第39章 ネガティアの奥へ | 光と闇を 抱きしめたまま

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初代魔法少女は、4人の魔法少女たちに背を向けた。

そのまま、ネガティア基地の奥へと歩いていく。

アクティアは、床に落ちていたレイピアを拾い上げた。

先ほどまでの戦いで、アクティアビットはすべて破損している。

飛行マントも、左手のシールドも損傷したままだ。

それでも、アクティアの装備は完全に失われたわけではなかった。

時間が経つにつれて、少しずつ修復が始まっている。

「……行っちゃったね」

ルミナが、初代魔法少女の消えた通路を見る。

アクティアはレイピアを握り直した。

「私たちを倒せるはずだったのに……」

「わざと残したんだと思う」

リネアが静かに答えた。

その背中では、破壊された背部ユニットが青白く点滅している。

リネア自身の魔力によって、少しずつ修復が進んでいた。

けれど、完全に直るにはまだ時間が必要だった。

そして、エクリア。

彼女はリネアのそばで、まだ目を閉じていた。

衣装も、両手両足の装甲も、すでに修復されている。

ただ、初代魔法少女から受けた背中への二度の大きなダメージ。

身体は生きている。

けれど、意識だけが戻ってこない。

「エクリア……」

アクティアが心配そうに呼びかける。

リネアはエクリアの身体を確認した。

「大丈夫。生きてる」

その言葉に、アクティアは小さく息を吐いた。

そのときだった。

遠くから、無数の足音が聞こえてきた。

「……来るよ」

ルミナが振り返る。

基地へ入ってきた方向。

そこから、大勢のネガティア戦闘員が戻ってきた。

「今さら!?」

ルミナが身構える。

アクティアはレイピアを構えた。

「リネア、エクリアをお願い!」

「分かった!」

リネアは意識を失ったエクリアを背負った。

アクティアとルミナが前に出る。

二人は迫り来る戦闘員を食い止めながら、少しずつ後退した。

「こっちは任せて!」

「リネア、先に行って!」

「うん!」

リネアはエクリアを背負ったまま、基地の奥へ走る。

アクティアとルミナも、戦闘員を振り切るように後を追った。

やがて、長い通路の先に複数の道が現れた。

「……分かれ道?」

アクティアが立ち止まる。

左右。

そして正面。

三つの道が、それぞれ別方向へ伸びている。

後ろからは、まだ戦闘員が迫っている。

ルミナが周囲を見回した。

「このまま全員で一緒に行ったら、まとめて囲まれるよ」

アクティアも頷いた。

「だったら……分かれよう」

リネアがエクリアを背負ったまま答える。

「戦力を分散させるのね」

「うん。少しでも回復する時間を作って、それから戦闘員を無力化する」

3人は互いに目を合わせた。

そして、それぞれ違う道へ進んだ。

アクティアは左。

ルミナは右。

リネアはエクリアを背負い、正面の道へ。

四人の姿は、暗い通路の中へ別々に消えていった。

 

アクティアは一人で走っていた。

しばらく進むと、不思議なことに気づいた。

「……戦闘員がいない?」

さっきまで、あれほど大量にいた戦闘員の姿がない。

足音も聞こえない。

基地の奥は、異様なほど静かだった。

アクティアはレイピアを構えたまま、慎重に進んでいく。

やがて、広い部屋に出た。

そこには、一人の人物が立っていた。

「……誰?」

アクティアは目を細める。

その人物は、魔法少女だった。

そして、その姿は――

アクティアによく似ていた。

衣装。

全体のシルエット。

魔法少女としての姿。

まるでアクティアを参考にして作られたかのようだった。

「……私?」

もちろん、アクティア本人ではない。

しかし、あまりにも似ている。

その魔法少女は何も言わず、アクティアを見つめていた。

アクティアはレイピアを握り直す。

「あなた……何者なの?」

返事はない。

ただ静かに、そこに立っている。

 

一方、別の通路を進んでいたルミナ。

「……こっちも静かすぎる」

戦闘員の姿はない。

ルミナは警戒しながら歩いていた。

そのときだった。

背後に気配を感じた。

「!」

ルミナが振り返る。

そこに、一人の人物が立っていた。

「……え?」

ルミナの目が大きく開く。

その姿もまた――

ルミナ自身の魔法少女姿によく似ていた。

ルミナは一歩後ろへ下がる。

「……何なの、あんた」

その人物は答えない。

ただ、ルミナをじっと見ている。

アクティアと同じだった。

なぜネガティア基地の最奥に、自分たちによく似た魔法少女がいるのか。

ルミナには何も分からなかった。

 

そのころ。

リネアは、エクリアを背負ったまま、長い通路を進んでいた。

すると――

「……う……」

背中から、小さな声が聞こえた。

リネアが足を止める。

「エクリア?」

エクリアがゆっくりと目を開けた。

「……ここ……どこ?」

「ネガティア基地の奥よ」

リネアは少しだけ安心した。

「ずっと眠っていたの」

エクリアは自分の身体を確認する。

衣装も装甲も戻っている。

けれど、背中にはまだ重い感覚が残っていた。

「……背中が、痛い」

「無理しないで」

「でも……歩ける」

エクリアはリネアの背中から降りる。

二人は並んで歩き始めた。

そして、しばらく進んだ先。

そこには、広い空間があった。

リネアが足を止める。

エクリアも、その人物を見た瞬間に表情を変えた。

「……ネレイド」

そこに立っていたのは、

ネレイドだった。

かつて何度も4人の前に立ちはだかった、ネガティアの幹部。

しかし、以前のような余裕はない。

アクティアたちとの戦い。

そして初代魔法少女との戦い。

幾度もの損傷によって、ネレイド自身もまだ完全には回復していなかった。

それでも、彼女はそこに立っていた。

「……やっぱり来たのね」

ネレイドが静かに言う。

エクリアは光刃を構える。

リネアも警戒する。

ネレイドは二人を見つめた。

そして、二人の後ろにある通路へ目を向ける。

「この先に何があるのか……知りたいのでしょう?」

エクリアは答えない。

ネレイドは続けた。

「なら、見ればいいわ」

「ネガティアが、何のために存在していたのかを」

リネアの表情が変わる。

「……何のために?」

ネレイドは答えなかった。

ただ、基地のさらに奥へ続く扉を見つめる。

その扉の向こうには、まだ誰も知らない何かがある。

そして、初代魔法少女が残した言葉。

「辛い現実を知りたいのね」

その意味も。

アクティアの前に現れた、自分によく似た魔法少女も。

ルミナの前に現れた、自分によく似た魔法少女も。

すべてが一本の線で繋がっているように思えた。

ネガティア基地の最奥。

そこへ向かう4人の前に、

いよいよネガティアの真実が姿を現そうとしていた。