
多くの企業が働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中で、
実際に現場ではどのような変化が起きているのでしょうか。
とくに注目されているのが、業務効率化の進展による「残業時間の変化」です。
表面的には「全社的に残業が減っている」といった成果が謳われることもありますが、
職種によってはその恩恵に差があるのではないか――そんな仮説をもとに、
今回は事務・アシスタント職と専門職という2つの職種を比較しました。
この分析は、面談サポートツール「Goodモチベーション」(https://good-motivation.com/)
に蓄積された数万人規模の回答データから、一部(アンケート回答数)を
サンプルデータとして抽出・集計したものです。
職種ごとの残業時間の変化傾向をもとに、
業務効率化の「実効性」と「偏り」について考察していきます。
業務効率化が生んだ残業時間の変化:全体像と比較視点
業務効率化の効果が真に測れるのは、現場で働く個々人の「残業実態」です。
今回のサンプルデータでは、対象者を事務・アシスタント職と専門職に分け、
それぞれ以下の4つの項目で残業時間の変化を回答してもらいました。
1. 以前も現在も残業は少ない
2. 以前も現在も残業は多い
3. 以前より残業が減った
4. 以前より残業が増えた
この分類を用いることで、単なる「残業の有無」ではなく、
「変化の方向性」まで可視化しています。
以下が、2職種における傾向をまとめたグラフです。

職種別の残業時間変化割合(サンプルデータに基づく)
このグラフから読み取れるように、全体として「以前も現在も残業が少ない」
と回答した割合は事務・アシスタント職の方が高く、
「以前も現在も残業が多い」と回答した割合は専門職の方が高くなっています。
一方で、「以前より残業が減った」または「増えた」といった“変化”を感じている割合は、
両職種ともにほぼ同等であるという興味深い結果となりました。
事務・アシスタント職に見る、定型業務の効率化効果
まず注目したいのが、事務・アシスタント職の約52%が「以前も現在も残業が少ない」と回答している点です。
これは、日々の業務が比較的定型的であり、ITツールやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などを導入しやすい業務内容であることが背景にあると考えられます。
請求書処理やデータ入力、スケジュール調整など、属人性が低く、業務プロセスが明確な作業は、
ツール化やマニュアル化が進めやすい領域です。
こうした業務に従事する人材は、早期に業務効率化の恩恵を受けやすく、
結果的に残業時間を抑えることができていると推察されます。
加えて、「以前より残業が減った」と回答した人の割合も約22%に達しており、
業務改善の取り組みが一定の効果を示していることが見て取れます。
一方で、「以前より残業が増えた」と感じている層も14%存在しており、
効率化の対象から漏れた業務や、ツール導入に伴う新たな対応業務
(例:システム入力作業の煩雑化など)による“逆効果”も無視できません。
専門職に残る、効率化しきれない構造的課題
対照的に、専門職では「以前も現在も残業が多い」と答えた人が26%と高く、
業務効率化が十分に波及していないことがうかがえます。
専門職は高度な判断を要する業務やクリエイティブな仕事、研究開発など、
個々の知識やスキルに依存する「非定型業務」が多いため、効率化のハードルが高い職種です。
ツール導入によって一部の業務が軽減されたとしても、それが根本的な負荷軽減にはつながらず、
むしろ「ツールを扱うための教育・調整業務」が新たに発生するケースも少なくありません。
加えて、業務量が多岐にわたるため、業務全体の見通しが立てにくく、
結果として残業が慢性化しやすい傾向があります。
それでも「以前より残業が減った」と感じている人が22%いる点からは、
一部では効率化の効果が現れ始めていることも事実です。
たとえば、専門職の中でも資料作成や情報収集といった周辺業務においては、
AIやナレッジベースの活用が進んでおり、こうした領域での効率化が残業削減につながっている可能性があります。
業務効率化は「成果」より「分布」で見る時代に
この結果から見えてくるのは、「業務効率化は一律に恩恵をもたらすものではない」という現実です。
職種や業務の性質によって、その成果は大きく異なり、特定の層には効果的でも、
他の層ではむしろ負担が増してしまうこともあるのです。
たとえば、事務・アシスタント職においては、業務効率化による残業減少という成果が
「広く浅く」浸透しているのに対し、専門職では「深く狭く」、限定的にしか浸透していない印象です。
このように、業務効率化の取り組みは「成果そのもの」よりも「成果が誰に、どのように分布しているか」
を丁寧に観察することが求められます。全体平均での「残業減少」だけを見て安心するのではなく、
効率化の恩恵から取り残された層に焦点を当て、きめ細やかな対応が必要なのです。
最後に:これからの業務改善は“現場視点”と“職種特性”を前提に
今回の分析からは、業務効率化の進展が職種によって異なる結果を生んでいることが明確になりました。
特に、「残業が減った人」と「残業が増えた人」が一定の割合で混在していることは、
業務改善が“万能薬”ではないことを如実に物語っています。
重要なのは、業務の特性と職種ごとの違いを理解し、それぞれに合った施策を講じることです。
たとえば、定型業務が多い部署にはツール導入を、非定型業務が多い職種には業務の棚卸しと再設計を。
それぞれの現場に合わせた「カスタマイズされた効率化」が、これからの時代に必要とされる視点といえるでしょう。
面談サポートツール「Goodモチベーション」では、こうした実態を可視化し、
個々の職場に応じた改善提案を行うことが可能です。
今後も引き続き、サンプルデータをもとにリアルな職場の声を分析し、
より精度の高い組織改善に貢献していきたいと考えています。

