新国立劇場は1998年の開場から今年で20周年。その記念公演のハイライト、ヴェルディ/アイーダの公演を観に行きました。

 

 

新国立劇場

-開場20周年記念特別公演-

ヴェルディ/アイーダ

 

指揮:パオロ・カリニャーニ

演出・美術・衣裳:フランコ・ゼフェレッリ

 

アイーダ:イム・セギョン

ラダメス:ナジミティン・マヴリャーノフ

アムネリス:エカテリーナ・セメンチュク

アモナズロ:上江隼人

ランフィス:妻屋秀和

エジプト国王:久保田真澄

伝令:村上敏明

巫女:小林由佳

 

合唱:新国立劇場合唱団

バレエ:東京シティ・バレエ団

児童バレエ:ティアラこうとう・ジュニアバレエ団

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 

 

(写真)公演のプログラム

 

 

新国立劇場のアイーダは、1998年のオープニングはまだオペラに目覚めていなかったので観ていませんが、2003年の5周年、2008年の10周年、2013年の15周年の3つの公演を観ました。エジプトそのものを感じる豪華なセット、オーソドックスな演出、卓越した歌手が揃って、いずれも素晴らしい公演でした。2003年は初めてアイーダを観たこともあり、頑張って4回観たので(笑)、新国立劇場のアイーダは今回で7回目。今回は果たして、どうでしょうか?

 

 

第1幕。序曲は繊細な音楽とスケールを見せる音楽の調和。パオロ・カリニャーニさん、期待感を高める、さすがの指揮でした。幕が開くと黄金の舞台。いつ観ても素晴らしい!ラダメスの「清きアイーダ」は柔らかく歌われた歌。続くアムネリスのエカテリーナ・セメンチュクさんの歌が、冒頭から素晴らしい!綺麗でふくよかで、とても温かみのある歌。そしてアイーダが出てきた時の「彼の彼女を見る目」で声を落とす凄み!その後のそれぞれの心情を歌う3重唱を聴いて、今日は私はこの素晴らしいアムネリスを追っていこう、アムネリス目線で観てみることにしました。

 

「聖なるナイルの岸に急げ」の合唱。いつ聴いても心が湧く勇ましい音楽。最後にアムネリスが舞台中央で高らかに歌う「勝ちて帰れ」!もの凄い迫力で痺れました!第2場の祈りの場は青と黄色の幻想的な舞台。小林由佳さんの巫女の神秘的な歌が雰囲気を高めます。ここはスペースが限られる中央の踊り場でのバレエが見物。神秘的な踊りで本当に素晴らしい。最後の合唱も幻想的かつ迫力で迫ってきました。

 

 

第2幕第1場。冒頭のアムネリスの恋にときめく女心の歌、セメンチュクさん、高音も綺麗にしっとりと歌って、本当に見事です。子供たちの愉快なバレエ。拍手いっぱいもらっていましたね。この辺りは王女としてどうやってアイーダに違いを分からせてやろうかと、王女のプライドを大いに見せます。このオペラは、第4幕に向けて、アムネリスの成長の物語でもあります。ラストのアイーダの祈りの歌も良かったです。

 

第2場、凱旋の場です。豪華な舞台とは正にこのこと!こんなにワクワクする舞台もありません。注目していたのは馬が出てくるかどうか(笑)。2003年に観た時に馬が出ていて、客席がどよめいて、「おお~!」と思いましたが、2008年か2013年か記憶が定かでないですが、確か馬が出てこない時があって、「ああ~、とうとう馬が仕分けられてしまったか~」と意気消沈した覚えがあります…。今日はちゃんと2頭出てきました!20周年おめでとうございます!(笑)バレエも大勢出てきて、見応えのある踊り、最後は迫力の合唱、盛り上がりまくっていました!

