「離婚後の保険証」必要な手続きの注意点から保険料の節約方法まで

※はじめに本ブログの情報は、2024年5月末時点のものですので、ご注意ください。

 

 

離婚検討中の貴方は、

「子供を含め離婚後の保険証ってどうなるの?」

「離婚後、健康保険(国民健康保険)の手続きいつ、何をしたらいい?」

「離婚後新たにかかってくる保険料っていくら?」

という相談したいけど誰にでも相談できるわけじゃないお悩み、お持ちではないですか?

それ、本ブログで解決できます!

 

 

本ブログは、

1日本の公的医療保険制度について

2知らないと損をする健康保険の扶養制度

3離婚後手続きが必要と考えるケース例

4離婚後必要な手続き方法&期限

5新たにかかる保険料額の試算

6FPによる節約方法

 

という順で説明を行います。

 

先ず、基本の日本の医療保険制度についてご説明します。次に離婚後ご自身を守るためにお得な健康保険の扶養制度を学んでいただきます。更には離婚時に手続きが必要なケース例をお伝えし、加えて実際の手続き方法とその期限に触れていきます。そして、実際に係る保険料額について考察したうえで、最後はFPから節約方法を本ブログでお伝えします。

これにより、離婚後の保険に不安を抱く貴方が、一読後には、必要な情報を得ることで、その不安を解消し、結果として新しい未来の生活を思い描くことができるようになります。

 

 

なお、収入に関して「男性>女性」の構図が日本には色濃く残っていますので、経済的弱者となりがちな女性側を応援する形で今回記述させて頂いておりますので、あらかじめご了承ください。

 

 では説明に入ります。

1 日本の公的医療制度について

 

 

 

  日本の医療保険制度において保険は、2種に大別されます。1つは公的保険と言われるジャンル(健康保険、国民健康保険、公的年金保険、介護保険)ともう一つは民間保険(生命保険、損害保険)です。

双方記述するとページ数が多くなるので、今回は、1つ目の公的保険に絞り記述します。

とは言え、契約に身に覚えがある皆様は、離婚というライフイベントにより、民間保険も受取人や補償内容の変更など必ず見直しと手続きが必要であることはお忘れなく。そして、それは私の経験からも本当に大変なため、離婚後に速やか且つ効率的に手続きすることをお勧めします。

 

 公的保険の中で医療に関するものは、昭和36年に国民皆保険制度が創設され、現在のわが国の基礎が固まりました。戦後、日本国民が一定誰もが必要な医療を受けられることを目標に始まっています。保険という仕組みを取る以上、加入者が保険料を支払い、その集めたお金で、必要な方へ給付されるようになっています。保険を運営するものを保険者と言い、主なものでは健康保険組合や国民健康保険、国保組合、後期高齢者医療保険など約3000の保険者が存在します。皆保険である以上、日本国民は、制度上生活保護受給者以外の方は、この約3千ある中のいずれかの保険に加入せねばなりません。

 

 同じく国民皆年金制度があります。奇しくも同じく昭和36年に始まっています。国民誰もが老齢・障害・死亡時に必要な給付が受けられるようにとその理念の下に創設されました。年金も保険という仕組みで運営しています。よってこれも加入者が保険料を支払い、その集めたお金で、必要な方へ給付されるようになっています。ただし、医療と違い、年金制度は3層構造となっており、一層目の国民(基礎)年金は、国(日本年金機構)が運営し、否応なく国民全員が加入させられています。2層目以降は、職業や自分の選択により加入し、備えるものとなっています。

 

 次に介護保険制度です。私が社会人になった翌年の平成12年から始まりました。それまで高齢者の介護を福祉で対応していましたが、急速な高齢化の進展により、将来サービス提供先が不足し、何より資金源の枯渇化することが目に見えていたため、新たに保険という制度で運用を開始したのでした。基本的には40歳以上の皆が加入し、保険料を納めることとなります。保険者は、全国の市区町村となっています。

 

 今回メインの医療に関する保険は、国民皆保険の旗印の下、国から加入が義務付けられています。このため、社会保険は民間等が運営していますが、その一旦を担うため、公的医療保険のグループに分類されます。もちろん、保険である以上もしもの時、貴方や家族の命を守ってくれることになります。ただし、保険料を正しく納めているのが前提です。納めていないと適正な給付が受けられない場合がありますのでご注意ください。

