第37章 最後の戦い、その先に | 光と闇を 抱きしめたまま

光と闇を 抱きしめたまま

Aiでノベルを作る

 

少し離れた場所では、ネガティア首領と初代魔法少女が向かい合っていた。

再建途中の市役所。

瓦礫は少しずつ取り除かれ、新しい建物が形を取り戻し始めている。

首領は、その光景を眺めながら言った。

「今の世界は……君が幸せにする価値があるのか?」

初代魔法少女は、すぐには答えなかった。

やがて、小さな声で答える。

「……ある」

そして、

「きっと」

首領は振り返る。

「“きっと”とは、どこにある?」

初代魔法少女は考える。

「……どこかにある」

「“どこかに”とは、何かあるのか?」

「…………」

初代魔法少女の口が止まった。

そして、長い沈黙のあと。

「……何もない」

その声は、とても小さかった。

「45年……何もない……」

首領は何も言わない。

初代魔法少女は、うつむいた。

かつては世界を幸せにできると信じていた。

自分が戦えば。

自分が魔法を使えば。

誰かが笑顔になる。

そう信じていた。

しかし今は。

45年という時間だけが過ぎている。

「人を幸せにする価値は……」

初代魔法少女が、首領へ問いかける。

「誰かが証明し続けなければならないの?」

首領は答えた。

「そうだ」

「証明し続けなければ、いつか忘れ去られる」

首領は再建途中の市役所を見る。

「君も最初は、世界に幸せの価値を提供した」

「人々は君を見ていた」

「君が与えた幸せを喜んだ」

そして、冷静に続ける。

「だが、今はどうだ?」

初代魔法少女は答えない。

「新しい魔法少女が誕生すれば、君が幸せを提供したことなど、すぐに忘れられる」

「人々は新しい魔法少女を見る」

「新しい力を期待する」

「新しい奇跡を喜ぶ」

首領は初代魔法少女を見る。

「古い魔法少女には、幸せを証明できる価値はない」

「俺は、そう思うがね」

初代魔法少女は、再建中の市役所を見つめた。

自分も、その再建を手伝っている。

瓦礫を片付け。

建物を支え。

人々が再び暮らせる場所を作っている。

それなのに。

誰も自分を見ていない。

誰も、自分に気づかない。

「……市役所のビルの再建を手伝っていても」

初代魔法少女の声が震える。

「周りは……私を見ていないの……」

その言葉の奥に、深い孤独があった。

 

初代魔法少女は遠くを見る。

そこには、アクティア。

エクリア。

ルミナ。

そしてリネア。

4人の魔法少女がいた。

戦いを終えたばかりなのに、笑っている。

初代魔法少女は、4人を見つめる。

「古いという……忘れられた存在……」

「皆は……新しい魔法少女でいいんだね?」

首領は答えた。

「そうだ」

その言葉は、あまりにも簡単だった。

「価値は、相手に認められてこそ価値になる」

「自分で証明しなければならない」

初代魔法少女は黙った。

遠くで、アクティアが何かを話している。

ルミナが笑う。

エクリアも笑う。

そしてリネアも、その輪の中にいる。

初代魔法少女は、自分の胸に手を当てた。

そこにあったのは、

寂しさ。

悔しさ。

そして、嫉妬。

「……私だって」

小さく呟く。

「私だって……まだ……」

言葉が続かない。

その瞬間。

初代魔法少女の心の奥に、

小さな黒い感情が芽生えた。

それはまだ、ほんの小さなものだった。

しかし確かに、

「忘れられたくない」

という思いが、

「もう一度、自分の価値を証明したい」

という感情へ変わり始めていた。

 

その後。

4人は施設へ戻った。

アクティアは頭に包帯を巻いている。

もちろん原因は、先ほどのアッパーカットだ。

ルミナがその姿を見て笑う。

「まだ痛い?」

「……ちょっと」

「自業自得」

「ルミナまで!」

エクリアも笑う。

その様子を、助手ことリネアは少し離れたところから見ていた。

彼女の気持ちは複雑だった。

ネガティアの首領。

かつて自分が仕えていた存在。

しかし。

アクティアたちと過ごしてきた時間を思えば、もう迷いはなかった。

彼女たちと一緒に戦う。

それが、自分で決めたことだった。

アクティアは包帯を外した。

鏡に映る自分の顔を見る。

そして、ふと母のことを思い出す。

魔法少女になった直後に亡くなった母。

ミズキ。

「……ママ」

アクティアは小さく呟いた。

あの日から、自分の魔法少女としての人生は始まった。

戦って。

守って。

失って。

それでも歩いてきた。

アクティアは目を閉じる。

「……見ててね」

静かに笑った。

「ママ」

 

そのときだった。

助手がタブレットを操作している手を止めた。

「……これ」

「どうしたの?」

ルミナが覗き込む。

画面には、市役所の再建現場が映っていた。

その瓦礫の隙間から、

ネガティアの戦闘員が出入りしている。

助手は映像を拡大する。

「市役所の残骸から、ネガティアの戦闘員が……」

アクティアも画面を見る。

「まさか……」

助手が呟く。

「市役所の下に……ネガティアの基地がある?」

ルミナが振り返る。

「ちょっと待って」

そしてアクティアとエクリアを見る。

「お前たちがネガティアから脱出したときは、市役所だったんだろ?」

2人は顔を見合わせた。

「いいえ」

アクティアが答える。

「私たちが脱走したときは、森の中だったの」

エクリアも頷く。

「私も」

「…………」

ルミナは首を傾げた。

「じゃあ……どういうこと?」

誰も答えられない。

市役所の地下に、知られていない何かがある。

そして、その中へネガティアの戦闘員が出入りしている。

助手は、タブレットを閉じた。

「アクティアビットの修復が終わり次第……」

3人を見る。

「ネガティア基地へ突入しましょう」

アクティアが顔を上げる。

助手は続けた。

「これが……最後の戦いです」

4人は黙った。

そして、互いの顔を見る。

誰もが、

そうであってほしい

と思っていた。

 

魔法少女になってから。

戦わない日は、ほとんどなかった。

怪人と戦った。

ネガティアと戦った。

人々を守った。

世界を守った。

そして、宇宙規模の戦いにまで巻き込まれた。

魔法少女として、誰かを幸せにすること。

その選択を、彼女たちは何度も繰り返してきた。

確かに。

誰かを幸せにできたのかもしれない。

けれど。

アクティアが呟く。

「……私たちの幸せは?」

ルミナは黙った。

エクリアも答えない。

リネアも、自分の血まみれのチョーカーへ触れる。

誰かを守ること。

誰かを幸せにすること。

それを選んできた。

では。

その選択をした彼女たちは、

自分自身の幸せを選べているのだろうか。

まだ、答えは出ない。

ただ一つだけ。

彼女たちは願っていた。

これが最後の戦いであってほしい。

戦いが終わったら。

もう一度、普通に笑いたい。

好きなことをして。

大切な人と過ごして。

魔法少女ではない自分として生きてみたい。

そして何より。

誰かを幸せにするだけではなく、

自分たち自身も幸せになっていい。

そう思える未来を。

4人はまだ知らなかった。

市役所の地下に何が待っているのか。

ネガティア首領が何を企んでいるのか。

そして、遠くでこちらを見つめる初代魔法少女の心に、どんな変化が起きているのか。

ただ。

最後の戦いへ向かう準備だけが、静かに始まっていた。