0 伊尾木彗
ああ、僕は死ぬのか。
目の前で彼女が僕にナイフを突き立てるのが見える。とてもゆっくりでスローモーション映像を見ているかのようだ。銀色の刃が彼女の顔を照らす。照らされた彼女は今までにないくらい幸せそうな笑顔だった。
刃が振り下ろされる。胸に一瞬の衝撃が走り、僕は目を見開いた。味わったことのないような痛みが全身を駆け巡る。血が胸から勢いよく飛び出した。噴射される血液が一粒一粒見えた気がした。
死んだのか。
けれど、僕は意識を手放せなかった。もう痛みも何もない。
彼女の方をすっと見ると、彼女は満面の笑みで僕の口にクッキーを入れていた。
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