 

 

第3幕。ナイルの河畔、イシスかオシリスかの顔の大きな彫像が印象的な、幻想的な舞台です。結婚の準備をするアムネリスの真摯な歌がいい!新国立劇場のアイーダのアモナズロと言えば堀内康雄さんと相場が決まっていますが、今回は健康上の理由から、上江隼人さんに代わりました。堀内さんの人間味の溢れる美声のアモナズロに対して、上江隼人さんはややシニカルな雰囲気の歌、追い詰められたエチオピア国王の立場をよく表わしていました。

 

途中、「お前は私の娘ではない!」と言い放ち、アイーダの嘆きから、短調がだんだん長調に近づいてきて、アモナズロが「疲れ切った人たちを救えるのはお前しかいないんだ」を完全な長調で歌う場面。ここの旋律は本当に好き。ヴェルディの調性の移行の素晴らしさ。今回も聴き応えがありました。

 

 

第4幕第1場。ここはアムネリスが大活躍する場面、セメンチェクさんの歌をたっぷり堪能できます。冒頭は一人の女性として揺れ動くラダメスへの想いを募らせる歌。そしてラダメスを呼び寄せ、最初は毅然と、その後は王女にも関わらず地に伏せてまでもラダメスの命を助けたいと想いを吐き出す魂の歌!そして、あくまでもアイーダへの愛を貫こうとするラダメス(マジミディン・マヴリャーノフさんも力強い歌でした)に対して、愛を怒りに変える凄みを見せる歌、もう何もかも素晴らしい!今日はここで涙涙でした…。

 

その後、ラダメスとハグをして別れ、裁判に向かうラダメスを見守り、切ない心で想いを独白する場面も見事!私、今回のセメンチェクさんの素晴らしいアムネリスを聴いて、とうとうアイーダの第4幕第1場に開眼できたかも知れません。第2場では、ラダメスとアイーダが地下に埋められる中、地上でアムネリスが祈りを捧げて幕を終えました。

 

 

 

オペラは総合芸術なので、一人の歌手にばかり注目して観るものではないことは重々承知していますが、見慣れた新国立劇場の舞台、そして、エカテリーナ・セメンチュクさんがあまりにも凄すぎたこともあって、今日はほとんどセメンチュクさん一人に魅了された形での観劇となりました。それぐらいに凄すぎた!今後こんなに素晴らしいアムネリスは一生観れないのではないか?と思うくらいに、絶品のアムネリスでした!

 

セメンチュクさんは実は昨年夏のザルツブルク音楽祭のアイーダでも観ています。この時もその歌の素晴らしさに「ここまでアムネリスに共感できたのは初めて」と書いていますが、今日で完全にアムネリスという役の素晴らしさを理解できたように思います。セメンチュクさんは、アムネリスのほかには、「ドン・カルロ」のエボリ公女、「イル・トロヴァトーレ」のアズチェーナ、「カヴァレリア・ルスティカーナ」のサントゥッツァなどを歌われています。エボリ公女なんてきっと最高でしょうね!サントゥッツァもぜひ観てみたい!

 

(参考)2017..8.19 ヴェルディ/アイーダ(ザルツブルク音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12323104468.html

 

 

 

新国立劇場の開場20周年の記念公演のアイーダ、アムネリスを中心に、とても楽しめました!オペラの楽しさを教えていただいて、私にとってホームグラウンドとも言える新国立劇場。今後30周年、40周年とますます発展していくことを期待します!

 

そのためにも、例えば、ロッシーニ/ウィリアム・テルやベルリオーズ/トロイアの人々、マイアベーア/悪魔のロベール、ヒンデミット/画家マティス、フランツ・シュレーカー/はるかなる響き(私、2000年の大野和士/東フィルのオペラコンチェルタンテを聴いています。大野芸術監督、今度はぜひオペラで!)など、藤原歌劇団や二期会などはリスクがあって採り上げにくい、でも国立の新国立劇場だからこそトライできる、比較的珍しい傑作の良質な演出での上演をぜひとも期待します!

 

また、再演の方も、せっかく再演するなら、素晴らしい公演だったコルンゴルト/死の都(2014)、R.シュトラウス/影のない女(2010)、ショスタコーヴィチ/ムツェンスク郡のマクベス夫人(2009)、ブリテン/ピーター・グライムズ(2012)、ベルク/ヴォツェック(2009, 2014)などの再演を期待します!

 
 

 

(追伸)以下は、新国立劇場で特に思い出に残っている公演の記事です。

 

(参考)2017.12.9 R.シュトラウス/ばらの騎士(新国立劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12335128563.html

 

(参考)2014.10.1 ワーグナー/パルジファル(新国立劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-11938478385.html

 

(参考)2014.3.15 コルンゴルト/死の都(新国立劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-11801177617.html