【設例】 いわゆる団塊ジュニア世代の会社員です。
人口減少社会の到来や、インフレの進行などが予想される中、老後資金対策をどのように考えたらよいでしょうか。
【回答】 ご質問にお答えします。
まず第一に、団塊ジュニア世代の人たちは、公的年金はあまり期待しない方がよいと思われます。
というのも、日本の公的年金制度は、世代間扶養といって、主には現役世代が納付した保険料で年金給付を賄う仕組みになっているからです。
人口ボリュームゾーンの団塊ジュニア世代が、年金を受給する頃は、年金制度を支えてくれる現役世代が相対的に少なくなるので、理屈として、今年金を受給している方々ほどはもらえなくなります。
実は、年金積立金もあるのですが、あくまで補助的なものです。
具体的に、GPIFとよばれる公的機関が年金積立金を株式市場などで運用していますが、調べたところ、運用資産額は、2022年12月末時点で約190兆円(うち運用益部分が約98兆円)とのこと。
公的年金受給者の年金総額は、令和3年度で約56兆円(年額)なので、数字から見ても、それほど大きな期待はできません。
なので、今から何かしらの老後資金対策を個人で考えておく必要があります。
対策は、主に3つ考えられます。
すなわち、
節約する
長く働く
運用する、の3つです。
1.節約する
さまざまな工夫や考え方があります。
もちろん、人により選択は異なりますが、きつくない方法・・海外旅行の計画を近所の散歩に置き換えるとか、楽しみの見つけ方を工夫するのもひとつの選択です。
たとえば国民全員が加入する年金制度がそもそも存在しなかった江戸時代、明治時代などの一般庶民であれば、海外旅行は簡単ではなく、おそらくささやかな楽しみを見つけつつ、身近な人たちで、食べ物を分け合ったりして、生き延びてきたのだと思います。
現代でも、いざという時の助け合いはできるので、家族、親戚、友人など、身近な人たちとの良好な人間関係を築いておくことは大切と思います。
2.長く働く
最も現実的な対策かもしれません。
大昔なら、健康で働ける限り、働き続けるのが普通だったと思います。
たとえば戦国時代を生きた徳川家康は、健康について研究熱心だったそうで、当時としては、かなり長生きだったようです。大坂夏の陣で天下統一を果たす70歳代まで現場で指揮を執っていたと伝わります。
食事や運動などに気を付けることは、現代でも長く働くための重要なポイントになりそうです。
3.運用する
おすすめは、上記のGPIFが取り組んでいるような長期分散投資の考え方による資産運用です。
たとえば最近よく知られるようになったインデックスファンドなどを活用すると、個人でも同様の理論で資産運用ができます。
おそらく政府も団塊ジュニア世代が、十分な年金を受取れないことは分っています。
はっきり言うと騒動になるので、遠回しな言い方をしていますが、「異次元の少子化対策」、「資産所得倍増プラン」などのキャッチコピーは、年金の問題に早めに気付いてください、というメッセージも込められていると個人的には理解しています。
なお上記3.の資産運用は、誰もが絶対にしなければならない、というものではありません。向き不向きも確実にあると思います。
上記3.はある意味、新時代の老後資金対策です。
資産運用をしない場合は、昔からある上記1.2.の対策を真剣に考えればよいわけです。
不安をあおられて、怪しげな投資商品に手を出してしまうといった問題もありますので、むやみに不安をあおる記事や勧誘などには、ご注意ください。
いずれにしても、明日の株価や為替がどう動くかは、正確には誰にも予測できませんが、団塊ジュニア世代の年金が目減りすることは、高確率で予測できます。
実際、FPとしてご相談を受ける中でも、団塊ジュニア世代から下の世代の方々は、年金はもらえないよね、と仰る方が多いです。
サバイバルのため、3つのうちいずれか(または、組合せ)の対策を今から計画しておくことをおすすめします。