第三話 消失
その後、異質は笑いながらその場を後にした。視界から完全に姿を消すと硬直の解けたディンはサテラを抱え街へと戻る。その道中、ディンの呼びかけにも応じず、不安ばかりが募っていく。
「サテラ、サテラ!…っ」
しかしサテラは家出中の身であるため城に戻すわけにもいかない。よって実家に戻ることとする。裏口のドアを乱暴にけり破ろうとすると中から複数の人の声が聞こえた。そっとドアの方に耳をやる。
『…ら、今どこにいるのかと』
『おかしいわねぇ、耳が遠くて聞こえないわ。フィル、通訳お願い』
『はーい』
『って話を聞いてくださいと言っているのではありませんか!聞く気、無いでしょう?!』
『お母さん、この人、なんで分かりきっていることばかり聞いてくるの?』
『お馬鹿さんなのよ』
どうやら普通のお客のようだ。ドアを蹴り破るのをやめ、静かに引いた。二階への階段を上ると先ほどの会話から逃れた親父がリビングで胡坐をかいていた。
「おー、おかえり。今、下に行かない方がいいぞ、ってどうした」
カーストは帰ってきた二人の子を見て顔を引き締めた。こういうときの親父は大半頼りになるのだ。サテラを自室の寝具に横たわらせた後、それに甘えて森での出来事を簡潔に述べる。言った後には呆れてディンを殴った。少し腫れていた。殴られたところを片手で覆い隠すように添える。
「何で勝手に連れて行った」
「…久々に外に出てきたから馴染みの場所に行くのもあり、かと」
「確かに悪い事じゃねぇ。だが、危ない目に合わせるなっていつも言っているはずだが」
「…」
「好きな子ぐらいはちゃんと守れ」
「は?」
驚愕の事実である。首を傾げるどころか開いた口が塞がらない。その反応を見てうんうんと頷く親父を見てどうやら誤解されているらしい。思わず親父の両肩に両手を乗っけて上下に揺らした。しばらく揺らしていると目を回したらしく頭が激しく揺れた。ぱっと手を離すと重量感のある音と共に後ろに倒れた。
「な、なにする…き、気持ち悪」
「あ、ごめん。頭を冷やそうと思って思わず」
「思わずじゃない!絶対わざと!!」
さっきまでの親父はどこかに消えてしまい、いつものお気楽な親父に戻る。自室の戸を開けると先ほどより落ち着いた寝息が聞こえた。それを聞いて安堵のため息を漏らす。サテラのいる寝具に近づく際に手身近にあった椅子を寝具のそばまで引き寄せる。そこに軽く腰掛け顔色をうかがい、顔にかかった一筋の髪の毛を払いのける。よくよく見ているとくすぐったそうに見えた。微笑すると自室の部屋を整え始めた。普通の少年の部屋の中でも綺麗な方なので整えるのに時間はあまり消費しなかった。本棚、机、寝具、クローゼットなどといった必要な物しかそろっていない二階で最も夜景が美しく映える場所だ。閉じていたカーテンを移動させると望遠鏡で見える夜景より美しいのではないのかと思えるほどの星空だ。夜の光が差し込むにつれ彼女の顔に差し掛かる。昼間とはまるで別人のように美しく映えた。月の光を帯びる漆の髪が特徴的だ。ディンはそれが見惚れていることだと分からずに眺めていた。
「あ、兄ちゃん…。お母さんが夜飯だって」
本当にタイミングの悪い弟である。ディンはサテラに近づけていた顔を上げ、弟を見る。口角を不敵に上げている。その様子に理解しがたいので思わず首を傾けた。そして弟は急ぎ足で階段を駆け下りていった。何か嫌な予感がしたために弟の後を追う。
「あ、兄ちゃんが、姫様に不埒なことを!!」
「どこでそんな言葉を覚えた…!」
悪影響を与えてはいけないというのはこのことである。
肩を下げて降りてくると先ほどのお客はまだいた。置かれた紅茶に手を付けていない。自分より同年かそれ以下に見える幼い容姿の男、しかし服はきっちりとした軍隊服である。そのギャップによりそれ相応の雰囲気を保つ。その人はディンを睨みつけてきた。もちろん彼とは初対面なわけで睨まれる理由が知れない。
「あら、ディン。ご飯さっさと食べて」
「母さん、あの人…」
「軍隊の中尉らしいわよ?なんでも姫様の居場所が知りたいそうよ」
母は顔をしかめてディンを見やる。おそらく家出について城の中では騒がれているのだろう。そして縁のゆかりのある場所を探してここに来たのだ。母がサテラのことを姫様なんて言うときはサテラをかばっているときにしか使わない。ディンも母の話に乗っかり誤魔化すことにした。そして彼に近づいてみることにした。
「こんばんは、中尉さん。お疲れ様です」
「あ、あぁ。どうも…」
聞いてみるとハスキーな声だ。ちょっと訛っているのが地方の出身だろう。
「貴方がディン・オールビー殿でしょうか?」
「そうですが…、俺に何か用でも」
「単刀直入で申し訳ないのですが
貴方様の…幼馴染であるこの国の姫、サテラ姫様の行方を知っておいでですね
話をお聞かせください」
どうやらとても面倒な男のようだ。
おはようございます
日曜日、AGF(アニメイトガールズフェスタ)に行っていました
ものすごく盛り上がっていて
一万近くは使ってしまいました・・・
自重しなければいけませんね
ではまた日曜日、