 

 

2 知らないと損をする健康保険の扶養制度

 

 

 

 

繰り返しますが、医療保険は、保険である以上、加入者が保険料を支払わねばなりません。

一般的に保険に加入する人が多くなれば、多くなるほど保険料は高額となる仕組みとなっています。そうでないのが、実は健康保険です。扶養という仕組みがあり、扶養という形で保険に加入するとその人数が増えても、保険料額は変わりません。よって、養う家族が多いのであれば、当然加入に一定要件がありますが、医療だけで考えれば、この健康保険に加入するのが良いでしょう。

 

 

 

要件は、一定規模の企業(従業員数101名以上の企業※2024年10月から51人以上)等で次の要件を満たすこととなります。

・雇用継続見込み2ヶ月以上

・学生でない(休学中、定時制、通信制の方は加入対象)

・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満

・(基本給と手当の合計額である)賃金が月額8.8万円以上

 

また、扶養として認められるために次の3要件が課されています。

1.生計同一要件

  A生計同一(別居でも可能)

   直系尊属 配偶者 子 孫 兄弟姉妹

  B同居かつ生計同一

   三親等内の親族 配偶者の父母 配偶者の子  

2. 収入要件

  ・被扶養者(扶養される人)の年収130万未満

  ・高齢(60歳以上)又は障害者 → 被扶養者(扶養される人)の年収180万未満 

 かつ 被保険者(加入者)の1/2未満の収入であること

3.後期高齢者医療保険の対象外であること

 

 

これらを満たすことで毎月の保険料を節約することができます。離婚に関わらず、日本に住む以上、保険と年金・税金から逃れることは出来ないため、これを機に学び、知っておく必要があります。特に離婚後、生計を立てる際にこれらの知識は必須となります。

 

 

離婚後手続きが必要と考えるケース例

 

 

 

 

離婚後、医療保険で手続きが必要となる主なパターンは次の通りです。

 

パターン1 夫:社会保険、妻と子:夫の社会保険(扶養)

昭和的な夫が稼ぎ、妻は専業主婦、子供も夫の扶養(離婚後子供は妻が引き取る)の例です。

離婚により、妻と子を配偶者はもはや扶養とすることはできません。夫から会社を通じ、健康保険等を脱退する手続き(資格喪失)をしていただく必要があります。しかし、子の手続きにより会社に離婚の事実を知られることとなるため、手続きが億劫となり、遅延トラブルが生じがちです。最悪、こちらから戸籍謄本等を会社に送りつけてやるぐらいの覚悟を持っておきましょう。

 

パターン2 夫:社会保険、妻:社会保険(夫と別)、子:夫の社会保険(扶養)

現代風の共働き世帯です。しかしながら、子供が相手の配偶者の扶養として保険証を持っている場合です。これも比較的多いかと思います。ご自身の社会保険にお子さんを扶養として迎える場合、子供の保険証の手続きが必要です。

 

パターン3 夫:社会保険、妻:国保、子:夫の社会保険(扶養)

パターン2との差は、自分が社会保険でなく国民健康保険(以下、国保と略します。)である点です。同様にお子さんを自分の国保に迎え入れる場合、手続きが必要です。なお、社会保険と違い国保に扶養の概念はなく、加入者が増えれば増えるほど料金は高くなるため、注意が必要です。

 

パターン4 夫・妻・子:国保

パターン1に近いです。差は、社会保険でなく国保である点です。自営業者の方や、退職され75歳未満である比較的高齢の世帯の方などが考えられます。社会保険との違いは、相手の力を借りず、こちらで手続きが可能です。離婚により世帯を分離し、新たに国保の世帯を構成する必要があります。

 

 

なお、勝手に行政等が手続きを代行してくれることは今のところありませんし、そのまま放置も出来ません。覚悟を持ち、手続きを完了させることが必要です。

社会保険の場合、半分保険料を会社が負担してくれていることもあり、会社を通じ、保険者に手続きをしてもらうことが大多数です。

国民健康保険の場合、当事者で手続きが可能です。とはいえ、社会保険から国民健康保険へ移る場合、社会保険の資格喪失届が必要です。このように、現在又は未来に社会保険であるなら、社会保険においても一定の手続きが必要となってきます。

 

 

離婚後必要な手続きとその期限

 

 

 

