女性道(女は花であれ) -28ページ目
コイバナ
恋花
「母の恋」
女の子に人気でありながら
少しも気取ることなく
自分の考えをしっかりと
持っているMくんに
まだ恋という感情では
ないけれど
臆病な私の心の扉は
静かに
開き始めたようでした…
ある日、母が
「いつかコスモスの花を
持って来た人、
ボーイフレンドなの?」
と私に聞きました。
私は
「サークルで
一緒に活動している人よ」
そう答えました。
それが本当の答えだと
思ったから。
少し間があって
母は
「そう。それなら
良かったわ」と
言いました。
私は、その言葉が
何を意味しているのか
うっすらと分かりましたが
「何が良かったの?」と
聞きました。
母は
「私なら
野に咲くコスモスを
くれる人よりも
赤い薔薇の花束を
くれる人を選ぶわ」
そう言いました。
私は…心の中で
「そうでしょうね…」と
思いました。
それが
両親の離婚の大きな理由
でしたから。
父はとても真面目で
勤めていた米軍基地が
日本に返還されると同時に
仕事で得られたもので
小さな会社を経営し
より良い製品の開発をしたり
ライセンスを取得する為に
渡米したり、と
とても忙しくしていました
そして
社員さん方とその家族を
守ることにも一生懸命な
人でした。
母に労いや感謝の言葉は
あっても、甘い言葉を
かけてあげることは
多分できない人でした
いつも仕事に情熱を傾け
思いやり深い父を
好きになったはずの母
父に恋をした母…
父に求めたものは
「永遠の恋心」
だったのかも知れない
大きくなってから
そう思いました。
けれども
父は母を愛していると
子ども心にも
私は感じていました
お酒に酔ってソファに
寝てしまった母に
そっと毛布を掛ける父の姿
何度も見ました…
今でも忘れられません。
しかし
堅実で誠実な愛は
とても地味で
いつもいつまでも
甘い恋をしていたい母には
通じなかった…
野に咲く
可憐なコスモスの花
よりも
情熱的な赤い薔薇の花束を
求める母
流暢な英語を話し
オリベッティーの
タイプライターを
ブラインドタッチで打ち
ピンヒールで颯爽と歩く
一人の女性としては
とても素敵で綺麗だった
と…思います
そんな母が求める
コトやモノ
それを叶えてくれる
恋人をつくり
父とは離婚をしました
私は幼い頃から
いつも母に
「あなたは薔薇の蕾よ」
そう言われていました。
私もそう思って
育ちましたが
途中で気付きました。
「なにか…ちがう」
でも母の中では
それが価値あるコト、モノ
だったので
愛する娘に教えたい
気持ちでも
あったのだと思います
でもなぜか
母はいつも
寂しそうでした…
多くの恋を楽しみながら
いつも確かな愛を
求めてしまう…
私の瞳には
そう映っていました
野山を駆けまわり
木の実や花をポケットに
服と靴には
花の花粉をいっぱい
着けていた私を
叱っていた母
それを庇ってくれる父
Mくんの白いスニーカーの
先に着いた黄色い花粉が
そんな私の心を
ゆるゆると
ほどける魔法をかけて
くれたかも知れない
のでした…
つづく
・**・*・*・*・**・
黄色い銀杏の実が
ひとつ、ふたつ、みっつ…
あそこにも
ほら
まだまだあるね
かわいいね
美味しそうだね〜笑
女は花であれ
賢く優しい花となれ
**+.° ♡ °.+**
恋は一瞬
愛は一生
コイバナ
恋花
「心の扉」
彼の
白いスニーカーの先には
コスモスの
黄色い花粉が
たくさん着いていました
それを見た
私の胸は・・・
とても
くすぐったいような
なにかが
ゆるゆると
ほどけてゆくような…
すると背後から
「お玄関ではなんでしょう?
お茶でもどうぞ〜」
と母が言いました
するとMくんは
「花を届けに
来ただけですから
これで失礼します」
と言って
私にコスモスの花束を
差し出しました
私は受け取り
「コスモス大好きなの
とっても嬉しい。
ありがとう」
そう言いました
彼は満面の笑みで
「ああ!良かったぁ!
