このように納得できない年金積立金管理運用独立行政法人の期待収益率の考え方であるが、具体的な数値としては各資産につき、以下の数値を期待収益率としている。
尚、名目期待収益率は各資産の実質収益率に1%を加算している。
①実質短期資産=1.00%~1.47%(中央値1.31%)採用1.00% 名目採用値 2.00%
②実質国内債券=1.74%~2.21%(中央値1.96%)採用2.00% 名目採用値 3.00%
③実質国内株式=3.42%~4.28%(中央値3.72%)採用3.80% 名目採用値 4.80%
④実質外国債券=2.50%                採用2.50% 名目採用値 3.50%
⑤実質外国株式=4.00%                採用4.00% 名目採用値 5.00%
 年金積立金管理運用独立行政法人(第26回運用委員会平成21年度計画)

ちなみに平成21年度は財政再計算の年であるので、本来ならモデルの基礎数値の改定があり、それにより各資産の期待収益率の再計算などがあったはずである。
このことは、年金積立金管理運用独立行政法人第24回~34回回運用委員会議事要旨で確認できる。

ところが第35回~第36回の運用委員会で、全くこれまでの議論を元に戻し、とりあえず現行のポートフォリオを次期ポートフォリオとすると決定したようだ。

半年以上時間をかけて運用委員会で議論していたはずなのに、政治的な困難に直面すると簡単に結論を変えてしまう。これがわれわれが払い込んだ年金原資を運用している組織の実態だ。しかもメンバーは元役人だけでなく日本を代表する学者・実務者だ。こんなメンバーが想定しているポートフォリオは、全くガッツのないふわふわしたものだというのがよく分かるだろう。

形式的には、検証の結果、現行のポートフォリオを次期ポートフォリオとするのに問題無しとしたようだが、これこそ結論先にありきの典型例だ。こんなものでいいなら高い給料を払って運用委員会で議論するなど全く時間の無駄だ。

このようにして恣意的であるのに御宣託がごとき年金積立金管理運用独立行政法人の期待収益率(及びアセットアロケーション)を、あなたはなぜ自分の命の次に大事なアーリーリタイアメントの為の資金の運用に用いようと思うのか?
期待収益率であるが、年金積立金管理運用独立行政法人(第26回運用委員会平成21年度計画)は、その前提として年金財政計算における経済前提を使用していると説明している。
具体的には、平成16年度の財政再計算における経済前提(平成21年度以降の長期的な見通し)として、
①物価上昇率=1.0%
②賃金上昇率=2.1%(実質賃金上昇率 1.1%)
を挙げているのである。

その上で、各資産の期待収益率の考え方として以下の説明をしている。
①各資産とも積み上げ方式で期待リターンを推計。
②実質期待リターンは、
 国内3資産については、利潤率と実質金利(短期及び長期)・ROAが概ね比例関係にあることに着目したモデルより推計。
 海外3資産については、現地通貨ベースの短期金利に対するリスクプレミアムを過去データーから推計
③要するに、国内3資産については、利潤率がすべてのキーファクターとなり、それは経済モデルを用いて計算し、そのモデルの前提条件としてのパラメータは、国民経済計算や年金財政の経済前提と同一のものを使用しているということだ。

そもそも将来の経済状態が事前にモデル化して判明するならば、逆説的に経済状態の大きな変動はありえないが、そうしたモデルがあてはまらないのは、最近の状況をみてもあきらかであろう。

加えてモデルに使用するキーパラメターである全生産要素は、年金財政の基本前提を何の批判もなくそのまま使用しているのである。

④海外資産については、これもひどい。
海外債券・海外株式とも、円のインフレ率+円の実質短期金利+現地通貨ベースの対短期金利リスクプレミアムで計算されている。

これも、年金財政の基本前提をそのまま使用しているのである。

またリスクプレミアムについても、過去実績値をそのまま用いたり(海外債券)と思えば、過去株価は割高であったと判断(どうやって判断したかは不明)して過去実績値を1/2にしたりして、これでは全く恣意的といわざるをえない。というか意図して海外株式の組み入れの引き下げを図っているとしか思えない。

これら年金財政の基本前提の数値は、思い出してほしいが、例の「100年安心」「現役世代の平均収入の50%確保」を算出するためのものであったということである。
以前この点について年金積立金管理運用独立行政法人のトップクラスに質問する機会があったが、それは「所与」だということであり疑うことなき「大前提」であるらしい。 

