コイバナ
恋花

「ゆれる心」





美しい流れ星に
どしゃ降りの大雨という
ハプニングもあった
キャンプが終わり
後片付けもあと少しと
いうところ




「お!京子ちゃん!
Mのシャツ借りたんやね」


そう言いながら
小学校から同級生のRくんが
巻いたロープの
砂を落としながら
やって来ました





「このシャツMくんの⁈」

Rくん
「知らんかった?
そうMのシャツよ」
と言ってニコニコと笑う


私はRくんにありがとうと
言うと
急いでMくんを探しました



Mくんは
リーダーと数人で一緒に
テントを運んでいました


私は
運び終わるのを待って
声を掛けました


「Mくん、このシャツ
貸してもらっているのに
お礼も言わずに
ごめんなさい。
本当にありがとう」


Mくんは
「いいんですよ!
シャツが役に立って
良かったです!」

明るくそう言ってくれました


「お返しするのは
どうしたらいい?
お家にお届けしても?
それとも
次のサークルの日に?」


Mくん
「あの…
もらってほしいです」

「…?」

Mくん
「似合っていたから!」

「・・・ありがとう。
でも、やっぱり
借りたものは
お返ししたいから…」

Mくん
「あっ、時間ですよ!
じゃあ、また!」
そう言うといきなり走って
行きました…



私は正直、困りました。



まずは…帰ろう。

そう思いました






私の心には
1つ年上の人への
憧れと同時に
とても小さな恋の花
つぼみがつき始めて
いたようなのです…




それは
夏休み前のことでした


私は教職課程を専攻して
いたため
仲良しのみんなとは
一緒ではない
一人の時間がありました



ある時
心理学の教授から
頼まれた物を
別の教授の部屋に届けに
行く時に
迷ってしまいました


一人で不安になり
うろうろしている私に

「どうかした?」と
声を掛けて下さる人が
いました


私は
「S教授の研究室が
分からなくて探しています」
と言いました


その人は
「S教授?学部は?」
私がそれに答えると
「ああ、この建物じゃないよ。
説明しにくいな、
いいよ、同じ方向に用事が
あるから
一緒に行こう。」

そう言って下さり
私はお礼を言って後に
ついて行きました。



黙ったまま…

渡り廊下をしばらく歩いて
階段を上り
右へ左へ…と




突然立ち止まると

「はい、その右のドアが
S教授の研究室だよ。
帰り道、大丈夫?」と
とっても優しい笑顔で
そうおっしゃいました



ロイヤルブルーのシャツに
白衣がとても似合う人
でした




それから数日後のこと
友人たちと学食に向かって
いると



あの、優しい笑顔の人と
偶然に会いました


するとその人が私に

「帰りは迷子に
ならなかった?」と
また優しい笑顔で言って
下さいました


私はドキッとしてしまい
何と答えたのか
何も思い出せません



友人たちが
「京子!なんで?なんで?
あの方と知り合い?」

「あの方、ファンが沢山いるんだってよ!ステキで有名なんだよ!」

と言いました






私の心は
初めて感じるという
甘く優しい風に
ゆれているようでした…







つづく















**・*・*・*・**




花びらの真ん中
風にゆれると
まるで
流れ星☆彡みたいね






女はであれ
賢く優しいとなれ

**+.° ♡ °.+**









一瞬

一生




















コイバナ
恋花

「初めて話す人」





翌朝は昨夜の大雨が
まるで嘘のように晴れ渡り
白い入道雲が
青空にとても綺麗でした




みんなで手分けをして
張られたロープに
濡れた物を干したり
昼はバーベキューで
その準備をしたり
夕方には後片付けをして
キャンプを終わります




友だちが
「そのシャツ、誰のものか
分かった?」
私はまだ分からないと言うと
友だちは
「私が借りたこのシャツは
リーダーのだったの」と
言いました。


友だちは
リーダーのことが
密かに好きでした


私は「えー⁈すっごい偶然!
良かったね‼︎」と
彼女の手を思わず握って
言いました。


友だちは
「うーん…実は知ってたの。
クリーム色のシャツ
先週の公民館掃除の時に
リーダーが着てたの
見てたから」
照れるように笑って
そう言いました。


私は小さな声で
「がんばってね♪」と
言って彼女の肩を抱き
ました。



男子に借りた衣類には
名前やイニシャルは
ほとんど記されてなく
私が借りた
タータンチェックの
ボタンダウンのシャツも
まだ分からないまま。



**


お昼の
バーベキューの準備を
始めた時のこと



私のすぐ後ろから
「野菜、ここに
置いていいですか」と
男子の声がしました



私は何かを切っていて
顔は見ずに
「ありがとうございます
そこに置いてください」と
言いました。



「はい…」と
声がして野菜の入った
段ボール箱は
置かれたようです




すると

「あの…そのシャツ
似合っていますね」
と、その人は言いました。



私、今でも思い出すたびに
本当に可笑しくて
恥ずかしいのですが



私は「そうですか…
ありがとうございます。
でも、私のシャツでは
ないんです」
と応えてしまったのです。



すると
「あはは…」と笑って
その声の主は
行ってしまいました。



私は切っていた手を休めて
「ん?…え⁉︎
ちょっと待って!
今の人、もしかして
このシャツの持ち主?」



そう思って振り向いたら
もう居なかったのです




あとで友だちに言うと
大笑いされて
「なんだか京子らしいね
声だけでも分からない?」


「分からない」と。




友だち
