっかりと強調して…、ここの強調、好きで好きでたまりません(笑)。ヴィシェフラトの主題が帰ってくるところはたっぷりの響き!本当に感動的な音楽。最後走りますが、3月と異なり急発進という印象は持ちません。最後まで揺るぎない堂々たるわが祖国でした!

 

 

アンコールはアルトリヒテルさん、「イルジー・ビエロフラーヴェク氏の思い出に」とアナウンスした後に、ドヴォルザーク/スラヴ舞曲第2集より第8番。個人を偲ぶように、慈しむように奏でて感動的!とても思い出に残るコンサートとなりました!

 

 

突き抜ける感動のわが祖国!全体の印象としては、3月のアルトリヒテル/プラハ交響楽団のチェコのオケの響きを堪能できた自然体の演奏と、7月のヤクブ・フルシャ/都響の本格派の骨太の演奏を足して、それを2で割らずに、そのまま足しっぱなしにしたような、チェコ・フィルのオケの響きを十二分に活かした、本格派・正統派の演奏という印象です。いつものようにターボルからブラニークで涙しましたが、今日はヴィシェフラトからヴルタヴァでも感動で涙溜め溜めでした…。大いに感動した瞬間は背中がゾクゾクするものですが、この演奏ではそれこそ、最初から最後までゾクゾクしっぱなしでした!

 

チェコ・フィルはこれまでプラハでのコンサートも含め5回聴いていますが、わが祖国の実演を聴くのは今回が初めてです。1991年の伝説のクーべリックさんとの来日のわが祖国の時は、チケット売り場に早朝から並び一番でアタックしたのにチケット買えず…、その後のわが祖国での来日公演もなぜか仕事がぶつかってしまい、聴くことができませんでした。

 

ようやく念願のチェコ・フィルのわが祖国を聴くことができ、感無量のコンサートでした!!!わが祖国だけで十分感動は約束されていましたが、やっぱり本場の本命オケは凄かった!今年は一生ものの感動を与えてくれたアルフォンス・ムハのスラヴ叙事詩の展覧会もあり(2回観に行きました)、俄然チェコ・モードの年でしたが、その最後を飾る本命チェコ・フィルのわが祖国、一生の思い出に残る素晴らしいコンサートでした!!!

 
 
 

(写真)ヴルタヴァ川の始まりに近いまち、チェスキー・クルムロフの風景。世界で最も美しいまちの一つとして知られる、世界遺産のまちです。写真中央から右手の川はもちろんヴルタヴァ川。チェコという国は、まちは綺麗、素晴らしい音楽や美術、食べ物もお酒も美味しく、チェコ讃歌にこと欠かない素敵な国です!