100歩譲っていくら精巧なモデルであっても、キーパラメターが人為的であれば、人為的な答えしかでてはこない。
私は別に人為的な数値が悪いとは全く考えていない。ただ人為的な数値なのにもかかわらず、いかにも唯一正しい数値として扱われるのが我慢できないのだ(だいたいモデル化でいかにもこれが唯一正しい答えだとして説明しようとするものは、煙に巻こうとしか思えないというのが私の持論である)。

私には、後で説明する国内組み入れ比率>海外組み入れ比率という制限もあいまって、年金積立金管理運用独立行政法人のポートフォリオの組み入れロジックは、国内債券を組み入れのメインにするという結論が先にあり、それを正当化する目的に立てられているようにしか思えないのだ。
では資産の価格変動がベル型カーブの正規分布を描いていると納得できた場合あるいはそう信じている場合(私は正規分布しているとは思ってはいないが)、どのような数値を期待収益率・リスク・相関係数に用いればいいか考えてみる。

尚、一般のテキストやブログなどでは、こうしたベル型カーブについて何も説明なしに期待収益率・リスク・相関係数を記載している例が多く見受けられる。

これは、彼らの責任というより、現在のMPT(モダンポートフォリオ理論)が「資産価格の変動はベル型カーブの動きをとる」と仮定するということを、まるで動かしがたい大前提としているところからきているものである。ではなぜこうしたことを大前提とするかと言うと、いってしまえば、このように定義したほうが数値として処理しやすいというだけのことからきたものである。(このベル型カーブを前提としたポートフォリオインシュアランス戦略はブラックマンデーの時に全く機能しなかったはずなのに・・・)

例えるならば、人は合理的判断を行うものであるということを、経済学においては大前提としているのと同じである。(私は常に合理的な判断を行う人間など見たことも無いが)

この点については別な所で議論するとして、元に戻り現在一般的に用いられるように手法(ベル型カーブ)に沿って期待収益率・リスク・相関係数の数値について考えてみよう。

まずリスク・相関係数であるが、一般的にはできるだけヒストリカルで長期の数値を用いているケースが多い。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)では1973年から2003年の31年間の数値を用いている(年金積立金管理運用独立行政法人 第21回運用委員会 資料1
これについては大きな異論はない。いってみればこれ以上の手法が考えられないからだ(例えばある特定の期間を除外するとか、時系列的な加重付けをするとか、景気サイクル等によってスイッシングするとかといった手法も考えられなくはないが、そのような加工をすればするほど見た目はフィットするが使い物にならなくなる。=外挿内挿の問題)。

次に期待収益率はどうであろうか?
これも年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の数値をそのまま使用しているテキストや雑誌が多く見受けられるが、本当にGPIFの数値の根拠を納得した上で用いているのだろうか?

この続きについては次回のエントリーで記載する
では具体的に期待収益率・リスク・相関係数について考えてみよう。

まずその前に、ここまで説明してちゃぶ台をひっくりかえすみたいなのだが、本来期待収益率・リスク・相関係数でポートフォリオを考えるというのは、ベル型カーブの正規分布を前提にしてしまっていることに注意が必要である。

つまり本当に各資産の収益率が正規分布のベル型カーブを描いているのか?ということに対する考慮が必要なのである。

しかしながら、 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のホームページをみても、このことについて考察しているようには見えない。

例えばベル型カーブを描いているというなら、「100年に一度の危機」がなぜ頻繁に発生するか?(ブラックマンデー・アジア及びLTCM破綻・リーマンショック)について、考えておかねばならない。

こうしたことをやっていないと、大きくマーケットが動き計算の前提としていた、リスク・相関係数から大きく乖離すると、運用を停止しやっぱり預金が一番という結論としてしハメになってしまう。
(こうしたベル型カーブの詳しい説明については、タレブのブラック・スワン(特に下巻)参照のこと。)
ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質/ナシーム・ニコラス・タレブ

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ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質/ナシーム・ニコラス・タレブ

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ではお前はどうなのだという質問については、
ベル型カーブとは信じていない。ただそれに変わるうまい方法をしらないので、基本期待収益率・リスク・相関係数を用いながら、過去のワーストケース及び各資産が同時にワーストケースを描くとした場合の運用継続可能性を重視して、ポートフォリオを組んでいる(いわばコンテンジェンシープランポートフォリオというものか)
というのが私の答えである。

前段階が長くなってしまったので、具体的な期待収益率・リスク・相関係数については次回のエントリーで記述することとする。
<相関係数>
資産間の相関係数については、リスクと同じく、過去のリターンの実績から計算した値をそのまま計算上のリスクとすることが多い。

