アイスランドの指揮者ダニエル・ビャルナソンさんの客演する東響の定期を聴きに行きました。神尾真由子さんのヴァイオリンも非常に楽しみです!

 

 

東京交響楽団川崎定期演奏会第63回

(ミューザ川崎シンフォニーホール)

 

指揮:ダニエル・ビャルナソン

ヴァイオリン:神尾真由子

 

ビャルナソン/ブロウ・ブライト

ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調

(アンコール)

パガニーニ/24のカプリースから第24番

 

リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」

 

  

このコンサート、大好きなショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲が入っていて、メインがシェエラザードと魅力的なプログラムですが、さらにポイントが高かったのがアイスランドの作曲家ビャルナソンさんの自作が聴けることです。アイスランドは非常に興味のある国で、以前に旅行を予定していましたが、仕事で流れてしまいました…。地球の息吹を感じさせる大自然に温泉、オーロラ、可愛いパフィン。行ってみたい国のかなり上の方の候補の国です。

 

そして、神尾真由子さんのヴァイオリン!そんなに聴いたことがある訳ではありませんが、非常に熱い演奏をするヴァイオリニストという印象を持っていて、以前にチャイコフスキーを聴いた時にも感銘を受けました。チャイコフスキー・コンクールで優勝された後も、なお攻めている感じがとても好感が持てます。今日も大いに期待できます。

 

(参考)2013.12.14 クシシュトフ・ウルバンスキ/神尾真由子/東響のチャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲

https://ameblo.jp/franz2013/archive1-201312.html

 

 

まず、ホールで座席に着くと、シロフォン(木琴の一種)が、大好きなショスタコーヴィチの第2楽章の旋律を練習で叩いていて萌えました(笑)。シロフォンのお姉さん、GJ!

 

 

1曲目はそのビャルナソンさんのブロウ・ブライト。タイトルはイギリスの詩人フィリップ・ラーキンの処女詩集「北船」に収録された詩「夜-音楽」の最終連に由来し、「明るく熾(おこ)せ」という意味だそうです。冒頭から独特な響き、万華鏡やオーロラを想わせるような音楽で、グローフェやヴィラ=ロボスをもっとモダンにしたような感じに思いました。後半はトーンクラスターが主体になります。最後は何かがバチンと切れたような音がして終わりました。なかなか素敵な曲。演奏後、オケのみなさんが作曲者(指揮者のビャルナソンさん)を讃えて、こういう光景は本当にいいですね。

 

 

2曲目はショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲。1週間前にアレクサンドル・ラザレフさんとボリス・ベルキンさんと日フィルによる円熟の極みの名演を聴いたばかりです。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2017.10.22 ラザレフ/ベルキン/日フィルのショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12321917063.html

 

 

第1楽章。神尾真由子さん、1音目からただ事でないヴァイオリン。もの凄い緊張感、一音一音に様々なニュアンスの込められた情感溢れる演奏です。前回のチャイコフスキーの時よりも、さらにスケールアップしている印象を持ちました。後半のチェレスタが何とも言えない味わい。

 

第2楽章。神尾真由子さんのヴァイオリン、もう情感を超えて、情念のヴァイオリンに聴こえてきました!低音でえぐるような音を出したり、ぐしゃっとした音を出したり、魂の込められた音。この方、表現のためなら、始めから綺麗なだけの音を出す気はさらさらないように思います。大好きなクレズメル音楽のシーンも素晴らしい。もの凄くニュアンスを込めて、よく歌うヴァイオリン。あまりにも感情を込めて、音が詰まったり、出切らなかったりする瞬間もありましたが、そんな細かいことはどうでもいいんです。何という興奮、血の通った音楽!!

 

第3楽章。この楽章、今まで後半の長大なカデンツァに気を取られていましたが、今日は前半もめちゃめちゃ素晴らしい!ヴィブラートかけまくって、泣きまくった演奏。ヴィブラート、ほとんど隣の音まで弾いているかのよう。神尾真由子さんはショスタコーヴィチの楽譜からインスピレーションを受けて、それを表現したくてしたくて堪らないんでしょうね。カデンツァも凄い!この方の表現力は一体どうなっているんでしょう?もの凄い緊張感。観客も圧倒されて息もつけない雰囲気。ショスタコーヴィチのテーマの音型DSCHを、思いっきりひっぱたくようにして強調。ショスタコーヴィチの魂の叫びに聴こえてきました!

