第二話 嵐の前触れ
久しぶりの幼馴染が自分のお店の入り口で立っている。それはどんなに奇妙な光景なのだろうか。民家にそぐわない雰囲気を保ち、銅像のように美しく育っていたからだ。例えるなら、何年も会ってない友達から急に泊まりに来たようなものだ。苦笑しつつも彼女に再開の言葉を贈った。
「おぅ、久しぶり」
サテラは呆けていた。何かおかしなことでも言っていたのか、と改めて考えるも見当がつかない。しかし呆けたのは一瞬だ。すぐさま目を輝かせ、笑みを浮かべる。
「ディンは相変わらず真面目だね」
「そういうお前は相変わらず突発的な行動をするな…」
二人はお互いのことを覚えていたことに笑いが込みあがる。昔の事なのにまるで昨日のことのように思い出せるという感覚を味わえた気がする。二人の笑い声に気付いた父親が店の入り口に駆け寄ってきた。
「おーい、どうかしたのか?ってあぁ!サテラちゃん、お久しぶりだね」
「久しぶりです、カースト小父さん」
大きく自らの歯を見せつけるとデレデレになる。
「遠慮なんざいらねぇよ。家のようにくつろいでくれ。マキノ、お茶出せ」
そういうと母親の元へと向かい、お茶をせびる。何事かと母親も奥から顔を出すと目を見開き、口に手を当てた。
「あら、サテラちゃん!いつの間に来たのよ、連絡ぐらい入れなさいよ」
「久しぶりです、マキノ小母さん。急に決めてしまったので…」
「それにしてもとても綺麗になったわね。おばさん、羨ましいわ」
「いえいえ、そんな…」
母親はサテラと会ってとっても嬉しそうに微笑む。自分の家族の中で母親は唯一の女性なので、サテラには娘のような愛情があるのだろう。サテラは母親からのお世辞に照れつつも嬉しそうだ。端から見れば仲良く談笑する娘と母親のようにも見える。娘の方はこの国の姫君だが。そんなことを考えているうちにサテラは席に座り、母親は彼女と家族のための朝食を作って行った。
「…まぁ、ゆっくりしていけ」
「やっぱり何も変わってないね、此処って。安心した」
「騒がしい家族だけどな」
「家庭的で自分の家より安心するよ」
その一言を発するとさっきまでの表情とは一変して目を細める。昔から城暮らしとなると一般市民と同じ生活を送ることは出来ない。しかし度々自分の家にやってくるサテラには此処が逃げ道のようになっているかもしれない。本来王族が市民と戯れるのはご法度なのだ。王族は市民から崇められる存在でなければならない。なぜなら王族とは昔から創生主の子孫とも言われているからだ。
パンパンと顔を叩くと辛気臭い顔を捨てて笑みを浮かべる彼女はディンに笑いかける。今だけでも家の事は考えさせない方がいいな、彼はサテラの向かいの席に陣取り談笑を開始する。
「まぁ家に来たし、久々に外れの森でも行くか?」
「行きたいね。あそこで見た花を見たいね」
「あぁ、蛍光色のように光った花か」
幼少時森に入った時に見つけた奇妙な花を見つけたことがあるのだ。家に帰ってみてその花を調べてみると〝フレア〝と言う光を放つ花だと分かった。それはとても高価な花だったらしく、それを売却する不埒な輩が訪れようとしたが姫君の権力によって何もなかったことにしたのだ。ここら辺ではあの外れの森しか生息していないようだ。
「そうそう、お花畑とかになってくれたら嬉しいな」
「行ってからのお楽しみだな」
「うん!」
彼女の笑顔には勇気づけられる。そう確信すると背後からものすごく大きな音と共に何かがやってきた。後ろに振り返ればここまで走ってきたように息を荒げている弟だった。
「あ、兄ちゃんが…姫様をさらってきた!」
「さらってない」
きっぱりと言い張るも弟はニヤツキが止まらずディンの横に移動する。けれども彼自身は小皺を立てて弟に疑いの目をかける。
「嘘だー。姫様久しぶり!」
「久しぶり、フィル。元気ね」
「えへへ、それが僕の取り柄だからね。兄ちゃんごめんね、邪魔だったみたいで」
それでも彼は顔を変えることなく呆れていた。傍目では一瞬の内の彼女の変化に気付いた。あまりにも深刻そうに目を細めるがすぐさま取って付けたようは笑顔を見せつける。無理をしているように見えたので告げ口をしようかと思っていたが、わざと見ないふりをしておいた。
ここの話だけ異様に長かったので二つに分割することにしました。
水曜日更新です、
そろそろディンとサテラのデザインを考えなければなりません、
実のところ、今から描きます←
ではまた水曜日