ゴッドロン再び ⑧
思っていた以上に成型が上手く行ったゴッドロン。
塗装は僕が使っていた専用治具を教えたので今後良くなるはず!
後は最も重要なルアーアクションである。
今回僕がハンドメイドでは無く
外注による生産を決めた際に頭の中にあったのは
「オリジナルを超える」事。
僕が納得するまでサンプルを作成してくれる
今回の外注先は本当に熱意があって
数ヶ月でボックス大量のサンプルが出来てしまった。
ゴッドロンの繊細なアクションは感覚的な要素が多いので
アクションチェックは周りの意見は聞かず僕だけが行った。
それは今までハンドメイドのゴッドロンを愛用してきてくれた
ユーザーさんを裏切る訳にはいかないと強く感じていたのが理由。
しかし釣り人には不思議な症状があり
たとえ後発の物がどんなに優れていても最初のが良かった気がしちゃう
「初期型症候群」である
思い出の補正等もあるのだろうけど
特にウッドのハンドメイドがプラ化等の量産をして成功した例を
僕は知らない。
だから今回のゴッドロンの量産化の終着点は
オリジナルと「同じ」どころか
目指すは「オリジナルよりスゴイ!」なのである。
勿論、今回のゴッドロンも量産する上でABS(プラ)化も考えたけど
やっぱりオリジナルを再現して
さらに超えていく事を考えたらオリジナルと同じ
発泡素材しかないと思い決断。
さらにオリジナルを超える為に重要視したのは
①トリプルフックをセッティング出来る事
②飛距離が出る様に再調整
である。
オリジナルのゴッドロンは前後6番のダブルフックで
設定していて個人的は90cmのシーバスまで獲っているので
僕としては強度やフッキングには問題ないのだけれど
ユーザーさんからは
「ダブルフックはあまり売ってないのでトリプルが使いたい」や
「ダブルフックは不安」等と良く聞いていたので
トリプルフックでも極上のアクションを出しつつ
従来のダブルフックでも「アノ」アクションが出るように調整する事で
昔からのユーザーさんにも納得の仕上がりを目指す。
近年はバチ抜けパターンも人的プレッシャー化で
遠距離で食わせる展開が増えたので素材の浮力を上げて
ウエイトを増やして再セッティング。
3連結のシンキングペンシルを作る上で必ずぶつかる壁が
「テール部の浮力不足」
これは他社の3連結シンキングペンシルも開発さんは苦労したみたいで
簡単に言うとテール部にトリプルフックをつけたいけれど
浮力が足りずにアクションしなくなっちゃうから
仕方なく細軸の物やシングルフック等軽いのを付けて
「繊細なバイトを獲る為」とか最もらしい事を書いて売るのである。
しかしそれならシングルもトリプルも「両方対応」にすれば良い訳で
試しにソノ3連結シンキングペンシルにトリプルを付ければ
一発で判ってしまうのです。
話しが逸れてしまったけどオリジナルを超えるには
テール部の浮力とフック重量のジレンマを解決させる必要があるのです。
外注ファーストサンプルが届いてから今日で約2年
トライ&エラーを繰り返し
毎週の様にアクションチェックを繰り返しました。
そして遂に僕が「ゾクッ」と鳥肌が立った
極上のアクションがでるセッティングが解明したのです・・
ゴッドロン再び⑨に続きます
三道 竜也
ゴッドロン再び ⑦
再び外注生産を目指すゴッドロン
担当の方と様々な打ち合わせを急ピッチで続けた。
細かい作業指示は本当に時間が掛かった・・
ウエイトの位置や発泡素材の比重
関節間のクリアランスにワイヤーの線径等
内心「簡単には出来ないだろう・・」と思っていた。
そして1ヵ月後
僕の元に最初のサンプルが届いた。
なんて事ない様に見えるかもしれないけど
僕にとっては初めて見る「僕以外が作ったゴッドロン」なのである。
まだまだ関節周りの塗装が残念だけれど
思っていた以上に形になっていたのが驚きだった。
そして早速、楽しみ?不安だったアクションチェックへ行く。
初めて僕が僕以外が作ったゴッドロンをキャストする(笑)
なんと素晴らしい動き!!
・・
・・・
なんて事はやっぱりありませんでした。
ほぼ動かないゴッドロン
流石に1回で再現されたら自分の立場や苦労が無い。
しかし外観はかなり納得の出来である。
これは本腰入れてみる気になった!
早速僕が考え付く解決策を送り
大量のサンプルとの戦いが始まるのです。
ゴッドロン再び⑧に続きます。
三道 竜也
ゴッドロン再び ⑥
OEMに依頼する事で大量生産の希望が見え
僕は大量のサンプルをもって某ルアーメーカーへと向かった。
担当の方とサンプルを元に話しをしていくと徐々に表情が険しくなる・・
そして伝えられたのは・・
①発泡素材は素材ムラが多くエラーが出易い為、量産に向かない。
②ジョイントルアーも塗装工程が複雑で量産に向かない。
つまり出来ないって感じだった・・
仕方なく必死に探した他数社のOEMさんも
同じ様な反応だったし参ったのは
いたずらにサンプルを見せた自分も悪かったけど
しばらくして似たようなルアーをOEM側に作られる結果に・・
本当に世知辛い世の中だと心底思った。
結局、自分で何とかするしかないと分かったので
リッチやフルフラット等を製造しながら
空いた時間をゴッドロンに充てる事で
半年掛けて毎年300個程度生産する事が出来たので
これを取扱店様で振り分けて出荷していた。
毎年1月頃に注文書を送るのですが
帰ってくる注文書には
ゴッドロン ○○カラー 注文数「 」個
この「 」の個数部分に「MAX」個とか
「出来るだけ」個とか書いてくれる店舗さんが多かった(笑)
結局ゴッドロンを販売用に製造したのは6年間
毎年300個程度、つまり約2000個位のゴッドロンが
世の中にはある計算になる。
全て僕がワイヤーを手で曲げ、ウエイトを組み付け
樹脂を流して塗装してアクションチェックをして梱包したのです。
偶に「4500円もするんだから儲かってるでしょ?」とか聞かれるけど
儲かるなら毎月やりますよって感じ。
やりたくないから年に一回で300個だったのです・・
そして月日は流れて2017年・・
僕がお世話になっている、とあるメーカーさんの開発担当の方が
店に来てくれた際にゴッドロンの話しになった。
「たぶんウチなら出来ますよ」
10年前と違って今や結婚して子供もいる自分にとって
昔の様にゴッドロンを製造する時間は無い・・
確かに今でも春にはゴッドロンの問い合わせは多く頂く。
僕はもう一度、今度はOEMではなく
一緒に開発し製造してもらう事を決めた。
再びゴッドロンの生産が動き出すのです・・
ゴッドロン再び ⑦に続きます。
三道 竜也