コイバナ
恋花
「心の扉」
彼の
白いスニーカーの先には
コスモスの
黄色い花粉が
たくさん着いていました
それを見た
私の胸は・・・
とても
くすぐったいような
なにかが
ゆるゆると
ほどけてゆくような…
すると背後から
「お玄関ではなんでしょう?
お茶でもどうぞ〜」
と母が言いました
するとMくんは
「花を届けに
来ただけですから
これで失礼します」
と言って
私にコスモスの花束を
差し出しました
私は受け取り
「コスモス大好きなの
とっても嬉しい。
ありがとう」
そう言いました
彼は満面の笑みで
「ああ!良かったぁ!
じゃあまた!」
そう言って
走って行きました
私は彼の後ろ姿を見ながら
「よく走る人だなぁ」と
思いました
そして私の中で
あのMくんに対する
印象が変わり始めたのを
感じていました
あのMくんと言う表現は…
彼は高校生の時から
とても人気のある人で
Mくんの高校の文化祭には
他校の女子たちが
押しかけるほどだと
うわさに聞いていました
私の幼なじみのRくんと
アマチュアバンドを結成し
高校生ボーカルとして
ライブでの人気の凄さを
Rくんからも
聞いたことがありました
けれど私は
私の世界とは別世界のこと
として聞き流していました
だからこそ
私にはとても信じられない
彼の言葉や行動でした
そんなに人気の人が
なぜ、私を…
わからない。
私は恋には
とても臆病な所を自分でも
感じていました
離婚をした両親は
大恋愛だったと
両祖母からよく
聞いていたのです
けれど
ものごころがついた私には
父に対する母の
冷め切った表情しか
記憶にありません
口もきかない
笑顔も見せない…
私には不安しか
ありませんでしたから
成長するに連れて
恋愛に不信感さえ持って
しまったように思います
ましてや
結婚への憧れなど
全くありませんでした
友人たちは
のびのびと片想いや
両想いの話しを
とても楽しげにしたり
結婚への憧れを語ったり
私もいつかは
そういう気持ちに
なれるのかな…
誰かを恋しく想うことが
できるのだろうか…
ずっと
そう思っていましたから
そんな私が初めて…
ロイヤルブルーのあの方に
ほのかな心の揺らぎを
感じ始めているのか…?
自分でも
まだ分からないのでした
またそんな時に
一度も話したこともない
あのウワサ高きMくんに
キャンプで
よく分からないことを
話しかけられて
私は心の扉をより強く
閉めてしまったように
感じていました
しかも
ロイヤルブルーのあの方も
友人たちの話しによると
ファンがたくさんいて
とても人気だと…
それを知ったとき
やはり気持ちに歯止めが
掛かってしまったかも
知れない…
この恋花をご覧くださる
皆さまへ
ロイヤルブルーのあの方の
イメージをお伝え
しておきましょう
芸能人で例えるなら
福山雅治さんがブルーの
シャツに白衣を羽織っている
感じの人でした
Mくんは
お若い頃の
谷隼人さんによく似ている
と言われていました
イメージのご参考に
ゥフフフ(๑˃̵ᴗ˂̵)
さて九月になると
後期が始まり
私たち学生は
講義に集中する日々に
戻りました
学部の違う
ロイヤルブルーのあの方には
偶然にお会いする
こともなく
ところがある日
「京子、京子!
中庭にブルーさんいたよ!」
友人はいつからか
ロイヤルブルーのあの方を
「ブルーさん」と呼んで
いました
友人
「早く中庭に行かないと
いなくなっちゃうよ!」
私「いいよ…わざわざ」
友人「それでも
わざわざ行くのよ!」
友人は
いつも元気で明るくて
気が利いていて
とても優しくて
面倒見が良くて
周囲を明るく笑顔にする
すごく素敵な女性です
18歳で友だちになり
今も47年来の
私の大親友です
もたもたしている私は
友だちに
引きずられるようにして
中庭へ向かう途中で
突然目の前に
ブルーさんが現れて
びっくりしました
ブルーさんは
「おや⁉︎久しぶりだね!」
そう言って笑って
通り過ぎて行きました
ブルーさんは
歩くのが物凄く早い人です
友だちは
「びっくりしたね!
でもさ、また話しかけて
もらえて良かったね!」と
そう言いながら
私の背中をバンバンと
叩いたのでした
でも、、、心なしか
ブルーさんの目は
笑っていなかったような
気がしました…
青年サークルでは
3日間の秋まつりの
ボランティア活動
夜の野外広場では
RくんとMくんのバンドも
参加していました
ファンの女の子たちが
ひしめき合う中
私は初めて
彼らのライブを
最初から最後まで
見ました
なるほど…
人気があるはずだなと
素直に思いました
多くの人たちを
楽しませ
明るく幸せな笑顔にできる
そんなMくんは
すごいなと思いました
それなのに
気取らずいつも明るく
自分の考えを持ち
自分の気持ちを
きちんと表現できる人
いつしか
私の心の扉は
静かに開き始めて
いるようでした
つづく
・**・*・*・*・**・
真っ白なコスモスは
周りの花の色も
引き立てながら
自らも静かに輝いている
素敵ですね
女は花であれ
賢く優しい花となれ
**+.° ♡ °.+**
恋は一瞬
愛は一生