
二人で車に乗り、おしゃべりをしながら目的地へ向かう。そんな時間、随分と前のような気がした。妻と二人で秋の温泉旅行。素敵な時間だった。
宿泊した「深山桜庵」の上品な演出に妻も僕も極上の幸せを感じた。すべてのおもてなしに大人の落ち着いた空間を感じ、時間を忘れる非日常の舞台で二人の心はときめく。
平湯温泉についたのは12:30。ホテルに車を停め、平湯バスターミナルへ送迎してもらう。13:00発の上高地行きのバスに乗る。新穂高は午後雲行きが怪しかったこともあり、絶景が臨めないと判断した。そこで、妻の希望通り上高地行きとなった。
大正池停留所でおり、早速焼岳をバックに彼女をカメラにおさめる。穂高の雪渓をバックにもう一枚。自然歩道を歩き始めた。大正池、梓川沿いを歩きウェストンレリーフにより河童橋まで約1時間。連休最後の日、人の出は想像していたよりも少なかった。でも河童橋はいつも通りの人だかりだった。近くのホテルでレアチーズケーキを食べることにする。
彼女は全く山など似合わない女性。その彼女が「明神池って、ここからどのくらいかかるの?」と聞いてきた。
「50分くらいかな。」と、僕は答えた。彼女は甘えた声で、
「チーズケーキおいしいね。私、明神池までいってみたいな。ここから先は険しい道で無理かしら?」
「いや、そんなことないさ。道はアップダウンも少ないし、それにおしゃべりしながらいけばすぐだと思うよ」
チーズケーキの味が口の中で広がった。明神池まで出発。
ここから先は、重装備をした山男、山女がいっきに増える。背中にしょったザックについているカウベルの音も聞こえる。近年の山ブーム。アルプス登山の入り口上高地。山への憧れを彼らの背中に感じる。おしゃべりしながら行くつもりが、途中から黙って先を急いだ。少しばかり額に汗もにじんできた頃、明神橋につく。
明神池は静かだった。周囲が囲まれていることもあり水面が静で、明神岳をバックの借景がすべてさかさまに映っている。時間が止まっている。彼女はこの場所をとても気に入った。

山の夕暮れは早い。時計を見ると15:50を指している。そろそろ戻らなくてはならない。帰りも同じ道をたどり、上高地バスターミナルに着いたのは16:40だった。平湯温泉行きの最終バスは17:00発。切符を買い急いで列に並んだ。最終バスだけに多くの人が並んでいたが、松本方面のバスは驚くほどの人。東京方面は、休日を楽しんだ人の大行列。長い想い出の列ができていた。
(深山桜庵の部屋の窓越しに)
上高地はほんと素敵だ。今度はどこへ行こうか?