コイバナ
恋花

「流れ星と大雨と」




秋の夜長に
セピア色した思い出を
すこし語るといたしましょ

📚🖋👵







あれは私が
19才になる年の夏のことで
ございます


学生だった私は
地域活性化の為の
青年サークル
(18才〜22才までの未婚の男女)
に入っておりました



そのサークルで
流れ星を見ようと
長崎県の壱岐へキャンプに
行ったときのこと…






テントを張り
キャンプお決まりの
カレーライスを作って食べ
日が落ちると
草原の上に
みんなで寝転がって
夜空を見上げます


☆彡☆彡☆彡


次から次へと
数え切れないほどの
流れ星が
まるで降り注いで来るような
その素晴らしい光景に
黙って見入っていました




私の隣に寝っ転がる
仲良しの友達が
「キャー!どの流れ星に
願い事言えばいいのか
分からなくなった!」

「ねぇ!京子、言えた⁉︎」と

楽しそうに
はしゃいでいます





私は息をするのも
忘れるくらいの
あまりの美しさに
願い事を考えることさえ
忘れていたのも
ありますが




実は
私には願い事が
ありませんでした…





両親が離婚をする前には
私には
沢山の願い事がありました





どうか
お父さんとお母さんが
仲良しでありますように


私は
いい子でいます
約束します


お願いを叶えてください



どうか
お母さんが
お家から出て行きません
ように



私は
いい子でいます
約束します



どうか…

どうか…

お父さんとお母さんと私と
いつも
一緒に居られますように


私は
いい子でいます
約束します



どうか
お願いを叶えてください





…と
私は幼い頃から
願い事は
そればかりでした…





でも
願い事は叶いません
でしたから…





次第に流れ星が
見えなくなってきました
風が強く吹いてきて
雲が空を覆い始めました



ポツ…ポツ…

ポツ…ポツ、ポツ

ポツ、ポツポツポツポツ

雨粒が落ち始めたかと
思った途端に
大きな雨粒になり

ザーッ、ザーッ、ザー‼︎‼︎
と、いきなり
土砂降りの雨となり



テントが今にも
流されそうな勢い‼︎



私たち女の子用のテント
2張りが
雨で半分潰されて
荷物は全てずぶ濡れに
なってしまいました



反対側の男子用のテントは
無事でした



サークルのリーダーの指示で
コテージに移動をし
身の危険は
ありませんでしたが


みんなずぶ濡れの上に
女の子の着替えまでも
濡れてしまって…



リーダーが
「男子のテントの荷物は
濡れていないので
男子は上着の着替えを
女子に貸すことにしよう
この段ボールの中に
みんな入れてくれ」
と言いました



そして
「女子は濡れた着替えが
乾くまで
男子の着替えを
我慢して借りて欲しい」

そこでみんなが笑って
ほっとした雰囲気に
なりました





すると
女子のリーダーが
「今、リーダーが
おっしゃったように
段ボールの中から
1枚ずつ借りて
濡れた上着を早く着替えて
ください。急いで!」




と言うことで
私たち女の子は
男の子の
乾いた着替えを借りることに
なりました



私の順番が来ました
段ボールの箱の中には
青いTシャツや
白と黒のボーダーシャツ等
たくさん入っていました


私はクリーム色の
カッターシャツを手に
取ろうとした時
一緒に覗いていた友達の手が
先に触れたので
いいよ、いいよ、と
譲り合って
私は別の物をと
目を移した時に


さっきまで
気付かなかったけれど
赤と青と白の
タータンチェックの
ボタンダウンのシャツが
目に入りました



手に取ると
石鹸の香りがして
襟の先まで綺麗に
アイロンが当てられた
シャツでした



誰かのお母さんが
誰かのために
綺麗に洗濯をして
アイロンを当て
持たせてくれたのかな
と思いました



借りるのが申し訳ないような
気持ちになっている所に
女子のリーダーが
「京子ちゃん決まった?
風邪ひくから早く
着替えておいで」
と言いました




私は「はい」と言って
そのシャツを持って
急いで浴室へ向かいました






つづく







*・*+・*・*+・*




小さなアリさんと
小さなお花が
なにやらお話し
しているみたいですね



女は花であれ
賢く優しい花となれ

**+.° 💗 °.+**






一瞬

一生