事由発生(離婚成立)後、14日以内に手続きが必要です。(法定)

躊躇は不要です。

大事なことは役所等に何度も足を運ばないようにするため、可能な限り他の手続きとまとめて実施できるよう準備をしておくことです。

ただし、遅れたからといって、処罰されたとは聞いたことがありません。

もしもの時に貴方が損をするだけです。しかしながら、それは未然に防ぐのが賢い生き方だと思います。

 

 

 

新たに掛かる保険料

 

 

 

 

離婚により1世帯であったものが、2世帯に戻るわけですから、保険料も2世帯分かかってきます。よって、新たにどちらかが保険料を負担せねばなりません。しかも、前述の国民皆保険、皆年金制度のため、否応なしに強制です。年金と保険のWで新たに保険料がのしかかってきます。

事例に沿い、保険料を算定してみましょう。

よく相談を受けるケースは、やはり専業主婦(パートで旦那の扶養の範囲内で働いている)で離婚をご検討の方です。

考えられるのは、

1 離婚後パート等を始める

2 離婚後自営・フリーランスとして働き始める

 

 

仮に本人35歳、長男10歳、次男6歳の3人世帯とさせていただきます。

養育費は月5万を元配偶者からもらう予定

住民税非課税世帯の限度枠いっぱいまで働いた場合、一体いくら保険料が新たにかかってくるのでしょうか?

 

1 パート等を始める(社会保険に加入)

大阪の協会けんぽに加入している会社にパートとして就職を予定。

※協会けんぽ(大阪)令和6年度 35歳=介護2号非該当

住民税非課税限度枠(上記例の3人世帯では年間136万の所得)ギリギリまで働いたとしたら

給与収入204万(月17万)→8,789円×12=105,468円/年 新たに掛かります。

子供たちは扶養の制度を利用し、保険料は追加でかかることはありません。

 

★離婚後、がっちり働けないなら、住民税非課税限度枠まで働くようお勧めする理由については、過去のブログ「検証】離婚後、児童扶養手当を貰いながら最も賢く働く方法」に記しています。(リンク先が開きます)

 

 

2 自営・フリーランスを開始

自営業、フリーランスの場合、同業種の保険組合又は国保に加入することとなります。保険組合に入れれば良いですが、入れない場合は、国保に加入することとなります。国保は、前年の所得に対して保険料がかかります。

離婚前の前年の所得が0円(完全な専業主婦)だとすれば、上記3世帯員のケースで大阪市の国保の場合55,353円/年ですが、2年目は注意が必要です。地方自治体が運営しているものは、住民税額をベースとするものが多いため、住民税が一年遅れの算定であるため、それに引きずられ、1年遅れとなっています。国保もそうであるのでご注意ください。

因みに離婚年がおよそ1の収入(住民税非課税限度枠ギリギリの所得)だったとすれば、翌年度の保険料額は208,052円/年です。社会保険と違い、更に子供二人分が追加され、驚愕の264,010円/年となります。ここで社会保険の(半分会者が負担してくれている)凄みを感じることとなります。

 

 

 

参考となれば幸いです。

 

 

FPからの保険料の節約方法

 

 

次に保険料の節約方法について考察いたしました。

 

【社保の場合】

 

1 4月から6月の残業を控える

 あくまで可能であれば!実は、社会保険料の金額は、毎年4月から6月に支払われた給与等に対して年間の保険料額を決定します。よって、単純に4月から6月給料を抑えることができれば、お得となります。(今後サラリーマンを続けるのであれば、そのように毎年努めましょう)

ですので、4~6月の間は、休日出勤や深夜勤務は避けましょう。

 

2 家から近い会社に勤める

 税金の計算では通勤手当は非課税です。

一方、社会保険料の計算では通勤手当も含めて考えます。ですので、同じ給料をもらっていても、一般的に「遠方」から通勤している人ほど社会保険料が高くなります。これから就職を検討しているのであれば、家のご近所にある企業に就職を節約のため、一度は考えてみてください。

 

3 普段もらう手当額を減らす

 普段もらえる手当額を減らすとおのずから保険料額も低くなります。

上の2に付随して思い切って引っ越しを考えているならば、高い物件でなく、少し安めの物件を選び、住宅手当額を減らすことで保険料も減額に努めましょう。また、出張手当も保険料の算定に含まれますので、オンライン等で回数を減らすことで、保険料額の節約となることでしょう。