但しこれもリスクと同じく、期間の取り方によって大きく異なる。

個人的には各資産の期待収益率やリスクよりも、この相関係数をどのように考えるのかがポートフォリオを構築する時のキモだと考えている。
過去のリターンから計算された、相関係数が今後も安定的かつ継続的かということである。


これで基本的な数値はそろったので、効用関数を最大化するようアセットアロケーションを決めてやればよい。
*効用関数=ポートフォリオの期待収益率-リスク拒否度×ポートフォリオのリスクの2乗
*ポートフォリオの期待収益率=各資産の期待収益率の加重平均
*ポートフォリオのリスク=ポートフォリオの分散のルート
*ポートフォリオの分散=
 資産1の組入比率の2乗*資産1の標準偏差の2乗+・・・+資産Nの組入比率の2乗*資産Nの標準偏差の2乗+2*資産1の組入比率*資産2の組入比率*資産1の標準偏差*資産2の標準偏差*資産1と資産2の相関係数+・・・+2*資産(N-1)の組入比率*資産Nの組入比率*資産(N-1)の標準偏差*資産Nの標準偏差*資産(N-1)と資産Nの相関係数


さて我々が運用利回りを考える際、どのような数値を用い運用を考えればいいだろうか。
運用利回りの考え方であるが、ここではトレーディング等で「目標利回りxx%!!」といった希望的観測は考えない。

ここでの運用利回りとは、複数資産をアセットアロケートし長期間に渡りバイアンドホールドすることによる資産の増大から計算されるものとして考えている。

例えば年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)では、国内債券・国内株式・外国債券・外国株式・短期資金での運用とし、各資産及びポートフォリオについて以下の通りとしている。
$自由人のアーリーリタイアメント生活
(出所:年金積立金管理運用独立行政法人 平成20年度業務概況書より)
(注 年金積立金管理運用独立行政法人の各資産の期待収益率・リスクの考え方については後述)

こうした年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用におけるアセットアロケーションに必要な情報は、各資産の期待収益率・リスク。資産間の相関係数である。

ではこれらの数値はどのようにして計算されるのだろう。

<期待収益率>
おのおのの資産の期待収益率の算出方法であるが、大きく分けて3つの考え方がある。

1 ヒストリカルデーター方式
過去のデータの平均値を算出し期待収益率とする方式である。これには過去のデーターが今後も継続するというのが前提となる。またどの期間を使用するかのよって数値は大きく異なってくる。

2 ビルディングブロック方式
資産の収益率をいくつかの構成要素に分解し、個々の要素について予測値を置き、それらの積み上げを行って将来のリターンを予測する推計方式である。収益率をを各資産に共通するベース部分(リスクフリー部分)と資産間の安定的な収益率格差(リスク・プレミアム)などに分解することでリターンの構造を明らかにするため、経済的な意味付けがしやすいとされている。しかしこれには前提としてボラティリティが高いほど期待収益が高いということが前提となっている。

3 シナリオアプローチ方式
いくつかのシナリオの下での収益率を計算し、そのシナリオを加重平均して求める方式である。これはほとんどあてものだろうと考えている(いったいどうやって長期かつ客観的な数値をもとめるのだろう)。

<リスク>
各資産のリスクについては、期待収益率とは異なり、過去のリターンの実績から計算した値をそのまま計算上のリスクとすることが多い。

しかし、長期に安定していれば好ましいのであるが、そのようになってない場合、期間の取り方によって値は異なってくる。

それでは積み立て開始からの資産残高推移がどのようになるか見てみよう。

5月5日のエントリーで、積み立て期間の運用利回り4.5%で、アーリーリタイメント後の運用利回りが1.0%の場合は、積み立て開始から37年で積み立て運用総額がアーリーリタイアメント時に必要な金額を上回るケースを説明した(アーリーリタイアメント後のキャッシュフロー450万、インフレ率2%)。

この場合の資産残高推移は下記の通りとなる。
$自由人のアーリーリタイアメント生活

次からは、今まで1.0%・4.5%・8.0%としていた運用利回りを、どのようにすれば確保できるか考えてみる。
前回までは年100万円積み立てるという前提であったが、これを年150万・200万・250万と変化させていけばどうなるだろうか。

(年150万円積み立て)
$自由人のアーリーリタイアメント生活
(ブレイクイーブンポイント)
             アーリーリタイアメント後
                1.0%   4.5%   8.0%
積み立て期間 1.0%   40年    -      -
          4.5%   33年    29年    -
          8.0%   28年    23年    20年未満

(年200万円積み立て)
$自由人のアーリーリタイアメント生活
(ブレイクイーブンポイント)
             アーリーリタイアメント後
                1.0%   4.5%   8.0%
積み立て期間 1.0%   37年    -      -
          4.5%   31年    25年    -
          8.0%   26年    21年    20年未満