「他にも持ち主が分からない
って言ってた人がいるから
リーダーに言って名乗り出て
もらえばいいよ」


「そうだね…」




バーベキューが始まって
男子がお肉などを焼いて
女子は焼けたものから
紙皿に取り分けて並べて行く
各自それぞれが
取りに来る
そうしている時に



1つ年下の
話したことがない人が
紙皿を取りながら


「流れ星に願い、しました?」
と私にいきなり聞き
ました



私は答えようがなくて
その人をじっと見て
しまいました



その人は
「僕は流れ星に同じ願い事を
いっぱいしました」と
言いました



私はまた答えようがなくて
黙っていました



すると
「願い事、さっき
叶ったんですよ!」


「え⁉︎それは…
良かったですね。
そうですか
本当に
良かったですね」


確かこんな風に
言ったと思います


するとその人は
「今も叶っているんです、今」


……?



なんだか
よく分からないことを
言う人…と
私は多分無表情で
そう思ったのでした







つづく











・**・*・*・*・**・





小さな赤い唇
みんなで楽しそうに
おしゃべり
しているみたい




女はであれ
賢く優しいとなれ

**+.° ♡ °.+**









一瞬

一生








コイバナ
恋花

「流れ星と大雨と」




秋の夜長に
セピア色した思い出を
すこし語るといたしましょ

📚🖋👵







あれは私が
19才になる年の夏のことで
ございます


学生だった私は
地域活性化の為の
青年サークル
(18才〜22才までの未婚の男女)
に入っておりました



そのサークルで
流れ星を見ようと
長崎県の壱岐へキャンプに
行ったときのこと…






テントを張り
キャンプお決まりの
カレーライスを作って食べ
日が落ちると
草原の上に
みんなで寝転がって
夜空を見上げます


☆彡☆彡☆彡


次から次へと
数え切れないほどの
流れ星が
まるで降り注いで来るような
その素晴らしい光景に
黙って見入っていました




私の隣に寝っ転がる
仲良しの友達が
「キャー!どの流れ星に
願い事言えばいいのか
分からなくなった!」

「ねぇ!京子、言えた⁉︎」と

楽しそうに
はしゃいでいます





私は息をするのも
忘れるくらいの
あまりの美しさに
願い事を考えることさえ
忘れていたのも
ありますが




実は
私には願い事が
ありませんでした…





両親が離婚をする前には
私には
沢山の願い事がありました





どうか
お父さんとお母さんが
仲良しでありますように


私は
いい子でいます
約束します


お願いを叶えてください



どうか
お母さんが
お家から出て行きません
ように



私は
いい子でいます
約束します



どうか…

どうか…

お父さんとお母さんと私と
いつも
一緒に居られますように


私は
いい子でいます
約束します



どうか
お願いを叶えてください





…と
私は幼い頃から
願い事は
そればかりでした…





でも
願い事は叶いません
でしたから…





次第に流れ星が
見えなくなってきました
風が強く吹いてきて
雲が空を覆い始めました



ポツ…ポツ…

ポツ…ポツ、ポツ

ポツ、ポツポツポツポツ

雨粒が落ち始めたかと
思った途端に
大きな雨粒になり

ザーッ、ザーッ、ザー‼︎‼︎
と、いきなり
土砂降りの雨となり



テントが今にも
流されそうな勢い‼︎



私たち女の子用のテント
2張りが
雨で半分潰されて
荷物は全てずぶ濡れに
なってしまいました



反対側の男子用のテントは
無事でした



サークルのリーダーの指示で
コテージに移動をし
身の危険は
ありませんでしたが


みんなずぶ濡れの上に
女の子の着替えまでも
濡れてしまって…



リーダーが
「男子のテントの荷物は
濡れていないので
男子は上着の着替えを
女子に貸すことにしよう
この段ボールの中に
みんな入れてくれ」
と言いました



そして
「女子は濡れた着替えが
乾くまで
男子の着替えを
我慢して借りて欲しい」

そこでみんなが笑って
ほっとした雰囲気に
なりました





すると
女子のリーダーが
「今、リーダーが
おっしゃったように
段ボールの中から
1枚ずつ借りて
濡れた上着を早く着替えて
ください。急いで!」




と言うことで
私たち女の子は
男の子の
乾いた着替えを借りることに
なりました



私の順番が来ました
段ボールの箱の中には
青いTシャツや
白と黒のボーダーシャツ等
たくさん入っていました


私はクリーム色の
カッターシャツを手に
取ろうとした時
一緒に覗いていた友達の手が
先に触れたので
いいよ、いいよ、と
譲り合って
私は別の物をと
目を移した時に


さっきまで
気付かなかったけれど
赤と青と白の
タータンチェックの
ボタンダウンのシャツが
目に入りました



手に取ると
石鹸の香りがして
襟の先まで綺麗に
アイロンが当てられた
シャツでした



誰かのお母さんが
誰かのために
綺麗に洗濯をして
アイロンを当て
持たせてくれたのかな
と思いました



借りるのが申し訳ないような
気持ちになっている所に
女子のリーダーが
「京子ちゃん決まった?
風邪ひくから早く
着替えておいで」
と言いました




私は「はい」と言って
そのシャツを持って
急いで浴室へ向かいました






つづく







*・*+・*・*+・*




小さなアリさんと
小さなお花が
なにやらお話し
しているみたいですね



女は花であれ
賢く優しい花となれ

**+.° 💗 °.+**






一瞬

一生