 

4 企業型確定拠出年金を行う

 企業型確定拠出年金の中では、従業員が「給与の一部を減額して掛金を出すこと」を選べるものがあります。掛金相当の給料はなかったこととされるので、この費用相当額については社会保険料がかかりません。

 当然、毎月の手取りは少なくなりますが、社会保険料を節約しつつ、節税&投資ができます。ただし、企業型確定拠出年金は、解約しても60歳を超えないと引き出せないので注意が必要です。

 

5 会社から普段の給与支払いを減らし、退職金として後でまとめて支払ってもらう

これもハードルが高いかもしれませんが、退職金には社会保険料がかからないため、そのようにしてもらうと保険料を抑えることができます。会社自体も社会保険料の支払いを節約できるので、実施している企業もあります。

 

(番外) 副業し、赤字の場合

 最近は、副業も可能な会社が増えてきました。副業で所得がマイナスであれば、確定申告にて損益通算し、本業の給与所得を減らすことができます。保険料額は、残念ながら下がりませんが、所得税と住民税額を減らすことができます。
 

 

【国保の場合】

国保には、社会保険には無い減免制度があります。

市町村国保の場合、社会的弱者の方へ独自に減免制度を設けています。

ただし、大阪府内の市町村は減免制度が統一され、残念ながら次の4つとなっています。

(①所得減少減免、②災害時減免、③拘禁減免、④旧被減免

中身を細かく知る必要はありません。FPが見る限り、離婚時に利用できそうなものは、残念ながら大阪では正直ありません。料金は高いし、減免もあるとはいえ、使えない。私が医療保険に関して社会保険を強く薦める理由です。

 

ですが、減免とは別に軽減制度があります。軽減適用ギリギリの範囲内に収入を抑えるのも一つの手であります。7割、5割、2割の軽減があります。本人35歳、長男10歳、次男6歳の3人世帯で2割軽減のラインまで働くと大阪市の場合、226.5万となります。しかしながら、これだと前述の住民税非課税限度枠を超過し、様々な恩恵を受けれなくなるため、3人世帯の所得であれば年間136万までに抑えましょう。

ちなみに年間所得226万で上記三人世帯の大阪市での国保料額は、2割軽減を適用しても年間416,559円です。

 

なお、自営業者の場合、経費を多くし、所得額を減らすことで保険料を抑えることが可能です。税理士等へ相談し、毎年そのように努めましょう。ちなみに非課税やマイナス所得にすると銀行等の融資を受けづらくなるので、それなりにプラスであると良いでしょう。

 

 

まとめとしては、社保・国保の双方に共通してお得となりそうなものは、『確定拠出年金』のみです。

 

①社保において、『確定拠出年金』は、給与の一部を減額して支払いをするものであれば、いわゆる収入が減ります。収入が減ると必然と所得が減るので、保険料の算定に影響を及ぼします。所得が減ると連動して保険料も減ります。ただし、『確定拠出年金』として投資するその分、手取りが減りますので注意して毎月の掛け金を設定してください。

 

②国保は、あくまで年間所得を基本に保険料を算定します。税金のような控除(個人的な必要経費を認め、税金を安くする)の概念は、哀しいかなほとんど適用されません。よって、有名なふるさと納税の寄付金控除や医療費控除も保険料の算定において認めてくれません。自営業者やフリーランスの方の『確定拠出年金』は、小規模共済等掛金控除に該当し、全額所得控除になります。所得控除が増えたからと言って、国保の保険料は下がりませんが、所得税と住民税において大きな節約をもたらします。

 

これが強いて言うならば共通してお得となりそうであることの理由になります。

 

 

 

いかがでしたか?

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

お力になれれば、幸いです。

また良ければ、次回お会いしましょう。

 

なお、今回も「離婚マネーアドバイザーFP.Daiki」のX(旧Twitter)(リンク有)の補足です。

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【執筆者】離婚マネーアドバイザーFP.Daiki

・AFP

・社会保険労務士有資格者

・年金アドバイザー2級

・離婚カウンセラー

産後クライシスを乗り切れず、離婚。離婚を機に「同じ苦しみを味わう人を救いたい」という思いで再起。

現在は、家計診断・勉強会・個別サポートでお客様の離婚×お金の問題を二人三脚で解決しています。