(年250万円積み立て)

$自由人のアーリーリタイアメント生活
(ブレイクイーブンポイント)
             アーリーリタイアメント後
                1.0%   4.5%   8.0%
積み立て期間 1.0%   35年    -      -
          4.5%   28年    23年    -
          8.0%   24年    20年未満  20年未満



積み立て時期において1.0%の運用利回りの場合には、年間150万円積み立てれば40年目に積み立て運用総額がアーリーリタイアメント時に必要な金額を上回ることができる。

しかしこれではアーリーリタイアすることはできないのである。
年間150万以上積み立てに回すことができないなら、国債金利並み(1.0%)以上の運用利回りとなる運用手法をとらざるをえないのである。


また積み立て時期において4.5%の運用利回りの場合においても、40台半ば(積み立て23年)でアーリーリターヤしたいのなら年間250万円積み立てる必要があるのである。

これは普通の勤め人にはかなり厳しい数字だ。

達成するには何かをあきらめることが必要だ。

40台半ばでアーリーリタイヤするということは、甘い考えではできないのだ。


それでは資金総額とアーリーリタイアメント後のキャッシュフローと重ね合わせてみる。

まず毎年100万円積み立て、アーリーリタイアメント後毎年450万使用するというプランだ。
$自由人のアーリーリタイアメント生活
(太線が積み立て総額、細線がアーリーリタイアメント後必要資金総額)

太線と細線がクロスする箇所が、積み立て総額とアーリーリタイメント時必要額が同額となるポイントだ(ブレイクイーブンポイント)。

具体的には、
運用利回りが8.0%の場合は、積み立て開始から23年で積み立て運用総額がアーリーリタイアメント時に必要な金額を上回る。
運用利回りが4.5%の場合は、積み立て開始から33年で積み立て運用総額がアーリーリタイアメント時に必要な金額を上回る。
運用利回りが1.0%の場合は、残念ながら積み立て開始から40年たっても積み立て運用総額がアーリーリタイアメント時に必要な金額を上回らないのだ。

また積み立て時期には、運用利回り4.5%で、アーリーリタイメント後の運用利回りが1.0%の場合は、積み立て開始から37年で積み立て運用総額がアーリーリタイアメント時に必要な金額を上回る(黒太線と紫細線の交わるポイント)。
積み立て開始から37年というのは、大学卒業後働き始めると60才という年齢になるので、このケースがアーリーリタイアメントではない通常のリタイアのケースとなろう。

したがってアーリーリタイアしたいと考えるならば、
①上記より積み立て金額を増やすか、
②運用利回りを増やすか、
③アーリーリタイアメント後の支出を減額するかすればよい

積み立て時期とアーリーリタイア後の運用利回り別ブレイクイーブンポイントを超える年数は以下の通りとなる。
             アーリーリタイアメント後
                1.0%   4.5%   8.0%
積み立て期間 1.0%   40年超   -      -
          4.5%   37年    33年    -
          8.0%   31年    27年    23年
(-というのは、運用利回りがアーリーリタイアメント後>積み立て期間中というのは考慮外としたことによる)

では、
積み立て時期において1%の運用しかやりたくない、
あるいは同4.5%で運用してもいいがアーリーリタイアをもうすこし早めたい
場合にはどうすればよいだろうか?


さて住居も含めてアーリーリタイアメントの単に必要な資金総額が算出できたとしよう。

次にはどうやってその資金を蓄積するかである。
前述した通り、ドロップシッピングやFXや株式の短期売買で稼ぐことは考えていない。
働きながら無理なく資金を蓄積していく為の方法である。

考え方はアーリーリタイアメント後のキャッシュフローの計算と同じである。

仮に年100万・20年間積み立てていくとする。
運用利回りが国債の金利並みの利回り(1.0%)の場合資金総額は2200万強となる。
株式並みの8.0%で運用した場合の資金総額は、5000万弱となる。
株式と債券和半のポートフォリオを組んだ場合の運用利回り(4.5%)における資金総額は、3300万弱となる。

又積み立ての年数を延ばしていくと、以下の通りとなる。

                  運用年数
                    20年     30年      40年    
運用利回り 1.0%の場合  2200万弱   3500万強   5000万弱
運用利回り 4.5%の場合  3300万弱   6400万弱 1億1000万強
運用利回り 8.0%の場合  5000万弱 1億2000万強 2億8000万弱


$自由人のアーリーリタイアメント生活

では、これとアーリーリタイアメント後のキャッシュフローと重ね合わせるとどのようになるのだろうか?