 

そのままのテンションで第4楽章に。ますますヒートアップする神尾真由子さんのヴァイオリン!この辺り凄すぎて圧倒されて細かく覚えていませんが、辛うじて覚えているのは、東響がやや置いてきぼりにされた感があるかも?(笑)いつも通りに素晴らしい演奏ではありましたが、この神尾真由子さんの超絶ハイテンションについて行くのは並大抵なことではありません。神尾真由子さん、そのままのハイテンションで最後まで弾き切りました!凄すぎる!!!ブラーヴァ!!!

 

何という興奮と感動!!!私はこういう演奏を聴きたくて、せっせとライヴに通うのです!観客席も沢山ブラヴォーが飛んで、大いに盛り上がっていましたね!

 

アンコールはパガニーニ。魂のショスタコの後でお疲れのところ、さらっと流してもいいのに、これも大熱演でした!ブラヴォーに混じって「ありがとう!」の掛け声すら飛んでいました(笑)。気持ちはよ~く分かります。

 

個人的にヴァイオリン協奏曲の実演では、1993年にジュリアン・ラクリンさんがN響と演奏したチャイコフスキー、1999年にペッカ・クーシストさんがラハティ交響楽団と来日して演奏したシベリウス、2010年にロンドンで聴いた、五嶋みどりさんがロンドン交響楽団と演奏したメンデルスゾーン(指揮はサー・コリン・デーヴィスさん!)、以上3つがライヴでの3大思い出のヴァイオリン協奏曲ですが、今日の神尾真由子さんの壮絶なショスタコーヴィチも、それらに並ぶような、一生記憶に残る演奏となるでしょう。

 

何となくあの五嶋みどりさんに続くヴァイオリニスト、という印象も持ちました。繰り返しですが、チャイコフキー・コンクールで優勝しても、守りに入らず攻め続けて、自分の表現を突き詰めている姿勢が大好きです!もっともっと神尾真由子さんの演奏を聴きに行かなければ!と、強く思った素晴らしいショスタコーヴィチでした!

 

 

後半はリムスキー=コルサコフのシェエラザード。今年の4月にムーミンバレエで第3曲「若い王子と王女」によるバレエを観て、音楽と踊りが大変マッチして、とても感動しました。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2017.4.21 フィンランド国立バレエ団の「若い王子と王女」

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12269281751.html

 

第1曲、冒頭の金管はたっぷり間を空けて、雰囲気を作ります。この曲、ヴァイオリンとクラリネットの掛け合いがしみじみいいですね。第2曲、最初のファゴットのソロがいい味出しています。後半の展開のワクワク感も○。第3曲、若い王子と王女。冒頭の爽やかで美しい旋律が、1週間の仕事で疲れ切った身に沁みて、涙が溢れます…。最後トゥッティでは夢幻の響き、綺麗なハープの音色にオーロラが見えるかのようでした。第4曲、最後の難破のところはタップリと。スペクタクルで良かったです。昨日のラザレフ節満載の日フィルとは異なり、ビャルナソンさんの指揮は、やりこみ過ぎずに爽やかな好演。何しろ神尾真由子さんのショスタコが凄すぎたので、シェエラザードはこのくらいで十分です。全部たっぷりやられると、聴く方の身が持ちません(笑)。

 

 

ビャルナソンさんと神尾真由子さんと東響による素晴らしい演奏!たっぷり楽しむことができました!東響は今月コンサートを2回聴きましたが、相変わらずのクオリティを保っていて、本当に頼もしい限りです。土曜日の午後、心はほくほく、清々しい気持ちでミューザを後にしました。(続く)

 

 
 

(写真)アイスランドのアイドル、パフィン。う~ん、何とも可愛いこの姿、早く見に行きたいものです。

※ウィキペディアより