唐突ですがクイズです。

○バックアップ電源回路図
88VA2バックアップ電源回路図

これは、カレンダICとバックアップメモリに
・外部電源が供給されているときには外部電源から電力を供給しながら電池を充電
・外部電源が供給されていないときには電池から電力を供給し、それ以外の回路には電力を供給しない
というバックアップ電源回路の回路図なのですが、1箇所おかしなところがあります。それは何でしょう?
あ、接続点の黒丸がないとかトランジスタが丸で囲まれてないとかの、回路図表現上のあれそれは無視でお願いします。
(答えはのちほど)

さて、先日パターンの調査のために2台目の88VA2を入手したんですが、グラフィック画面が動かないと比較する意味がないのでいつもどおりNi-Cd充電池を切除した後動作チェックをしてみたところ、大体次のような症状でした。

・電源投入不可(これはオク出品時の申告事項。直接は確かめてません)
(以下1台目の88VA2から電源を借用して確認)
・V2モードのランプが光らない(V1モード,V3モードのランプは光る)
・モニタの水平同期周波数がスイッチの設定にかかわらず、勝手に15kHzになったり24kHzになったりする
・メモリスイッチの設定にかかわらず、起動時に勝手にV1モードになったりV2モードになったりする
・メモリスイッチの設定にかかわらず、ディスクから起動したり、ROM-BASICが起動したりする
・初期設定画面で本来リターンキーのマークが出ているところが黒い四角になっている
・電源を入れたままの状態でメモリスイッチの設定を変更しても、変更内容が反映されない
・カレンダ時計が異様に早く進んでいく、と思ったら次の起動では時刻が表示されなくなった

一つ目は予想通り四級塩コンデンサの液漏れでいくつかの部品がダメになってました。
・基板洗浄
・コンデンサ全交換
・半固定抵抗器(RV20)交換と出力電圧調整(+10.5V→+12.0V)
で無事電源が入るようになりました。

二つ目はLEDの点灯を制御するパターンが、液漏れしたNi-Cd充電池の電解液で腐食して断線してましたので、ジャンパを飛ばして繋ぎなおしたら直りました。

三つ目は後回しにします(後述)

四つ目~七つ目はその症状からメモリスイッチが死んでいると思われます。
八つ目はあきらかにカレンダICが正常に動作していません。
(時刻が早く進んでいくのはカレンダICがTESTモードになってしまったんでしょうけど)
そこでバックアップ電源回路周辺を調べたところ、特にパターンにはおかしそうなところが見当たりません。
本体電源を入れた状態でテスタで各所の電圧を調べてみると、
・本来充電池が付いている端子:-3.6V(え?マイナス!?)
・カレンダICの14番ピン:3.6V(…カレンダ時計の仕様は知らないけど、こんなもんなのかな?)
・バックアップメモリの電源端子:3.6V
という結果でした。

本体電源が入っているときは充電池に充電するための電圧がかかるはずなのにマイナスの電圧がかかっていることもおかしいですし、動作電圧が5.0V±0.5Vのはずのバックアップメモリに3.6Vしかかかってないのもおかしい。この原因を見つけるのに二週間もかかってしまいましたが、ようやくわかりました。

Ni-Cd充電池のマイナス端子だったランドが内部で断線してGNDと繋がっていませんでした。
つまり冒頭に載せた回路図の状態になっていたんです。
(どうしても原因がわからなかったので基板のパターンと部品の実装から回路図を起こしてみたら、どう考えてもGNDに落ちてなきゃいけない分圧抵抗の片側がGNDから浮いていたので、基板内層で繋がっていることを確認しようと実際の基板にテスタを当ててみたら、本当に繋がっていなかったという。積層基板なので+5VやGNDは内層にあって、必要な場所でそれらと繋がっているはずなんです…。充電池のマイナス端子がGNDと繋がっていないなんて設計はよほど特殊なものでない限りありえません)

Ni-Cd充電池のマイナス端子だったランドを近くのGNDに繋いだところ、三つ目~八つ目も直りました。
ここで三つ目も直ったのは意外でしたが、たぶんIPLが水平同期周波数設定スイッチの状態を読んで、バックアップメモリのどこかに書き込んでいるのではないか、と推測します。装置起動中にスイッチを切り替えても起動時の設定を維持するためでしょう。そんなことをしている理由は不明ですが、一緒に直った以上そういうことなんでしょう。【'23/02/08訂正】

冒頭のクイズの答えですが、ここまで読んでくださった方にはもう自明でしょう。
「充電池のマイナス端子がGNDに繋がっていない」が正解です。

これじゃあ、せっかく電池があってもバックアップメモリなどの負荷に電気を供給できませんね。
さらにGNDに繋がっていないために回路図の一番左にある分圧抵抗に正しく本体電源の+5Vがかかりませんから、本体電源が入っていてもトランジスタがONにならないためバックアップ系の電源ラインに本体電源の+5Vが行きません。
当然バックアップメモリにも5Vが供給されませんから、データの操作・参照はできません。
起動のたびにモードが変わっていたのはこれが原因でしょう。バックアップメモリに使われているSRAMの電源投入直後のデータは「不定」ですから…。

ついでにカレンダIC用の水晶発振子とトリマコンデンサも交換しておきましたので、時計にどのくらい誤差が出るか確認するために一晩動かしてみました。
しかし、翌朝確認してみると、また三つ目~八つ目の症状が再発しました(--;

Ni-Cd充電池のマイナス端子の例もあったので、今度は1台目の88VA2のマザーと比較しながらバックアップ電源系のパターンの導通を確認したところ、一箇所断線しているパターンがあったのでこちらも補修したところ、また正常に起動できるようになりました。
このパターン、電解液にかなりやられていたので、念のため導通確認はしてあったんですけど、動かしているうちに切れちゃったみたいです。
こんなこともあるんだなぁ。

いま、動作確認とカレンダの誤差の確認を兼ねて連続運転中です。
これで直ると良いんですが…。
この個体のメインボードは液漏れの被害も少なく(ジャンパ3本で済むなんて奇跡的と言っても良いくらいです)、状態としては1台目のメインボードよりも良いので、直るなら2台目のメインボードを使いたんですよね…。

他には、冒頭に挙げた不具合とは関係ないですが、音声出力ボードがやはり四級塩コンデンサから液漏れしてましたので、基板洗浄と四級塩コンデンサの交換を行ってます。(とりあえずメインボードの動作確認ができれば充分なので、コンデンサの全交換はしていません)
このボードに一つだけあるDUALオペアンプも液漏れの被害をモロに受けてましたが、音声端子からも一応音が出るので(ちょっとノイズ混じりな気はするが^^;)、当面このままにすることにしました。

【7/17追記】
続きは こちら

【7/17追記終わり】
 
【'20/4/18追記】
腐食が進んで表示がおかしくなったので、追加で修理しました。記事はこちら
【'20/4/18追記終わり】