このようにとらえることにより、株式も債券と同じくデュレーションを持つ資産として同じユニバースに加えて確定給付型年金のように確定した負債に対する同一のフレームワークで考えることができる。
ただ同じフレームワークで考えるといっても、株式はそのキャッシュフロー(教義には配当)の不確定さがあり、相対的に保守的であればより不確定さが少ない株式を選好することになる。なぜならようやく債券と同じフレームワークでとらえることが可能になったにも関わらす、キャッシュフローの不確定さが相対的に高いあるいは景気変動に伴いキャッシュフローが大きく変動するような株式は、結局のところデュレーションによる負債とのマッチングあるいは差異のマネージメントが主目的であったにもかかわらず、その手前の資産のキャッシュフローの不安定さにより、資産と負債のデュレーション管理が困難になってしまうからである。
このように考えると、リタイヤメントにあたり、負債のデュレーションを明示的に意識しようがしまいが、将来に必要とされるキャッシュフローがあるのであれば、そのデュレーションマネジメントが必要であり、その資産サイドの運用として債券と株式をデュレーションという指標で統合することができる。
そしてその際の株式としては、保守的であれば、キャッフュフローの不確定さが相対的により少ない銘柄群をユニバースとすることが必要だと思われる。
こうして株式を捉えなおしてみた場合、具体的にはどのような銘柄群がユニバースとなると考えられるであろうか。
ここでコンソル債券の価格はC/y(Cはクーポン、yは利回り)、DDM理論では、配当一定額の株価はD/r(Dは配当、rは資本コスト)、配当成長モデルの株価はD/(r-g)で表される(gは配当成長率))であることから、保守的であれば、前回までで述べた配当一定モデルに加え、配当成長モデルの期待が強い、つまり配当の増減のボラティリティが相対的に低い公益・通信・鉄道といったユーティリティーストックに加え、日常消費財の内連続増配株がその対象と考えられるのではないか。
つまり債券とこうした株式で将来の負債サイドとイミュナイズし、その余剰でより広範囲の株式インデックス投資を行うとする考えがここで登場する。これは平均-分散によるアセットアロケーションとは異なるアプローチによるアロケーションであり、寧ろ最大損失を意識したアロケーションに近いものがある。
またこのアプローチを採用する場合、いわゆるFAANG株に代表される高成長株式には債券株式統合ユニバースに入れることは難しいと考えられる。それらはその企業の将来の生み出す利益のボラティリティの高さと、その利益成長性に対する期待そのものが株価を大きく変動させるからである。
これは、MM理論や利回り革命以降(1960年代以降)、DDMからPERを基準とした株価理論(従来のDDM理論(D/(r-g))のD(配当)を利益と配当性向の積に置き換え、株価=利益×配当性向/(r-g)とし、ここから株価/利益=配当性向/(r-g)が導かれ、これにより実際の配当額とは無関係に、成長力が高いと認識されれば高いPER及び高い株価を正当化できるとする理論)によりFAANG株に代表される高成長株式の株価が正当化されてきたことと関係する。
もともとPERモデルはDDMモデルから発展してきたのであるが、PERモデルではもはや配当を考慮せず、DDMモデルにおける「将来に渡る配当成長」を、「将来に渡る高い利益成長」に読み替えてきたことを忘れ、その株価が将来に渡る永続的な高い利益成長率が配当成長に比べ主観的でかつ不安定であることを認識する必要がある。
このように資産サイドの従来の債券に加え配当モデルで評価できる株式のデュレーション及びキャッシュフローと将来時点の予測支出額から計算される負債サイドのデュレーションとキャッシュフローをマネンジメントすることで、そのレジュディアルを把握しそれを自身のリスク許容レベルと捉えることができる。その場合レジュディアル以外の資産価格の変動そのものには捉われる必要はなくなることになる。
なお利回り革命によりDDMモデルは古臭い理論と思われがちであるが、現在においてもDDMモデルは米国においてその派生モデル(例えばOJMモデル等)として進化しつづけていることを付言しておく。