じゃあまた!」
そう言って
走って行きました
私は彼の後ろ姿を見ながら
「よく走る人だなぁ」と
思いました
そして私の中で
あのMくんに対する
印象が変わり始めたのを
感じていました
あのMくんと言う表現は…
彼は高校生の時から
とても人気のある人で
Mくんの高校の文化祭には
他校の女子たちが
押しかけるほどだと
うわさに聞いていました
私の幼なじみのRくんと
アマチュアバンドを結成し
高校生ボーカルとして
ライブでの人気の凄さを
Rくんからも
聞いたことがありました
けれど私は
私の世界とは別世界のこと
として聞き流していました
だからこそ
私にはとても信じられない
彼の言葉や行動でした
そんなに人気の人が
なぜ、私を…
わからない。
私は恋には
とても臆病な所を自分でも
感じていました
離婚をした両親は
大恋愛だったと
両祖母からよく
聞いていたのです
けれど
ものごころがついた私には
父に対する母の
冷め切った表情しか
記憶にありません
口もきかない
笑顔も見せない…
私には不安しか
ありませんでしたから
成長するに連れて
恋愛に不信感さえ持って
しまったように思います
ましてや
結婚への憧れなど
全くありませんでした
友人たちは
のびのびと片想いや
両想いの話しを
とても楽しげにしたり
結婚への憧れを語ったり
私もいつかは
そういう気持ちに
なれるのかな…
誰かを恋しく想うことが
できるのだろうか…
ずっと
そう思っていましたから
そんな私が初めて…
ロイヤルブルーのあの方に
ほのかな心の揺らぎを
感じ始めているのか…?
自分でも
まだ分からないのでした
またそんな時に
一度も話したこともない
あのウワサ高きMくんに
キャンプで
よく分からないことを
話しかけられて
私は心の扉をより強く
閉めてしまったように
感じていました
しかも
ロイヤルブルーのあの方も
友人たちの話しによると
ファンがたくさんいて
とても人気だと…
それを知ったとき
やはり気持ちに歯止めが
掛かってしまったかも
知れない…
この恋花をご覧くださる
皆さまへ
ロイヤルブルーのあの方の
イメージをお伝え
しておきましょう
芸能人で例えるなら
福山雅治さんがブルーの
シャツに白衣を羽織っている
感じの人でした
Mくんは
お若い頃の
谷隼人さんによく似ている
と言われていました
イメージのご参考に
ゥフフフ(๑˃̵ᴗ˂̵)
さて九月になると
後期が始まり
私たち学生は
講義に集中する日々に
戻りました
学部の違う
ロイヤルブルーのあの方には
偶然にお会いする
こともなく
ところがある日
「京子、京子!
中庭にブルーさんいたよ!」
友人はいつからか
ロイヤルブルーのあの方を
「ブルーさん」と呼んで
いました
友人
「早く中庭に行かないと
いなくなっちゃうよ!」
私「いいよ…わざわざ」
友人「それでも
わざわざ行くのよ!」
友人は
いつも元気で明るくて
気が利いていて
とても優しくて
面倒見が良くて
周囲を明るく笑顔にする
すごく素敵な女性です
18歳で友だちになり
今も47年来の
私の大親友です
もたもたしている私は
友だちに
引きずられるようにして
中庭へ向かう途中で
突然目の前に
ブルーさんが現れて
びっくりしました
ブルーさんは
「おや⁉︎久しぶりだね!」
そう言って笑って
通り過ぎて行きました
ブルーさんは
歩くのが物凄く早い人です
友だちは
「びっくりしたね!
でもさ、また話しかけて
もらえて良かったね!」と
そう言いながら
私の背中をバンバンと
叩いたのでした
でも、、、心なしか
ブルーさんの目は
笑っていなかったような
気がしました…
青年サークルでは
3日間の秋まつりの
ボランティア活動
夜の野外広場では
RくんとMくんのバンドも
参加していました
ファンの女の子たちが
ひしめき合う中
私は初めて
彼らのライブを
最初から最後まで
見ました
なるほど…
人気があるはずだなと
素直に思いました
多くの人たちを
楽しませ
明るく幸せな笑顔にできる
そんなMくんは
すごいなと思いました
それなのに
気取らずいつも明るく
自分の考えを持ち
自分の気持ちを
きちんと表現できる人
いつしか
私の心の扉は
静かに開き始めて
いるようでした
つづく
・**・*・*・*・**・
真っ白なコスモスは
周りの花の色も
引き立てながら
自らも静かに輝いている
素敵ですね
女は花であれ
賢く優しい花となれ
**+.° ♡ °.+**
恋は一瞬
愛は一生
コイバナ
恋花
「コスモスの花粉」
私の心は
甘く優しい恋の風に
ゆれているよう
でした…
でもそれは
とても
ほのかに…静かに…
キャンプに行った時
青い空の
日が沈むのを見ながら
その青が次第に
濃くなり
綺麗なロイヤルブルーに
見えたとき
ふっ…と
あの方を思い出して
しまったのです…
でもそれは
すぐに
濃紺の夜空になり
数え切れない流れ星が
降り注ぐように流れては
消えて
願い事もせず
その美しさに
ただ
見入っていただけの
私でした
お盆が過ぎて
その頃は
まだ精霊流しがあり
海岸の清掃を
サークルですることに
なっていました
私はMくんに借りた
ボタンダウンのシャツを
キャンプから帰るとすぐに
洗濯をして
いつもよりも
丁寧にアイロンを当て
綺麗に包んで
返す日を待ちました
海岸清掃が終わり
ミーティングをするので
そのまま公民館へ
ミーティングが始まるまで
時間があるので
私はMくんに
お礼を言ってシャツを
お返ししました
Mくんは
シャツを受け取ると
「新品みたいになってる!」
と大げさに言って
笑いました
なんて明るい人なのかしらと
私も一緒に笑ってしまい
ました
するとMくんが
「朝の列車、いつも2両目に
乗っていますよね」と
いきなり言いました
私は
「あ、そうね…」
するとMくんは続けて
「いつも白いキャンバスを
抱えていますよね」
私は
「だいたい毎日かな、
どうして知ってるの?」
Mくんは
「僕は3両目で改札口の前
なので
見えるんです」
私は
「ああ、そうなのね」
Mくんが
「R先輩が幼なじみって」
私
「そう、Rくんとは
小学校から一緒なの」
Mくん
「R先輩が京子ちゃんって
呼んでいるの聞いて
サークルに入る前から
名前を知っていたんです」
「高校生の時から
ずっと見ていたんですよ
気付かなかったでしょ?」
私
「ああ…
そうだったんだね…」
言いようがなくて
言葉がそれ以上には
出て来ませんでした
するとMくんは
「流れ星の願い事
やっぱり叶った!
こんな風に
話してみたかったから
ずっと前から」
「それに大雨のオマケまで
付いていて
僕のシャツを借りてくれた
すごく嬉しかったんです」
Mくんが
とても楽しそうに話すので
まるで
誰か他の人のことを聞いて
いるみたいな感じがして
なぜか私もつい笑顔に
なっていました
でもこれは
もしかしたら
告白されているの?
そう思うのに
時間がかかりました
まさか
1つ年下の人に?
高校生の時から?
全く思いもよりません
でした
それに私は
自慢できないけれど
綺麗でも
モテるタイプでも
決してないのです
きっと私の聞き間違い
思い過ごし。
やがて
ミーティングが始まり
秋まつりの内容などが
リーダーから説明されて
作業割り当て等が
話し合われました…
ミーティング後に解散となり
私は友達と話しながら
歩いていると
そこへMくんが
「京子ちゃん送りますよ!」
と
オレンジ色の
自転車に乗って
来ました
友だちが
「京子、せっかくだから
送ってもらいなさいね」
と笑って言いました
私が戸惑っていると
リーダーが
「こらこら!
2人乗り禁止じゃ!」
と言って下さいました
Mくんは
「やっぱりダメですか!」と
明るく笑いました
それから数日が過ぎた
ある日
「玄関にお友だち?が
来てるけど…」と
裏庭で
愛犬バニーちゃんの
ブラッシングをしていると
母が呼びにきました
急いで玄関に行くと
そこには
白や淡いピンクの
コスモスの花を
いっぱい抱えたMくんが
立っていました
私
「Mくん…」
Mくん
「コスモスが
いっぱい咲いたから…
好きかなと思って」と
照れたように
言いました
彼の
白いスニーカーの先には
コスモスの
黄色い花粉が
たくさん着いていました
それを見た
私の胸は・・・
つづく
・**・*・*・*・**・
コスモス
薄紅の秋桜が秋の日の
何気ない陽溜りに
揺れている…
明日嫁ぐ私に苦労はしても
笑い話しに時が過ぎるよ
心配いらないと言った
さだまさしさん作詞作曲
山口百恵さん
秋桜(コスモス)
とても好きな歌です
女は花であれ
賢く優しい花となれ
**+.° ♡ °.+**
恋は一瞬
愛は一生

